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2020/03/18

OEK 2020-21定期公演ラインナップ速報版発表。目玉は生誕250年を記念した #ミンコフスキ 指揮によるベートーヴェン交響曲全曲。#北村朋幹 #ギュンター・ピヒラー #ベンジャミン・ベイルマン #鈴木優人 #酒井健治 #川瀬賢太郎 #藤田真央 #ユベール・スダーン #ロベルト・ゴンザレス=モンハス #ユーリ・バシュメット #ジャン=クロード・カサドシュ #三浦文彰 #トーマス・エンコ

OEKの来シーズン・2020-2021定期公演のラインナップの速報版が発表されました。目玉は生誕250年を記念したミンコフスキさん指揮によるベートーヴェン交響曲全曲。それ以外の公演には,ほぼどの公演にもモーツァルトが入っているのが特徴。思い切って「古典回帰」するようなシーズンになります。各シリーズごとに概要を紹介します。

フィルハーモニーシリーズ(前半)

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シーズン最初は,ユベール・スダーンさん。北村朋幹さんとの「皇帝」とモーツァルトの39番(スダーンさんはいつも,調性をそろえてきますね)。ギュンター・ピヒラーさんが久しぶりに登場。個人的に,「ジュピター」に大いに期待しています。ベンジャミン・ベイルマンさんというヴァイオリニストと共演。ニューイヤーコンサートは,誰かと思えば...この前聞いたばかりの鈴木優人さん。パイプオルガンも聞かせていただけそう。

フィルハーモニーシリーズ(後半)

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OEKコンポーザー・オブ・ザ・イヤーの酒井健治さんの新曲を川瀬賢太郎さん指揮で初演。サン=サーンスの交響曲イ長調は,OEKが取り上げるのは初めてかも。「パリのモーツァルト」的な作品でしょうか。1年後の4月には,藤田真央さんが,スダーンさんと共演。7月にはロベルト・ゴンザレス=モンハスさんという方がヴァイオリンの弾き振り。

マイスターシリーズ

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シーズン中,最大の大物,ヴィオラのユーリ・バシュメットさん登場。今年の10月です。さらにヴァイオリンの三浦文彰さんが弾き振り。これも注目。ジャン=クロード・カサドシュさんの指揮,トーマス・エンコさんのピアノは,どちらもOEKとは初共演。

ファンタスティック・オーケストラ・コンサート

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西田幾多郎と鈴木大拙にちなんだ注目の渡辺俊幸作曲による新作オペラ「禅:ZEN」が初演されます。ギターとオーケストラの共演は出演者が発表されていませんが,どういう内容なのか大変楽しみです。

2020/02/24

牛田智大ピアノリサイタル@北國新聞赤羽ホール。バッハとショパンの聞き応えのある曲の並ぶ充実感満点のプログラム。磨き抜かれた音,考え抜かれた構成で,どの曲も非常に洗練された音楽になっていました。

本日は北國新聞赤羽ホールで行われた,牛田智大さんのピアノリサイタルを聞いてきました。牛田さんは,12歳でデビューして話題を集めましたが,2018年に浜松国際ピアノコンクールで2位を受賞してからは,さらにスケールの大きなピアニストとして活躍の場を広げています。「聞き逃せないピアニスト」ということで会場はほぼ満席でした。

今回のプログラムは,バッハのイタリア協奏曲で始まった後,ショパンの曲がずらっと並び,最後は舟歌で締めるというプログラムでした。東京オペラシティ風にいうと,B&Cプログラムといったところでしょうか。牛田さんのトークによると,バッハとショパンには共通する部分が多く,2人とも憧れを持っていた「イタリア風の曲」を最初と最後に置いたとのことでした。

ショパンの曲では,前半にソナタ第2番が演奏されたのに加え,英雄ポロネーズ,幻想曲,バラード第4番,舟歌など,10分前後の長さのある中規模の充実した曲が次々と登場。非常に聞き応えのあるプログラムになっていました。

牛田さんの演奏を聞くのは初めてだったのですが,本当に素晴らしいピアニストだなぁと感嘆しました。牛田さんはまだ20歳ぐらいのはずですが,曲のキャラクターをしっかりと把握した上で,磨き抜かれた音,考え抜かれた構成で,どの曲についても非常に洗練された音楽を聞かせてくれました。

どの曲も大変鮮やかに演奏されていましたが,慌てるような部分は皆無。バッハのイタリア協奏曲など,どちらかというとゆったりと余裕を持って演奏し,温かみのあるピアノの音の美しさをしっかりと聞かせてくれました。

牛田さんのピアノの音ですが,ピアノの弦の音がしっかり響いているのが分かるような美しさがありました。聞いていて牛田さんの世界にぐっと引き込まれていきました。しかも,曲想に応じて,多彩な音を聞かせてくれました。どの部分についても,しっかり自分で選び取った音を自然な流れで聞かせてくれました。

ピアノソナタ第2番をはじめ,規模の大きな曲では堂々としたスケール感もありました。さらには,どの曲についても,お客さんに媚びるような甘い感じがなく,どこか高貴な感じが漂っているのも素晴らしいと思いました。ついつい「ピアノ王子」といった風に呼んでしまいたくなるのですが...そう呼ばせないような,芯の強さのようなものも感じました。

牛田さん自身,「今日演奏した曲は,一生掛けて引き続ける曲ばかり」と語っていましたが,これからまた違った形で成長をしていうのではないかと思います。王子を超えて,王道を行くピアニストに成長していって欲しいと思いました。

2020/02/20

鈴木優人指揮OEK定期公演。自然な息遣いと抑揚が感じられたメンデルスゾーンの「イタリア」。前半の川久保賜紀さんによる「揚げひばり」は息を呑むような美しさ。バーバーの協奏曲とともにCD化に大いに期待しています。

鈴木優人さん指揮によるOEKの定期公演を石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。鈴木さんがOEKを指揮するのは2回目のことですが,後半で演奏されたメンデルスゾーンの「イタリア」交響曲を中心に,どの曲についても,自然なしなやかさが息づく魅力的な演奏を聞かせてくれました。

今回のもう一つの期待は,ソリストとしてヴァイオリンの川久保賜紀さんが登場することでした。前半の2曲が協奏曲的作品というのは,少し珍しい構成でしたが,川久保さんのヴァイオリンもお見事でした。

まず,選曲が素晴らしいと思いました。最初に演奏されたヴォーン・ウィリアムズの「揚げひばり」,次に演奏されたバーバーのヴァイオリン協奏曲は,どちらも20世紀前半に書かれた叙情性のある作品という点で共通点がありました。川久保さんは,この両曲を完璧といって良いぐらい見事に抑制された美しさで聞かせてくれました。

「揚げひばり」では,ヴァイオリン単独で演奏する部分がかなりあったのですが,そういった部分での,全く揺らぐことのない安定した静けさが本当に見事でした。息を呑むような美しさにあふれた演奏でした(その分,結構,会場のノイズもよく聞こえてきたのですが....)。鈴木さん指揮OEKの演奏も,春がすみを思わせるようなデリケートな気分を作っており,一足早く,春の気分を感じさせてくれました。

バーバーの方も抒情的な部分が多かったのですが,3楽章からなる協奏曲ということで,より変化に富んだ曲想を楽しむことができました。実演で聞くと,冒頭から隠し味のように入っているピアノの音がよく効いていることが分かります。静かな部分では,特に不思議な透明感が感じられました。

川久保さんの演奏は,この曲でも安定感たっぷりで,不安定な部分が全くありませんでした。しっかりと歌い込まれているのに,ふやけた感じはなく,全編,抑制された美しさに溢れていました。OEKの演奏も素晴らしく,管楽器などがソリスティックに鮮やかに活躍する面白さも楽しむことができました。

第3楽章だけは,急にテンポが速くなるのですが,ヴァイオリンだけでなく,トランペットやホルンなども華やかに活躍し,オーケストラのための協奏曲のようにクールに盛り上がっていくのが良いなと思いました。

この日のステージにはマイクが沢山立ち並んでいましたが,前半2曲についてはライブ録音を行っていたようでした。非常に完成度の高い演奏でしたので,このCDは発売されたら絶対聞き逃せないものになることでしょう。今から大変楽しみです。

後半はメンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」が演奏されました。鈴木さんは,古楽の専門家のイメージがあったのですが,近年はレパートリーをどんどん拡大しているようですね。本日の「イタリア」も,歌う喜びに溢れたような演奏でした。第1楽章冒頭から力んだところはなく,柔らかく音楽が流れて行きました。鈴木さんの呼吸がそのまま音楽の抑揚となっているような自然さがあり,聞きながら一緒になって身体を動かしてしまいたくなるような演奏でした。こちらもまた春のような音楽だと思いました。

第2楽章の方は,低音部と高音部とが独立的に動いていくような感じで始まりますので,結構,バロック音楽に通じる雰囲気があるのではと思いながら聞いていました。第1楽章同様,自然な息づかいで流れる第3楽章の後,気分が一転してキビキビとした音楽が続く第4楽章になります。鈴木さんの音楽は,荒れ狂うような感じにはならないのですが,そのベースには,常に「熱い思い」が感じられました。「イタリア」はこうでなければ,と思わせる,生き生きとした演奏でした。

ちなみに本日の「イタリア」ですが,通常の楽譜とは違う新版(ツイッターの情報によると,クリストファー・ホグウッド校訂による版)で演奏されていたようです。確かに第1楽章のティンパニの感じなど「どこか違うなぁ」と思いました。

プログラムは後半やや短めだったので,「何かアンコールはあるだろう」と思っていたらやはりありました。考えてみればこれしかない,バーバーの弦楽のためのアダージョがアンコール曲。暖かさと痛切さとが同居しているような素晴らしい演奏でした。このアンコールの時までそのままマイクが立っていたので,もしかしたら川久保さんのヴァイオリンの「埋め草」としてこの曲もCD化されるのかもしれません。

世の中全体が,新型コロナウィルス騒動にかき乱されている中,演奏会の間だけは,別世界が広がっているようでした。金沢では今のところ感染者が出ていませんが,少しでも早く,世界的な感染の拡大が納まることを願っています。

2020/02/16

2019年度全国共同制作オペラ ヴェルディ「ラ・トラヴィアータ(椿姫)」金沢公演。圧倒的な映像の力が作るスタイリッシュな気分の中,キャラの立った主要3人が存分の力を発揮。特にアルフレード役の宮里直樹さんの若々しい声がお見事。#oekjp

本日は午後から2019年度全国共同制作オペラ ヴェルディ「ラ・トラヴィアータ(椿姫)」公演を金沢歌劇座で観てきました。主役のヴィオレッタはエカテリーナ・バカノヴァさん,アルフレードが宮里直樹さん,ジェルモンが三浦克次さん。オーケストラは,ヘンリク・シェーファーさん指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK),そして演出は初めてのオペラ演出となった矢内原美邦さんでした。

今回の公演のいちばんの特色は,何と言っても映像の目覚ましい効果だったと思います。各幕ごとに,色々なイマジネーションを喚起させる意味深かつ美しい映像を背景に投影し,オペラ全体にスタイリッシュな基調を作っていました。1年半前に観たミンコフスキさん指揮によるドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」での使い方と似た部分もありましたが,オペラと映像を結びつけるのはトレンドと言っても良いのかもしれませんね。

歌手の中ではアルフレード役の宮里さんの声が素晴らしかったですね。第1幕では有無を言わさぬ声の力でヴィオレッタを魅了し,第2幕ではヴィオレッタとの別れに際しての直情径行的な気分を声でも表現していました。終幕では,少し宗教音楽的な雰囲気を感じさせるような雰囲気の中,ヴィオレッタとの透明感あふれる二重唱を聞かせてくれました。

主役のバカノヴァさんも声に力があり,幕を追うごとに役と一体化し,終幕の最後の部分での別世界への「昇天」を思わせるような崇高な気分を感じさせてくれました。第1幕の聞きものの「ああ,そは彼の人か~花から花へ」については,後半の「花から花へ」の部分が,ちょっと重い感じかなと思いました。慣例的に超高音を出すことの多い最後の部分は,「楽譜どおり」という形になっていました。

オペラ全体のドラマの核といっても良いジェルモン役の三浦さんは,ちょっと篭もったような独特の声で,それが老いた父親の雰囲気にマッチしていました。第2幕を中心に説得力のある歌を聞かせてくれました。

今回,この主要キャスト3人の「キャラ」が立っていたのが,とても良かったと思いました。その他のキャストについても,鮮やかな色合いの衣装を着ており(ももクロ風?),遠くから見ても誰が演じているのか良くわかりました。この辺の作り方も巧いと思いました。

そして今回の上演で特徴的だったのは,5人のダンサーを要所要所で使っていたことです。音楽の流れに乗って,その場その場の気分を盛り上げるようなパフォーマンスを続けていました。この辺は矢内原さんの本領発揮といった部分だったと思います。

合唱団と合わせて特に印象的だったのは,第2幕第2場です。ジプシー風の踊りと合唱が続いた後,ヴィオレッタにひどい仕打ちをするアルフレードを責める部分がありますが,この部分については,現代社会を風刺するような作りになっていました。アルフレードを責める民衆たちは,手にスマホを持って(遠くからだったのでよく分からなかったのですが,多分),アルフレードとヴィオレッタを撮影。スキャンダルを追って,悪役を作り上げ,炎上させる...「道を外れたもの(ラ・トラヴィアータ)」を許さない民衆の持つ「怖さ」を風刺的に伝えていました。その点で,今回の上演のタイトルは「ラ・トラヴィアータ」でないといけないのかなとおもいました。

ヘンリク・シェーファーさん指揮OEKは万全の演奏だったと思います。主役にしっかりと寄り添い,各場面場面を雄弁に盛り上げていました。第2幕の途中,クラリネットのソロがひっそりと続く中,ヴィオレッタが別れの手紙を書く場面がありますが,こういった部分の共感溢れる演奏が素晴らしいと思いました。

全国共同制作のオペラもすっかり恒例になっていますが,昨年の森山開次さんによる「ドン・ジョヴァンニ」同様,新鮮な演出を披露するステージになってきているのが嬉しいですね。次作が何なのか期待したいと思います。

2020/02/11

#広上淳一 さん指揮OEKによる白山市の #第9。総勢170名の特別合唱団とともに堂々たる演奏を聞かせてくれました。ソリストも皆さん瑞々しい声で本日の快晴の空のようでした。#鈴木玲奈 #高野百合絵 #吉田浩之 #岡昭宏 #oekjp

本日は午後から白山市松任文化会館ピーノまで出かけ、広上淳一さん指揮OEKと総勢170名の特別合唱団による、べートーヴェンの第9を中心とした公演を聞いてきました。白山市は、松任市、鶴来町、白山麓の町や村が合併して出来た市ですが、本日はその市制15周年記念の演奏会でした。ちなみに市が誕生した時にも第9を歌い、その後、5年ごとに演奏しているとのことでした。

今回この公演を聞きに行こうと思ったのは、広上さんの第9が聞けること、若手を中心としたソリストの声を聞けることに加え、白山市松任文化会館ピーノに一度行ってみたかったことがあります。かなり前に一度、来た記憶はあるのですが、OEKの演奏をこのホールで聞くのは,私自身,初めてでした。

今回の公演は、市民合唱団が出演するとあって、会場は超満員でした。ステージ上にも客席にも人が溢れていました。そのこともあるのか、ホールの響きが非常にデッドだと感じました。弦楽器の音など、いつも聞いているOEKよりはかなり痩せた感じで、奏者にとっては少々つらかったのではと思いました。その分、木管楽器を中心に各楽器の音が非常に鮮明に聞こえてきました。

第1楽章の最初の方の弦楽器の刻みの音なども生々しく聞こえてきました。広上さんのテンポ設定もじっくりした感じで、堂々としていると同時に,非常に精妙な演奏に聞こえました。第2楽章も落ち着いたテンポでクリアに始まったので、「大人のスケルツォ」といったところでした。対照的に中間部は流れるように爽やかでした。第3楽章も静かだけれども、一つ一つの音がしっかりと聞こえてくる演奏で、いろいろな曲想がクリアに描き分けられていました。

第4楽章は、特に面白く聞くことができました。広上さんは大合唱団をしっかり伸び伸びと歌わせており、聞いていて大変爽快でした。行進曲風になる直前の”Vor Gott"と長く伸ばす部分などでは、広上さん自身、大きく反り返るように指揮をしており(後ろに倒れないか心配)、気持ちよさそうだなぁと思いました。

第4楽章では、4人のソリストの皆さんも素晴らしかったですね。テノールの吉田浩之さんはお馴染みのベテラン歌手ですが、その明るい声は全く変わりなく、晴れやかそのものでした。行進曲風の部分は、非常に速いテンポでしたが、その若々しい表現が素晴らしいと思いました。

その他の3人の歌手は、いずれも近年、注目を集めている歌手ばかりで、瑞々しい声の競演となっていました。特に岡昭宏さんの独唱部分は、堂々とした力と若々しさに溢れ、大変聞き応えがありました。鈴木玲奈さん、高野百合絵さんの女声2人の方は、男声に比べると、独唱的な部分は少なかったので、是非、また違った曲でOEKとの競演を聞いてみたいものです。お二人とも最近、日本コロンビアからCDを出された注目の歌手ということで、これからの活躍が非常に楽しみです。

曲の最後の部分では、熱狂的にテンポを上げるのではなく、どっしりとしたテンポ感のまま、沸き立つようなリズムを感じさせてくれ、充実感満点でした。さすが広上さんの指揮だと思いました。

全体的には、やはり、石川県立音楽堂コンサートホールで聞くOEKの音の方が好きなのですが、いつもと違った角度から第9を楽しむことができた演奏でした。

前半では、白山市の小学生も加わった大合唱団との共演で、「ふるさと」「夕焼小焼」「大地讃頌」が歌われました。子どもたちの声が加わることで、おなじみの曲にさらに親しみやすさが増していたように思いました。「夕焼小焼」は三善晃編曲版ということで(合唱組曲の中の1曲でしょうか)、素朴に始まった後、どんどん多彩な響きになっていき、特に面白いなぁと思いました。

我が家からだと、車で片道1時間ほど掛かったのですが(意外に道路や駐車場が渋滞していたので)、午後からは予想以上の快晴に恵まれ、ドライブも楽しむことができました。オーケストラ+大編成の合唱をいつもとは少し違った角度から楽しむことのできた午後でした。

2020/02/05

音楽堂カルチャーナビ 三毛猫ホームズの好きな曲は?クラシック音楽好きのベストセラー作家,赤川次郎さんから,池辺晋一郎さんが色々と興味深いお話を引き出してくれました。出待ちをしてサインもいただいてしまいました

本日は,石川県立音楽堂交流ホールで行われた「音楽堂カルチャーナビ」の2019年度第4回を聞いてきました。ゲストは作家の赤川次郎さん,進行役はお馴染みの池辺晋一郎さんでした。

私にとって,赤川さんは「大変多作で,息長く活躍されている,現代を代表するベストセラー作家の代名詞」というイメージです。クラシック音楽の大ファンということで,「有名人に会ってみたい」という野次馬的精神に「どういう音楽が好きなのだろう」という好奇心を加えて,参加してきました。

赤川さんと池辺さんは旧知の仲ということで,少々硬い雰囲気のあった赤川さんから池辺さんが色々な観点から面白い言葉を引き出すという感じで進んでいきました。赤川さんは,作家になりたくて作家になったのではなく,文章を書きたくてたまらなかったので,何でも仕事を引き受けているうちに,作家としてやっていけるようになった,と言ったことを語っていました。赤川さんの淡々とした雰囲気からも,ベストセラーを書いて有名になってやろう,といった野心のようなものは感じられず,本当に文章や物語を作るのが好きな方なのだなぁと思いました。推理小説を書く場合も特に綿密な構想を練って書き始めるわけではなく(さすがに登場人物リストは作っているとのこと),「最後に辻褄をあわせるだけ」といったことを語っていました。なんというか,作家としての天性の資質を持った方なのだなぁとまじめで物静かな雰囲気から自然に伝わってきました。

クラシック音楽については,作家になってLPレコードを買う余裕ができてから特に好きになったとのことでした。メロディが美しい,ドヴォルザークやチャイコフスキーなどがお好きとのことで,本日はドヴォルザークのユモレスク(田島睦子さんのピアノ独奏),ドヴォルザークの弦楽四重奏曲「アメリカ」の第1楽章(坂口昌優さんのヴァイオリン等による弦楽四重奏)が演奏されました。改めて,両曲とも美しいメロディが湧き出てくるような作品だと思いました。

その他,色々と面白い話題が出てきましたが,最後に,これから書いてみたいものとして,「現代は若い人にとって生きづらい時代。若い人たちに希望を持ってもらえるような作品を書きたい」と語っていたことが特に印象的でした。赤川さんは,若い頃から,社会問題についての姿勢は変化していない,とも語っていました。将来を担う若者のことを第1に考えてながら,淡々とブレずに活動されているすごい作家だなぁと改めて思いました。

これを機会に,池辺さんが橋渡しとなって,OEKとのつながりが出来てくれると面白そうと思いました。超有名作家のお話を間近で聞くことができた,大変有意義な90分でした。

PS.終了後,しばらく待っていると,赤川さんが出てこられたので,念のため持参していた「三毛猫ホームズの狂死曲」にサインをいただきました。これは家宝にしておきたいと思います。

2020/01/29

冨田一樹オルガン・リサイタル「真冬のバッハ」バッハの多彩なオルガン曲のキャラクターを鮮やかに弾き分けた素晴らしい演奏。トークも分かりやすく,大満足の公演でした。

本日は,「真冬のバッハ」と題された,冨田一樹さんのオルガン・リサイタルを石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。冨田さんのオルガン・リサイタルが音楽堂で行われるのは2回目ですが,前回以上に楽しめる演奏会になっていたと感じました。演奏された曲はタイトルどおり,バッハの曲が中心でしたが,トッカータとフーガ ニ短調,小フーガト短調という有名曲を交えながら,演奏会の最初と最後に,聞き応え十分の内容と構成を持つ,前奏曲とフーガを配置するという,万全のプログラムという感じでした。

特に最後に演奏された,前奏曲とフーガホ短調BWV.548でのクライマックスに向けてのスケール感満点の盛り上がりが見事でした。バッハに圧倒された,という感じの演奏でした。その他の曲についても,それぞれの曲の持つキャラクターを最大限に活かすような,演奏ばかりでした。

トッカータとフーガ ニ短調では,CDなどで聞き慣れている演奏よりは,即興的な要素が多く入っているようで,自由奔放なエネルギーの動きを感じることができました。中間部では,映画「ファンタジア」の1シーンを思い出すような,千変万化の色合いの変化を実感しました。演奏後のサイン会の時に,この曲の演奏について尋ねてみたのですが,「楽譜は同じだが,トッカータという曲の性格上(演奏者の裁量の部分が多い)」といったことをおっしゃられていました。なるほど,と思いました。

コラールなども数曲演奏されましたが,こちらでは,息の長いメロディをヴィブラートたっぷりの甘い感じの音でじっくり聞かせてくれました。こちらもまた,各曲の性格の核心を突くような演奏だと思いました。

その他,バッハに影響を与えた,パッヘルベル,ベーム,ブクステフーデの曲も加えたり,バッハがアレンジした曲(マルチェッロのオーボエ協奏曲の第2楽章)やアレンジされたバッハの曲(グノーのアヴェ・マリア)を加えたり,プログラムにアクセントが加えられていました。

冨田さんのトークも大変流暢で分かりやすく,一見取っ付きにくいところのあるオルガン音楽を大変親しみやすく楽しませてくれました。お客さんの反応も素晴らしく,大満足の公演になっていたと思いました。冨田さんは,「大きなパイプオルガン」を演奏できる機会は少ない,と語っていましたが,是非,今回のような感じの演奏会の続編を期待したいと思います。今年の金沢は暖冬なので,「真冬?のバッハ」という感じでありましたが,今後,「秋のバッハ」そして「春のバッハ(「春の小川」ですね)」にも期待したいと思います。

終演後の冨田さんのサイン会も大盛況でした(冨田さんのセールストークがよく効いていたと思います)。この際,石川県立音楽堂コンサートホールのパイプオルガンを使ったバッハのレコーディングにも期待したいと思います。

2020/01/25

マキシム・パスカル指揮OEK定期公演。理詰めだけれども雄弁なベルクの室内協奏曲。輝かしさと堂々たる聞きごたえのあった挟間美帆さんの「南坊の誓い の世界初演。そして記念の年のスタートに相応しい生きの良さのあったベートーヴェンの交響曲第2番。若い世代による新鮮さ溢れる公演 #oekjp

本日は午後から,フランスの若手指揮者,マキシム・パスカルさん指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の定期公演を聞いて来ました。プログラムは,前半は,ベルクの室内協奏曲と挟間美帆さんの新曲,後半はベートーヴェンの交響曲の中でも比較的演奏される機会の少ない第2番という非常に冒険的な内容。若い世代のアーティストたちによる新鮮さ溢れる公演となりました。

ベルクの室内協奏曲をOEKが演奏するのは今回が初めてかもしれません。。ピアノとヴァイオリンがソリスト的,それ以外は13管楽器という変則的な編成で,その名のとおり,協奏曲的要素と室内楽的要素が混ざったような作品でした。新ウィーン楽派のベルクの作品ということで,モチーフの設定やその組み合わせ方は理詰めで(ベルク,シェーンベルク,ウェーベルンの名前を読み込んだモチーフなどは,ちょっとショスタコーヴィチを思わせる感じかも),単純に感情移入するのは難しい曲ではあるのですが,パスカルさんの作る音楽には,明晰さと同時にしなかやかさがあり,どこか詩的な気分やドラマが漂っているように感じました。ユージュン・ハンさんのヴァイオリン,アルフォンセ・セミンさんのピアノは,技巧的に鮮やかであると同時に,音で対話をするような雰囲気があり,とっつきにくい音楽ではあったのですが,曲の最後の部分など,どこか意味深く,ミステリアスな雰囲気を持っていました。

続いて,OEKのコンポーザー・オブ・ザ・イヤーの挟間美帆さんの「南坊の誓い」が世界初演されました。この作品は,安土桃山時代に加賀藩に滞在していたことのあるキリシタン大名,高山右近をモチーフにした作品で,タイトルの「南坊」というのも,高山右近が名乗っていた名前とのことです。挟間さんは,最新のアルバムがグラミー賞にノミネートされているとおり,現在最も注目度の高いジャズ作曲家の一人です。実は,もう少しジャズ的な要素のある軽い感じの作品になるのでは,と予想していたのですが,本日初演された曲は,爽快で輝かしい部分と内省的な部分のメリハリがしっかりと付けられた,分かりやすさと同時に堂々たる聞きごたえを持ったオーケストラ作品でした。OEKの編成ぴったりで演奏できる辺りも含め,OEK側の期待どおりの作品に仕上がっていたのではないかと思いました。

曲は3つのパートに分かれているように思いました。両端部分はがっちりとした感じ+生き生きとした感じ,中間部がしっとりとした感じでしたので,ガーシュインの「パリのアメリカ人」の金沢版といった趣きがあると思いました("Ukon in Kanazawa"といったところでしょうか)。最初の部分で,同じリズムパターンが何回も繰り返されたり,ポリフォニックに絡んだりする辺りも面白かったのですが,中間部でヴィオラが深々とした歌を聞かせる辺りが,個人的には特によいなぁと思いました。終演後のサイン会の時に挟間さんにこのことを話してみたところ,「ヴィオラで高山右近を描いた」とおっしゃられていました。やっぱり主役だったんですね。

最後の部分は,輝かしい響きで締められ,演奏後は盛大な拍手に包まれました。とても演奏効果の上がる曲だったので,今後,この曲はOEKの基本レパートリーとして,国内の演奏旅行などで再演しても面白いのでは,と思いました。

後半はベートーヴェンの交響曲第2番が演奏されました。パスカルさんの作る音楽は,全曲を通じて若々しいものでした。第1楽章の主部や第4楽章などは,かなりのスピード感で,一気に駆け抜けていく感じでした。両楽章ともアビゲイル・ヤングさんを中心とした弦楽器が,いつもどおりの切れ味の良い演奏でしっかりとこたえていました。対照的に,第1楽章の序奏部や第2楽章では,しっかりと歌い込まれた,豊かなニュアンスを持った演奏を聞かせてくれました。特に停滞することなく,伸び伸びと歌い込まれた2楽章が良いなぁと思いました。

両端楽章については,個人的には,ちょっと慌て過ぎに感じたのですが,ベルクの時とはまた違った,率直な音楽を聞かせてくれました。ベートーヴェン生誕250年の記念の年のスタートに相応しい生きの良い演奏だったと思います。

挟間美帆さんがノミネートされているグラミー賞は,アメリカ時間の1月26日に発表されるので,公演後,挟間さんはロサンゼルスに移動するとのことでした。今回の定期公演は,その前祝い公演だったのではと思っています。大相撲初場所の優勝の行方も気になっていますが,グラミー賞の結果発表も益々楽しみになってきました。

2020/01/18

山下一史さん指揮の第80回金大フィル定期演奏会は充実のロシア・プログラム。メインのラフマニノフの交響曲第2番を聞きながら若者たちの前途に広がる明るい未来のようなものを感じました。

本日は金沢大学フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会を聞いてきました。確か昨年は年末に行われたと思いますが,今年は以前と同じ「センター試験の日」に戻りました。この定期公演ですが,今年で80回目です。この回数も考えてみると凄いですね。年1回行っているはずなので,金沢大学の創設の頃からずっと続いている伝統のイベントということになります。

その記念すべき回の指揮者は,OEKでもお馴染みの山下一史さんでした。金大フィルとのつながりも30年近くになるのではないかと思います。そして演奏された曲は,オール・ロシア(ソ連)プログラム。メインとしてラフマニノフの交響曲第2番,前半はグラズノフの祝典序曲とハチャトゥリアンの「仮面舞踏会」組曲の抜粋が演奏されました。ここ数年,金大フィルは,ロシア音楽をよく演奏している気がしますが,その総決算といったところでしょうか。

やはり最後に演奏された,ラフマニノフの交響曲第2番の演奏が大変聞き応えがありました。55分近くかかる大曲ですが,全く長さを感じさせない,前向きなエネルギーを感じさせる演奏でした。山下一史さんは,常にエネルギッシュな指揮をされる印象があったのですが,曲全体の設計が素晴らしく,冷静に各楽章を構築しているように感じました。そこに若い大学生たちの演奏が加わり,各楽章の聞かせどころでは,自然に熱気を帯びた盛り上がりがありました。

第1楽章の最初の方で,木管楽器の和音がパーンとバランス良くくっきりと登場したのを聞いて,「素晴らしい演奏になりそう」と感じ,そのとおりになりました。随所に出てくる,ラフマニノフ節といってもよい弦楽合奏だけでなく,管楽器のソロもしっかりと決まっており,安心して練り上げられた音楽に浸ることができました。特に第3楽章に出てくる,クラリネットの長いソロはお見事でした。

全曲を通じて,暗く沈み込むような感じではなく,前向きな明るさを感じました。こうやって生きのよい演奏で聞いてみる,最終楽章はタランテラといった感じに聞こえました。若い学生たちの前に広がる未来を祝福するような音楽だったと思いました。

前半に演奏された2曲も楽しめました。グラズノフの祝典序曲は,初期のチャイコフスキーの交響曲に通じるような雰囲気のある明るい親しみやすさのある曲でした。「祝典」という感じはあまりしなかったのですが,とても品良くまとまっていたと思いました。

ハチャトゥリアンの「仮面舞踏会」組曲からの4曲は,最初に演奏された「ワルツ」が,女子フィギュアスケートの浅田真央さんが使ってから一気に有名になった作品です。個人的には,もっと重苦しく憂鬱で退廃的なイメージを持っていたので,少々軽いかなと感じたのですが,曲が進むにつれてノリの良さが出てきた気がします。ビシッと引き締まった,最後の「ギャロップ」は大変鮮やかでした。その前の「ロマンス」での,しっとしとした気だるい気分も魅力的でした。それとトランペットのソロの音が素晴らしいと思いました。

金大フィルの今後の予定として,6月のサマーコンサートでは,チャイコフスキーの「悲愴」と書いてありました。3月のカレッジコンサートにも金大フィルのメンバーが多数参加しますが,ここではショスタコーヴィチの交響曲第5番。ロシア3大作曲家を代表する名曲を立て続けに演奏する感じですね。学業を行いながら,取り組むにはハードな曲ばかりですが,逆に考えると,そういう学生生活を送ることができるのもうらやましいなぁという気もします。是非,これらの公演も聞きにいってみたいと思います。

2020/01/11

OEKニューイヤーコンサート2020 ユベール・スダーンさん指揮 森麻季さんのソプラノによるバロック・オペラの名曲+オッフェンバック+シュトラウス・ファミリーの音楽。楽しさとこだわりが両立した充実の公演。ヤングさんのチャールダーシュも言うことなし。もちろんOEKどら焼きもゲット #oekjp

本日の午後は,2020年最初の公演,OEKのニューイヤーコンサートを聞いてきました。今年の指揮はプリンシパル・ゲストコンダクターのユベール・スダーンさん,ソリストとしてソプラノの森麻季さん,OEKの第1コンサートマスターのアビゲイル・ヤングさんが登場しました。

この公演については,毎年,通常の定期公演とは少し違う趣向が凝らされていますが,今回特にスダーンさんらしさが出ていたと思いました。前半は森麻季さんの得意のレパートリーを中心とした,バロック~古典派のオペラ・アリア中心。後半は今年が没後140年(昨年は生誕200年でした)となるオッフェンバックの「パリの喜び」の抜粋の後,シュトラウス・ファミリーの音楽。その間に,ヤングさんのソロを数曲,といった構成でした。

色々な時代,ジャンルの小品中心ということで,雑然とした感じになるのかなとも思ったのですが,スダーンさんは意図的に多彩な小品の組み合わせの妙を楽しませようとしていたように思いました。モーツァルトのアイネ・クライネ・ナハトムジークの第1楽章と痔2楽章を別々に演奏してその間に別の曲を入れたり,ヴィヴァルディの四季の冬だけを演奏したり...数年前の北谷直樹さん指揮による,パスティッチョ特集を思い出しました。

曲と曲の間に何回も拍手が入りましたが,これも敢えてそういう形にしているようで,拍手を積み重ねていきながら,新年のコンサートに相応しいお祭り感が自然に盛り上がっていきました。それでいて,全体がビシッとしまっていたのは,やはりスダーンさんの熟練の指揮の力だと思いました。OEKならば指揮者なしでも演奏できそうな弦楽合奏の曲もかなりありましたが,スダーンさんはきっちりリズムを取って指揮をするというよりは,曲のイメージを明確に示すような指揮ぶりで,どの曲についても,音楽の自然な勢いがあり,曲想に応じたメリハリが鮮やかにつけられていました。

前半に登場した森麻季さんの歌も,いつもどおり素晴らしかったですね。森さんならではの,精緻で丁寧な滑らかさのある歌,透明感だけでなく,ぞくぞくさせてくれるような艶っぽい声を楽しませくれました。ヘンデルのアリアは,森さんの十八番ばかりだったと思いますが,「ドン・ジョヴァンニ」中ののドンナ・アンナのアリアも森さんにぴったりだと思いました。前半のじっくりとした感じを受けて,最後の方にコロラトゥーラが入る構成で,とても聞き応えがありました。

そして,ヤングさんのヴァイオリンも素晴らしかったですね。改めて素晴らしいヴァイオリニストだなぁと再認識しました。モンティのチャールダーシュは,技巧的にも難しい曲ですが,その辺を鮮やかにクリアした上で,変化に富んだ曲想を持った内容のある音楽として,「どうだ!」という感じで楽しませてくれました。

後半の最初に演奏されたオッフェンバックの「パリの喜び」は個人的に大好きな作品で,一度,実演で聞きたかった作品です。全曲ではなく,抜粋でしたが,この曲の持つ華やかさと軽妙さをしっかり伝えてくれました。個人的な定番はシャルル・デュトワのCDで,それに比べると,少々大人しいかなという気はしましたが,特に冒頭の序曲を実演で聞けたのは大きな収穫でした。

最後は,新年の定番と言っても良い,ヨハン・シュトラウスのポルカ2曲とワルツ1曲でした。「田園のポルカ」という作品は,オーケストラのメンバーによる「ラララ」という楽しげな声が入る曲でした。数年前のウィーン・フィルのニューイヤーコンサートで聞いた記憶があります。

「雷鳴と電光」に続いて,締めの定番「美しく青きドナウ」,アンコールの定番「ラデツキー行進曲」で演奏会はおひらきとなりました。スダーンさんのテンポ感はとてもスムーズでしたが,「ドナウ」の中間部では,思い入れたっぷりにテンポを落としたり,所々で思いの強さが伝わってきました。ラデツキー行進曲も,拍手しやすいテンポのリラックスムードでしたが,全体の雰囲気が,がっちりとした行進曲になっていたのが良いなぁと思いました。

終演後,スダーンさんのサイン会があった後,新年恒例の茶菓工房たろうさん提供による,「OEKどら焼き」のプレゼントがありました。今年も,多彩なプログラムを楽しませてくれそう,という期待感いっぱいのニューイヤーコンサートでした。

2019/12/31

2019年のOEK定期公演を振りかえる。OEKらしさに磨きがかかった一年。毎回聞き逃せないミンコフスキさんの公演を中心に,金沢ならではの公演が増えてきた気がします。

今年も大みそか。2019年のOEKの定期公演は,どの公演も楽しめました。

公演のタイプとしては,まず,(1)ハイドン,モーツァルト,ベートーヴェンの交響曲を核としたベーシックなプログラム,(2)室内オーケストラの可能性を広げようと独自性を追求するプログラムに分けられると思います。(1)は,ユベール・スダーンさんやラルフ・ゴトーニさんが登場した公演,(2)の方は,川瀬賢太郎さんが登場した,ジュリアン・ユー編曲版の「展覧会の絵」公演などが入ると覆います。

そして,マルク・ミンコフスキさんが登場した2回の公演。「ミンコフスキさんの「新世界」?」「ブラームスのセレナード第1番?」すべてが注目でした。そして,意表を突いて演奏されたドヴォルザークのスラヴ舞曲op.72では,曲の魅力を再発見させてくれました。

このミンコフスキさんの影響もあるのか,ポール=エマニュエル・トーマス,ピエール・ドゥモソー,パトリック・ハーンといった若い指揮者による公演が続いたのも今年の特徴だったと思います。この「才能の先物買い(?)シリーズ」も金沢ならでは魅力だと思います。

ソリストもそれぞれ素晴らしかったのですが,「一人」に絞れば,メゾ・ソプラノの藤村実穂子さんでしょうか。世界最高峰のワーグナーの声を堪能できました。

最後に,個人的にもっとも印象に残った公演は,OEKと初共演だったコーリャ・ブラッハーさん指揮+弾き振りによる定期公演でした。ブラームスのヴァイオリン協奏曲とベートーヴェンの交響曲第4番といったオーソドックスなプログラムを非常に立派で熱のこもった音で再現してくれました。

OEKについては,公演ごとに(指揮者の個性や編成によって)大きく雰囲気が変わる適応力の高さが面白い点だとと思います。2020年はどういう音を聞かせてくれるのか,大いに期待したいと思います。

2019/12/21

今年最後の演奏会通いは金沢市安江金箔工芸館で行われたOEKの首席第2ヴァイオリン奏者,江原千絵さんとピアノの白河俊平さんによる「きらめきコンサート:イタリアに憧れて」。新しさと古さが混ざった絶妙のプログラムを江原さんのトークとともに楽しんできました。

本日は金沢市安江金箔工芸館で行われた,OEK首席第2ヴァイオリン奏者の江原千絵さんとピアノの白河俊平さんによる,「きらめきコンサート:イタリアに憧れて」を聞いて来ました。今年の「演奏会通い」の締めになる見込みです。

金箔工芸館では,入口付近の多目的スペースを使って定期的にミニ演奏会を行っていますが,今回で48回目とのことです。金沢市内には色々な博物館や文芸館があり,金沢蓄音器館などでも定期的に公演を行っていますが,スペース的には金箔工芸館のこのスペースがいちばん行いやすいのではないかと思います。

プログラム(+曲目解説も)は,江原さんが考えたもので,とてもよく考えられたものでした。サブタイトルは,「イタリアに憧れて」でしたが,演奏された3曲は,バロック~古典派的な雰囲気を持つイタリア的な雰囲気のある3曲で,見事に統一感が取れていました。

最初のシュニトケの「古典様式による組曲」だけは,イタリアと一見関係なさそうでしたが,最後に演奏されたストラヴィンスキーの「イタリア組曲」と同じようなアイデアで書かれた曲で,現代の作曲家が過去の作品に,新鮮な光を当てて,蘇らせたような新古典派的な気分がありました。最初のシュニトケは,OEKの小松定期公演・秋で,弦楽合奏版を聞いたばかりでしたので,その点でも,ストラヴィンスキーの「プルチネルラ」と,それをヴァイオリンとピアノ用に編曲して「イタリア組曲」としたパターンと似ているなと思いました。

今回聞いた場所は,かなり前の方だったこともあり,ヴァイオリンとピアノの音を本当に間近で聞くことができました。白川さんのピアノの音は,会場内にたっぷりと染み渡り,江原さんの音は,曲想の変化に合わせて,多彩なニュアンスの変化を楽しませてくれました。シュニトケもストラヴィンスキーも,大半は明るく心地良い響きなのですが,特にシュニトケの方では,小松定期で聞いた時同様,突然不協和音が長く出てきて,音楽の雰囲気が一転するなど,捻りが効いていました。江原さんのヴァイオリンの音には,甘さよりは,引き締まった密度の高さのようなものがあり,これらの曲想にマッチしていると思いました。

この2曲の間に演奏されたのが,タルティーニのヴァイオリン・ソナタ「悪魔のトリル」でした。江原さんのトークによると,「ヴァイオリニストならば,一度は取り上げてみたいと思う曲」ということで,満を持しての演奏でした。この曲は,純正のバロック~古典派の曲ですが,「夢の中に悪魔が出てきて...」というエピソードがある点で,ロマン派的なアプローチも可能な曲かもしれません。実際,クライスラー版というのもあるようですが,今回の演奏は,センチメンタルな気分にはならず,快活さと壮麗さが交錯するような聴きごたえのある演奏を聞かせてくれました。

最初の楽章は,シチリアーノ風だったのですが,シュニトケの組曲の最初の曲もパストラーレで,少し似た感じだったので,その点でも「連想ゲームのようにつながったプログラムだなぁ」と思いました。

アンコール演奏されたのも,イタリアの作曲家プニャーニによる,ラルゴ・エスプレッシーヴォという甘いデザートのような小品。我が家では,今年はクリスマスケーキを食べる予定はないのですが,クリスマス気分にもぴったりと思いました。

今回は江原さんのトークも歯切れが良く,気持ちよく楽しむことができました。白河さんは,江原さんにとっては,「ほとんど我が子のような感じ」とのことで,これからの活動を応援したいとのことでした。今回の選曲は,「古くて新しいイタリア・プログラム」でしたが,是非また,一捻りあるデュオの続編に期待したいと思います。

2019/12/08

OEKと北陸聖歌合唱団の「メサイア」(抜粋)公演は,三河正典さん指揮による,じっくりとしたテンポによる,晴れやかで気持ち良い演奏。独唱の皆さんの歌唱も充実。#oekjp

本日は年末恒例のOEKと北陸聖歌合唱団の「クリスマス・メサイア」公演を聞いてきました。今年は,抜粋版による演奏で,指揮は三河正典さん指揮でした。第1部はほぼ全曲が演奏され,第2部と第3部は「はずせない」定番曲中心という感じでした。

プログラムに掲載されていた,北陸聖歌合唱団による60年に渡る公演リストを見ると,三河さんは今回で4回目の登場。地元の指揮者以外では,最多の登場回数です。今回の演奏を聞いて,北陸聖歌合唱団と三河さんの相性は抜群だと思いました。三河さんのテンポ設定は,基本的に遅めでしたが,そのことにより,合唱団だけでなく,オーケストラの演奏についても,表現が徹底していると感じました。それでいて,演奏全体はすっきりまとまっており,「ハレルヤ・コーラス」をはじめ,合唱団が大きく歌い上げる部分は,とても晴れやかでした。聞いている方も気持ち良かったのですが,歌っている皆さんも気持ちよかったのではないかと思いました。

「アーメン・コーラス」などでは,三河さんは,曲中の要所要所で非常に大きな間を取っていました。最後は,非常に壮麗でスケール感たっぷりに締めてくれました。

今回はソリストの皆さんも素晴らしい歌唱の連続でした。序曲に続いて,テノールの伊達達人さんの,全く苦しげな感じのしない瑞々しい声。バリトンの高橋洋介さんは,過去,OEKの定期公演にも登場しています。第1部と第3部の魅力的なアリアを威厳のある美しい声で聞かせてくれました。

メゾ・ソプラノのパートは,今回はカウンターテノールのデキョン・キムさんが担当しました。古楽の歌唱法で,非常にすっきりとしているのですが,その中に優しさの溢れており,第2部の長いアリアなども自然な哀しみがこもっているようでした。ソプラノは,お馴染みの朝倉あづささんではなく,韓錦玉さんでした。韓さんの声にも暖かみがあり,第1部後半などは,クリスマスの物語をお母さんが子どもに読み聞かせてくれているような親しみやすさを感じました。

今年も無事に平和な気分で「メサイア」を楽しむことができました。少々早いのですが,今年の演奏会通いは本日で最後になりそうです。アンコールの「きよしこの夜」を聞きながら,無事1年が終わりそうなことに感謝したいと思います。

PS.今回は,「メサイア」に先だって,春日朋子さんによる,パイプオルガン演奏で2曲演奏されました。これまで,プレコンサートの形だったのですが,このスタイルの方がじっくりと楽しめるので,良いなと思いました。

2019/12/07

12月恒例のPFUクリスマスチャリティコンサート。今年の指揮は,OEK初登場のキハラ良尚さん。オーソドックスでありながら,非常に新鮮で勢いのあるベートーヴェンの7番を聞かせてくれました。村治奏一さんとの共演のアランフェス,池辺さん監修の映画音楽集も楽しめました。

本日は12月恒例のPFUクリスマスチャリティコンサートを石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。このコンサートも回を重ね,今回で28回目とのことです。毎年のように,OEKが登場していますので,ほとんど12月の定期公演のようなものですね。

今回登場したのは,若手指揮者のキハラ良尚さん,ギター奏者の村治奏一さんでした。お二人ともOEKと共演するのは初めてだと思います。この2人に加え,案内役として池辺晋一郎さんが登場しました。

前半は,スッペの「軽騎兵」序曲で始まりました。非常に有名な曲ですが,あまりにも親しみやすい曲なので,演奏会で聞くのはかえって珍しい,といった曲かもしれません。キハラさんの指揮は大変率直で,のびのびとこの曲を魅力を伝えてきました。じっくり聞くと気持ち良い曲だなぁと思わせてくれました。

この曲ですが,実は,次に演奏された池辺さん作曲の黒澤明監督の映画「影武者」の音楽への伏線でした。池辺さんが「影武者」の映画音楽を担当した際,ラッシュ(未編集プリント)に「軽騎兵」序曲が入っていたそうです。「軽騎兵」序曲のイメージで音楽を付けて欲しいという黒澤監督のメッセージなのですが,その真意はよく分からないということで,あれこれ策を駆使して,「金管楽器の音を入れたい」ということが分かり,作曲したとのことです。

この「影武者」の音楽ですが(どういう場面で使われていたのか分からないのですが),「軽騎兵」というよりは,ベートーヴェンの「英雄」の第2楽章の葬送行進曲のような感じの曲でした。途中トランペットが出てくるということで,ワーグナーの「神々の黄昏」の「ジークフリートの葬送行進曲」的な感じもありました。「軽騎兵」序曲のような「景気」の良さ(池辺さんの本日のダジャレの一つです)はありませんでしたので,恐らく,戦いに敗れた感じの場面で使われたのかなと思いました。

続いて,武満徹「3つの映画音楽」から,第1曲「調練と休息の音楽」と第3曲「ワルツ」が演奏されました。「ワルツ」の方は,井上道義さんの時代から,アンコールピースとして何回も聞いてきた曲でしたが,第1曲の方を聞くのは...久しぶりだと思います。ちょっとブルースっぽい雰囲気のある魅力的な作品で,「ワルツ」並みに聞かれても良い曲だなぁと思いました。「ワルツ」の方は,井上さんに比べるとあっさりとした感じで,シュッとした感じの美しさがありました。

前半の最後は,村治奏一さんの独奏で,ロドリーゴのアランフェス協奏曲が演奏されました。金沢の冬とは正反対のカラッとした明るさのある演奏でした。村治さんのギターの音の澄んだ音が心地良く響いていました。有名な第2楽章も,ノスタルジックな雰囲気よりは,どこかニヒルでクールな雰囲気を感じました。第3楽章は力強さと同時に,ニュアンスの豊かさを感じました。キハラさん指揮OEKも,しなやかにバックアップをしていました。

アンコールでは,タレガの「アルハンブラの思い出」が演奏されました。最初の部分は,オッと思わせるほど揺らぎのある独特のテンポ感で始まりました。村治さんならではの語り口にグッと引きつけてくれるような演奏でした。

後半は,OEK十八番のベートーヴェンの交響曲第7番が演奏されました。9月の定期公演でも取り上げたばかりの得意曲です。ただし,私自身は都合でこの公演を聞けなかったので,そのリベンジ(?)の意味と,初めて聞く指揮者がどういう演奏を聞かせてくれるかの期待を込めて,大変楽しみにして聞きました。

そのキハラさんの演奏ですが,奇をてらった所のない,伸びやかな演奏だったと思いました。堂々とした部分は堂々と,テンポの速い部分はぐいぐい進む,というメリハリがしっかり効いていました。この曲を何回も演奏している,OEKの持つ安定感をベースにしつつも,要所要所で,力強い表現やデリケートなニュアンスを効かせたり,非常にバランスの良い演奏だと思いました。

特に後半の第3,第4楽章の流れの良さは,若手指揮者ならではだと思いました。しっかりと音やバランスが整ったままで,心地良く疾走するような演奏でした。第4楽章の最後の部分なども熱狂的に燃え上がるというよりは,ゴールインした後もそのまま,ゴールを超えてズーッと走り抜けていってしまうような,余裕のある伸びやかさを感じました。

案内役の池辺さんは,「キハラさんは,これから必ず名前をたびたび聞くようになる指揮者です」と紹介されていました。これからの活躍が大いに楽しみです。ちなみに,ちょっと気になる「キハラ」というカタカナ表記ですが,もともとは漢字表記だけれでも,「芸名(?)」として使っているとのことです。俳優でいうと「キムラ緑子」のような感じですね。

まだ時期的には早いのですが,「クリスマス・チャリティコンサート」ということで,アンコールでは,アダンの「オー・ホーリー・ナイト」が池辺さんのお弟子さんの日高さんによる編曲版で演奏されました。池辺さんは「クリスマス・ソングの中ではこの曲がいちばん好き」と語っていましたが,実は私も同様です。「ジングルベル」「赤鼻のトナカイ」などと比べると,大人っぽい雰囲気があり,聞いているうちに,どこか切ない感じにさせてくれるような美しさがあります。日高さんのアレンジは,OEKにぴったりの編成用のもので,期待どおりの美しさと切なさを味わうことができました。これからも,PFUコンサートのアンコール曲として毎年使ってもらっても良いかなと思いました。

2019/11/29

岩城宏之さんの遺産の一つ,ジュリアン・ユー編曲による室内オケ版「展覧会の絵」は,多彩で大胆な響きの連続。大変楽しめました。津田裕也さんの「平然と美しい」ピアノによるショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番も絶品でした。

昨日のリハーサル見学に続き,本日はオーケストラ・アンサンブル金沢の定期公演マイスター・シリーズを聞いてきました。指揮は,常任客演指揮者の川瀬賢太郎さん,ピアノは津田裕也さんでした。

本日の公演の面白さは,まず選曲にありました。最初にオリバー・ナッセンがムソルグスキーの作品をオーケストレーションした「ムソルグスキー・ミニアチュアズ」,次にショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番。最後にムソルグスキー作曲,ジュリアン・ユー編曲による室内オーケストラのための「展覧会の絵」が演奏されました。現代の作曲家がアレンジした,「ひねりの効いた」ムソルグスキーの作品と,いつもとは一味違って「結構,素直な感じの」ショスタコーヴィチという,川瀬さんこだわりのプログラムでした。そして,その狙いどおりの,大変面白い演奏会になりました。

最初の「ムソルグスキー・ミニアチュアズ」は小品2曲ということで,フルコースの前菜のような感じの位置づけでした。ムソルグスキーというよりは,メンデルスゾーンといった趣きのある,愛らしい曲2曲。この曲を聞きながら,作曲者の故オリバー・ナッセンさんは,大変体格が立派な方だったなぁということを思い起こしました。大きなナッセンさんが作った,珠玉の小品といった作品でした。

続く,ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番は,昨日,リハーサルを聞いたばかりだったので,特に面白く聞くことができました。古典的といって良いような明快さのある曲想で,両端楽章の生き生きとした表情がまず印象的でした。冒頭,ファゴットが軽快なメロディを演奏するのですが,飯尾洋一さんのプログラム解説に書かれていたとおり,「なるほど,チャイコフスキーの「悲愴」交響曲の第3楽章の主題とよく似ているなぁ」と思いました。

それを受けて出てくる津田裕也さんのピアノは非常にクリアで,力んだところのない,心地良い音を聞かせてくれました。派手なパフォーマンスはなく,平然と地に足のついたタッチで鮮やかな音楽を楽しませてくれました。初めて実演で聞く曲でしたが,「絶品!」と思いました。

第2楽章は,川瀬さんが「ショスタコーヴィチのすべての曲の中でも特に美しい部分」とおっしゃられていたとおりの楽章でした。ショスタコーヴィチの緩徐楽章は,美しさと同時に冷たさとか不気味さが漂うのが定番ですが,この楽章については,素直に美しく,ほのかにロマンティックな気分も漂っていました。息子(指揮者として有名なマキシム・ショスタコーヴィチ)のために書いた曲という点が反映しているのだと思います。津田さんのスタイルにぴったりの楽章でした。

第3楽章は再度軽快な雰囲気に戻りますが,途中,ピアノ練習曲の定番「ハノン」のパロディ風パッセージが出てくるあたりが面白いところです。津田さんは,この部分も平然と鮮やかに演奏しており,お客さんは唖然として聞いているといった感じでした。

アンコールで演奏されたショパンのマズルカのしっとりとした落ち着きも絶品でした。金沢の冬の空気にピッタリでした。

後半の「展覧会の絵」は,数あるこの曲の編曲の中でも特に型破りなものだと思います。OEKは故岩城宏之さんとこの曲を演奏しており,CD録音も残していますが,実演で聞くとそれを遙かに上回るような面白さを体感できました。多彩で大胆な響きの連続でした。

岩城さんの録音と違うのは,弦楽器の人数をOEKの通常の編成で演奏していることです。特にジュリアン・ユーの楽譜には人数についての指示はなく,岩城さんは弦楽器各1名という「超室内オケ」編成で演奏していたのですが,今回は編成を大きくすることで,より響きの多様性が表現されていたと思いました。

「展覧会の絵」といえば,まず「プロムナード」のメロディが印象的ですが,ジュリアン・ユー版では,ヴィオラが演奏します。ラヴェル版でのトランペットとはあえて正反対の音を使ったという感じです。この日は,おなじみダニール・グリシンさんが担当していましたが,あらためて「素晴らしい音だ」と思いました。大きく浮遊するような,不思議な大らかさが漂っていました。基本的にプロムナードが出てくるたびにグリシンさんが活躍していたので,絵を見て回っている「お客さん」役を担当していたとも言えます。

その次に活躍が目立ったのが,エキストラの河野玲子さんをはじめとする打楽器奏者の皆さんでした。シロフォンなどの鍵盤打楽器が加わって,急に「中国風」の雰囲気になったり,多種多様な音を楽しませてくれました。

その他の楽器(というが,すべてのパートだと思います)も,特殊奏法続出で,次から次へと音色やテクスチュアが変化していきました。ピアノ版だと素直に一続きのメロディを,複数の楽器に分けて,妙なぎこちなさを強調したり,管楽器の方々に「音」を出さずにヒューという息の音だけを出させたり,SF映画の音楽のようになったり...「技のデパート金沢支店(?)」という感じでした。恐らく,バランス良くまとめるのは難しかったと思うのですが,川瀬さんは非常に精緻,かつ生き生きと各曲を聞かせてくれました。

最後の「キエフの大門」も独特でした。最後の最後の部分は...最近では「珍百景」の音楽ですが...大げさに盛り上がるのを避け,室内楽的な雰囲気のまま進んでいきました。そして最後,チャイムの音の余韻をしっかりと響かせて静かに終了。諸行無常の響きあり,といったところでしょうか。

実は,昨日のリハーサルの時,川瀬さんは「お客さんには,最後の音の余韻をしっかり持ち帰って欲しい。アンコールはなしにしましょう」といったことを語っていました。「なるほど,アンコールなしで正解」と思いました。

色々なアイデアの詰め込まれた,OEKの遺産を発掘した今回の演奏会は大成功だったと思います。演奏会全体の時間的にはやや短めでしたが,新鮮な「展覧会の絵」を中心に,OEK以外では聞けないようなプログラムをしっかりと楽しめた演奏会でした。

«川瀬賢太郎指揮OEK定期公演の前日リハーサルと川瀬さん+OEK楽団員との交流会に参加。音楽作りのプロセスの一端とメンバーの素顔に接してきました。

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