OEKのCD

2019年4月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
無料ブログはココログ

2019/04/13

#池辺晋一郎 が選ぶクラシック・ベスト100第5回は,最終回まで取ってあった,ベートーヴェン,ブラームスなどの名曲揃い。#松井慶太 指揮OEKの演奏に加え,若手アーティストたちの演奏がどれも見事でした。 #古海行子 #会田莉凡 #高橋洋介 #oekjp

先週土曜日に続き,ほぼ満開の桜の中,午後から石川県立音楽堂コンサートホールに出かけ,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のファンタスティック・オーケストラコンサートを聞いてきました。今回は,シリーズで行われている「池辺晋一郎が選ぶクラシック・ベスト100」の第5回,最終回でした。

このシリーズは,池辺さんがクラシック音楽の名曲の中から100曲を選び,抜粋を中心に20曲ずつ5回に分けて演奏するというものです。今回が最終回だったのですが,池辺さんのお話によると,「私は美味しいものは最後に取っておくタイプ」ということで,クラシック音楽の保守本流(?),ベートーヴェン,ブラームス,シューマンなどの作品が演奏されました。

このコンサートを聞くのは2回目です。一種「つまみ食い」的プログラムですなのが,大半が「良いところ」で終わってしまうこと,オーケストラ音楽だけでなく,器楽曲,室内楽曲,声楽曲もバランス良く含まれていることなど,通常の演奏会にない面白さもあります。

途中で終わってしまう点については,そのことによって曲がさらに魅力的に聞こえる気もします。CMや映画の中で聞いて「良いなぁ」と感じる感覚と同様です。ピアニストの古海行子さん,この日のゲスト・コンサートミストレストだった会田莉凡さん,バリトンの高橋洋介さんと,生きの良い若手奏者たちによるソロを聞けたのも良かったですね。

特に昨年の高松国際ピアノコンクールで優勝した古海さんによる,ベートーヴェンの「熱情」の第1楽章の深々とした音と勢いのある音楽が素晴らしいと思いました。是非,別途リサイタルやOEKとの共演などを聞いてみたいものです。

会田さんと古海さんの共演によるベートーヴェンの「スプリング」ソナタの第1楽章は,「ここで止めるか?」という部分で終わっていましたので,池辺さんの思惑どおり「もっと聞きたい」と思いました。会田さんは,ブラームスのヴァイオリン協奏曲の第3楽章も演奏していましたが,凜とした演奏が印象的でした。

高橋洋介さんは,以前にも何回かOEKと共演していますが,その無理のない若々しい声はドイツリートにもぴったりだと思いました。

室内楽編成の曲では,ハイドンの弦楽四重奏曲「ひばり」の第1楽章の一部,ブラームスの弦楽六重奏曲第1番の第2楽章の一部,シェーンベルクの「浄夜」の一部(「浄められかけた夜」という池辺さんのネーミングどおりでした),シューマンのピアノ五重奏曲の一部と抜粋ばかりでしたが,「あれも,これも名曲揃いだなぁ」と実感しました。

松井慶太さん指揮OEKの演奏も大変充実していました。前半と後半のそれぞれ最後にベートーヴェンの「エグモント」序曲とウェーバーの「魔弾の射手」序曲という聞き応えのある序曲を配したのも巧いと思いました。色々なつまみ食いをした後,最後に腹持ちの良い料理を食べたような満腹感を感じました。松井さんは大変長身の方ですが,その音楽にも包容力があり,深々とたっぷりと聞かせる部分と晴れやかに盛り上げる部分とのメリハリがくっきりと付けられていました。

トークと演奏のバランスもとても良く,シリーズの最後を締めるのに相応しい演奏だったと思います。

2019/03/27

#ユベール・スダーン 指揮OEKの定期公演は,「英雄」交響曲がメイン。「現代のスタンダートのベートーヴェンはこれだ」と思ってしまいました。#リーズ・ドゥ・ラ・サール さんによる憂いを持った「ジュノム」も最高でした。#oekjp

本日は,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のプリンシパル・ゲストコンダクター,ユベール・スダーンさん指揮による,ベートーヴェンとモーツァルトによるプログラムを聞いてきました。昨年9月以来,スダーンさん指揮による,素晴らしく充実したウィーン古典派の音楽の数々を聞いてきましたが,本日の自信に溢れた「英雄」を聞いて,スダーンさん指揮OEKは最強のコンビだと確信しました。

最初に演奏された,モーツァルトの歌劇「皇帝ティートの慈悲」序曲から,引き締まった音と揺るぎない構築感を持った世界が広がっていましたが,後半のベートーヴェンの「英雄」は,その世界がさらに拡大され,もしかしたら「現代のスタンダードのベートーヴェンはこれかも」と思わせるほどの説得力十分の演奏を聞かせてくれました。

まず冒頭の和音2つの緊迫感に凄まじいものがありました。バロック・ティンパニの強く乾いた音とともに,弛緩することのないベートーヴェンの世界が始まりました。もちろん曲想の変化に応じて,柔らかい響きが出てきたり,滑らかなメロディラインが出てきたりするのですが,ベースは,速いテンポでキビキビと引き締まった緊張感がありました。ゴツゴツとした力強さがあったのも,私にとってのイメージどおりの「英雄」でした。

第2楽章も速めのテンポで,暗く落ち込むようなウェットな感じはなく,比較的サラリと演奏していました。そのことによって,楽章内の部分と部分の間での明暗の対比や楽器の重なり合いによるテクスチュアの変化などが,鮮やかに浮かび上がっていたと思いました。

第3楽章も快適なテンポ。中間部のホルンの重奏の部分も速めのテンポで生き生きとしたノリの良い音楽が続きました。第4楽章も同様でしたが,変奏曲形式ということで,次から次へと音の風景が代わり,前へ前へと進んでいきました。途中,管楽器が次々と活躍する部分での,花がパッ,パッと咲いていくような感じも鮮やかでした。

この部分では,何とクラリネットがベルアップをしていました。マーラーの交響曲の演奏を観るようなデフォルメの効果があった気がしましたが,演奏自体がビシッと引き締まっているので,違和感というよりはこれが正解と思わせる説得力を感じました。コーダの部分では,テンポが速くなるのではなく,平静さをしっかりキープした威厳のようなものが伝わってきました。見事なフィナーレでした。

スダーンさんのベートーヴェンは,以上のとおり非常によくまとまっており,部分部分がしっかりと組み合わさった構築感があるのですが,そのベースには,常に「熱」や「若々しさ」があります。その一方で,演奏全体に揺るぎのない自信が満ちており,安心して楽しむことができました。スダーンさんとOEKによるベートーヴェンについては,既に2年前の楽都音楽祭でその片鱗を聞いていますが(2番と6番),是非,全曲を聞いてみたいものです。

さてこの演奏会ですが,リーズ・ドゥ・ラ・サールさんをソリストに迎えての,モーツァルトの「ジュノム」協奏曲も素晴らしい演奏でした。リーズさんの音には常に詩的なセンスがあると思いました。第1楽章は全体的に軽快な音楽なのですが,カラッと晴れた感じというよりは,所々で憂いを感じさせるような,奥行きを感じました。

第2楽章はさらに憂いに満ちていました。静かだけれども,切々と迫ってくる感じが魅力的でした。中間部での強い表現は,曲全体のクライマックスを作っているようでした。第3楽章は,第1楽章以上に快速のテンポで演奏されました。リーズさんの見事な技巧に支えられたスピード感も素晴らしかったのですが,途中テンポをグッと落としたメヌエット風の部分での夢の世界に入り込んだような深さは全曲中の白眉だったと思いました。

アンコールでは,ケンプ編曲によるバッハのシチリアーノが演奏されました。この演奏が少しグレン・グールドを思わせるような,トツトツとした感じがあり何とも言えない孤独感が伝わってきました。ただし,エキセントリックな感じはなく,健康的な美しさを持っていたのがリーズさんの演奏の魅力だと思いました。

もともと,モーツァルトとベートーヴェンはOEKの最も大切なレパートリーですので,「良くて当たり前」的なところもありますが,今回の演奏を聞いて,さらにスダーンさんへの信頼が高まりました。同じプログラムで東京公演も行われますので,少しでも多くの方に聞いてもらいたいものです。

2019/03/24

#石川県ジュニアオーケストラ 定期演奏会を聞いてきました。中学生ピアニスト,矢崎紫さんとの共演による瑞々しい演奏。グノー「ファウスト」,シャブリエ「スペイン」など,音楽による世界巡りを楽しむことができました。

本日は年度末恒例の,石川県ジュニアオーケストラの定期演奏会を聞いてきました。今回で25回目。四半世紀ということになります。指揮はお馴染みの鈴木織衛さんでした。
この演奏会のプログラムについては,色々な趣向が凝らされて来ましたが,今回はオーソドックスにオーケストラの音をたっぷりと楽しませてくれる曲が中心でした。
これまでになかった趣向は,金沢市の中学生ピアニスト,矢崎紫(しき)さんとの共演でした。矢崎さんはピティナ・コンペティションの優秀者で,今回はアンサンブルのオーディションで合格して共演することになったとのことです。
演奏されたのは,ハイドンのピアノ協奏曲ニ長調でした。OEKが演奏するとぴったり来るような古典派の作品で,矢崎さんはクリアな音楽で明快な音楽の世界を楽しませてくれました。ジュニアオーケストラの演奏ともども,大変瑞々しい演奏でした。
その他の曲は,ジュニアオーケストラ単独の演奏でした。プログラムの趣旨としては,「世界の色々な国の音楽を楽しむ」ということで,西部開拓時代の気分を持ったリロイ・アンダーソンの「馬と馬車」,楽都音楽祭のテーマに合わせたようなシベリウスのアンダンテ・フェスティーヴォ。そして後半は,グノーの「ファウスト」のバレエ音楽,シャブリエの狂詩曲「スペイン」が演奏されました。後半の2曲はフランスの作品なのですが,内容的にはエジプトとスペインですので,文字通り,世界各国の音楽を楽しんだ感じです。

「馬と馬車」は,ウッドブロックとムチの音が効果的に使われており,ちょっとレトロな西部劇の映画を観るようでした。アンダンテ・フェスティーヴォは,どこか早春の気分を思わせる淡い情感があったのが良いと思いました。鈴木さんは「音楽に羽が生えて飛んでいくよう」という表現をされていましたが,のびのびとした気分にさせてくれる作品ですね。
「ファウスト」のバレエ音楽は,個人的に大好きな作品です。短い7曲からなる組曲ですが,オーケストラの色々な楽器が活躍し,多彩な表情を持っているので,ジュニア・オーケストラのレパートリーにぴったりだと思います(演奏するのは難しいと思いますが)。トロンボーンやテューバには,「大人」のメンバーも加わっていましたが,その充実した音に支えられて,親しみやすい音楽が次々出てきました。特に「トロイの娘たちの踊り」の滑らかなワルツ,「鏡の踊り」での軽快なリズム感が心地良かったですね。この日はハープを3台使っていましたが,フルートの数もものすごく(?),9人も居ました。そのこともあって,独特の豪華さがあると思いました。
最後の「スペイン」も大編成を活かした充実感のある演奏でした。フル編成の響きも気持ち良かったのですが,途中に出てくる管楽器のソロなども聞きものでした。日頃地味な印象のあるファゴットが,スペイン旅行の気分を盛り上げるような感じで活躍していたのが良かったと思いました。全体にじっくりとしたテンポだったので,めくるめくような楽しさと色彩感を感じることができました。
最後に「くるみ割り人形」の「行進曲」がアンコールで演奏されて,演奏会は終了しました。ジュニア・オーケストラは,来週の「オーケストラの日」コンサートに出演後,「楽都音楽祭」にも登場します。今回の演奏会は,大きな自信になったのではないかと思います。

2019/03/13

#ファビオ・ルイージ 指揮 #デンマーク国立交響楽団 金沢公演。#横山幸雄さんのピアノによる鮮やかな「皇帝」,見事に構築されたチャイコフスキーの交響曲第5番に感服

本日は,石川県立音楽堂コンサートホールで,この時期恒例の東芝グランドコンサートを聞いてきました。今年登場したオーケストラは,ファビオ・ルイージ指揮のデンマーク国立交響楽団でした。今年の連休に行われる楽都音楽祭は,北欧がテーマの一つですので,それを先取りするような感じもありました。

プログラムは,まず,デンマークのオーケストラの挨拶代わりのような感じで,ニルセンの歌劇「仮面舞踏会」序曲が明快に演奏された後,横山幸雄さんをソリストに迎えて,ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」。後半はチャイコフスキーの交響曲第5番が演奏されました。個人的には「これまで実演で聞いたことのない大編成の曲」を聞いてみたかったという思いもありましたが,「必ず楽しめる鉄板プログラム」とも言えます。そして,そのとおりでした。特に後半に演奏された,チャイコフスキーは,ルイージさんの本領発揮が発揮された,立派な建物のように見事に構築された素晴らしい演奏だったと思います。

ベートーヴェンの「皇帝」は,冒頭,オーケストラの予想外に柔らかな音で始まった後,横山さんの鮮やかなピアノの音が入ってきました。横山さんのピアノは,全曲を通じて,高音を美しく聞かせる部分が特に印象的でした。表現の引き出しも多く,自由自在にスマートな演奏を聞かせてくれました。今回,ステージからかなり遠い席で聞いたので,やや音が遠く,ソツがなさ過ぎる感じに聞こえる部分もありましたが,さすが横山さんという演奏だったと思います。

ルイージさんの作る音楽も印象的でした。後半のチャイコフスキーでも同様だったのですが,力づくで暴力的に大きな音を聞かせるようなところはなく,かなり抑制された感じで始まった後,音楽が進むにつれて,どんどん歌が溢れてくるといった感じの音楽になっていました。OEKの演奏で何回も聞いてきた曲ですが,大編成でゆったりと聞くのも良いものだと思いました。

後半のチャイコフスキーは,冒頭の2本のクラリネットの演奏から,暗~い情感が漂っていました。しかも非常に遅いテンポ。その徹底した表現が素晴らしいと思いました。第2楽章冒頭のホルンも憂いに満ちた深い味がありました。楽章の後半になると熱いカンタービレも出てきましたが,しっかりと引き締まっており,すべて「ルイージさんの表現」となっていたのが素晴らしいと思いました。

熟成された味わいのある第3楽章に続く,第4楽章も,どこか威厳の高さを感じさせるような雰囲気で始まりました。主部に入ってからもじっくりとしたテンポで進み,各パートがしっかりと絡み合った密度の高い音楽が続きました。楽章の後半になると,徐々に音楽に解放感が出てきます。コーダの部分は,反対に軽快な感じの行進になりました。それでも浮ついた感じはなく,全曲を振り返ってみると,見事に「暗から明へのドラマ」になっていました。しっかりと設計された聞き応え十分の音楽になっていると同時に,自然に燃えるようなカンタービレも随所にある,大変魅力的な音楽になっていました。

盛大な拍手に応えて演奏されたアンコールが,コンチネンタルタンゴの名曲「ジェラシー」。この曲の作曲家のゲーデは,デンマーク出身ということで,最後もお国もので締められました。どこか古いミュージカル映画の1シーンを見るような暖かみのある演奏でした。

ルイージさんの演奏を聞くのは初めてでしたが,チャイコフスキー以外でも,構築感のある音楽を聞かせてくれるのではと思いました。是非,また聞いてみたい指揮者です。

2019/03/09

快晴の中,エンリコ・オノフリさん指揮・ヴァイオリンによるOEK定期公演へ。モーツァルト25番はこれまで聞いたことがないような濃い演奏。未知の作品,ハイドンの70番もとても面白い作品。「春へのコンブリオ」といった感じの公演でした。

本日の金沢はすっかり春になったような快晴。その中,午後からエンリコ・オノフリさん指揮によるオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)定期公演,マイスター・シリーズを聞いてきました。今シーズンのマイスター定期には,「コン・ブリオ」というキャッチフレーズが毎回入っているのですが,今回演奏された,モーツァルトの交響曲第25番とハイドンの交響曲第70番には,共に第1楽章に「コン・ブリオ」という指示が入っていましたので,このコンセプトにぴったりと言えます。今年の金沢は暖冬でしたが,この両曲を中心に,精緻さと同時に前向きな熱気のある演奏で,「春へのコンブリオ」といった感じの素晴らしい公演でした。

オノフリさんが登場する公演については,毎回,どういう表現をするのか読めないスリリングさがあります。今回も,お馴染みのモーツァルトの交響曲第25番がオノフリ流にガラッと変貌していました。初めて聞くハイドンの交響曲第70番については,「ハイドンはこんな変わった交響曲も作っていたのか」という発見の喜びがありました。

まず最初にオノフリさんの弾き振りで,ハイドンのヴァイオリン協奏曲ト長調が演奏されました。演奏される機会の少ない作品ですが,バロック音楽の名残を残しながらも,ハイドンらしい朗らかさな美しさもある良い曲でした。オノフリさんのヴァイオリンは,バロック・ヴァイオリンということで,音色的にはやや落ち着いた感じがしました。その清潔感のある音と同時に,急速なテンポの最終楽章での見事な技巧に圧倒されました。さすがと思いました。

ちなみにこの日のオノフリさんは,マフラーをしていなかったですね。以前はマフラーでヴァイオリンを固定していたと思うのですが...方針を変えたのでしょうか?

続いて上述のとおり,モーツァルトの交響曲第25番が演奏されました。冒頭からゴツゴツした雰囲気の中に十分なエネルギーが込められたような演奏でした。各楽器とも,音を長く伸ばす時に,クレッシェンド気味に音を膨らませていたのが独特で,オノフリさんならではの,濃い音楽を作っていました。その一方,いつも聞き慣れているのとは違う対旋律がしっかり聞こえてきたり,細かい音のバランスにもしっかり配慮をしていました。

この曲はホルンが4本入るのですが,このホルンを最後列両端に2本ずつ分けていたのも独特でした。それと各楽章とも繰り返しをしっかりと行っており,オノフリさんならではの「過剰感」が倍増している感じでした。これまで聞いたこの曲の演奏の中でも,特に個性的で印象的に残る演奏だったと思います。

後半はロッシーニの「セビリアの理髪師」序曲で始まりました。オノフリさんの指揮のレパートリーも,バロック音楽から古典派,ロマン派へと拡大しているのかもしれません。この演奏を聞いてまず,「イタリアだなぁ」と思いました。冒頭からトランペットの音が明るく突き抜けて聞こえてきました。テンポは全体に速めでしたが,弦楽器のカンタービレに透明感がありしっかりと歌われていました。管楽器にもすっきりとした美しさが溢れていました。曲の最後の部分の,お祭り騒ぎの雰囲気もラテン的で良いなぁと思いました。

独特だったのは,通奏低音が入っていたことです。この日は,ロッセッラ・ポリカルドさんという方がチェンバロを担当していましたが,主部が始まる部分で,チャッチャッチャッチャッ...と音が聞こえてくると,ちょっとヴィヴァルディの「冬」の第1楽章あたりと通じる雰囲気になるのが面白いな,と思いました。

演奏会の最後は,ハイドンの交響曲第70番でした。未知の曲でしたが,この曲の構成自体が独特でした。第1楽章は,トランペットやティンパニが力強く入り,祝典的な気分で始まります。独立した序曲のような感じがありました。第2楽章は,反対にちょっと不気味な気分が漂う,暗さと明るさが交錯するような楽章。第3楽章は異様に力強いメヌエット(これはオノフリさんの指揮のせいかもしれませんが)。最終楽章が二重対位法を使った楽章ということで,後期の交響曲の展開部がいきなり始まったような充実感。ハイドンの交響曲にも色々ありますが,特に個性的だと感じました。

このちょっと破格な雰囲気が,オノフリさんの指揮の,良い意味での少々エキセントリックな雰囲気とうまくマッチしていると思いました。コンサートミストレスのアビゲイル・ヤングさんを中心としたOEKの音には,美しさと精緻さがありましたが,それにオノフリさんの「思い」がしっかりと加わり,ハイドンの技や工夫に命が吹き込まれていたように感じました。

というわけで,是非,オノフリさんには,今後も古典派交響曲シリーズを期待したいと思います。

2019/03/03

#太田弦 指揮によるカレッジコンサート2019。石川県内の大学オーケストラメンバーとOEKが共演。大編成のブラームスの交響曲第2番等に加え,OEK単独によるシューベルトの交響曲第1番も素晴らしい演奏でした。 #oekjp

本日の午後は,この時期恒例のカレッジコンサートを石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。石川県内の大学オーケストラメンバーとオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の共演ということで,ステージに乗っていたメンバーは若い人中心でしたが,今回は指揮者の太田弦さんも25歳ということで,過去,最も若いメンバーによる公演になったのではないかと思います。

この太田さんですが,4月から大阪交響楽団の正指揮者になります。異例の若さと言えると思います。ただし,本日の指揮ぶりは非常に冷静で落ち着きがあり,ステージいっぱいに乗った大オーケストラを見事にドライブしていました。若手指揮者といえば,「速いテンポで情熱的に聞かせる」という先入観を持ってしまいますが,熟練の指揮ぶりだったと思います。プログラムの方は,ドヴォルザーク,シューベルト,ブラームスとこの演奏会にしては渋めでしたが,2曲の交響曲を中心に,大変聞き応えのある音楽を楽しませてくれました。

学生オーケストラとOEKの合同演奏については,前半最初に演奏されたドヴォルザークの「謝肉祭」の方がOEKメンバーが首席,後半メインで演奏されたブラームスの交響曲第2番の方は学生が首席という形になっていました。ドヴォルザークの方は,OEKの管楽器の名手たちの闊達な演奏をちりばめた華やかさがありましたが,上述のとおりテンポに落ち着きがあり,浮ついた感じになっていないのが特徴だったと思います。タイトルどおり「お祭り」でも面白い曲ですが,他の曲とのバランスの良い充実感がありました。

後半の合同演奏のブラームスの交響曲第2番は,さすがに管楽器の安定感の点では「謝肉祭」に及ばない部分はありましたが,弦楽器の音に威力があり,ドイツの交響曲らしさがしっかりと感じられる,見事な演奏だったと思います。冒頭のコントラバスの音の深さ,各楽章で出てくる息の長いカンタービレなど,ゆったりとしたテンポ設定と相俟って,大交響曲を聞いた充実感がありました。第3楽章の「肝」であるオーボエも大変立派な演奏だったと思います。第4楽章のコーダの部分では見事な盛り上がりを作っていましたが,それが唐突ではなく,少しずつ音楽を耕していくように,音楽の威力を増していっていたのが素晴らしいと思いました。

そして,この日の演奏で特に素晴らしいと思ったのが,真ん中で演奏されたシューベルトの交響曲第1番でした。過去,この曲を実演で聞いた記憶はないのですが,両端楽章の大編成の演奏に負けない充実感のある演奏でした。OEK単独だと,かえって音のクリアな強靱さが明確に感じされる部分ありました。この曲については,CDなどで聞く感じだと,やや冗長な曲かなと思っていたのですが,全楽章を通じて,磨かれた緻密さと新鮮な歌があり,全く退屈しませんでした。最終楽章では,トランペットのハイトーンが大活躍していましたが,この点もCDで聞いた印象とは一味違っていました。

なんといっても太田さんは,まだ25歳。今後もOEKとの共演の機会があると思いますが,今回の安定感と精緻さのある演奏を聞いて,今後の活躍が非常に楽しみになりました。

2019/02/16

川瀬賢太郎指揮OEKの定期公演。ヴェーゼンドンク歌曲集は,藤村実穂子さんの素晴らしすぎる声に圧倒されました。メンデルスゾーンの「夏の夜の夢」はかなり物語がカットされたのが残念でしたが,蟹江杏さんの版画とともに妖精の活躍するメルヘンの気分が伝わって来ました

本日は,川瀬賢太郎指揮OEKの定期公演を聞いて来ました。

まず,演奏会の前半,世界のオペラハウスで活躍するメゾ・ソプラノ,藤村実穂子さんを加えて,ワーグナーのヴェーゼンドンク歌曲集が演奏されました。この演奏は,本当に見事でした。これまでOEKと共演してきた歌手の中で,もっとも聞き応えのある歌を聞かせてくれた気がします。「圧倒された!」という感じでした。

まず声量が豊かで,曲のすべての部分で,クリアに声が聞こえてきました。無理に声を聞かせようという部分は無いのに,「これがワーグナーだ!」というドラマがしっかりと伝わってきました。オーケストラの中に声が埋もれることなく,凜とした強さのある声から,憧れに満ちた包容力のある声まで,約20分間,ワーグナーの世界に浸らせてくれました。

この歌曲集自体,「トリスタンとイゾルデ」と連動して作られている部分があるので,オペラを思わせる部分がありました。こういう歌を聞くと,是非,藤村さんの出演するオペラを一度観てみたいものだと思いました。川瀬さん指揮,OEKの演奏も,藤村さんにインスパイアされたように,表現力豊かな音楽を聞かせてくれました。

後半では,メンデルスゾーンの「夏の夜の夢」の全曲がナレーション付きの演奏会形式で演奏されました。まず,音楽付きの戯曲を,どういう形でコンサートホールで演奏するかが注目でした。今回は,ステージ背後にスクリーンを用意し,蟹江杏さんによる現代的な感覚と素朴な感覚とが混ざったような,不思議な味わいのある版画を投影しながら演奏するという形を取っていました。シャガールを思わせるような浮遊する感じは,妖精が活躍するメルヘン的な気分を盛り上げていたと思いました。

物語の方は,無名塾の若手俳優,進藤健太郎さんが,演出の田尾下哲さんによるオリジナル台本を朗読する形で進みました。進藤さんは,最初から最後まで登場するのではなく,メンデルスゾーンの音楽をしっかり聞かせながら,それを補う形でナレーションが入っていたのが,オーケストラの定期公演での上演としては,とても良かったと思いました。

ただし,シェイクスピアのオリジナルのストーリーをそのまま使うわけにはいかないので,大胆に省略されていました。「アテネの森の中での若い男女の四角関係」の部分がすっぽりとカットされ,妖精の王様オベロンと女王ティターニア,そして,オベロンの指示で色々な細工をする妖精パックのお話という形になっていました。演劇として,オリジナル版を観たことはないのですが...あんパンを食べたのにアンコが入っていなかったような感じで...個人的には少々残念でした。

ただし,川瀬さん指揮OEKの演奏は,序曲から素晴らしい演奏でした。じっくりと精妙な気分で始まり,妖精が出てくるぞーという気分になった後,爽やかな風が吹き抜けるように音楽が進んでいきました。ソプラノの半田美和子さんとメゾ・ソプラノの藤村実穂子さん,そして,OEK合唱団の女声合唱を加えた,子守歌風の曲の陶酔的な美しさも印象的でした。結婚行進曲はドラマの中盤の曲ということで,大げさに盛り上がりすぎることなく,穏やかに幸福感に溢れる気分で演奏されました。

進藤さんは,まだ若い俳優ということで,ちょっと硬い感じはしましたが,主要登場人物の声をしっかり描き分けており,ドラマがしっかりと伝わってきました。何よりとても聞きやすい声質で,音楽とマッチしていたのが良かったと思いました。

というわけで,演劇作品としての「夏の夜の夢」という点では少々物足りなかったのですが,音楽と美術が一体となった,メルヘン的な気分を伝える点では成功していたのではないかと思います。そして,前半に登場した藤村実穂子さん。是非,再度金沢で歌を聞きたいものです。忘れられない声でした。

2019/02/03

本日はOEKの演奏会には行かず(すみません),小松シティ・フィルハーモニックの定期演奏会へ。聞き応え十分のベルリオーズの幻想交響曲,鶴見彩さんの独奏を加えたチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番をしっかり楽しんできました。

本日の午後は,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のファンタスティック・オーケストラ・コンサートで「殺陣」とオーケストラが共演する大変興味深い企画があったのですが...小松シティ・フィルハーモニックの第20回定期演奏会が行われるということで,こちらの方を聞いてきました。OEKファンとしては申し訳ないのですが...幻想交響曲とチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を聞けるという選曲に負けてしまいました。

特に幻想交響曲の方は,OEKの編成で演奏するのは難しい曲であることに加え,独特の楽器編成なので,実演で「見て・聞いて楽しい」曲の代表ではないかと思います。今回の演奏は,全般にじっくりとしたテンポで,オーケストラをしっかりと鳴らした演奏で,気持ちよくこの曲を魅力を味わうことができました。

各楽章ごとに聞き所がありますが,やはり,オーケストラが全開になる第5楽章のフィナーレの開放感が素晴らしかったですね。金管楽器や打楽器が沢山出てくるのはベルリオーズならでは。小松の「うらら」で聞くと,各パートの音がしっかりと聞き分けられるので,各楽器の音の動きが非常に明快に感じられ,聞き応え十分でした。

第2楽章は,ハープ2台が入るのが「見所・聞き所」ですが,今回の演奏では,トランペット(コルネットでしょうか?)が華やかにオブリガードのメロディを演奏していたのも印象的でした。第3楽章では,まずコールアングレの音がくっきりと聞こえてきて素晴らしいと思いました。それに応える「舞台裏のオーボエ」の効果も面白いですね。楽章後半では,「舞台裏オーボエ」の回答がなくなってしまい,代わりに「4人で叩くティンパニ」が出てきます。この辺の「ちょっとホラーのような感じ」も実は好きだったりします。

この曲の場合,上記の楽器以外にも,Esクラリネット持ち替え,テューバ2本,ファゴット4本など,独特の編成になっているのですが,この日の演奏は,そういった楽器の効果をはっきりと聞き取ることができました。この曲が石川県内で実演で演奏されるときは,ほとんど毎回聞きに行っているのですが,本当に楽しめる曲だなぁと再認識できました。

前半は,ヨハン・シュトラウス2世の祝典行進曲が,「これぞ行進曲」というオーソドックスな感じで演奏された後,鶴見彩さんのピアノ独奏を加えて,チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番が演奏されました。昨年の6月,同じホールで平野加奈さんと川瀬賢太郎さん指揮OEKと同じ曲を聞いたのですが,今回の鶴見さんの演奏もお見事でした。特に第3楽章のコーダ,ティンパニがバンと強打した後,オーケストラと一体となって,盛り上がっていく辺りのスリリングな感じが素晴らしかったですね。ピアノとオーケストラがしっかり主張し合いながら,テンポを合わせ,迫力十分の音楽を聞かせてくれました。「さすが,鶴見さん」という演奏だったと思います。

調べてみると,今年はベルリオーズ没後150年の年。今年は,全国的に幻想交響曲が演奏される機会が多いのかもしれませんね。そのスタートに相応しい演奏会だったと思います。

2019/01/29

石川県立音楽堂室内楽シリーズは,OEKチェロセクション+αによる「チェロ・アンサンブル・スペシャル」。やはり,特にオリジナル作品は聞き応えがあるなぁと思いました

本日は,今年度第4回目の石川県立音楽堂室内楽シリーズとして行われた「チェロ・アンサンブル・スペシャル」を聞いてきました。登場したのは,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のチェロ・セクションの大澤明さん,早川寛さん,ソンジュン・キムさん+名誉団員のルドヴィート・カンタさん。さらに福野桂子さん,佐古健一さんを加えた6人のチェリストでした。グループ名としては,I Cellisti di Kanazawaということになります。「金沢のいいチェリストたち」といったところですね。

数年前,OEKメンバー4人によるアンサンブルを聞いたことはありますが,今回は6名編成ということで,より充実感のある響きを楽しむことができた気がします。6人のうち,カンタさんだけは常に最高音を担当し,それ以外のメンバーは曲によって低音部に移ったり,中音部に移ったり...「席替え」をしていました。

前半はグリーグの「ホルベアの時代から」,ヨハン・シュトラウスの「こうもり」序曲,ビゼーの「カルメン幻想曲」ということで,もともとはチェロ・アンサンブル用ではない曲が演奏されました。曲自体,親しみやすい名曲ばかりだったこともあり,チェロだけでどれだけにオリジナルに迫れるかという面白さを感じました。もともとチェロ用でない曲でない分,「大変そう」という部分もありましたが,改めて,チェロという楽器の広い音域と表現力の多彩さを実感できました。

曲の充実感としては,もともとチェロ・アンサンブルのための曲だった,後半の3曲の方があったと思いました。バンディング作曲の「ベートーヴェンの主題による6本のチェロのためのフーガ」は,ベートーヴェンのチェロ・ソナタ第3番の冒頭部の主題を基にしたフーガで,じっくりと音が組み合いながら進んでいきました。最後の輝かしさも印象的でした。

ポッパーのレクイエムは,それほど暗い作品ではなく,「アヴェ・マリア」といった趣きのある癒やし系の気分が溢れていました。染み渡るような充実感がありました。

最後に演奏された,ヴィラ=ローボスのブラジル風バッハ第1番は,特に聞き応えがありました。ラテン的なリズムや気分を感じさせつつ,ストレートに曲の美しさが伝わってくる演奏でした。ところどころ,ユニゾンのような感じで美しい歌が聞こえてくるのが新鮮でした。最後の楽章はフーガでしたが,どこか軽妙で粋な雰囲気もあり,不思議な壮麗さの中で締められました。

アンコールでは,「本家」バッハのG線上のアリアが演奏されました。ヴィラ=ローボスとの対比がとても面白い,美しい演奏でした。

恐らく,オーケストラのパートの中で,同一楽器だけでオーケストラ的な響きを作ることができるのはチェロ・パートだけだと思います。その面白さと充実感を実感できた公演でした。

2019/01/26

OEK初登場の #ポール・エマニュエル・トーマス さん指揮, #松田華音 さんのピアノによるOEK定期公演。ラヴェル「マ・メール・ロワ」バレエ版の魅力を堪能。ラヴェルのピアノ協奏曲での松田さんのピアノも魅力的 #oekjp

本日の金沢は雪が降ったり止んだり。その中,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の定期公演を聞いてきました。昨年に比べれば大したことはありませんが,いつもより少し早めに出かけることにしました。

登場した指揮者は,ポール・エマニュエル・トーマスさん。ピアノ独奏は,松田華音さんでした。どちらもOEKの定期公演初登場でした。プログラムは,フランス音楽中心で,交響曲のない構成でしたが,バレエ音楽版の「マ・メール・ロワ」を中心に,オーケストレーションの妙味をじっくり味わわせてくれるような,素晴らしい内容でした。

個人的には,最後に演奏されたバレエ音楽版「マ・メール・ロワ」を聞けたのが大収穫でした。私が,最初にこの曲を聞いたのは,アンドレ・クリュイタンス指揮パリ音楽院管弦楽団によるLPレコードの演奏でした。その後,実演で「マ・メール・ロワ」を何回か聞いているのですが,どうもクリュイタンス盤で聞いた「好きな部分」が出てこないのです。つまり,最初にLPで聞いたのがバレエ音楽版で,実演で聞いたのが組曲版だったということです。今回演奏されたのは,念願のバレエ音楽版ということで,聞きたかった部分をしっかり堪能できました。

具体的に言うと,組曲版にはない,前奏曲の部分で2本のホルンが高音で応答する箇所やいくつかの間奏曲で,弦楽器がコルレーニョ(多分)でカタカタ音を慣らした後,高音がキューンと下降する箇所などです。その他にも,室内オーケストラ編成のOEKならではの各楽器のソリスティックな活躍をしっかり楽しむことのできる箇所が多く,改めてラヴェルの楽器の使い方が素晴らしいと思いました。

お馴染みの組曲の部分についても,終曲の「妖精の園」の大団円に向かって精緻に各曲のキャラクターが描き分けられていました。組曲版だと20分程度ですが,バレエ版だと30分ぐらいかかりますので,終曲での名残惜しさはいつも以上でした。

トーマスさんの指揮は,情緒的になるところはなく,冷静にラヴェルのスコアをクリアに再現している感じでした。あまり変わったことをせず,OEKの良さをしっかりと引き出してくれたのが良かったと思います。何より,「ざわざわした感じ」「キラキラした感じ」など,実演でないと本当の良さは楽しめない曲なのは,と思いました。

ちなみに,最後にアンコール曲が2曲演奏されました。公演時間がやや短かったせいもあると思いますが,個人的には「マ・メール・ロワ」の気分で終わる方が良かったと思いました。ビゼーの「アルルの女」のファランドールとオッフェンバックの「ホフマンの舟歌」が演奏されたのですが...これはまた別プログラムにしてもらった方が良かった気がしました。

2曲目に登場した松田華音さんのピアノ独奏による,ラヴェルのピアノ協奏曲ト長調も素晴らしい演奏でした。この曲は,OEKは何回も演奏していますが,その中でも特に素晴らしい演奏だったのでは,と思いました。何より松田さんのピアノがお見事でした。両端楽章では,くっきり,しっかりとした音でソリスティックな魅力を聞かせてくれました。淡々とクールに演奏しても格好良い曲ですが,所々で濃厚な情緒のようなものを感じさせてくれました。

対照的に中間の第2楽章は比較的さらりと自然に演奏していたのですが,そのピアノの音が素晴らしかったですね。ピアノの弦が振動しているのが分かるような,クリアでありながら夢見るような気分が感じられました。演奏全体としても,繊細さと大胆さが両立したような面白さが出ていました。

アンコールで,松田さんはチャイコフスキーの小品を演奏しました。こちらの方は,力技でバリバリと聞かせる演奏。ラヴェルとはまた別のキャラクターを見せてくれました。松田さんは,まだ若いピアニストです。これからの再演にまた期待したいと思います。

最初に演奏された,コダーイのガランタ舞曲は,複数の民族舞曲が連続的に演奏される曲で吹奏楽でおなじみのアルメニアン・ダンスやバルトークのルーマニア民俗舞曲などと似た構成です。トーマスさんは,OEKを明快に鳴らし,曲の魅力をストレートに伝えてくれました。この曲でも,管楽器を中心としたOEKメンバーのソリスティックな活躍が素晴らしかったですね。

今回の公演は,OEKとしては比較的珍しいフランス音楽を中心としたプログラムでした。トーマスさんの指揮からは,強い個性は感じなかったのですが,何よりラヴェルの「マ・メール・ロワ」のバレエ版の全曲をしっかりと聞かせてくれたのが良かったと思います。この曲については,OEKの十八番として,また機会があれば再演を期待したいものです。

2019/01/20

#森山開次 新演出 #井上道義 指揮OEKによるモーツァルト「#ドン・ジョヴァンニ」を #オーバード・ホール で鑑賞。両人の思惑がピタリとはまった,非常に完成度の高い上演。このオペラは,色々な演出に耐えられる不朽の名作と実感 #oekjp

本日は午後から富山まで遠征し,森山開次新演出,井上道義指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)による,モーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」をオーバード・ホールで観てきました。これまで金沢でOEKは,「フィガロ」「魔笛」「コジ・ファン・トゥッテ」を上演したことはありますが,「ドン・ジョヴァンニ」は未上演。モーツァルトの作品の中でも,特別な位置を締める名作だけれども,実演で観たことがなかったこともあり,高速バスに乗って観にいくことにしました。

今回の上演は,10名のダンサーを随所で活用した日本語による上演という点に特徴がありました。総監督の井上さんと演出・振付の森山さんとしては,オペラに溢れるエネルギーを美しく表現し,普通のドラマを楽しむように分かりやすく作品に入り込めるようにしたい,という狙いがあったと思いましたが,その思惑どおりの完成度の高い上演になっていたと感じました。やはりこのオペラは不朽の名作だと思いました。

それを支えていたのは,まず何よりも,それぞれのキャラクターにぴったりの歌手の皆さんの歌唱力だったと思います。

今回の私の座席は,例によって「いちばん高い(場所にある)席」だったので,声がやや遠く感じる部分はあったのですが,すべての歌手の歌詞がとてもよく聞こえました。これはオーバードホールの残響が石川県立音楽堂コンサートホールほど長くないことによると思いますが,字幕なしでもストレスなく理解できました(今回,英語対訳の字幕も付いていたのが面白かったですね)。

ドン・ジョヴァンニのヴィタリ・ユシュマノフさんの日本語は,井上さんがチラシ等で書かれていたとおり「ペラペラ」の流ちょうさ。ツェルリーナを誘惑したり,セレナードを歌ったりする場での柔らかな声に特にリアリティがありました。特にセレナードの方は,文語調の日本語で歌うと「明治時代の歌」のような,ちょっと現実離れしたような「いい感じ」になっていました。この曲の時の伴奏の,マンドリン伴奏+弦楽器少しという楽器の使い方は,さすがモーツァルトといった感じでした。

レポレッロ役の三戸大久さんは,体型的にもユシマノフさんと良いコントラストで,この作品のコメディ的な部分をしっかり盛り上げていました。昨年5月の金沢の楽都音楽祭では,ドン・ジョヴァンニのアリアを聞きましたが,そのとき同様の余裕のある声が見事でした。

このオペラで,ドン・ジョヴァンニ同様にポイントとなるのが,3人のキャラクターの違うソプラノです。プログラム解説等に書いてあったとおり「女性の3つの側面」を見事に表現しており,オペラに立体感を作っていました。

ドン・ジョヴァンニに父親を殺害され,自分も口説かれたドンナ・アンナは,悲劇の女性といったムードがあります。髙橋絵理さんは,抜擢だったと思うのですが,その声には,気品と瑞々しさがあり,第2幕に出てくる長いアリアなどをたっぷりと楽しませてくれました。

ドン・ジョヴァンニの元恋人のドンナ・エルヴィーラは,別の女性が騙されそうになると止めに入るような,ドン・ジョヴァンニにとっては天敵のような役柄です。鷲尾麻衣さんの歌唱には,天敵でありながら,どうしても忘れられず,ドン・ジョヴァンニの命乞いまでしてしまうような,母親的な暖かみのようなものを感じました。

マゼットと結婚式を上げたばかりなのに,ドン・ジョヴァンニに誘惑されるツェルリーナ役は,井上さん指揮のオペラでは常連と言って良い小林沙羅さん。上記2人よりも軽い声で,登場しただけで爽やかな空気感が漂っていました。ツェルリーナは,マゼットを慰めつつも,実は手玉にとっているような感じもあるのですが,小林さんの癒やしに溢れた声を聞きながら,マゼットが惚れるのも当然も感じました。近藤圭さんの演じるマゼットの実直な感じも良いと思いました。

ドン・ジョヴァンニ以外の男声の方はやや影が薄くなるようなキャラクターになっているのですが,そのの中でドンナ・アンナの婚約者,ドン・オッターヴィオ役の金山京介さんのまっすぐ正面を見て歌うような誠実さに,妙に訴えかけてくる力があると感じました。もしかしたら日本語の力かなと思いました。

そして最初の最後に出てくる,騎士長役のデニス・ビシュニャさん。まさにオペラ全体の重石のようなスケールの大きな声を聞かせてくれました。

これらのキャストに加え,舞台セットが素晴らしかったですね。ステージの奥に一段高いステージがあり,その両側から赤絨毯の敷かれた階段(あとで写真を見ると,絨毯ではないようですね。ただし,イメージとしては赤絨毯の雰囲気でした)が2本伸び,それが客席まで続いていました。オーケストラは,純粋なピットというよりは,客席に張り出した前方のステージと通常のステージの間のスペース入っている感じで,恐らく通常のホールでも上演できるような感じでした。

このように高低差と奥行きのある構成だったので,場面に応じて多彩な使い方をしていました。宴会の場でのゴージャス感や最後の地獄落ちの場面での,騎士長役の威圧感を見事に演出していました。モーツァルトの音楽は,それぞれのアリアも素晴らしかったのですが,各幕切れのアンサンブルの部分が特に面白いと思いました。今回,立体感のあるステージを使っていたのに加え,音楽にも立体感があり,観ていて「なんだかすごい世界が広がっているなぁ」という感じにさせてくれました。

これだけでもすごいのですが,これに各場面に対応して,10人のダンサーによるモダンな感じのダンスが加わります。一種,「動く大道具」のような役割を果たしている部分もあり,場面展開をダンスで演出しているようでした。

オペラの最後の部分は,オリジナルだと「残された3人の女性」がこれからどうします,といったことを歌う部分があるのですが,今回はその部分はカットし,ドン・ジョヴァンニの地獄落ちを「しっかり確認する」という形で,スピーディーに結んでいました。オリジナル版も観たい気はしましたが,「この締め方で納得」という終わり方だったと思います。

やはり,このホールだと,オーケストラの音を聞くにはややデッドな感じは残ったのですが(だんだん耳が慣れてきましたが),それ以外については,非常に完成度の高い上演だったのではないかと思いました。森山さんは金沢にも縁のある方ですので,是非,他のオペラの演出・振付にも(驚くべきことに今回が初だったんですね)挑戦していって欲しいものです。

2019/01/12

2019年最初のOEK定期は,フォルクハルト・シュトイデさんの弾き振り&リードによるモーツァルトとシュトラウス・ファミリーの音楽。新年らしい清新さと上品な華やかさのある演奏。今年も色々な公演を楽しめそうです。 #oekjp

2019年最初のオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の演奏会は,恒例のニューイヤーコンサートでした。昨年のちょうど今頃は,50cmぐらいの雪が積もっていたのですが,今年は暖冬傾向ということで,本日は音楽堂まで自転車で往復しました。

登場したのは,ウィーン・フィルのコンサートマスターのフォルクハルト・シュトイデさんで,昨年に続いての「弾き振り」を交えての演奏となりました。プログラムの構成もほぼ同様で,前半は序曲的な曲に続いて,シュトイデさんの独奏による協奏曲。後半はウィーン・フィルのニューイヤーコンサートを彷彿とさせるような,シュトラウス・ファミリーの音楽でした。

前半・後半ともに,派手に聞かせるというよりは,音楽そのものを流れよく,すっきりと聞かせるような演奏で,正月の気分に相応しい,清新さと品の良い華やかさが漂う,素晴らしい雰囲気の公演だったと思います。何より「このパターンが,OEKのニューイヤー・コンサートの定番かも」と思わせる安定感があるのが良かったですね。

前半の最初のモーツァルトの交響曲第1番は,昨年5月の楽都音楽祭の時,アシュケナージさん指揮OEKで聞きましたが,その時よりも音にビシッとした芯があり,聞き応えを感じました。続く協奏曲もモーツァルトの作品で,名曲の割りに比較的演奏されることの少ない,ヴァイオリン協奏曲第4番がシュトイデさんの弾き振りで演奏されました。考えてみると,シュトイデさんが立って演奏していたのはこの曲だけでした。

シュトイデさんのヴァイオリンの音には,切れ味の良い細身の刀を思わせるようなきらめきがありました。速めのテンポですっきりと演奏しつつ,次々と湧き出てくる美しい曲想を鮮やかに聞かせてくれました。アビゲイル・ヤングさんを中心としたOEKの演奏も自発性に富んでおり,幸福感に溢れた音の世界を楽しむことができました。

後半は,お待ちかねのシュトラウス・ファミリーの音楽でした。こちらも昨年と同様で最初に「ジプシー男爵」序曲,最後に「皇帝円舞曲」と規模の大きめの曲を配し,その間にポルカ,ギャロップ,軽めのワルツなどが並ぶという構成でした。

前半同様,シュトイデさんの作る音楽には,「無理矢理」感がなく,どの曲も大変気持ちよく,流れの良い音楽を楽しむことができました。途中,お客さんを楽しませるためのパフォーマンスが入るのも昨年同様でした。ニューイヤーコンサートは,金沢公演の後,富山県射水市や東京でも行われるのであまり詳しくは書かないのですが...今年もまたMVPは,打楽器奏者のグンナー・フラスさんでした。とりあえずは「クラップフェンの森で」にご注目ください。それともう一つOEKメンバーが,「楽器以外」で活躍する曲があります。こちらもお楽しみに。

演奏会の最後は,タイトルからして,シュトラウスのワルツの中でも,特に立派な雰囲気のある皇帝円舞曲で締められました。曲の最後の部分,チェロ(おなじみカンタさんでした)のソロが入り,室内楽的な雰囲気になった後,大きく盛り上がって終了。この曲はトリにぴったりですね。

そしてアンコールで,お約束どおりの手拍子入りの「ラデツキー行進曲」でおしまいでした。あまりビシビシ仕切らない,のどかな雰囲気が良かったですね。

演奏会の後,OEKメンバーが音楽堂の入口付近で,恒例のOEKどら焼きを配布していました。こちらの方も「これがないと新年になった気がしない」というぐらい定着しましたね。というわけで,華やか,かつ穏やかな気分で新年気分の最後を味わうことのできた演奏会でした。

2019/01/03

2019年最初の演奏会は,OEKメンバーによる新春ミニコンサート@石川県庁19階展望ロービー。大勢のお客さん一緒に,音楽による初「日の出」を楽しみました。

2019年最初の演奏会は,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)メンバーによる新春ミニコンサートでした。毎年1月3日に石川県庁19階展望ロービーで行っているもので,大勢のお客さんで賑わっていました。私の場合,今年の正月3が日は,初詣に行った以外は,「ほぼ家の中」でゴロゴロと過ごしていましたので,絶好の気分転換になりました。そういった方が大勢集まっていたのではないかと思います

演奏された曲は,ハイドン :弦楽四重奏曲「日の出」~第1楽章,ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第1番~第1楽章,ドヴォルザーク:ユーモレスクということで,比較的堅めの選曲でしたが,30分ほどの時間,しっとりとした弦楽四重奏の音色を楽しむことができました。登場したのは,ヴァイオリンが原田智子さん,江原千絵さん,ヴィオラが石黒靖典さん,チェロが早川寛さんでした。

ハイドンの「日の出」は,恐らくこの展望ロビーにちなんでの選曲でしょう。今年の場合,初日の出の時間帯はしっかり晴れていましたので,このロビーからもしっかりと見られたのではないかと思います。この曲の第1楽章の出だしの部分は,じわ~っと太陽が昇っていくような雰囲気がありますので,「音楽による初日の出」といったところです。今回の演奏はロマンティックな気分が漂うぐらい,柔らかな空気感がありました。少々くすんだ感じがあったので,冬の金沢の空にぴったりだと思いました。

続くベートーヴェンの弦楽四重奏曲は,恐らく「第1番=最初=1年の最初」というつながりで選ばれたのではないかと思います。実は,12月20日に石川県西田幾多郎記念哲学館で行われた,OEKメンバー(今回とはヴィオラの石黒さんを除くと別メンバー)によるコンサートで聞いたばかりの曲だったので,図らずも聞き比べのような形になりました。この曲についてもじっくり,ゆったりと演奏され,豊かな情感が耳に染みこんでくるようでした。特に第1ヴァイオリンの原田智子さんの表情豊かな演奏が印象的でした。

最後は,ドヴォルザークのユモレスクがアンコールのような感じでリラックスした雰囲気で演奏されて,終了しました。

この日はお客さんが多すぎたこともあり(私は13:00からの1回目の方を聞きました),会場に到着した時は,椅子席が全部埋まっており,立ったまま聞くことになってしまいました。補助席がもう少し欲しいところでしたが,これも地元でのOEKの人気によるところでしょう。

今年もまた,可能な限り演奏会通いをして,色々な音楽を楽しみたいと思います。

2018/12/30

今年もあとわずか。2018年のOEKの公演を定期公演を中心に振り返ってみました。 #oekjp

2018年もあとわずかです。今年も石川県立音楽堂で行われたOEKの定期公演を中心に,数多くの演奏会を楽しむことができました。この時期,音楽雑誌では,ベストコンサートを決める企画もありますが,私の場合,何事につけ「これがいちばん」を決めるのが苦手なので(正直なところ,記憶がどんどん薄れていくので...),全体的な印象を振り返ってみたいと思います。

今年のOEKの定期公演のうち,9月最初の川瀬賢太郎さん指揮のものだけは聞きに行けなかったのですが(その代わり,同一内容の大阪公演を聞きに行きました),それ以外はすべて聞くことができました。フィルハーモニーとマイスターの定期公演をタイプ分けすると,次のような感じになると思います。

A OEKのレパートリーの根幹,古典派~初期ロマン派の作品中心のプログラム
B バロック音楽など古楽系の指揮者による声楽が加わるプログラム
C 編成を少し大きくしてのロマン派プログラム
D 指揮者のこだわりのプログラム
E オペラ

OEKの定期会員に入っていれば,これらをバランス良く楽しますね。フル編成のオーケストラの定期公演の場合より,A,Bが多い分,プログラムの多様性や工夫があるのがOEKの良さです。そして,近年は,以前にも増して,世界的に著名なアーティストによる,OEK独自企画的な公演が多かったと思います。ちょうど1年前の1月にマルク・ミンコフスキさんがOEKの芸術監督になることが発表されましたが,このことがその象徴だと思います。そして,このことは,OEKの試行錯誤の30年の歴史の成果だったのではないかと思います。

そのミンコフスキさん指揮による,7/30の「ペレアスとメリザンド」定期公演は,記念碑的な公演でした。通常のオペラとは一味違う,演劇的で象徴的なオペラの魅力を理想的なキャストと見事なプロジェクションマッピングとともに伝えてくれました。その他のオペラ公演では,11/25の「リゴレット」も,金沢初演でした。青山貴さん,森麻季さんを中心に,イタリア・オペラの中でも特に魅力的な作品をしっかり楽しむことができました。

ただし,オペラというのは,やはり総合芸術なので,OEKファンとしては,上記のタイプAのOEKの根幹プログラムを色々な指揮者で楽しむことができたのが,いちばん嬉しかったですね。井上道義さんの音楽監督として最後のステージとなった3/17公演でのハイドンの「朝・昼・晩」,9月からOEKの指揮者団に加わったユベール・スダーンさん指揮による10/13公演でのハイドンの103番,シューベルトの5番,川瀬賢太郎さんによる9月定期でのハイドンの90番,ベートーヴェンの5番。その他,急遽代役で2/24公演に登場したマティアス・バーメルトさんによるシューベルトの6番,7/7の公演に登場したリープライヒさん指揮によるベートーヴェンの1番。こういった曲を,色々な解釈で楽しむことができました。

ちなみにモーツァルトの方は,5月の楽都音楽祭で,たっぷりと楽しむことができました。一見,名曲中心の「どなたでも楽しめます」といった内容でしたが,今年の場合,「室内オーケストラの競演」のようになっていたのがとても面白かったですね。

上記のタイプBの古楽型については,3/10の北谷直樹さんとラ・フォンテ・ヴェルデによる公演が,非常にスリリングでした。オリジナリティの点では,今年最高だったと思いますた。11/01の鈴木雅明さんとRIAS室内合唱団による公演は,バロック音楽ではなくメンデルスゾーンの珍しい宗教音楽がメインで演奏されました。素晴らしい合唱の力と共に,隠れた名曲を再発見するような公演になったと思います。

合唱団と共演した公演では,8/26に富山で行われた山下一史さん指揮によるベートーヴェンのミサ・ソレムニスも聞き応えがありました。前年のヴェルディに続いての「夏のミサ」公演も定着しつつあるようですね。

タイプCのロマン派的な公演については,定期公演ではありませんが,1/23に行われた佐渡裕さん指揮による兵庫PACオケとの合同公演が楽しめました。「1812年」では,立派な大砲も登場しましたね。6月の定期公演に登場した,川瀬さんは,金沢ではシューマンの「ライン」,小松ではチャイコフスキーの5番を楽しませてくれました。武満徹「系図」での谷花音さんの見事なナレーションも鮮烈な印象が残っています。

10月の小松公演では田中祐子さん指揮によるフランス・プログラム。サン=サーンスの2番はOEKにピッタリの曲でした。そして,番外編が,2/26のミンコフスキさん指揮レ・ミュジシャン・デュ・ルーブルによるメンデルスゾーンの3番,4番。古楽器によるちょっと不自由な感じが魅力になっているような演奏でした。

最後にタイプDの「こだわりの選曲」については,どの公演も「こだわり」なのですが,特に井上道義さん指揮による,2/3公演でのショスタコーヴィチにチェロ協奏曲とヒンデミットの「画家マティス」の組み合わせが印象的でした。クニャーゼフさんのチェロは今年登場したソリストの中でも最も強烈な印象を残してくれた気がします。
井上さんの指揮では,11/7に邦楽ホールで行われた,邦楽洋楽コラボレーション公演も井上さんらしさ満載,本領発揮といった内容でした。

6/21の下野竜也さん指揮による定期は,後半にロッシーニの序曲が並ぶ下野さんならではの選曲。吉野直子さんのハープによる,ニーノ・ロータの曲も良い曲でしたね。11/29の定期には,オリ・ムストネンさんが初登場。ムストネンさん自身の作品とヒンデミット,シベリウスなどの作品を組み合わせる,何が出てくるか分からないようなプログラム。全身アーティストといった感じのムストネンさんの魅力をたっぷうり味わうことができました。

OEKと共演したソリストでは,上記の人たちに加え,フルートのジャスミン・チェイさん,ピアニストの反田恭平さん,小山実稚恵さん,ヴァイオリンの堀米ゆず子さんなど,若手からベテランまで実力者との共演が続きました。

その他,ピアニストの平野加奈さん,OEKのフルート奏者,松木さやさんなど地元の若手奏者との共演もありました。音楽堂室内楽シリーズでは,OEKの奏者たちによる室内楽公演も楽しむこともできましたが,今後も地元のアーティストやOEK内の名手たちとの共演に期待したいと思います。聴衆からの距離の近いアーティストについては,世界的に活躍するアーティストとは違った,「応援しながら聞く」という最高の楽しみがあるのではないかと思っています。

先日,天皇誕生日の記者会見の中で天皇陛下は,平成の時代が戦争のない時代として終わりそうであることに言及されていましたが,世の中が平和であることが,芸術活動の前提だと私は思っています。来年は5月に元号が変わりますが,新しい時代も戦争のない時代が続くことを心から願っています。

2018/12/27

今年最後の「演奏会通い」は,太田弦指揮金沢大学フィルハーモニー管弦楽団の定期公演。チェイコフスキーの交響曲第3番「ポーランド」を中心としたこだわりのプログラムを楽しませてくれました。

今年最後の「演奏会通い」は,金沢大学フィルハーモニー管弦楽団の定期公演でした。今回は,金大フィル初登場となる,太田弦さんの指揮で,チャイコフスキーの交響曲第3番「ポーランド」を中心としたプログラムが演奏されました。この曲が金沢で演奏されるのは,私の記憶にある限りでは初めてのことです。今回は,この曲と太田弦さんの指揮ぶりを楽しみに聞きに行くことにしました。

最初に演奏されたのは,シューベルトの「ロザムンデ」序曲でした。ゆっくりとした序奏の後,軽快なリズムに乗って,美しいメロディが次々出てくる曲で,個人的にとても好きな曲の一つです。太田さんはとても落ち着いた指揮ぶりで,この魅力的な作品を,すっきりと聞かせてくれました。

次に演奏されたのは,スメタナの連作交響詩「わが祖国」の中の第3曲「シャールカ」でした。「わが祖国」といえば,「モルダウ」が定番中の定番ですが,それを敢えて外すあたり,今回のプログラミングは,「一捻りあるなぁ」といったところです。この曲の演奏ですが,まず冒頭の一撃が大変鮮やかでした。非常に集中力の高い音で,一気にボヘミアの伝説に出てくる「復讐を誓った乙女」の激しい世界に引き込んでくれました。このドラマティックな雰囲気に続いて,行進曲調になったり,クラリネットの意味深なソロが出てきたり,次々と場面が変わって行きます。

太田さんの指揮は,要所要所をビシッと引き締めるメリハリの効いたもので,各部分が鮮やかに描き分けられていました。曲の最後の部分は,ホルンの不気味な信号に続いて,一気に戦闘開始という感じになり,爽快さの漂う雰囲気で締められました。実演では聞く機会はそれほど多くない曲ですが,楽しめる曲だなぁと思いました。

後半は,チャイコフスキーの交響曲第3番1曲だけでした。全体で45分ぐらいかかる大曲です。チャイコフスキーの交響曲の中では,5楽章形式であること,長調である点で,一味違った作品となっています。「ポーランド」というニックネームは,最終楽章がポロネーズになっている,という以上の意味はないようです。

第1楽章と第5楽章が堂々とした交響曲的楽章。その間に舞曲的な楽章と緩徐楽章が3つ入る構成の作品です。頻繁に演奏される後期3大交響曲に比べると,緊密感の点ではやや薄い気はしましたが,チャイコフスキーお得意のバレエ音楽を思わせるような,親しみやすさや鮮やかさのある作品だと感じました。

第1楽章,ほの暗い序奏に続き,折り目正しく進む主部に入っていきます。金大フィルの演奏は,所々でアラの見える部分はありましたが,前半の演奏以上にスケールの大きな演奏を聞かせてくれました。中間の3つの楽章は,管楽器がソリスティックに活躍する部分も多く,それぞれ楽しませてくれました。特に,軽快だけれども,とても難しそうな音の動きの続く第4楽章は,どこかメンデルスゾーンの曲の雰囲気があり面白いなと感じました。

第5楽章は,最初に出てくるテーマの颯爽とした雰囲気が良かったですね。その後,フーガ風になった後,最後は華やかに盛り上がります。太田さんの指揮ぶりからは,落ち着いた冷静さを感じました。熱狂的に聞かせるというよりは,すっきりと整理された音楽が,くっきりと盛り上がってくる語り口の上手さのようなものを感じました。

チャイコフスキーの管弦楽曲の最後の部分については,交響曲第4番に代表されるように,何回もジャンジャンジャンジャン...と連打されるパターンが多いのですが,この第3番はその中でも特に連打回数が多い曲なのでは?と思いました。ティンパニの強打がワンランク上がる中,気合いのこもった音が10回ぐらい(多分)続きました。それでもしつこさよりは,爽やかさを感じさせてくれるのが,学生オーケストラの良さだと思います。

演奏会の方は,アンコールなしでお開き。こちらも方もすっきりとしていました。金大フィルや石川県学生オーケストラの演奏会では,考えてみると,ロシアや北欧方面の交響曲が演奏される機会が多いのですが,今後もこの路線で色々な交響曲を取り上げていって欲しいものです。期待しています。

«本日は石川県立音楽堂の #夜コン ...には行かず,西田哲学館で行われたクリスマスコンサートへ。OEKメンバーが挑んだ,ヤナーチェクの「ないしょの手紙」をはじめとした,充実の弦楽四重奏曲3曲 #oekjp

最近のコメント

最近の記事

最近のトラックバック