OEKのCD

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2017/06/17

快晴の下,芝生の緑の美しい金沢市民芸術村でOEKメンバーによる「ふだん着ティータイムコンサート」を聞いてきました。今年の室内楽コンサートは聞いたことのない曲の連続でしたが,どの曲も楽しめました。飲み物サービスもサポート #oekjp

毎年恒例の,OEKメンバーの自主企画による無料コンサート「ふだん着ティータイムコンサート」を聞いてきました。本日の金沢は,梅雨時とは思えない(まだ入っていない?)爽やかな天候だったこともあり,会場の金沢市民芸術村は芝生や水辺で遊んだ後,コンサートに突入,といった親子連れを中心に沢山のお客さんが入っていました。
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前半の「子どものためのコンサート」は特に盛況で,オープンスペースには立ち見のお客さんもいるほどでした。
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私の方は...飲み物サービスのお手伝いをしながら聞いていました。オープンスペースの上部で,楽友会メンバーとOEKメンバーで飲み物サービスを行うのが恒例なのですが,本日は「冷たい飲み物」の準備が遅れ気味になっており,少々バタバタしていましたので,ついつい色々とお手伝いをしました。オーボエの加納さんと一緒に,ホット・コーヒーをポットに移す作業したのですが,良い思い出(?)になりました。

コンサートの方は,例年の内容とほぼ同じ形で,ファゴットの柳浦さんの司会で,楽器紹介を交えて,親しみやすい曲が演奏されて行きました。今回の注目は...チェロの早川さんが,なぜかトロンボーン奏者として出演されていたことでしょうか。
1分間指揮者コーナーでは,今年も色々な「飛び入り指揮者」が登場し,色々なテンポで,ラデツキー行進曲とベートーヴェンの「運命」が演奏されました。意外なことに,最初に登場した,幼稚園児がいちばん「オーソドックス」なテンポだったと思います。ブラーボ!最後に「てのひらを太陽に」を皆で歌って,最初のコーナーは終了しました。

休憩後は,ミュージック工房に場所を変え,「室内楽コンサート」が行われました。2回休憩をはさみ,約2時間半行われたのですが,何と演奏された曲全部,初めて聞く曲でした。私も色々演奏会に出かけていますが,これだけ渋い曲が並ぶのも珍しいことです。ちなみに次のとおりです。
  • マーズ/ディヴェルティメントから(松木(フルート),遠藤(クラリネット),柳浦(ファゴット)
  • ヴィトマン/デュオ(ドゥミヤック(ヴァイオリン),大澤(チェロ)
  • ドホナーニ/弦楽三重奏曲「セレナ-デ」(若松(ヴァイオリン),古宮山(ヴィオラ),キム(チェロ)
  • パーカッション二重奏 3曲(渡邉,望月(パーカッション))
  • ファッシュ/ソナタ ヘ長調(加納,水谷(オーボエ),渡邉,柳浦(ファゴット))
  • シュルホフ/コンチェルティーノより(松木(フルート),石黒(ヴィオラ),今野(コントラバス))
  • クンマー=シューベルト/ウィリアム・テルの主題によるデュオコンチェルタンテ(坂本(ヴァイオリン),大澤(チェロ))
  • ヒンデミット/小室内楽(松木(フルート),加納(オーボエ),遠藤(クラリネット),柳浦(ファゴット),金星(ホルン))
こういった曲を,前半のコンサートからの流れでお子さんも一緒に聞いている,という光景が素晴らしかったですね。それと,一見,難解そうに思えるラインナップですが,予想以上に分かりやすい曲が多く,どの曲も楽しむことができました。室内楽といっても,いちばんの定番である弦楽四重奏が入っていないのも面白いところです。
毎回感じるのですが,至近距離で聞くプロの演奏は,曲の知名度に関わらず,聞く人を引き付ける迫力を持っていると思いました。
個人的には,最後に演奏されたヒンデミットの曲の見事にがっちりとまとまった聞きごたえのある響きが特に印象に残りましたが,本当にどの曲にも聞きどころがありました。「打楽器小ネタ集」という趣きのあった渡邉さんと望月さんのステージ,ピッコロとヴィオラとコントラバスという奇想天外の編成のシュルホフの作品,異様にきらびやかで華麗だけどどこかB級の味わいもある,坂本さんと大澤さんによるクンマーなど,この演奏会ならではの楽しめる作品が並んでいました。
というわけで,天気同様,大変気持ちの良く過ごすことのできた土曜日の午後でした。
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2017/06/02

OEK定期公演にハインツ・ホリガーさん初登場。迷いのない表現が徹底した,冷静で熱い表現の詰まった演奏会。1回で終わるにはもったいないかも #oekjo

6月のOEK定期公演には,恐らく,現在世界で最も有名なオーボエ奏者,ハインツ・ホリガーさんが登場しました。ホリガーさんは,昨年の定期公演に登場したイェルク・ヴィトマンさん同様,マルチ・タレントなアーティストです。ヴィトマンさんの時同様,管楽器奏者兼指揮者兼作曲家による,定期公演ということで,その「3つの顔」を反映した,非常にチャレンジングなプログラムでした。

ホリガーさんは,1939年生まれということで70代後半ですが,ステージに登場した雰囲気には,全く老いた雰囲気はなく,ホリガーさんらしさが,隅々まで徹底した,4曲を聞かせてくれました。

プログラムの最初で演奏された,ハイドンの交響曲第104番「ロンドン」は,少々ぶっきらぼうなぐらいの速目のテンポで第1楽章序奏が始まった後,所々で独特の意味深さを感じさせてくれる,不思議な魅力を持った音楽を聞かせてくれました。テンポをぐっと遅くする部分もありましたが,ロマンティックで甘い雰囲気になることは全くなく,どこか,現代音楽を聞いているような雰囲気のあるハイドンだと思いました。

次に演奏されたフィアラのコンチェルタンテは,オーボエとイングリッシュホルンのソロをまじえた古典派時代の二重協奏曲的な作品でした。ホリガーさんのオーボエの音は,音質も音の動きも大変軽やかでした。さすがに抜けるような音,という感じではなく,やや枯れた感じもありましたが,イングリッシュホルンのマリー=リーゼ・シュプバッハさんとの音のバランスが素晴らしく,音楽全体に豊かさが溢れていました。

アンコールで,ホリガーさんの自作による,オーボエとイングリッシュホルンのための「エア」という小品が演奏されました。いわゆる「現代音楽」風の作品だったのですが,そのすべての音が生きている感じで,大変雄弁でした。

後半もまず,ホリガーさんの自作のメタ・アルカという弦楽合奏のための作品が演奏されました。最初の方を聞いた感じでは,武満徹の作品を思わせるような,詩的て異様なムードを感じましたが,次第に色々な特殊奏法が出てきて,次々と曲のテクスチュアが変化していきました。自作自演ということで(他の作品でも同様でしたが),表現の迷いが全くなく,難解さはあったものの,どこかスカッと割り切れているような心地よさを感じました。

この日のゲストコンサートマスターは,東京フィルの荒井英治さんでした。この曲ではソロも担当しており,エネルギーをしっかり秘めた,怪しい美しさを持った素晴らしい演奏を聞かせてくれました。

最後に演奏された,シェーンベルクの室内交響曲第1番は,シェーンベルクが12音技法を用いるようになる前の初期の作品です。ただし,弦5部1名ずつにかなり充実した木管楽器群が加わる独特の編成で,薄いのか厚いのか分からない面白い響きを楽しむことができました。

15人程度の編成ということで,曲の最初の部分から透明感がありました。全奏者がソリストのように,音が前へ前へと出てくる感じで,大変生き生きした演奏を聞かせてくれました。この曲については,複雑な音の動きが難解さにつがなっている部分もありましたが,その複雑さを複雑のままクリアに表現しており,大変聞きごたえがありました。

演奏後,ホリガーさんは,全奏者と一人ずつ握手をして,その苦労(?)を労っていました。一緒に難曲に取り組んだ「同志」といった感じの熱さを演奏の背後に感じました。ホリガーさんについては,クールで神経質な雰囲気かなと勝手に予想していたのですが,実際には,出てくる音楽は確かに冷静で確固たるものがあるけれども,その背後には熱いエネルギーに満ち溢れているのでは,と感じました。
今回の定期公演は,大変チャレンジングな内容でしたが,結果として,狙いどおり,いくつもの顔を持つホリガーさんらしさを多面的に楽しむことができました。この日の定期公演1回の演奏で終わらせるには,もったいないぐらいの充実感のある演奏会だったと思いました。

2017/05/14

第16回北陸新人登竜門コンサート<ピアノ部門> 川畑夕姫さん,尾田奈々帆さんが井上道義指揮OEKと共演。万全のシューマンとサン=サーンスを楽しみました。 #oekjp

毎年,4~5月頃に行われている北陸地方の新人演奏家発掘のための新人登竜門コンサート。第16回目となる今回はピアノ部門が行われ,尾田奈々帆さん(石川県出身)と川畑夕姫さん(富山県出身)のお2人が登場し,井上道義指揮OEKと共演しました。
新しく始まった「ガル祭」が終了して1週間ほどで行われた演奏会でしたが,ピアノを習っている子供連れのお客さんなどが多い感じで,お客さんの方にもどこか若々しい気分がありました。
お2人が演奏したのは,川畑さんがシューマンのピアノ協奏曲,尾田さんがサン=サーンスのピアノ協奏曲第5番「エジプト風」でした。どちらも大変立派な演奏でした。井上道義さんが途中のトークで「若い人の伸びは素晴らしい!」語っていたとおり,この演奏会に向けて万全の仕上がりの演奏を楽しむことができました。
シューマンの方は,昨年からOEKが2回別のピアニストと演奏していますが,今回の川畑さんとの演奏は,それとは違った魅力がありました。第1楽章などは,全般にゆったりとしたテンポで,どこかおっとりとした優雅さが感じられました。速いパッセージが続く第3楽章の最後の方は,特に好きな部分です。今回の川畑さんの演奏を聞きながら,じわじわと熱くなってきました。演奏全体を通じて,OEKと一体となって,若々しく華やいだロマンの世界を伝えてくれました。
尾田さんの方は,OEKが過去ほとんど演奏したことのない,サン=サーンスのピアノ協奏曲第5番「エジプト風」を演奏しました。尾田さんは,東京芸術大学で勉強中の大学生なのですが,まったく物怖じすることなく,演奏効果満点の曲を堂々と弾き切ってくれました。本当に伸び盛りといった雰囲気のある演奏でした。
第2楽章のエキゾティックなムード(この辺は正真正銘のエジプト風というよりは,サン=サーンスが感じた自称「エジプト風」のようですが),は音による「世界の車窓から」といったムード満点がありました。それに続く第3楽章での元気のある演奏は,お客さんを魅了したのではないかと思います。曲の最後の部分の華やかなパッセージの鮮やかさが特に印象的でした。
尾田さんは,とても小柄で,演奏後はとてもニコニコしていたので,聞いている方も幸せな気分にさせてくれました。「明日から仕事...」と思いがちな日曜の午後に聞くにはぴったりの演奏だったと思います。
この2曲だけだと,演奏時間が短いので,前半最初にはメンデルスゾーンの「夏の夜の夢」序曲,後半最初にはサン=サーンスの交響詩「死の舞踏」が演奏されました。どちらも「大変よく出来た曲」です。約2カ月ぶりに井上さんの指揮を聞きましたが,その魅力を十全に楽しませてくれました。
メンデルスゾーンの序曲は,本当にこの時期にぴったりの空気感を持った作品です。この演奏会には,自転車で行ったのですが,明るい緑の中を風を切って走るようなムードを感じました。サン=サーンスの方は,コンサートミストレスのアビゲイル・ヤングさんが大活躍でした。独特の調律をしたヴァイオリンを使った演奏で大変雄弁な演奏を楽しませてくれました。
この新人登竜門コンサートですが,入場料1000円の演奏会ということで,「オーケストラの演奏会をちょっと聞いてみたいのですが」という人にぴったりな気もします。久しぶりに井上さんの「踊るような」(今年のラ・フォル・ジュルネのテーマ)指揮にも接することができ,大満足の演奏会でした。

2017/05/02

5月2日夜は #ガル祭 の目玉企画「ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲演奏」第1夜へ。九人九様の演奏を楽しめました。横山幸雄さんの「ワルトシュタイン」の安定感はさすがでした」

風と緑の楽都音楽祭(ガル祭)もいよいよ後半の本公演に入っていきます。その前夜祭のような形で,「ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏」企画の第1夜が行われたので聞いてきました。

今回のベートーヴェン企画については,交響曲全曲,ピアノ協奏曲全曲もすごいのですが,ボリューム的には,やはりこの「4日間でピアノ・ソナタを全部」がいちばんすごいのではないかと思います。人生の中でも,こういう企画に出会うことはそうないだろうと考え聞きに行くことにしました。
今回演奏されたのは,ピアノ・ソナタ第2番,9番,12番「葬送」,第16番,第21番「ワルトシュタイン」,第22番,第26番「告別」,第27番,第28番の9曲でした。この9曲が9人のピアニストによって演奏されました。この9人のうち,横山幸雄さん以外は全員,北陸地方を中心に活躍している地元のピアニストばかりでした。

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まず,この9人で9曲という点が面白かったですね。「ワルトシュタイン」を弾いた横山幸雄さんを中心に据えて,九人九様のベートーヴェンを楽しむことができました。
何といっても横山さんの演奏の安定感と,聞かせ方の上手さが見事でした。平然と始まった後,曲の山場ではビシッと決め,曲の最後のクライマッスに向けてさらに高まって行くというスケールの大きさを感じました。

この曲の最終楽章の終盤,オクターブ・グリッサンドという技が出てくるのですが,2階席からだと,その奏法がとてもよく見えました。この曲を実演で聞くこと自体,金沢だと滅多にないのですが,CDなどで聞いていても印象的な「この部分」は,こんなに軽々と演奏できるのか,と感心しました。ちなみにポリーニによる「実演」の映像がYou Tubeに乗っていました(正式な動画かわからないのですが)。

https://www.youtube.com/watch?v=imaUhABlejA

その他の曲についても大変楽しめました。トリを務めた田島睦子さんによる第28番の,軽やかで自在にインスピレーションが広がるような演奏。「告別」を弾いた鶴見彩さんによる,ストレートで目の覚めるような鮮やかな演奏。金沢で大活躍されているこのお2人の演奏は,いつものことながら素晴らしいと思いました。

曲の中では,これまでほとんど聞いたことのなかった16番が「良い曲だなぁ」と思いました。これは,石本えり子さんの演奏の力も大きかったと思います。第2楽章など,ベートーヴェンらしからぬ(?),イタリアンな感じの歌をたっぷりと楽しむことができました。

その他,第2番,第12番「葬送」も,もともと好きな作品だったのですが,それぞれ平野加奈さん,山田ゆかりさんの演奏で,イメージどおりの演奏を実演で楽しむことができました。

この演奏会は,18:30に始まり,21:40頃に終わっていましたので(休憩20分を含む),約3時間かかりました。これと同様の演奏会がさらに3回行われるということで,「体力が持つだろうか?」という恐怖感もあるのですが,新音楽祭の目玉をしっかりと堪能したいと思います。

この全曲演奏シリーズですが,邦楽ホールで行われたこともあり,落語の時に使うような...名前は何と言うのか知らないのですが...名札を,解説の潮博恵さんが1曲ごとに日めくりカレンダーのようにめくっていました。このアイデアはなかなか良いと思いました。
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2017/04/30

#ガル祭 4月30日午後は今回初の企画「北陸市民オーケストラの祭典」。鈴木織衛さん指揮の総勢100名以上によるベートーヴェンの「運命」は,理想的なプロポーションとボリューム感を持った,完成度の高い音楽でした

午後からは,石川県立音楽堂コンサートホールで今回初の企画である「北陸市民オーケストラの祭典」を聞いてきました。タイトルとしては,「北陸」となっていましたが,実際には石川県内で活動している金沢交響楽団,石川フィルハーモニー交響楽団,金沢室内管弦楽団,メディカルオーケストラ金沢,小松シティフィルハーモニック,管弦楽団オルビスNOTOのメンバーが登場し,総勢100名以上でベートーヴェンの「運命」(全曲)を演奏する,といういかにも「音楽のお祭り」らしい企画でした。
100名以上の演奏というと,大げさで重苦しいものになるような気もしたのですが,弦楽器のトップにOEKのメンバーを配していたこともあり,アンサンブルの乱れもなく,見事な「運命」を聞かせてくれました。指揮の鈴木織衛さんの作る音楽は,いつもとても流れが良いのですが,これだけの大編成になっても,そのことは変わらず,理想的なプロポーションとボリューム感を持った,完成度の高い音楽を聞かせてくれました。
やはり第3楽章から第4楽章に掛けての暗から明への変化,弱奏から強奏への変化の鮮やかさが見事でした。明るく太陽が昇ってくるような聞き映えのする演奏になっていました。余裕のあるクライマックスも素晴らしかったのですが,第2楽章や第3楽章の最初の方の,低弦の大編成での弱奏も何ともいえずゴージャスでした。オーボエをはじめとした木管楽器のソロもくっきりと聞こえました。
「市民オーケストラの合同演奏」というのは,なかなか難しい企画ではあると思うのですが(この合同演奏も音楽堂が完成した時以来ですね),今回の演奏を聞いて,機会があればまた聞いてみたいと思いました。
前半は今回の合同演奏に参加した団体の中から,金沢交響楽団,石川フィルハーモニー交響楽団,金沢室内管弦楽団,メディカルオーケストラ金沢が,それぞれ20分程度ずつ,ベートーヴェンの交響曲の楽章の一部などを中心とした演奏を聞かせてくれました。この中で特に印象に残ったのは,(これはベートーヴェンではなかったのですが)伊勢拓之さんのピアノと山口泰志さん指揮メディカルオーケストラ金沢が演奏した,ガーシュインのラプソディ・イン・ブルーでした。
演奏時間的には「抜粋で演奏するのかな?」と思っていたのですが,サックス3本を加えた全曲の演奏をしっかりと聞かせてくれました。伊勢さんのまとまりが良く,リラックスした味わいのあるピアノも良かったのですが,気持ちよく音が鳴り切っていたメディカルオーケストラ金沢の音が素晴らしいと思いました。
この演奏会も青島広志さんが司会で,「最後なので,演奏が終わったら,立ち上がってスタンディングオベーションをしましょう」と呼びかけました。そして,ラプソディの後,見事に皆さん立ち上がってくれました。これはお世辞ではなく,本当に良かったなぁというお客さんの気持ちの表れだったと思います。
というわけで,演奏者とお客さんの双方ともに気持ちの良さを実感できた公演だったと思います。最後にガルガンチュア君も登場しましたが,日に日に,音楽祭に馴染んできている気がします。新音楽祭の前半を大きく盛り上げる良い公演でした。

#ガル祭 4月30日は,恒例の「吹奏楽の日」公演。快晴だけれども強風の中,今年も爽やかなパフォーマンスを楽しむことができました。

4月30日の午前中は,ラ・フォル・ジュルネ金沢の時からの恒例,「吹奏楽の日」公演をしいのき迎賓館裏の緑地で聞いてきました。本日は快晴すぎるくらいの快晴だったのは良かったのですが,風が大変強く,サポート役の遊学館高校のメンバーは,例年に増して大変そうでした。
それでも「野外演奏を芝生の上で聞く」という気持ちよさは他に変えられないものがあります。今年も爽やかな気分の演奏を楽しんできました。
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私が到着した時は百萬石ウィンドオーケストラの皆さんが演奏中でした。
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その後,小松明峰高校吹奏楽部のステージ。いつもどおり,合唱とダンスと吹奏楽が一体となった,「風になりたい~宝島」のメドレーを楽しませてくれました。
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続いて,お隣福井県の福井工業大学附属福井高校吹奏楽部。紙のプログラムに書かれていた曲から予定を変更し,昨年ヒットした「恋」などをダンス付きで披露していました。
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午前中最後は,富山商業高等学校吹奏楽部。音楽祭のテーマにふさわしく,ベートーヴェンの第九の第4楽章をゴスペル風に編曲した,「ジョイフル,ジョイフル」などを楽しませてくれました。赤いシャツにぴったりの雰囲気でした。
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司会は青島広志さんが担当されており華やかさはあったのですが,意外なところに突っ込みを入れたり,尋ねられた方も少々困っていた気もします。この公演については,例年通りの「いつもの方」の方が良かったかなと思いました。
午後からは,石川県立音楽堂に移動し,「北陸市民オーケストラの祭典」をたっぷり聞いてこようと思います。

2017/04/29

#ガル祭 ユベール・スダーンさん+アン・アキコ・マイヤースさんによる魅力的なヴァイオリン協奏曲に加え,北陸の民謡2曲+マンボ!オープニングコンサートは「盛り沢山」。これが音楽祭のコンセプトかも

午後からは,記念式典に続いてオープニングコンサートが行われました。司会は池辺晋一郎さんでした。
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記念式典の内容は,ラ・フォル・ジュルネ金沢の時と全く同じで,前田利祐氏,谷本石川県知事,山野金沢市長の3人の方からの挨拶でした。ちなみに...山野市長のあいさつの時,音楽祭名のところで,少し間を置き,しっかりとペーパーで確認。やはり,この音楽祭名は「長過ぎ」かな,と思います。
オープニング・コンサートの方には,目新しさがありました。ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲がメインでしたが,その前に,まず,ザ・トランペットコンサートによるファンファーレ,その後,富山県民謡の越中おわら,石川県民謡の山中節が演奏(踊り付き)されました。
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ファンファーレは,ベートーヴェンの歌曲「自然における神の栄光」をもとにしたファンファーレでした。確か高校ぐらいの音楽の教科書に合唱曲として載っていた曲で,なつかしい気分になりました。トランペット8人による演奏で,大変気持ち良く爽快に聞かせてくれました。ちなみに,午前中に鼓門下でのファンファーレは,別の曲(編成も違っていた?)だったと思います。やはりホール内で聞く方が聞き映えがすると思いました。
越中おわらは,9月初旬に富山県八尾で行われる「風の盆」が有名ですが,その雰囲気をそのままホールに持ってきた感じでした。ベートーヴェンとは...つながらないのですが,「風」という言葉ではつながっていますね。胡弓の音と哀愁と全体に漂う浮遊感が,大変魅力的でした。「男踊り」「女踊り」の2種類が順に登場しましたが,ずっと浸っていたくなるような雰囲気がありました。
山中節の方は,ロングトーンの声の美しさが大変魅力的でした。こちらはオーケストラの伴奏による演奏で,民謡の声と大変うまく溶け合っていました(ただしマイクを使っていました)。
その後はメインプログラムのベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲が演奏されました。まず,ユベール・スダーンさん指揮OEKの演奏が素晴らしいと思いました。スダーンさんの演奏を聞くのは今回が初めてでしたが,虚飾を配して,基本的に速目のテンポで演奏していましたが,その中に何とも言えない,柔らかさや落ち着きがあり,安心して聞けるベートーヴェンを楽しませてくれました。
白と黒のドレスで登場したアン・アキコ・マイヤースさんは,その雰囲気どおりの,クール・ビューティな演奏を聞かせてくれました。凛とした音で,くっきりと演奏されていました。要所要所で,しっかりと歌い込んだり,非常に力強く演奏したりする,音楽の聞かせ方も巧いと思いました。
ちなみにこの曲では,第1楽章の後,盛大な拍手が入りました。お客さんの傾向としては,「はじめてこの曲を聞く」人が多かった印象です。
最後にアンコールが1曲演奏されました。OEKの金管や打楽器のメンバーがゾロゾロと入って来たので,「一体何?」と思っているうちに,ベートーヴェンの「運命」の第1楽章が普通に始まりました。やや不審に思っているうちに,ラテン系パーカッションが加わり,ペレス・プラードのマンボNo.5と合体。「ああ,あの曲か!」と分かりました。宮川彬良さんによる名編曲ですね。この曲で会場はさらに大きく盛り上がりました。楽し気に指揮をするスダーンさんを見ながら「いい人だなぁ」と思いました。
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このオープニング・コンサートを聞いて,この音楽祭のコンセプトは「過剰なまでの盛り沢山」感かなと実感しました。音楽祭の後半では,4日連続でピアノ・ソナタマラソンに挑戦する予定なので,体調に注意しながら,ベートーヴェン祭りを楽しみたいと思います。
終演後,音楽祭のマスコットのガルガンチュアが出口でお出迎え。記念撮影をする人もいて(結構,年輩の方に人気?),今日一日で一気に知名度を上げたのではないかと思います。
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いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2017 #ガル祭 開幕。晴天の中鼓門下でファンファーレ。ガルちゃんはこれから音楽祭を盛り上げてくれることでしょう

昨年まで行われていたラ・フォル・ジュルネ金沢に代わって,「いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2017」が始まりました。まず,午前11時にJR金沢駅 鼓門下で行われたオープニング・ファンファーレを聞いてきました。このセレモニー自体,金沢独自企画でしたので,例年と同じ形で始まりました。やや風は強かったものの,晴れたのも良かったですね。

司会は青島広志さんで,ザ・トランペットの皆さんによってファンファーレが演奏されました。
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音楽祭のキャラクター,ガルガンチュアの紹介もありました。生で初めて見たのでが,紙に印刷されたものよりも,ずっと可愛らしい印象です。これから最終日まで,音楽祭を盛り上げてくれることでしょう。

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本日は,いったん出直した後,14:00からのオープニング・コンサートを聞きに行く予定です。

2017/04/07

鈴木優人指揮OEK定期公演。風と緑のベートーヴェンといった感じの爽快な演奏。15年ぶりに聞くヴァイオリンの木嶋真優さんも堂々たるアーティストに成長していました #oekjp

OEKの4月の定期公演には,OEKと初共演となる鈴木優人さんが登場し,バッハ,モーツァルト,ベートーヴェンの音楽を指揮しました。メインに演奏されたのが,ベートーヴェンの交響曲第2番ということで,新入社員,新入生が溢れているこの時期にぴったりの,新鮮な響きに満ち溢れた演奏会となりました。

鈴木さんは,お名前のとおり,「優しい人」という雰囲気を持った方で,音楽全体から幸福感が漂ってくるようでした。どの曲にも,ひねくれたところのない率直さや明晰さがありました。音楽が停滞することなく,曲想に応じて,非常に切れ味の鋭い,強い響きも出していましたが,それが荒々しくなるところはありません。スピード感たっぷりの部分でも,常に余裕を持った微笑みのようなものを感じさせてくれました。

最後に演奏された,ベートーヴェンの交響曲第2番では,聞いているうちに,春の陽光と緑に包まれているような気分にさせてくれる演奏が好きなのですが,この日の演奏は,まさにそういう感じの演奏でした。まさに「風と緑のベートーヴェン」といったところでしょうか。

最初に演奏された,バッハの管弦楽組曲第3番は,トランペット3本が華やかに活躍する祝祭的な作品ですが,ヒステリックな響きになることなく,余裕を感じさせてくれました。ベートーヴェンの時以上に,古楽奏法を取り入れた演奏になっていましたが,それがしっくり馴染んでいるのが,OEKのすばらしさだと思いました。

G線上のアリアとして知られる,有名な「エア」は,遅めのテンポを取って,じっくりと聞かせてくれました。透明な響きと同時に,充実感が広がる,素晴らしい演奏でした。

そして,この日のもう一つの楽しみが,ヴァイオリンの木嶋真優さんとの共演でした。木嶋さんは,いしかわミュージック・アカデミーで夏休みの時期に金沢にはよく来られていたのですが,それから約15年が経ちました。この日の演奏を聞いて,本当に立派なアーティストになったなぁと実感しました。

モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番ということで,決して派手な曲ではないのですが,大変聞きごたえのある演奏を楽しませてくれました。第1楽章のヴァイオリンが登場する部分などでは,ものすごくじっくりと演奏していました。OEKを従えて,王女様がゆっくりと入場して来るような,オーラがありました。

第3楽章のトルコ風の部分は,OEKの演奏ともども,大変スピード感のある演奏で,スリリングな味わいもありました。演奏全体に委縮したところがなく,伸び伸びと演奏しているのも素晴らしいと思いました。

アンコールでは,鈴木さんのピアノとの共演で,グラズノフの瞑想曲が演奏されました。SPレコード時代に聞かれていたような懐かしさのあるヴァイオリン小品で,木嶋さんの音からは,濃厚な気分がしっかりと伝わって来ました(ただし,演奏会全体からすると,ややバランスとしては悪かったかもしれません)。

演奏会は,ベートーヴェンの第2番の後,これもまた,春の空気のような柔らかさを持った,モーツァルトの「フィガロの結婚」序曲がアンコールで演奏されて終了しました。改めて,鈴木優人さんは,OEKの雰囲気にぴったりとマッチした指揮者だな,と思いました。鈴木さんは,チェンバロ以外にも,パイプ・オルガンも演奏されるはずですので,きっとこれから,石川県立音楽堂やOEKとの付き合いが長くなるアーティストに違いないと思いました。そのことを期待しています。

2017/03/26

石川県ジュニアオーケストラ,今年の定期公演は「100万回生きたねこ」,スターウォーズ,ダンサー付きのバレエ音楽。「これで無料?」と思わせるほど豪華で変化に富んだ充実した内容でした

この時期恒例の石川県ジュニアオーケストラの定期演奏会を聞いてきました。この演奏会も今回で23回目となります。毎回,趣向を凝らしたプログラムになっていますが,今回は特に豪華で,「これで無料?」というぐらいの充実感と変化に富んだ内容でした。

最初に演奏された「100万回生きたねこ」は,昨年の夏に続いての再演です。前回と違うのは,ナレーションがジュニア・オーケストラのメンバーの女子高校生が担当したことです。前回の太郎田真理さんによるナレーションも素晴らしかったのですが,今回の南部真奈さんのナレーションも別の良さが出ていたと思います。大げさになり過ぎることなく,しっかりとドラマが伝わっただけでなく,トラネコが白ネコに「一緒に暮らそう」と語るあたりでは,物語にぴったりの初々しさを感じました。高校生がナレーションをする点では,武満徹の「系図」を思わせるようなムードも感じましたが,個人的には,今回の作品の方が好みです。

ジュニア・オーケストラの演奏も2回目の演奏ということで,安心して聞くことができました。ナレーションの「行間」の気分をしっかりと盛り上げてくれました。

その後,ジョン・ウィリアムズ作曲の映画「スター・ウォーズ」のメインタイトルが演奏されました。オーケストラ・メンバーによる演奏したい曲の人気投票では,いつも上位に来る曲とのことです。今回はこの難曲に挑戦し,見事に聞かせてくれました。

曲の最初の方のトランペットのハイトーンなど,かなり大変だったと思いますが,しっかりと聞かせてくれ,しかも,爽やかさを感じさせてくれました。弦楽器の滑らかな演奏も印象的でした。木管楽器の人数もとても沢山いたこともあり,予想以上に充実した演奏を聞かせてくれました。

後半は,エコール・ドゥ・ハナヨ・バレエの皆さんのバレエを加えてのステージでした。こちらも大変楽しいステージでした。

最初にオッフェンバックの「天国の地獄」の中のカンカンの部分が演奏されました。ステージ奥を少し高くして,そこでバレエを踊る形になっていましたが,大変華やかで,しかも格好良いものでした。ダンサーたちがステージ中央の扉からスーっと入って来るだけで,嬉しくなりました。スピード感のある音楽に合わせて,ぴったりと揃った群舞を見せ,さらに,ソロのダンサーたちがフェッテ(連続回転)を見事に見せる部分があるなど,予想以上にハイレベルな踊りで感激しました。

チャイコフスキーの「くるみ割り人形」の方は,5曲の抜粋でしたが,このバレエ音楽らしく,親しみやすい音楽に乗って,次から次へとダンサーが登場してきて,会場の気分がさらに盛り上がりました。やはりダンスの力は偉大です。

クララ(?)が大勢出て来た「行進曲」,ハイジャンプが素晴らしかった「トレパック」,これぞバレエという優雅さのあった「あし笛の踊り」,そして小さい子どもたちが大きなスカートの下からゾロゾロ出てくる「ギゴーニュおばさんと子どもたち」。過去,鈴木織衛さん指揮OEKで,「くるみ割り人形」の全曲を見たことがありますが,その時の幸福感たっぷりの気分が蘇ってきました。

最後は「終幕のワルツとアポテオーズ」ということで,全員が出てきて,一緒に踊る曲になります。ワルツの最後の方で,音楽が盛り上がり,「全員で踊る」ところは特に好きな部分です。

このワルツの最初の「ジャーン」という音を聞くと,華やかだけれども「もうすぐ全曲が終わってしまうなぁ」というちょっと切ない気分になります。今回は5曲だけだったのですが,しっかりそういう気分になりました。ジュニアオーケストラの音は,包容力のある音で,見事に全曲を締めてくれました。

というわけで,今年の定期公演は,ナレーション付きの曲,スターウォーズ,ダンサー付きのバレエ音楽と,特に豪華で充実した内容だったと思います。

2017/03/15

鶴見彩ピアノリサイタル。20年に渡る活動の総決算になるような,曲の良さが率直に伝わる,聞きごたえのある演奏の連続でした

この一週間で3回目の演奏会になったのですが,今晩は,金沢を中心に活躍しているピアニスト,鶴見彩さんのリサイタルが行われたので聞いてきました。鶴見さんは,約20年前に第1回石川県新人登竜門コンサートでOEKと共演して以来,多彩な活動をされています。特にチェロ奏者のルドヴィート・カンタさんをはじめとしたOEKメンバーとの共演も頻繁に行っています。恐らく,金沢でもっとも信頼されているピアニストの一人ではないかと思います。

その鶴見さんのリサイタルですが,ブラームスとベートーヴェンの晩年の作品とリストの大曲,ピアノ・ソナタ ロ短調を組み合わせた,大変聞きごたえのある内容でした。どの曲も難曲と言って良い作品だと思いますが,重く気負い過ぎることなく,各曲の美しさ,立派さ,魅力を率直に伝えてくれる見事な演奏を聞かせてくれました。

ブラームスの6つの小品については,もっと暗く,渋い印象を持っていたのですが,鶴見さんの演奏にはセンチメンタルになることのない,かっちりとまとまった質実さのようなものがあると思いました。

ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第31番は,「風と緑 楽都音楽祭」でも鶴見さんが演奏する曲です。第3楽章の最初に「嘆きの歌」と呼ばれる有名な部分がありますが,この部分でも情緒的になり過ぎることなく,むしろ淡々とした雰囲気がありました。そのことで,よりリアルな悲しみが伝わってくるようでした。フーガの部分での次第に昇華されていくような気分も素晴らしいと思いました。

最後に演奏されたリストのピアノ・ソナタは,鶴見さんのこの20年の活動の総決算になるような,スケールの大きさのある演奏でした。この曲は,最初の方に出てくる,いくつかの主要モチーフが,その後,何回も手を変え品を変え展開されていくような作品です。静かで清らかな部分,キラキラとした速いパッセージ,大きく盛り上がる強打の連続...非常に変化に富んでいます。鶴見さんは,どんなに音楽が変化しても,形が崩れることはなく,しっかりと地に足のついた安定感のある音楽を聞かせてくれました。

鶴見さんの作る音楽自体は,強打で圧倒するような感じでないのですが,曲が終盤になるにつれて,演奏全体に凄味が出てきて,音楽全体がどんどん深みを増していくようでした。

金沢では今回演奏されたような渋めの曲を聞く機会は多くありません。今回の鶴見さんのような,曲を歪めない,誠実な演奏で聞くと,その良さをしっかりと味わうことができます。終演後のお客さんの暖かく,盛大な拍手を聞いて,改めて,鶴見さんのピアノへの信頼の厚さを実感できた演奏会でした。

2017/03/14

新鮮さ溢れる服部百音のヴァイオリンと反田恭平のピアノ+垣内悠希指揮OEK。さらに声明・雅楽・舞楽・バレエ・石井眞木。時空を超えた公演でした。 #oekjp

2人の新進アーティストによる,ベートーヴェンの協奏曲的作品と,雅楽や声明を取り入れた石井眞木の作品とを組み合わせた「悠久からの伝統と革新」と題した演奏会が石川県立音楽堂で行われたので聞いてきました。

時代と空間を越えて,新しい音楽を創造していこうという意図は,特に前半で演奏された石井眞木の聲明交響Ⅱに表れていました。この曲は,10年前に井上道義さんがOEKの音楽監督に就任した際の記念公演で演奏された曲です。声明と雅楽とオーケストラが組み合わさった音楽に,舞楽とバレエをさらに組み合わせた作品で,確かに聞いた記憶はあったのですが,前回はバレエは入っていなかったと思います。調べてみると10年前は,「OEKバージョン」というやや簡略化された形で演奏されていたようです。

今回,バレエ(「瀕死の白鳥」)が加わった版ということで,何とも不思議な世界が広がっていました。声明も雅楽も石井眞木の音楽も,通常聞きなれているクラシック音楽とは次元の違う音楽ばかりです。滑らかに気持ち良く音楽が流れていくというよりは,いくつかの音響が非連続的に切り替わるような雰囲気がありました。途中,バレエと舞楽の2人のダンサーが,サン=サーンスの「白鳥」と雅楽と現代音楽の上で踊るシーンを見て,「シュールレアリズムの絵を見るようだな」と感じました。明るい舞台だけれども,幻想的といった独特のムードを持った作品だったと思います。

後半は「いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭」のテーマに合わせるような形でベートーヴェンの協奏曲的作品が2曲演奏されました。

まず,若手ヴァイオリニスト,服部百音さんが登場しました。垣内悠希指揮OEKが共演したのは,ロマンス ヘ長調でした。この曲はとても良い曲なのですが,定期演奏会などではなかなか取り上げられない作品ですね。久しぶりにこの美しい作品を聞いて,懐かしくせつなくなるような気分になりました。

服部さんの演奏は,しっかりと情感がコントロールされた楚々としたムードの演奏で,この曲の雰囲気にぴったりでした。きめ細かいヴィブラートが美しく,すっと耳に入ってきました。服部さんの名前のローマ字表記には,Mon é とアクサンテギュが付いていました。確かにフランス音楽などに合いそうな,品の良いさらりとした味があると思いました。是非,次回はフランスの作品などを聞いてみたいものです。

最後に演奏されたのは,今話題のピアニスト,反田恭平さんとOEKの共演による「皇帝」でした。反田さんは,昨年,TBSの「情熱大陸」に登場して以来,その個性的な生き方に注目をしていたのですが,その期待通りのスリリングな演奏を聞かせてくれました。スター性も十分で,今後独自の地位を築いていくピアニストになるのではないか,と思いました。

第1楽章冒頭のカデンツァから,クリアな音で,余裕たっぷりに聞かせてくれました。重苦しい感じはなく,瑞々しい感性と華やかさを感じました。その一方,曲のどの部分をとっても,「何か表現してやろう」という企みが潜んでいるようで,聞いていて全く退屈しませんでした。音量を急激に小さくしたり,妙にしっとりと沈み込んだり,キラキラするような硬質な高音を聞かせたり,かなり個性的な演奏だったと思うのですが,全体を通してみると,まったく嫌味なところはありませんでした。反田さんの強い表現意欲が,演奏全体に満ちており,「若さは素晴らしいな」と感じました。

大変じっくりと演奏された第2楽章には,硬質な美しさと耽美的な美しさが共存していました。対照的に第3楽章には躍動感ががあり,次から次へと,色々な表現が湧いて出てくるようでした。速いパッセージでの鮮やかな技巧も見事でした。垣内さん指揮OEKによる,これもまた気持ちの良い清々しさのある演奏と一体となって,若いアーティストならではの「皇帝」を楽しませてくれました。

反田さんは,OEKの次のシーズンの定期公演では,井上道義さんとプーランクのピアノ協奏曲を共演するようです。井上さんとの組み合わせだと一体どういうことになるのか,大変楽しみです。

終演後,お2人によるサイン会も行われました。プログラムの表紙にお2人並んでサインをいただいたのですが,これは将来貴重なサインになるかもしれませんね。

2017/03/11

何といってもジャケットが凄い,井上道義指揮「ショスタコーヴィチ交響曲全集 at 日比谷公会堂」にしっかりとサインをいただいてきました。

本日行われたオーケストラ・アンサンブル金沢の定期公演の後のサイン会で,2月末に発売されたばかりの井上道義さんによる「ショスタコーヴィチ交響曲全集 at 日比谷公会堂」(12枚組)にサインをいただいてきました。

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井上さん自身「これは相当値が上がるよー」と仰っていましたが,我が家のお宝にしておきたいと思います。サイン会の時,テーブルの上にこの全集を積み重ねており,「売りたい気持ち満々!」の井上さんでしたが,私が持参したのを見て,「ようやく来たか」という感じで喜んでくれました。

この全集は,10年ほど前に日比谷公会堂で行われた井上さん指揮によるショスタコーヴィチの交響曲全集のライヴ録音です(一部,昨年の「日比谷公会堂さよなら演奏会」の音源も入っています)。この全集企画については,井上さんの気合いが入りまくりだったのですが,それを収録した全集CDの方もかつてないものになっています。その心意気に惚れて(?),購入してしまいました。タワーレコードの通販でクーポンも使って購入したので,2000円近くは割引になりましたが,1万円以上のCDを買ったのは久しぶりです。

まずこのCDですが,次の写真のとおり,見るからに存在感があります。

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分厚い本を思わせる,特別仕様になっているからです。こういう発想は一体どこから出てくるのだろうか,とまず関心してしまいます。本の間にCDが入っている感じです。

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↑こうやって見ると,赤い部分が丁度8個あるので,タコの足のようにも見えます。まさにショスタコですね。

青と赤のコントラストの強い色合いの方も,ロシア・アヴァンギャルド的です。表紙が分厚い厚紙のような感じなので持ち運ぶのには不便で(本日も持参するのが結構やや大変でした),ページをめくるのもちょっと不便ですが,持っていて嬉しくなる感じです。

まだ一部しか聞いていないのですが,残響がほとんどない日比谷公会堂で収録しただけあって,冷酷なまでにくっきりとした感じで,当時のソヴィエト的な雰囲気にはぴったりなのではないかと思います。ショスタコーヴィチの交響曲を全部聞いたことがないのですが,これから,夜な夜な一枚一枚聞いていこうかと思います。

CDの詳細については,次のページなどをご覧ください。
http://tower.jp/article/feature_item/2016/10/21/1104

3.11東日本大震災の発生日に行われた井上道義指揮OEK定期公演。モーツァルトのレクイエムは大騒ぎすることのない抑制された演奏。ダニール・グリシンさん独奏のバルトークのヴィオラ協奏曲ともども音楽自体の美しさが伝わってきました #oekjp

3.11東日本大震災の発生した日に行われたOEKの定期公演マイスターシリーズは,井上道義さん指揮による,モーツァルトのレクイエムを中心としたプログラムでした。後から気付いたことですが,この大災害で亡くなられた方の魂を鎮めるための選曲と言えます。

ただし,演奏会の方は特に震災を意識したものではなく,演奏の方も大げさに感動を盛り上げるようなものではなく,しっかりと抑制の効いた質実さを感じさせるものでした。この日の演奏は,バイヤー版によるものとのことでしたが,その辺も関係していたのかもしれません(ただし,どの部分が違っていたのが,通常のジュスマイヤー版との違いは私にはよく分かりませんでした)。

特にOEKの演奏には,全曲を通してキビキビとした折り目正しさと透明感があり,宗教音楽に相応しい清潔感を感じました。OEK合唱団の方は,その上に情感のこもった歌を聞かせてくれました。こちらも大げさに叫ぶような部分はなく,全体的にしっかりと抑制された演奏の印象を持ちました。そのことが音楽自体の美しさが際立ち,感動をさらに深めていたと思いました(もっとドラマティックな音楽を期待していた人には,やや淡白に思えた面があったかもしれませんね)。

独唱者では,森麻季さんが,やや本調子でない気はしましたが,相変わらず天から降ってくるような軽やかで滑らかな声を聞かせてくれました。その他の3人も安定感のある声を聞かせてくれました。特にテノールの笛田博昭さんは,声自体の凛とした強さが素晴らしく,ひと際光っているようなでした。笛田さんの歌では,以前,「トロヴァトーレ」のいくつかのアリアを聞いたことがありますが,そのうち,OEKとの共演でのイタリア・オペラあたりを期待したいと思います。

この日のもう一つのハイライトは,ダイール・グリシンさんのヴィオラ独奏による,バルトークのヴィオラ協奏曲でした。この曲をOEKが演奏するのは初めてだと思いますが,グリシンさんの存在感のある豊かな音でしっかりと堪能させてくれました。曲の構成としては,静かな楽章2つの後,動きのある楽章で締める,ということで,バーバーのヴァイオリン協奏曲とちょっと似た部分もあると思いました(もちろん,バーバーの曲ほど親しみやすくななく,センチメンタルな部分も無いのですが)。

「ヴィオラは,人間の声にいちばん近い楽器」というのを何かの音楽番組でやっていましたが,グリシンさんの音はまさに人間の声のようで,一見晦渋な雰囲気の中から,親しみやすい情感であるとか,諦観のようなものが伝わってきました。

ちなみにこの日は,ヴィオラの客演の首席奏者として須田祥子さんも参加していました。グリシンさんと2人並んだモーツァルトの方は大変豪華メンバーでした。

モーツァルトとバルトークの最晩年の遺作を並べたプログラムでしたが,鎮魂の気持ちと同時に,人間らしい情感の豊かさや,生きていることのありがたみのようなことの伝わってくる公演だったと思います。

さて,この日ですが,予想通り井上道義さんとグリシンさんによるサイン会がありました。それを予想して,井上道義さん指揮による,日比谷公会堂でライブ録音した話題のショスタコーヴィチ交響曲全集を持参してみました。井上さんは大喜びでした。これについては,また別に紹介しましょう。

2017/03/05

第13回OEK&石川県学生オーケストラ合同公演。今年はサン=サーンス「オルガン付き」交響曲。上品な華やかさと熱気を持った聞きごたえのある演奏でした。OEKによるヤナーチェクも掘り出し物的な良い曲でした #oekjp

オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)と石川県内の大学オーケストラメンバーによる合同公演,カレッジコンサート。2年ぶりに行われた今回は,サン=サーンスの交響曲第3番がメイン・プログラムとして演奏されました。この曲は,パイプオルガンを活用できる点で,石川県立音楽堂コンサートホールで演奏するのにぴったりの作品です。指揮は,2年前のカレッジコンサートにも登場したことのある松井慶太さんでした。

この演奏会は,1曲目と3曲目が合同演奏。2曲目にOEKの単独演奏が入るというのが定型となっています。今回もその形でした。最初に演奏された,スメタナの歌劇「売られた花嫁」序曲は,OEKの方がトップ奏者になる合同演奏でした。この曲もOEKが単独で演奏する機会は多くない曲ですが,大変安定感のある演奏でした。この曲は,冒頭の旋回するように降りてくるメロディ(「男はつらいよ」に雰囲気が似ていると思います)の後,弦の細かい音の刻みが続くのですが,それがくっきりと聞こえ,聞いていてワクワクとしました。生き生きとした気分と同時に,音楽が大らかさがあるのが良いと思いました。

2曲目に演奏された,ヤナーチェクの「弦楽のための組曲」という珍しい作品も大変楽しめました。この2曲目に入れる作品はOEK側で選んでいるようですが(1,3曲目の方は学生側で選んでいるようです),毎回,定期公演に出てこないような,「ちょっといい感じ」の掘り出し物的な曲が出てきます。ドヴォルザークやスークの作品に,「弦楽のためのセレナード」がありますが,このヤナーチェクの作品もその系統の作品で,せつなくなるような,ほのかな甘さと,生き生きとした民族的な感じとがバランスよく合わさった曲でした。ヤナーチェクの室内楽といえば,もっと意味深な曲というイメージを持っていたのですが,こういう素直な曲も良いなと思いました(かなり若い時の作品のようです)。

後半は,学生側がトップになる形の合同演奏で,サン=サーンスの「オルガン付き」が演奏されました。OEKがこの曲を演奏するのは...初めてではないかと思います。この曲は,CDでも楽しめる曲ですが,やはり生のパイプオルガン付きの生演奏の威力にはかないません。第1楽章後半の静かな部分では,ホール一杯に静かに広がるパイプオルガンの低音が加わることで,弦楽器のカンタービレの魅力が10倍増(推測です)ぐらいになっていました。

そして,第2楽章後半の最初に格好良く盛大に入り,音楽が生気を増し,大きく盛り上がって行きます。今回は音楽堂のオルガンをいちばんよく演奏している黒瀬惠さんの演奏ということで,オーケストラとのバランスがとても良く,この曲を上品かつ華やかに楽しませてくれました。

この曲では,第2楽章前半のスケルツォ風の部分にピアノが入るのも好きです。オルガンと対照的に,ピアノが加わることで,音楽に透明感と軽やかさが加わる感じで(「動物の謝肉祭」の「水族館」と通じる部分がありますね),サン=サーンスの楽器の使い方が巧いなぁといつも思います。

そして合同オーケストラの演奏も立派でした。曲の最初の部分などは,やや恐る恐る始まっている感じもしましたが,フレーズを誠実に積み重ねながら,次第に大きな音楽を作って行くような雰囲気がしっかりと伝わって来て,大変聞きごたえがありました。何よりも音に込めた熱気のようなものが常に感じられました。曲の最後は,ティンパニの気合いのこもった連打を中心にビシッと締めてくれました。

演奏時間的には,全体で約90分ということで短めでしたが,どれも大変充実した演奏だったと思います。この時期は,大学生の授業が終わっており,お客さんの動員的にはやや厳しいところがあるような気がしますが,これからどんどん春らしくなっていく季節の気分にぴったりの演奏会でした。

«OEK2017-2018定期公演ラインナップ速報版が発表されました。アサートン,ヘスス・ロペス=コボス,:フォルクハルト・シュトイデなどと初共演。特に注目は,やはりミンコフスキの「ペレアス」でしょうか #oekjp

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