OEKのCD

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2018/02/05

大雪の中,金沢市アートホールで,アンサンブル・ミリムによるバッハのモテット全曲演奏会を聞いてきました。「言葉」がしっかりと伝わってくる,聞き応え十分の演奏。そしてモテットの世界は多彩だと思いました。

本日の金沢は,朝からずっと雪が降り続き,「このまま降り続くと大雪になりそう」という状況で,出かけようかどうか迷ったのですが,バッハのモテット全曲を精鋭を集めた声楽アンサンブルの演奏で聞く機会は滅多にないことなので,がんばって(?)聞いてきました。

登場したのは,指揮者を含め12人編成の声楽アンサンブル,アンサンブル・ミリムです。アンサンブル・ミリムは,バッハ・コレギウム・ジャパン,東京混声合唱団,新国立劇場合唱団など,東京にあるプロの合唱団のメンバーによるアンサンブルということで,根本卓也さんの指揮のもと,美しさと強さを兼ね備えたような,大変質の高い音楽を聞かせてくれました。最初の「一声」を聴いただけで,パッと目が覚めるような鮮やかさがありました。

バッハのモテットの全曲をまとめて聴くのは今回初めてだったのですが,6曲を連続して聴いてみて感じたのは,「色々なタイプの曲があるなぁ」ということでした。最後に演奏された「主に向かって新しい歌をうたえ」の凜とした華やかさ,11曲からなる「イエスよ,わが喜び」のシンメトリーな感じの構成感。この2曲以外も,それぞれに生き生きとした表情を持っており,退屈することなく楽しむことができました。

アンサンブル・ミリムのメンバーは,個々のメンバーの声が素晴らしいので,各曲のクライマックスの部分などでは,ちょっとした声の饗宴に参加するような趣がありました。色々な声部の声が飛び交い,絡み合いながら,大きく盛り上がっていく感じが素晴らしいと思いました。この日の会場の,金沢市アートホールで聞くのにピッタリのボリューム感でした。

プログラムの中で,指揮の根本さんは「今夜お聞きいただく演奏は古楽に慣れた人々の耳からすれば荒っぽくもあり,合唱に慣れた人々の耳からすれば滑らかさに欠けるかも知れません。しかしそれは,全てバッハが語りたかった抑揚で皆さんに語りかけるための挑戦」といったことを書れていました。確かに(ドイツ語が分かるわけではないのですが),非常に明確に言葉が伝わってくるな,と感じました。

バッハの曲自体,強調したい語句を何回も何回も繰り返していたので,「言葉をしっかり伝える」という意味で,「バッハに忠実」な演奏なのだなと思えました。そういえば,「ミリム」という単語自体,ヘブライ語の「言葉」という意味だということも思い出しました。

アンサンブル・ミリムのメンバーは,12人中3人が石川県出身ということで,これからも「第2の故郷」という感じで,金沢公演を期待したいと思います。数年前のラ・フォル・ジュルネ金沢びテーマが「バロック音楽」だったのですが,例えば,その時聞いた,モンテヴェルディの声楽曲など,是非,もう一度聞いてみたいものです。いずれにしても...次回は,もう少し気候の良い時に聞いてみたいものです。(自分を含め)皆様お疲れ様でした。

2018/02/03

#井上道義 指揮OEK定期はショスタコーヴィチ,メンデルスゾーン,ヒンデミットを詰め込んだ充実のプログラム。特に #クニャーゼフ さんと共演したチェロ協奏曲第1番は底知れぬ凄みを持った記憶に残るような演奏 #oekjo

本日の午後は,井上道義さん指揮によるオーケストラ・アンサンブル金沢の定期公演マイスターシリーズを聞いてきました。井上さんは,3月いっぱいで音楽監督を退任することが決まっていますので,音楽監督として最後のマイスターシリーズということになります。

そのことを反映してか,非常に盛りだくさんで,編成も多彩。聴き応え十分の定期演奏会となりました。最初にヒンデミットの「エロスとプシュケ」序曲が生き生きと演奏された後,ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番,メンデルスゾーンの八重奏曲,ヒンデミットの交響曲「画家マティス」が演奏されました。どの曲も30分ぐらいの長さで聴き応え十分。井上道義さんの一押しの曲をずらっと並べたプような充実プログラムでした。

特に2曲目に演奏された,チェロのアレクサンドル・クニャーゼフさんと共演したショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番は,OEKの定期演奏史に残るような凄い演奏だったと思います。

曲の最初,いきなりクニャーゼフさんのチェロがゴツゴツとした感じで登場。まず,その音の凄みに一気に引きつけられました。何というか根源的な強さを持ったような音で,一見泥臭い雰囲気の中から,底知れぬ奥深さのようなものが伝わってきました。

第2楽章後半から第3楽章にかけては,チェロ協奏曲としては異例なほど長いカデンツァ風の部分になります。ちょっとしたピツィカート一つ取っても意味深さがあり,クニャーゼフさん自身の人生であるとか,ソ連~ロシアの歴史のようなものまで連想させるようなスケールの大きさを感じました。この部分の最後では,「技巧を超えたような技巧」といった独特の凄みのある雰囲気になりました。

この演奏を盛り上げるOEKの演奏も素晴らしいものでした。特にホルンはチェロの次に出番が多い感じで,朗々とした音で曲にアクセントを付けていました。ホルンは1本だけでしたので,ピアノ協奏曲第1番のトランペット的な役割に近い気もしました。演奏は,エキストラの女性奏者でしたが,クニャーゼフさんと対照的な真っ直ぐな音を聞かせてくれました。要所要所で,バシッと入るティンパニも効果的だったと思います。

曲は第4楽章の後半からは,第1楽章の再現のようになって,力強く終了します。この曲を実演で聞くのは...調べてみると約20年ぶりのことでしたが,改めて名曲だと思いました。

演奏会の後半は,メンデルスゾーンの八重奏曲で始まりました。この演奏は指揮者なしで,オリジナルどおりの8人編成で演奏されました。この日のゲスト・コンサートミストレスは,ベルリン・フィルの町田琴和さんで,この演奏も町田さんのリードで演奏されました。この曲については,音楽堂の交流ホールなどでは何回か聞いたことがあります。間近で聞くと,編成の大きな室内楽だけあって,いつも「熱さ」を感じていたのですが,今回はコンサートホールでの演奏ということで,より伸びやさを感じました。演奏全体に余裕があり,「大人のメンデルスゾーン」といった気分を感じました(ちなみに,この作品はメンデルスゾーン16歳の時の作品,というのも驚くべきことです)。

井上道義さんは,「大編成の曲も小編成の曲も入れられるのがOEKの魅力」と語っていました。確かにそのとおりです。演奏会の「箸休め」...というには立派な演奏でしたが,ショスタコーヴィチとヒンデミットという,やや疲れる曲の間に聞くには絶好の選曲だと思いました。

# その一方,この曲については弦楽合奏版というのもあるので,それを聞いてみたかったという思いもありました。

最後に演奏されたヒンデミットの「画家マティス」は,曲名は有名なのですが,実演ではあまり演奏されない気がします。私自身,実演で聞いたのは今回が初めてでした。聞いた印象は,「CDで聞くより,ずっと楽しめる。ヒンデミットは聞き映えがする」というものでした。通常のOEKの編成にかなりの数のエキストラが加わっており(第2ヴァイオリン以下の弦楽器を2人ずつ増強,ホルンを4人に増強,トロンボーン3本,テューバ1本を追加,打楽器4人ぐらいでしょうか),強奏したときの音に安定感と芯の強さがありました。

曲は中世の宗教画からインスパイアされた3つの楽章から成っています。宗教画の雰囲気にふさわしく,ロマンティックになりすぎずに色彩感を感じさせてくれるたが良いと思いました。各楽章ともに違った雰囲気がありましたが,やはり,金管楽器を中心に華やかに盛り上がる第3楽章がいちばん聞き映えがしました。

ヒンデミットについては,もっと地味で難解な印象を持っていたのですが,オーケストラの響きに浸る喜びを感じさせてくれるような曲でした。さらに井上/OEKの演奏には,交響曲という名前に相応しい密度の高さもありました。伸びやかさだけではなく,和音の美しさであるとか,各楽器のソロの受け渡しであるとかに,バランスの良さがあるのが良いと思いました。

美しいメロディが次々出てくる,といった曲ではないので,確かに親しみにくい部分もあったのですが,もっと評価されて良い作曲家だと思いました。ヒンデミットの曲では「ウェーバーの主題による交響的変容」あたりも,そのうち聞いてみたいものです。

井上道義さんの音楽監督としての在任期間も残りわずかとなってきましたが,本日の演奏は,最高の置き土産になるような演奏ばかりだったと思います。

2018/01/30

「原田智子バッハを弾く」 さりげなく凄い,原田さんの無伴奏ヴァイオリンの世界に浸ってきました。

オーケストラ・アンサンブル金沢のヴァイオリン奏者,原田智子さんのリサイタルが,金沢市アートホールで行われたので聞いてきました。今回のプログラムは全部バッハ。その無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータの中から3曲が演奏されました。

原田さんのリサイタルは,過去に何回か聞いたことはあるのですが,「最初から最後までヴァイオリン1本だけ」というのは今回が初めてかもしれません。金沢で,バッハの「無伴奏ヴァイオリン」がまとめて演奏される機会は,少ないので,平日の夜でしかも雪が降っていたのですが,聞きに行くことにしました。

演奏の方は,この演奏会のタイトルである「原田智子バッハを弾く」そのまんまでした。原田さんは,予定調和的ではない,オリジナリティにあふれ,しかも説得力十分のバッハを弾ききっており,大変聞き応えがありました。

演奏された曲は,ソナタ第2番,パルティータ第2番,ソナタ第3番の3曲でした。パルティータ第2番の最後の楽章の「シャコンヌ」が特に有名ですが,すべての曲のすべての瞬間に原田さんの個性が出ていると感じました。この日配布されたプログラムには,原田さん自身が執筆した,大変分かりやすく,しかも内容のある素晴らしい解説が掲載されていました。演奏の方にも,その文章に通じるような,バッハに対する思い入れが反映されていると思いました。そして,それに見合った個性的な表現が取られていました。

原田さんの演奏には,のびのびとメロディを歌わせるというよりは,研ぎ澄まされた音を語るようにじっくりと積み重ねていくような趣きがありました。音楽がすっと流れていくというよりは,常に何かを語っているように感じました。ヴァイオリンの音はとてもよく鳴っていたのですが,たとえば,有名な「シャコンヌ」などでも,熱く燃えたぎるような感じにはならず,常にしっかりとコントロールされているような知的な雰囲気がありました。

表現の幅もとても広く,いくつかある弾き方の中から,「これだ」というスタイルを吟味して演奏していると感じました。ややぶっきらぼうな感じで強い表現を感じさせたり,曲の最後でフッと終わって虚無的な空気を漂わせたり,たとえば,ギドン・クレーメルあたりの演奏に通じるような現代性を感じました。センチメンタルでロマンティックな甘さとは別世界の,さりげなく凄いバッハでした。

各曲とも繰り返しをしっかり行っていたせいか,演奏時間がかなり長く,その点では少々疲れたのですが,それは心地よい疲労感でした。演奏後の原田さんは,何もなかったように平然とニコニコされていました。このように「さりげなく凄い」原田さんのバッハの世界を堪能できた公演でした。この際,無伴奏の「残りの3曲」の演奏会にも期待したいと思います。

2018/01/28

ソプラノの #直江学美 さんとパイプオルガンの #黒瀬恵 さんに,N響コンサートマスター #篠崎史紀 さんが加わった演奏会を シュトラウスの「4つの最期の歌」を中心に安らぎに満ちた音楽に浸ってきました

1月後半の恒例になりつつある,ソプラノの直江学美さんとパイプオルガンの黒瀬恵さんに,NHK交響楽団のコンサートマスター,篠崎史紀さんがゲストで加わるコンサートが行われたので,聞いてきました。

今回のテーマは「アール・ヌーボーの世界」ということで,19世紀から20世紀前半の,ロマン派末期作品,もっと限定して言うと,リヒャルト・シュトラウスの「4つの最期の歌」を中心としたプログラムが演奏されました。20世紀前半は,いわゆる「現代音楽」など無調の音楽が出てきた時代ですが,シュトラウスのこの曲は,1950年,死後に出版された作品です。時代の流れに逆らうように(時代のことは考えていなかったのだと思いますが),後期ロマン派音楽の残照を思わせるような気分を持った,美しい作品です。この曲を一度実演で聞いてみたかったというのが,聞きに行った大きな理由です。

今回は,ソプラノ,ヴァイオリン,パイプオルガンという,このコンサートのためのオリジナル編成・編曲で演奏されましたが,豊穣な響きを保ちながらも,晩年ならではの簡潔なスタイルで書かれたこの曲の魅力がしっかりと伝わってきました。ガタガタの雪道の運転で少々疲れ気味だったのですが,すっかり癒されました。

直江さんの声は,ソプラノではあるのですが,しっとりとした落ち着きがあるので,晩年のシュトラウスの曲のムードにぴったりでした。特に後半の2曲は,ずっと浸っていたいような心地よさがありました。直江さんにしっかりと寄り添う,篠崎さんのヴァイオリンも見事でした。4曲目の最後の部分での鳥の声を思わせるトレモロの繊細が絶品でした。そして,全体を包み込む黒瀬さんのオルガン。オルガンの響きが加わることで,3曲目などは,どこか宗教曲を思わせる祈り気分があるなぁと思いました。

篠崎さんは,途中のトークで「この曲はベスト3に入るぐらい好きな曲。3曲目は私の葬儀の音楽として使って欲しい」と語っていましたが,そのことがよく分かる演奏でした。

前半はソプラノとオルガン,ヴァイオリンとオルガン,オルガン独奏,と変化に富んだ内容になっていました。この中で,特に印象的だったのは,篠崎さんがじっくりと演奏した,ヴィターリのシャコンヌでした。「1900年頃のムード」という意味では,ヴァイオリンが趣味という設定になっているシャーロック・ホームズが,「もしもシャコンヌを弾いたら?」という雰囲気があると思いました。長いコートをひるがえしての演奏が格好よかったですね。

それと直江さん,黒瀬さんのドレスも素晴らしいものでした。直江さんは,地元石川の素材を生かしたドレス,黒瀬さんの方もお母さんからもらった着物をリメイクしたドレス。何というか,石川県を音楽で活性化するとしたら,こういうのもありだなぁと思いました。会場の雰囲気もとても和やかで,お二人の活躍がすっかり定着していることを実感しました。

次回はどういう切り口のコンサートになるのでしょうか?カニがある限り(?),篠崎さんは冬の金沢には来られるようなので,是非,次回にも期待したいとと思います。

2018/01/24

OEK設立30周年記念特別公演 #佐渡裕 指揮OEK+兵庫県PAC管弦楽団 合同演奏会 大砲の登場する(煙も出ます)正しい「1812年」をはじめ,お得意のレパートリーを気持ちよく楽しむことができました。さすが佐渡さん! #oekjp

全国的に「今日は大雪?」という警戒が進む中,OEK設立30周年記念特別公演として行われた,佐渡裕さん指揮による,OEKと+兵庫県芸術文化センター管弦楽団(PAC)の合同演奏会を聞いてきました。幸い金沢の雪は,演奏会の開始時点ではさほどでもなく,交通の乱れなどはありませんでした。

今回のプログラムは,前半がOEKとPACがそれぞれ単独で演奏した後,後半は両オーケストラがチャイコフスキーの管弦楽曲を合同で演奏するという構成でした。まず,後半の曲の中に,実演で演奏される機会が少ない幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」が入っていたり,OEK単独演奏としてハイドンの交響曲第44番「悲しみ」が入ていたり,金沢で聞く機会の少ない曲が入っていたのがうれしかったですね。こういうプログラムが組めるのも佐渡さんの人気の力だと思います。

ハイドンの交響曲第44番「悲しみ」は,いわゆる「シュトルム・ウント・ドランク」時代の作品で,ハイドンには珍しい短調の作品です。ただし,この日の演奏は,鋭く攻撃的な悲しみというよりは,しっとりと肌に染み入るような深さを感じました。特に第3楽章の品格の高さと透明感を持った静けさが大変印象的でした。OEKの美質をしっかりと引き出した素晴らしい演奏だったと思います。

2曲目のフォーレの「ペレアスとメリザンド」組曲は,PACオケが設立当初に何度も演奏してきた曲とのことです。佐渡さんお得意のレパートリーといえそうです。第1曲が始まったとたんに,音楽の透明感と同時に音楽が大きく広がり,スケールの大きさを感じました。有名なシシリエンヌを始め,各奏者のソリスティックな活躍も素晴らしく,音楽に立体感を感じました。

佐渡さんと言えば,テレビの映像を見る限りでは、「汗,汗,汗」という印象を持っていたのですが,非常に爽やかで洗練された音楽を作る方だと思いました(佐渡さんの演奏を実演で聞くのは,実は初めてでした)。よい意味で裏切られました。

後半は,お楽しみの合同演奏によるチャイコフスキーでした。「フランチェスカ・ダ・リ・ミニ」は,ダンテの「神曲」に基づく,「地獄めぐり」を描いた曲ですが,有名な「ロメオとジュリエット」序曲同様に,激しい部分とロマンティックな部分の対比が楽しめる作品で,ストレートに大編成オーケストラによる多彩な表現力を楽しむことができました。オーケストラの響きについては,題材的に,もっと不健康な気分が欲しいかなとも思いましたが(不倫がテーマなので),終結部でのパーカッションの強烈な連打をはじめ,圧倒的な響きの魅力に浸ることができました。

最後に演奏された「1812年」については,終盤に出てくる大砲がどうなるのかな?という楽しみがあります。今回は...正真正銘,小細工なしの大砲が登場しました。これには皆さん大喜びでした。舞台下手側には考えてみるとやや不自然な「スペース」があり,終盤この部分にソロソロと大砲が入場。「ドカン!」という音はシンセサイザーだったような気がしましたが,その音と同時に白い煙が立ち上り,「おお」という感じのインパクトがありました。

演奏の方は,純音楽的に素晴らしいと思いました。冒頭のチェロとヴィオラの合奏の音の透明感,キビキビとした音楽の運び,中盤に出てくるヴァイオリンの音の清々しさ...色物的な感じとはひと味違った,密度の高い音楽となっていました。そして,大砲が登場するのと連動して,パイプオルガンのステージにバンダ(別働隊)のトランペットとトロンボーンの皆さんが登場。バンダの音もうるさくなることはなく,音楽に気持ちの良い華やかさを加えていました。

見た目のインパクトだけではなく,音楽面でも「正しい1812年」だったと思いました。

大いに盛り上がった会場からの拍手に応え,アンコールとして佐渡さんお得意のスーザの行進曲「星条旗よ永遠なれ」がシャキっと演奏されました。この曲は,佐渡さん指揮シエナ・ウィンド・オーケストラの演奏会のアンコールの定番曲ですが,元をただせば,佐渡委さんの師匠でもある,レナード・バーンスタインにつながると思います。コーダの部分では,全員起立し,格好良くテンポアップするあたりが佐渡さんらしさ満載でした。

ちなみに(かなり無理がありましたが),チェロ奏者の皆さんまで立って演奏していました。しかもOEKの大澤さんと早川さんはロシアと米国の国旗をこの部分で取り出していました。佐渡さんの指揮にしっかり応えるサービス精神でした。

というようなわけで,大変楽しく充実した公演となりました。演奏会の間は,ホールの外の積雪の状況をすっかり忘れることができました。合同演奏ならではの,お祭り的な華やかさと同時に充実のプログラムを充実した演奏で楽しませてくれた、創設30周年にふさわしい演奏会となりました。

2018/01/06

2018年の「演奏会初め」は,#フォルクハルト・シュトイデ さんのリードによるOEK定期公演。新年早々,ウィーン直送の正しいニューイヤーコンサートを楽しみました。そして,MVPは鍛冶屋担当の #グンナー・フラス さん! #oekjp

2018年最初のコンサートは,OEKのニューイヤーコンサートでした。この演奏会については,10年ぐらい前までは,マイケル・ダウスさんの弾き振りによるシュトラウス・ファミリーのワルツやポルカが定番だったのですが,その後は,声楽を交えたプログラム,古楽を交えたプログラムなど「ウィーン風」にこだわることなく,色々なタイプのコンサートが行われてきました。

今年のニューイヤーコンサートは,今年の1月1日にウィーンでリッカルド・ムーティの指揮の下,ニューイヤーコンサートを行ってきたばかりの,ウィーン・フィルのコンサートマスター,フォルクハルト・シュトイデさんをリーダー&ソリストに迎えての楽しい演奏会となりました。

今年のウィーン・フィルのニューイヤー・コンサート(不思議なめぐりあわせですが,本日,演奏会と同じ時間帯にNHKで再放送をしていましたね)を観たとき,「もしかしたら1月6日に金沢に来るシュトイデさん?」と思った方も多かったと思いますが,本日の演奏を聞いて,まさに産地直送のウィーンの空気を運んでくれたように感じました。それにしても新年早々,シュトイデさんもハードスケジュールです。

演奏会は前半,ウェーバーの「オベロン」序曲とメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲(シュトイデさんがソロ)が演奏された後,後半にシュトラウス・ファミリーの音楽が演奏されました。

ウェーバーの「オベロン」序曲は,OEKが演奏するのは初めてかもしれません。個人的には魅力的なメロディが次々湧いて出てくる感じが大好きな曲です。新年最初にこの曲を聞けて,まず良い気分になりました。シュトイデさんは,通常のコンサートマスターの席に座り,リードする動作も必要最小限でしたが,そういったところに職人的な雰囲気を感じました。とろんとした感じの序奏とキビキビと妖精が動き回るような主部とのコントラストが鮮やかかつ自然で,この曲の魅力をストレートに味わうことができました。

メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲の方は,昨年は神尾真由子さんの演奏で聞きましたが,その演奏とは対照的な気分のある演奏でした。まず,ステージ中央にビシッと立つシュトイデさんの姿が凜々しかったですね。音楽の方もグイグイと攻めるようなテンポで始まりました。シュトイデさんのヴァイオリンについては,音には甘い香りがあるけれども,表現としては引き締まっており,さすがウィーン・フィルのコンサートマスターというバランスの良さがあると感じました。

最初の部分は,オーケストラとのテンポ感が少し合わない感じもしましたが,段々と一体となって音楽が流れて行きました。じっくりとテンポを落とした第2主題の静謐な雰囲気もとても良いと思いました。耽美的になりすぎない第2楽章では,その分,曲の素朴で親しみやすい味のようなものを感じました。第3楽章も,自由自在に羽ばたくというよりは,OEKと一体となって音楽を楽しむような,室内楽的な気分がありました。ソリスティックな華やかさよりは,指揮者無しのアンサンブルのスリリングさ(?)であるとか,楽しさを感じさせてくれるような演奏だったと思います。

さて後半です。最初に演奏された「こうもり」序曲を聞いて,「正しい「こうもり」だ!」と思いました。この曲については,実演でもCDでも何度も聞いてきた曲ですが,テンポ感であるとか間の取り方であるとか,すべての点で,「これだ!」と思わせるフィット感がありました。安易に「本場の演奏」と言いたくはないのですが,シュトイデさんは,ウィーンで「こうもり」を毎年のように演奏しているはずなので,今回,そのエッセンスがしっかりとOEKに伝えられたのではないかと思いました。

その後も楽しい演奏の連続でしたが(特にエドゥアルト・シュトラウスの「テープは切られた」は,リアルに鉄道を描写しており気に入りました),何と言っても「鍛冶屋のポルカ」が最高でした。これからOEKのニューイヤーコンサートに行く人には「ネタばれ」になってしまうのですが,鍛冶屋担当のグンナー・フラスさんのパフォーマンスが最高でした。

鍛冶屋をイメージするエプロンを付けて,ステージ中央に登場。ソリスト気分満々でシュトイデさんやヤングさんと握手。さらには何とチューニングも開始。オーボエのAの音を受けて,金床をカーンと叩く,というパフォーマンス(個人的には,これがいちばん受けました)。その後もバッグ(「鍛冶屋さん背セット一式」という感じでしたね)から,飲み物を取り出したり,新聞を取り出したり...周到に準備された,楽しいパフォーマンスに拍手大喝采でした。そして,何よりも金床のカーンと冴えた音。この音自体素晴らしいと思いました。

など,珍しい作品も交えてプログラムが進み,最後は定番中の定番の「美しく青きドナウ」で締められました。この演奏でも,序奏の弦楽器の弱音トレモロの音の後にホルンの音が聞こえてくると,「ドナウ!」という気分になります。そして主部がゆったり始まると...ウィーン国立歌劇場のバレエが見えてくるような錯覚になります。こうもり同様,「正しいドナウ」という安心感のある演奏でした。

アンコールはもちろん,聴衆が手拍子で参加するラデツキー行進曲した。井上道義さん指揮のニューイヤーコンサートの時は,あえてこの曲を外しているようなところがありましたので,考えてみると久しぶりかもしれません。テンポは,(私の感覚では)今年のムーティ指揮ウィーン・フィルと同じくらいだと思いました。和気あいあいと楽しむのに最適のテンポでした。

というようなわけで,今年のニューイヤーコンサートでは,産地直送のウィーン風ニューイヤーを楽しむことができました。OEKは今後,富山県射水市,東京,大阪でも同様のコンサートを行いますが,指揮&ピアノはシュテファン・ヴラダーさんになります。恐らく,シュトイデさんの演奏とは一味違った演奏になると思います。金沢で楽しんだ後,もう一度楽しみたい方も含め,是非お出かけください。

PS.今年も恒例の「たろう」さん提供の「どら焼き」のサービスがありました。今年はピーナッツ味ということで,どういう味か今から楽しみたいと思います。

2017/12/31

今年もOEKを中心に沢山の音楽を #石川県立音楽堂 などで楽しむことができたことに感謝。来年は平成30年,OEKも30年&新音楽監督に。楽都音楽祭は2年目。新しい扉が開かれることを楽しみにしたと思います。#oekjp

2017年も大晦日となりましたので,今年1年の金沢周辺で行われたコンサートをふり返っていたいと思います。私の方は,今年も石川県立音楽堂でのOEKの公演を中心に,色々な演奏会に行くことができました。定期公演PHとMも全部聞くことができました。まずは,ライブでの音楽鑑賞を生活の中に置いた生活を続けることができたことに感謝したいと思います。

1月
  • エンリコ・オノフリ指揮 PH定期 王宮の花火の音楽やモーツァルトの「ハフナー」交響曲を中心とした,古楽奏法によるニューイヤーコンサートはとても祝祭的でした。
  • 笈田ヨシ演出,中嶋彰子ソプラノによる新演出の「蝶々夫人」。ベテラン演出家ならではの,リアルに日本的で新鮮な公演でした。こういう新演出が金沢からスタートしていることは素晴らしいことだと思います。
2月
  • マルク・ミンコフスキ指揮 PH定期 定期公演の中でのロッシーニの「セヴィリアの理髪師」全曲。生きの良い若手歌手が音楽的にもパフォーマンス的にも縦横無尽に躍動していました。
3月
  • 井上道義指揮 M定期 モーツァルトの「レクイエム」を中心としたプログラム。抑制の効いた,深い内容を感じさせる演奏。ダニイール・グリシンさんの独奏によるバルトークのヴィオラ協奏曲も充実の演奏でした。
4月
  • 鈴木優人指揮 PH定期 OEK定期初登場の鈴木さん指揮による,春にふさわしい柔らかさのある演奏はとても魅力的でした。ヴァイオリンの木嶋真優さんもすっかり大人の演奏家になりました。
5月
  • いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2017 ラ・フォル・ジュルネ金沢の後継音楽祭として,ベートーヴェンをテーマに行われました。ラ・フォル・ジュルネのスタイルを踏襲しつつ,「地元アーティスト」の活躍が増えていたのが特徴だったと思います。充実した公演も多かったのですが,全体的に見ると,2年目以降,さらに金沢的に発展していって欲しいと思いました。
  • 新人登竜門コンサート ピアノ部門 川畑夕姫さん,尾田奈々帆さんはともに立派な演奏。これから色々な公演での再会を期待しています。
6月
  • ハインツ・ホリガー指揮 PH定期 70代後半とは思えない,チャレンジングでスリリングな選曲と演奏。
  • アビゲイル・ヤング リーダー&ヴァイオリン M定期 指揮者なし,ソリストなし(全部ヤングさんが兼務!)だからこそ,OEKの魅力がストレートに伝わってくるような素晴らしい公演。
7月
  • 辻博之指揮 M定期 M定期はモーツァルトの音楽がテーマでしたが,その締めくくり。マイナーなオペラアリアや重唱を組み込むなど,そのまま来年の「楽都音楽祭」に持って行ってもよさそうな内容でした。
  • 井上道義指揮 PH定期 ティエリー・エスケシュさんの自作・自演によるオルガン協奏曲(新作)を中心とした音楽堂ならではのプログラム。
9月
  • 井上道義指揮 PH定期 新シーズン最初は,神尾真由子さんとがっぷり四つに組んだベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲と井上さんが「この曲はOEKとしか演奏する気がしない」と語っていたベートーヴェンの「田園」。この頃,井上さんの退任が発表されましたが,いつかまた,井上さんの「田園」は聞いてみたいものです。
10月
  • シュテファン・ヴラダー指揮,ピアノ PH定期 ヴラダーさんの弾き振りによるモーツァルトの協奏曲と筋肉質の「ジュピター」。新しいウィーンのスタイルといった感じの充実した演奏の連続でした。
11月
  • アマデウスLIVE 映画「アマデウス」の映像に合わせて,全編サウンド・トラックを演奏するという凄い企画。指揮者の辻博之さんとOEKの職人技で,名作映画の魅力がさらにアップしていました。
  • 歌劇「トスカ」 広上淳一指揮 河瀬直美新演出による全国巡回公演の一つ。日本的で新鮮な映像美と濃厚なドラマとを堪能させてくれる公演。「トス香」役のルイザ・アルブレヒトヴァさんも役柄にぴったりでした。
  • ミヒャエル・ザンデルリンク指揮 M定期 10月に続いてのモーツァルト中心のプログラムでしたが,全く違うアプローチから,説得力のある音楽を聞かせてくれました。この柔軟性がOEKの素晴らしさだと思います。
  • デーヴィッド・アサートン指揮 PH定期 OEKがこれまであまり取り上げてこなかったイギリス音楽特集+おなじみのベートーヴェンの7番。とても合理的であると同時に,ベテラン指揮者ならではの風格が伝わってくる充実した公演でした。
その他,IMA関連の室内楽公演,オペラを落語化した「死神」,北陸初演だったヴェルディの「レクイエム」,岩城さんのスピリットを引き継ぐ「メモリアルコンサート」,ジャズ・ヴァイオリン奏者・マッズ・トーリングとの共演,管楽器メンバー大活躍の室内楽公演...どれもこれも素晴らしい内容でした。

私の場合,大抵の曲については「このスタイルでないとダメ」という聴き方ではなく,「今度はこう聞かせてくれたか」という感じで,違いを見つけるのが好きです。どの公演でも,曲の素晴らしさや面白さを伝えてくれる工夫があり,それを見つける喜びを感じました。

来年2018年は,平成30年であると同時に,OEK創設30周年の年になります。そして,約10年OEKの音楽を務めた井上道義さんが退任されます。考えてみると,春の連休中に行われていた,ラ・フォル・ジュルネ金沢と在任期間が連動していたんですね。いずれにしても,節目の年になることは確かです。まずは,OEKの次期音楽監督がどなたになるかが大変気になります。いろいろな点で新しい扉が開かれることを期待したいと思います。


これはいつも思っていることですが,来年については,少しでも平和な世界となり,少しでも多くの人が生で音楽を聞くことの喜びや楽しみを味わうことのできる年になって欲しいと思います。

それでは,良いお年をお迎えください。

2017/12/28

今年の「演奏会納め」は,#永峰大輔 さん指揮 #金大フィル 定期演奏会。青春の音楽といった感じのシベリウスの交響曲第1番にすっかり魅せられました。

本日は仕事納めの人が多い日でしたが,私の「演奏会納め」は,石川県立音楽堂で行われた,金沢大学フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会でした。指揮者は永峰大輔さんで,ドヴォルザークの序曲「オセロ」,リストの交響詩「レ・プレリュード」,そして,後半にシベリウスの交響曲第1番が演奏されました。「レ・プレリュード」がいちばん有名な作品だとは思いますが,どの曲も実演で演奏される機会が少ない作品です。比較的地味なプログラムかなと思ったのですが,大変聞き応えのある演奏会になりました。

特に後半に演奏されたシベリウスの交響曲第1番が素晴らしい演奏でした。第2番に比べると演奏する機会の少なく,私自身,実演で聞いた記憶が残っていない作品なのですが(確か,同じ金大フィルの演奏会で聞いたことがありますが)...特に終楽章を聞いて,「これは青春の音楽だなぁ」と素直に感動してしまいました。

永峰さんの指揮は大変明快で,金大フィルから思い切りの良い響きを引き出していました。特にヴァイオリンをはじめとした弦楽器が美しく,随所で痛切な美しさを感じました。ティンパニの強打も印象的でした。見るからに気合いの入った演奏で,ストレートに聞き手の心に音が飛び込んでくるようでした。

それでいて熱くならないのがシベリウスの音楽です。冒頭のクラリネットの独奏から,ひんやりとした感触のある,ミステリアスな世界が広がりました。柔らかな響きが印象的な第2楽章。大変軽快な第3楽章とそれぞれの楽章ごとに違った世界が広がりました。

そして,第4楽章が特に感動的でした。プログラムの解説に「この演奏会で3年生メンバーは最後。色々な思いがこもっている」といったことが書かれていたのですが,まさにその通りの音楽でした。複雑な思いと感動がこみ上げてくるようなエンディングだったと思います。
シベリウスのこの曲については,これまであまり聞いてこなかったのですが,若い奏者にぴったりの音楽だと思いました。

前半に演奏されたドヴォルザークの「オセロ」,リストの「レ・プレリュード」もそれぞれも立派な演奏でした。「オセロ」の方は,今回初めて聞く曲でしたが,ロマンティックな気分,嫉妬を思わせるミステリアスな雰囲気など,ニュアンスの変化に富んだ音楽を楽しむことができました。「レ・プレリュード」では,パーカッションが活躍する終結部に向けて,率直に盛り上がっていくのが爽快でした。

シベリウスの後にアンコールとして,同じシベリウス作曲の「アンダンテ・フェスティーヴォ」が演奏されました。そして,この曲については,学生指揮者の正村さんが指揮をしましました。これまで,金大フィルの定期演奏会を何回も聞いてきましたが,学生指揮者が登場するのは初めてのことかもしれません。

正村さんの指揮については,今年のサマーコンサートでチャイコフスキーの交響曲第5番の演奏を聞いて,「すごい」と思ったことを思い出しますが,永峰さんもその熱い指揮に魅せられたのかもしれませんね。凜とした力強さのある演奏を聞きながら,改めて,学生オーケストラは良いなぁと思いました。

というわけで,大変気持ちよく「1年納めの演奏会」を楽しむことができました。

2017/12/23

年末恒例 ベートーヴェン「荘厳ミサ」公演を石川県立音楽堂で聴いてきました。合唱は石川県合唱協会合唱団,オーケストラは#田尻真高 指揮 #石川フィルハーモニー交響楽団。平和への祈りが真摯に伝わる充実感のある演奏でした。

年末恒例の石川県音楽文化協会主催の「荘厳ミサ」の公演を石川県立音楽堂で聴いてきました。合唱は石川県合唱協会合唱団,オーケストラは石川フィルハーモニー交響楽団。指揮は,田尻真高さんでした。

年末に第9を演奏する団体は,日本中にありますが,毎年,ベートーヴェンの荘厳ミサ(ミサ・ソレムニス)を毎年演奏しているアマチュア合唱団は多くないと思います。1970年から毎年演奏しているということですので,そろそろ50周年に近づいています。

しかもここ数年は,オーケストラの方も地元のアマチュアオーケストラの石川フィルが演奏しており,ソリスト以外は,全部地元音楽家によるという形がすっかり定着しています。昨年,久しぶりにこの公演を聴いたのですが,伝統の重み,アマチュアならではの熱さに加え,演奏自体の水準が高く,「年末の締めに必須」と思い,今年も聞きに行くことにしました。

今年の公演で注目していたのは,若手指揮者の田尻真高さん指揮でした。そして,その期待通りの,引き締まった演奏を聴かせてくれました。昨年までの山口泰志さんの指揮も素晴らしかったのですが,伝統のエネルギーを若さが引っ張るような見事な演奏でした。

第1曲のキリエの最初から,合唱,オーケストラともに音のバランスがとても良く,密度の高さが感じられました。第2曲グローリアの最初の音での,バシッと揃って,パンと飛び出してくる感じ。後半のフーガの部分での,合唱とオーケストラが一体となった推進力のある充実感。この部分では,パイプオルガンがしっかりと低音を支えており(おなじみ黒瀬恵さんがオルガンでした),音楽堂ならではの響きに浸ることができました。

第3曲クレドでは,途中,イエスの生涯が語られる部分の雄弁さが印象的でした。今回のソリストは,昨年と全員同じでした。この部分に限らないのですが,ソプラノの石川公美さんの輝きのある声,テノールの倉石真さんの柔らかな声を中心に,派手になり過ぎることなく,じっくりと感動を伝えてくれるような歌を聴かせてくれました。

第4曲のサンクトスから第5曲のアニュス・デイに掛けては,通常の宗教音楽から一歩踏み出した,コンサートホールで聴くのにふさわしい音楽です。サンクトゥスでは,後半のヴァイオリン・ソロが注目です。石川フィルのコンサート・ミストレスの方が,繊細で心に染みる歌を見事に聴かせてくれました。ソリストたちとの絡み合いは,天上の音楽といった感じでした。

第5曲のアニュス・デイは,平和への祈りの音楽です。最初の部分に出てくるバスの清水宏樹によるしみじみとした「ミゼレーレ」の声に続き,平和への祈りの音楽が続きます。この部分の音楽では純粋な祈りと同時に,フランス革命などが起こった後の作曲当時のヨーロッパの空気が感じられます。その点がベートーヴェンらしいなぁといつも思います。最後の「Pacem(平和)」の繰り返しが,しっかりと感動を残して締められました。

相変わらず紛争が絶えない世界です。世界だけではなく,もっと身近なレベルでも異文化間での紛争は絶えません。そういう時代だからこそ,ベートーヴェンの音楽の持つ,理想主義的な強さが必要な気がしています。

2017/12/10

12月恒例のOEKと北陸聖歌合唱団による #メサイア 公演はダグラス・ボストックさん指揮。これぞスタンダードという感じの「大人のメサイア」だったなぁと思いました。 #oekjp

12月恒例の北陸聖歌合唱団とOEKによるクリスマス・メサイア公演を聞いてきました。今年の指揮者は,英国出身のダグラス・ボストックさんでした。OEK指揮をされるのは,数年前の定期公演以来のことだと思います。「メサイア」の歌詞が英語なのですが,考えてみるとこの年末メサイア公演に英国出身の指揮者が登場するのは,初めてかもしれません。

そのせいもあるのか,今年の「メサイア」は,非常にスタンダードで紳士な雰囲気があると思いました。我が家にある「メサイア」のCDは,トレヴァー・ピノック指揮イングリッシュ・コンサートの録音で,いつの間にかこれがデフォルトになってしまっているのですが,その気分に近いと感じました。第1曲の序曲から,歪みの少ない,イメージどおりメサイアを聴いたなぁという実感が残るような演奏でした。

ハレルヤ・コーラスにしても,最後のアーメン・コーラスにしても,非常に率直で,大げさなテンポの変化はなく,ストレートに「主をほめたたえる」気分が伝わってきました。トランペットが加わって,壮麗さが加わる曲では,過去,音楽堂のパイプオルガンのステージで演奏するケースもありましたが,今回は通常の「1階席」でオーケストラの一員として演奏していました。オーケストラとしっかり溶け合いつつ,音全体として壮麗さを増しているようでした。OEKによる「メサイア」も20回近くになっているはずですが,今回の公演は,「大人のメサイア」という感じで,公演自体成熟してきているなぁと感じました。

「メサイア」の前に,いつも演奏しているOEKエンジェルコーラスの合唱は,榊原栄さん編曲によるおなじみのクリスマス・ソングメドレーというのが定番で,個人的には大変好きなアレンジだったのですが,今年は,オルガンの伴奏による宗教的な気分のある合唱曲が3曲でした。今回の「大人のメサイア」の気分にぴったりだったと思いました。

今回,ボストックさんは,ソリストの入る曲の時は指揮棒なし,合唱曲の時は指揮棒ありで指揮されていました。この方針は非常に明確でした。その音楽も大変明快でした。北陸聖歌合唱団の皆さんをしっかりコントロールしつつ,いつもにも増してまとまりのよい歌を聞かせてくれたと思います。英国というと合理的と連想してしまうのですが,音楽全体に,健全な合理性のようなものが感じられ,聞いていて,「メサイア」という曲がベースとして持っている,希望や安らぎに向けてのベクトルがしっかりと最短距離で伝わってきました。

独唱者の皆さんは,毎年素晴らしいメンバーが揃っているのですが,今年も声の饗宴のような素晴らしさでした。テノールの鈴木准さんの若々しく,清々しい声,バリトンの久保和範さんの威厳と慈愛に溢れた声。池田香織さんの余裕のある深く輝かしい声。そして,金沢の「メサイア」には無くてはならない朝倉あづささんの可憐な声。プログラムによると,今年が26回目のメサイア公演ということで,まさにエバーグリーンの声だと思います。というわけで,ソリストの方もまた,私にとっての「デフォルト」でした。

残念だったのは,第2部を中心にカットが多かったことでしょうか。特にいちばん長い,メゾ・ソプラノのアリアがないと,「受難の気分」が薄まるかなと思いました。

というわけで,この「大人のメサイア」で是非,一度,全曲を聞いてみたいと思いました。期待をしています。

2017/12/09

#ミッシャ・マイスキー と #広上淳一 指揮OEKが共演したPFU創立30周年記念クリスマス・チャリティコンサート。マイスキーさんのニュアンス豊かで情熱を秘めた音をしっかり味わってきました。 #oekjp

毎年12月恒例のPFU主催のクリスマス・チャリティコンサートも,今年で30周年となります。オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の設立当初からずーっと毎年のように開催されている伝統ある演奏会です。今回は記念の年ということで,スペシャル版となり,世界でもっとも有名なチェリストの一人,ミッシャ・マイスキーと広上淳一指揮OEKが共演しました。定期公演でも実現していない,夢の共演が実現しました(ただし,調べてみると,海外公演ではマイスキーさんとOEKは共演しているようですね)。

前半後半とも,マイスキーさんの独奏が入る曲が最後に演奏されていたので,「マイスキーさんが主役」という内容の演奏会でしたが,曲の雰囲気に統一感があったので,とてもまとまりの良い構成になっていました。

私自身,マイスキーさんの演奏を生で聴くのは,今回が3回目だったのですが,過去2回については,結構後ろの座席で聞いたせいか,実はあまり印象が残っていません。今回もそれほど聞きやすい席ではなかったのですが(今回,座席は自分では選ぶことができず,少々苦手な(斜めに聞くのが苦手なのです)バルコニー席でした),音の方はよく聞こえました。改めて,素晴らしいチェリストだと思いました。そのニュアンス豊かで情熱を秘めた音をしっかり味わうことができました。

前半のハイドンのチェロ協奏曲第1番は,「地味にすごい曲」です。第1楽章は,屈託なく始まるのですが,さりげなく技巧的で,特に第3楽章は,超絶技巧的な感じになります。マイスキーさんのチェロの音には輝きがあり,特にぐっと音を弱くして意味深さを感じさせてくれるのが印象的でした。第2楽章ではしっかりとした歌を聞かせてくれました。呼吸が深く,息長く続くチェロの歌を堪能できました。第3楽章は,挑みかかるような速いテンポで,広上さん指揮OEKと一体になって,野性味のある演奏を聞かせてくれました。部分的にはちょっと粗いかなと感じさせる部分もありましたが,どの楽章についても,表現意欲とニュアンスの多彩さ,そして歌に溢れた演奏を聞かせてくれました。

後半最後に演奏された,チャイコフスキーの「ロココ変奏曲」は,さらにこなれた「十八番」といった演奏でした。広上/OEKによる,センシティブで憧れに満ちた序奏に続いて,くっきりと確信に満ちた主題が始まりました。この古典的な明快さに続いて,さり気なく深い表情を持った変奏が続きました。この曲でも弱音でじっくりと演奏される変奏での意味深さが素晴らしいと思いました。急速なテンポで演奏された,最後の変奏は,さすがに演奏するのは大変そうでしたが,最後の最後の部分では,少しテンポを落としており,歌舞伎の名優が見得を切って,決め台詞を言うような語り口の上手さを堪能できました。

マイスキーさんの髪の毛のボリュームは相変わらずでしたが,色の方はすっかり真っ白になっていました。その一方で,演奏の方は,気力に満ちており,円熟味を増しているなと感じました。こういうマイスキーさんとOEKの共演を聞くことができ,とても良かったと思いました。

その他のOEK単独で演奏された曲も楽しめました。

最初に演奏されたモーツァルトの「劇場支配人」序曲は,現在の「題名のない音楽会」で,テーマ曲として使っている曲です。意外に実演では聞く機会のない曲ですね。広上さんのテンポ設定は,大変どっしりとしたもので,大船にのった気分で,「ゴージャスに開幕」といった気分を伝えてくれました。

後半最初に演奏された,チャイコフスキーの「モーツァルティアーナ」は,チャイコフスキーがモーツァルトの曲をオーケストラ用に編曲した組曲です。最初の3曲が短く,4曲目だけが10分以上かかる変奏曲という,少々変わった構成の曲です。「ロココ変奏曲」の方も,古典志向の曲でしたので,取り合わせはとても良いと思いました。

とても聞きやすい曲でしたが,オーケストレーションすることによって,言葉は少々悪いですが,「のんべんだらり」とした緩い雰囲気の曲だと思いました。特に最後の変奏曲がそういう感じでした。しかし,そこがまた良いところで,木管楽器を中心とした各楽器の語らいを楽しむことができました。特に最後の変奏での,コンサートミストレスのアビゲイル・ヤングさんの独奏はかなり長大なもので,聞きごたえがありました。そして,曲が終わる直前に「ちょっと待ったー」という感じで入る,クラリネットの遠藤さんによる,鮮やかなソロも見事でした。広上さんの慌てない指揮ぶりで,堂々たるスケール感も伝わってきました。

アンコール曲は,マイスキーさんとオーケストラの共演で2曲演奏されました。1曲目は,チャイコフスキーのノクターンでした。ストレートにマイスキーさんのチェロの音の美しさとセンチメンタルな歌の味わいに浸ることのできる演奏でした。

2曲目は,サン=サーンスの白鳥が演奏されました。弦楽合奏とハープ伴奏版で聞くのは珍しいことですが,息の長い歌に酔わせてくれました。そして,弦楽合奏+ハープの伴奏ということで,聞いているうちに,マーラーの「アダージェット」と似た浮遊感があるなぁと思いました。

以上のとおり,マイスキーさんの魅力だけではなく,OEKらしさも感じられる曲が並んでいました。マイスキーさんについては,大編成のオーケストラと共演するよりは,小編成での演奏の方が個性を強く味わうことのできるアーティストではないかと思いました。というわけで,機会があれば是非,OEKとの再共演や音楽堂での室内楽公演を期待したいと思います。

2017/11/30

OEK定期初登場の #デイヴィッド・アサートン さんによる英国音楽とベートーヴェンの7番。お国ものの素晴らしさは当然として,交響曲での自然な風格に溢れた音楽にも聞き惚れました #oekjp

11月後半のOEKのフィルハーモニー定期公演には,OEK初登場となる,デイヴィッド・アサートンさんが登場しました。アサートンさんは英国出身で,ロンドン・シンフォニエッタの指揮者としても知られた方です。個人的には,「今シーズン屈指の公演になるに違いない」と期待していたプログラムでした。

プログラムの方は,前半が「お国もの」の英国の音楽,後半では,OEKが何回も演奏してきたベートーヴェンの交響曲第7番が演奏されました。協奏曲が入らないプログラムということで,どちらかというと地味目のプログラムと言えますが,期待通りの充実した音楽を楽しむことができました。

前半の英国音楽については,OEKはこれまであまり演奏してこなかったのですが,こうやってまとめて聞いてみると,実に味わい深いなと思いました。押しつけがましいところはないのに,しっとりとした情感がホール全体に染みわたりました。アサートンさんは,思ったよりも立派な体格の方で,その「かくしゃく」とした指揮ぶりが印象的でした。そして,その音楽には,何ともいえない風格が滲み出ていました。

最初に演奏された,エルガーの「夜の歌」と「朝の歌」は,2曲セットになった親しみやすい作品で,夕べの祈りから爽やかな朝へと,心地よく情感が推移していきました。バートウィッスル作曲のヴィルレーは,この日演奏された曲の中では唯一21世紀の作品でしたが,古い時代の曲を基に作られていただけあって,ストラヴィンスキーの「プルチネッラ」をより先鋭にしたような,古いのか新しいのか分からない,不思議な雰囲気を味わうことができました。

ディーリアスの劇付随音楽「ハッサン」~間奏曲,セレナードもまた,「英国音楽って本当にいいものですねぇ」と言いたくなるような作品でした。最初の音を聞いた瞬間から,「ポエムだなぁ」という感じになり,ホールの空気が一転しました。クリアだけれども不思議なサウンドは,どこか武満徹の曲を思わせるような味があると思いました。そのまま「セレナード」の部分になるのですが,ここでは,この日のゲスト・コンサートマスターだったジェームズ・カドフォードさんのソロが大活躍していました。静かに澄みきった世界が続き,このままずーっと,ディーリアスの世界に浸ってたいたいなと思いました。

前半最後は,ブリテンのシンプル・シンフォニーでした。名前からすると軽く見られがちな曲ですが,実は,第3楽章の「センチメンタルなサラバンド」を中心に,とても聞きごたえのある曲です。アサートンさんの作る音楽は,基本的には,力み過ぎることのない,余裕のある音楽だったのですが,随所に若々しく新鮮な気分が溢れており,素晴らしいなぁと思いました。第2楽章での精彩に満ちたノリ良く,軽やかなピツィカート。鮮烈に聞かせる第3楽章。ビシッと力強く聞かせた第4楽章。前半の最後に相応しい充実した音楽でした。

前半は,結構曲数が多く,しかも曲ごとに編成が違っていたので,ステージマネージャーさんが大活躍でした。英国音楽の多様性を感じさせてくれると同時に,全体に通底するような,英国的品の良さやユーモアを感じさせてくれるような素晴らしいプログラミングだったと思いました。

後半のベートーヴェンの交響曲第7番も,虚飾を排しつつも,随所で味わい深さを感じさせてくれる,ベテラン指揮者ならではの演奏だったと思います。アサートンさんの指揮には大げさに盛り上げようとする感じはないのですが,全曲を通じて,自然ににじみ出てくるような熱さがありました。そして,風格がありました。

第1楽章の序奏部から,そのストレートな音楽がとても気持ちよく感じました。この気持ち良さは,全曲を通じて一貫していたと思いました。快速でキリッと引き締まった第4楽章を中心に音楽全体が実に若々しく,OEKメンバーが敬意を持って,アサートンさんの指揮に反応しているなぁと思いました。第4楽章のコーダは,大変ノリが良く,しっかりコントロールされつつも,勢いに溢れた素晴らしい音の流れを作っていました。

この曲の隠れたチェックポイントである,第1楽章と第4楽章のコーダに出てくる,バッソ・オスティナートの部分も素晴らしいな,と思いました。低音部が執拗に同じ音型を繰り返す上に高音部で緊張感を高めていく部分ですが,威力抜群でした。ヴィオラのダニール・グリシンさん,チェロのルドヴィート・カンタさん,コントラバスのマルガリータ・カルチェヴァさんを中心とした低音部の迫力は室内オ―ケストラとは思えないほどでした。

というようなわけで,今回初顔合わせだったアサートンさんとOEKとの組み合わせはとても良いと思いました。アサートンさんについては,現代音楽が得意ということで,もっと冷たい雰囲気の方かと予想していたのですが,音楽の奥には,常に熱さを秘めていると思いました。特に前半の英国プログラムについては,これまで「盲点」のようになっていましたので,是非,続編を期待したいと思います。CDなどで聞くと地味な印象なのは確かなのですが,実演で浸って聞くと格別,という気がしました。

2017/11/21

音楽堂室内楽シリーズ:OEKチェンバー・コレクションⅡで,木管五重奏の多彩な世界を堪能してきました。みなさま,お疲れ様でした。 #oekjp

「音楽堂室内楽シリーズ:OEKチェンバー・コレクションⅡ」が石川県立音楽堂交流ホールで行われたので聞いてきました。今年度のこのシリーズでは,OEKの各パートをしっかり活用した「やや大きめの室内楽曲」が取り上げられることが多いようです。今回は,木管五重奏曲と木管五重奏+ピアノの曲ばかりが並んだ,充実のプログラムでした。

登場したのは,次の皆さんでした。
  • ファゴット:柳浦 慎史
  • ホルン:金星  眞
  • フルート:松木 さや
  • オーボエ:加納 律子
  • クラリネット:遠藤 文江
  • ピアノ:鶴見彩
余談ですが,プロフィールを読みながら「東京芸大の出身者が6人中5人だなぁ」と変なところに注目してしまいました。この日は,上の階(コンサートホール)では,神尾真由子さん,平野加奈さんとロシアの交響楽団がチャイコフスキーの協奏曲を共演する演奏会が行われていましたので,そちらに敢えて行かなかったお客さんばかりということになります(私の場合,経済的な理由もありますが)。今回のメンバーとプログラムの「豪華さ」を理解するお客さんばかりということで,とても暖かな雰囲気があったと感じました。

木管五重奏は,弦楽器を中心とした室内楽曲に比べるとあまり親しまれていないと思いますが,今回のプログラムを聞いて,その多彩さをしっかり感じることができました。司会のOEKファゴット奏者の柳浦さんが「プログラムのメインになるような曲を4つ並べた。演奏する方も聞く方も大変です」と語ったとおり,充実感のあるプログラムでした。

今回演奏されたのは,次の4曲でした。
  • ヒンデミット:小室内音楽
  • トゥイレ:六重奏曲
  • ニールセン:木管五重奏曲
  • プーランク:六重奏曲
このうち,トゥイレとプーランクには,ピアノが入りました。4曲の中では,いちばん知られていない作曲家,トゥイレの曲がいちばん聞きやすく,オーソドックスなまとまりのある曲だったと思いました。この曲を聞くのは2回目ですが,ブラームスの曲を思わせるようなシンフォニックな気分がありました。4楽章構成で全体で30分ほどかかりましたが,爽やかな空気に満たされたような気持ち良さがあり,全く退屈することなく楽しむことができました。この分野では,屈指の名曲ではないかと思いました。

ヒンデミットの作品は,タイトルどおり,もう少し小さく凝縮されたような雰囲気の音楽でした。一つのモチーフが何回も繰り返されて,がっちりと積み重ねられていく感じが,ヒンデミットらしいなと思いました。

ニールセンの曲については,柳浦さんは晩年はやや精神を病んでいたと言われていたと語っていたのですが,曲の中にもそのことが反映されていた気がしました。のどかな気分かと思ったら急に激しく叫ぶような感じになったり,少々捉えどころのない作品でした。最後の楽章の変奏の部分なども,かなり感情の変化の起伏が大きかったのですが,逆にその点に現代性を感じました。個人的に妙に引かれる作品でした。

最後に演奏されたプーランクの六重奏曲は,今回のプログラムの中でいちばん有名な曲で,私自身,唯一CDを持っている曲です。冒頭の部から,生き生きした音の動きと,ちょっと野性味を持った迫力と,甘く夢見るような雰囲気とが交錯し,プーランクの作品の中でも特に素晴らしい作品だと思います。生演奏で聞くと,特にその音の動きの面白さが生々しく伝わってきます。キラキラするようなフルート,オーボエ,クラリネットの高音も印象的でしたが,低音からグッと盛り上がってくるようなホルンやファゴットの音も良いなと思いました。

曲の最後の部分は,テンポをぐっと落とし,余韻をたっぷりと楽しむ雰囲気になりました。もしかしたら,演奏する方にとっても非常に大変だった今回のプログラムの余韻を皆さんしっかりと噛みしめていたのかもしれませんね。みなさま,お疲れ様でした。

アンコールでは,ラヴェルの「クープランの墓」の終曲の一部が演奏されましたが,木管五重奏の世界はまだまだレパートリーがありそうなので,是非続編に期待したいと思います。とりあず,「クープランの墓」の全曲に期待したいと思います。


今回の編成と同じ室内楽グループでは,「レ・ヴァン・フランセ(フランスの風)」が有名ですが,この際,何かグループ名を付けて活動して欲しいぐらいです。「金沢の空(Le ciel de Kanazawa)」とかどうでしょうか。

2017/11/18

#ミヒャエル・ザンデルリンク 指揮OEK定期公演M。前月のヴラダーさんとは一味違う,ずしっとした味わいのモーツァルト。フェッターさんの優雅なピアノもお見事 #oekjp

もう金沢の冬も間近といった雰囲気の雨の中,ミヒャエル・ザンデルリンクさん指揮によるOEK定期公演マイスターシリーズを聴いてきました。今シーズンのマイスターシリーズのテーマは,「ドイツ,音楽の街」」ということで,ドイツの色々な都市にちなんだ音楽や演奏家が登場するという趣向ですが...今回の「フランクフルト」については,どういうつながりがあったのか,実はよく分かりませんでした。

ただし内容の方は素晴らしいものでした。10月のシュテファン・ヴラダーさん指揮のフィルハーモニー定期でもモーツァルトのピアノ協奏曲と交響曲が取り上げられましたので,その続編のようなところがあったのですが,今回のザンデルリンクさん指揮のモーツァルトは全く別の味わいを出していました。同じ洋食でもシェフによって味付けや盛り付けが違っているのを楽しむような,定期会員ならではの贅沢さを味わうことができました。

先月のヴラダーさんのモーツァルトは筋肉質に引き締まった感じがあったのですが,ザンデルリンクさんの方は,もう少し肉付きがよく,現役の大相撲で言うところ豪栄道ぐらいの(変なたとえですみません)バランスの良さを感じました。

最後に演奏された交響曲第39番は,実は,個人的に今いちばん好きな交響曲です。第1楽章の冒頭のテンポ感は,もはやカラヤン,ベームといった時代の重いテンポではないのですが,古楽奏法を意識した演奏に多い,さらっと軽く乾いた感じはなく,昔ながらのモーツァルトに近い,ずっしりとした重みを感じさせてくれるような演奏でした。このことが,まず私の波長にピタリと合いました。

第1楽章の展開部に入ったところで,これまで聴いたこともないような大きな休符が入り,なんとも言えない深淵な雰囲気が漂いました。ところどころこういう感じでニュアンスの変化を際立てたり,音楽のエネルギーがぐっと高まったりするところが素晴らしいと思いました。表面的には古典派らしく整っているけれども,大きな力や豊かな歌を感じさせてくれるような,聴き応えを感じました。

第3楽章などは,軽快なメヌエットというよりは,しっかりと踊れそうなドイツ舞曲といった趣きがあり,「やはりこのテンポだ」と思いました。その中からクラリネットの歌がしっかりとわき上がってきて,なんとも言えない幸福感を感じました。

1曲目に演奏されたメンデルスゾーンの「フィンガルの洞窟」でも,静かな部分と激しい部分の対比がかなり明確に付けられているのが特徴的でした。音楽が内側から盛り上がり,それに応じてテンポも速くなるような感じがあり,(これはかなり的外れな感想かもしれませんが)フルトヴェングラーが室内オーケストラを指揮して,もっと現代的にしたらこんな感じなのかなとも思ったりしました。

2曲目に演奏されたモーツァルトのピアノ協奏曲第18番では,ソフィー=マユコ・フェッターさんがソリストとして登場しました。フェッターさんのピアノもザンデルリンクさん同様,前月のヴラダーさんとは対照的で,現代的な優雅さのようなものを感じさせてくれました。余裕をもったテンポ感で,各楽章ともに透明感だけではなく,品の良い香りが漂うような素晴らしい演奏を聴かせてくれました。

この18番については,CDなどで聴いた印象だと,第1楽章がタンタカ・タン・タンと始まるパターンは,天才アマデウスにしては,「ワンパターン」過ぎでは,17番や19番と「区別がつかない」などと思っていたのですが,本日の演奏を聴いて初めて好きになりました。第2楽章の憂いに満ちた透明感も最高でした。

フェッターさんはアンコールでスクリャービンの左手のためのノクターンを演奏しましたが(この曲,結構,アンコールで出てきます),この時,ドレスの上に羽織っていたパーツ(何と呼ぶのでしょうか?カーディガン?)をステージ上で脱ぎ捨てて(?)演奏を始めました。落語のような感じだなと一瞬思ったのですが,黒と赤のドレスだったのが,真っ赤のドレスに変わり,会場は「オッ,魅せてくれるなぁ」という雰囲気になりました。こういうのも生の演奏会ならではの楽しみだと思います。

3曲目には,日本初演となる弦楽合奏のみによるヨスト作曲の「ゴースト・ソング(2017年)」が演奏されました。この曲は大変聞きやすい曲で,バルトークやペルトなど,これまでOEKが演奏してきた20世紀の弦楽合奏曲につながるような,リズムの面白さや神秘的な雰囲気を楽しむことができました。

OEKの定期公演では,「プログラムの3曲目に弦楽合奏の新曲が入る」パターンが多い気がします。しかも面白い曲が多いですね。というわけで,この枠で演奏される曲も密かに楽しみにしています。

この日のコンサートミストレスは,ベルリンフィルのヴァイオリン奏者の町田琴和さんでしたが,この日のOEKは,非常にしなやかで,ザンデルリンクさんの要求にしっかりと応えていたと思いました。

ザンデルリンクさんについては,単純に新しいスタイルを追求するだけではなく,色々な過去の演奏スタイルを踏まえた上で,いちばん自分の表現に合ったスタイルを選んでいるように感じました。これからどういう指揮者になっていくのか見守る楽しみもある指揮者だと思います。是非,再度OEKに客演して欲しいものです。

2017/11/11

#松田華音 ピアノリサイタル@北國新聞赤羽ホール。オール・ロシア・プログラムをのびのびと,そして完成度の高い演奏で楽しませてくれました

北國新聞赤羽ホールで,松田華音さんのピアノリサイタルが行われたので聞いてきました。松田さんは6才の時にロシアに渡ってピアノの勉強をし,現在,モスクワ音楽院に在籍されている方です。学生とはいえ,すでにCDアルバムを2枚発売し(しかもドイツ・グラモフォンから),テレビ等にもよく出演されています。注目の若手ピアノ奏者と言えます。

その松田さんによるオール・ロシア・プログラムということで,これまでロシアで研鑽を積んできた成果をしっかりと聞かせてくれるような素晴らしいリサイタルとなりました。

プログラムは,松田さんの最新のCDと同じ内容で,前半がチャイコフスキーとプロコフィエフの編曲もの。後半がムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」でした。
https://www.japanarts.co.jp/news/news.php?id=2671

松田さんはまだ若い方で,名前の雰囲気どおり,華やかで可憐な雰囲気があったのですが,ステージ上での視線には強さがありました。演奏にも,しっかりと曲の本質を射貫くような強さと説得力がありました。硬質で引き締まった低音,切れ味の良い打鍵,きらめくような高音...どの曲についても,大変バランスの良い,完成度の高い演奏を聞かせてくれました。

特に良いと思ったのは音です。一般にプロコフィエフの曲については,打楽器的で冷たい感じがあり,それが魅力でもあるのですが,松田さんの音については,硬質感一辺倒ではない,ふくよかさのようなものや奥行きを感じました。

今回は,10曲ぐらいなる組曲が前半と後半に演奏されるという独特のプログラムでしたが,松田さんの演奏からは,曲想の多彩な描き分けと同時に一本筋の通った統一感を感じました。散漫な感じは無く,前半後半ともに,ロシアの大曲を聞いたという充実感が広がりました。

特に後半に演奏された「展覧会の絵」では,若々しく始まったプロムナードの後,思う存分,かつ丁寧に各曲を弾き切っており,すがすがしさを感じました。「キエフの大門」の最後の方はもう少しテンポが速い方が今の華音さんには合っているかなとも思いましたが,曲の勢いとすみずみまで磨かれた精緻さとが両立した素晴らしい演奏だったと思います。

アンコールの1曲目にムソルグスキーの「古典様式による間奏曲」というマイナーだけれども非常に「聞かせる曲」が演奏された後,2曲目としてパッヘルベルのカノン(藤満健編曲版)が演奏されました。しっかりと華が開く,華麗な「華音」となっていました。こういう名刺代わりになるような曲があるのは良いですね。

今回,お客さんの数があまり多くなかったのが少々意外で,残念でしたが,これからどんどん活躍の場を広げていくことを期待したいと思います。リサイタルに加え,特にロシアものの室内楽公演が金沢で行われることに期待したいと思います。

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