OEKのCD

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2019/10/12

台風が来ている中,室生犀星生誕130年記念として #室生犀星記念館 主催で行われた,谷川賢作さんとオンド・マルトノ&歌の原田節さんによる犀星詩コンサート@金沢21世紀美術館へ。詩と音楽のどちらも楽しめました。金沢の風雨が東海・関東ほど激しくなかったことに感謝しないといけません

台風が来ている中,室生犀星生誕130年記念として室生犀星記念館主催で行われた,谷川賢作さんとオンド・マルトノ&歌の原田節さんによる犀星詩コンサートが金沢21世紀美術館で行われたので,夕方から参加してきました。行けるかどうか,微妙な状況でしたが,金沢の風雨が東海・関東ほど激しくなかったことに感謝しないといけません

個人的には,オンド・マルトノという楽器を一度,生で見てみたい,聞いてみたい。しかも演奏は原田節さん。というあたりが注目ポイントだったのですが,谷川賢作さん作曲による,犀星・朔太郎・中也の詩につけた曲を原田さんが,オンド・マルトノを弾きながら,味わい深く歌うというのが実に良かったですね。

企画の趣旨としては,「犀星の詩」が主役で,「動物詩集」の詩につけられた,ユーモアあふれる曲を聞きながら,日本版「動物の謝肉祭」が作れるかも,と思いました。その他の詩人の曲では,ちょっと自虐的な感じのする,中也の「詩人は辛い」が面白かったですね。クラシック音楽の鑑賞にも通じるような内容だったので,じっくりと読んでみたいと思いました。

谷川さんの父上の俊太郎さんの詩,武満徹の曲による「ぽつねん」も,聞かせる曲でした。老婆を描いた作品で,ユーモアと同時に身につまされるような,怖さのようなものもありました。

谷川さんの曲は,ジャズ,タンゴ,クラシック,シャンソンなど色々なテイストが合わさったもので,多彩な詩の雰囲気にぴったりでした。そこに原田さんのオンド・マルトノの音が重なります。この楽器の音を生で聞くのは初めてでしたが,妙に艶めかしいヴィブラートがかかったり,邪悪な激しさがあったり,とても表現力が豊かで,人間の声に近い表情を持った楽器だと思いました。もちろんこれは,原田さんの技巧によるものだと思います。自分の声の一部になったような感じで,自由自在に多彩な音を出していました。

そして,原田さんの歌。「日本版トム・ウェイツ」と谷川さんは紹介されていましたが(実は...よく分からないのですが),不思議な味と力のある歌でした。最後のコーナーでは,原田さんはフランス語で色々な曲(夢見るシャンソン人形,いつものように(マイウェイのオリジナル版))を歌ったのですが,正真正銘,人生の悲哀を感じさせるシャンソンだなぁと思いました。
谷川さんと原田さんによる,CDを販売していたので,記念に買ってみようかな...と思ったのですが...うっかりほとんどお金を持っていないことに気付き,何も買わずにおきました(駐車場料金だけは確保しておかないといけないので)。

谷川さんは,大変おしゃべりの好きな方で,実は東京の自宅のことが大変気になっていますということでした。谷川さんの自宅に限らないことですが,何とか今晩を切り抜け,災害が少しでも少なくなることを祈っております。

マルク・ミンコフスキ指揮OEK マイスター定期は増強した編成によるドヴォルザーク特集。スラヴ舞曲op.72全曲と「新世界から」は,どちらも「ドヴォルザーク愛」にあふれた,熱くて深い演奏。外の雨とは「別世界」でミンコフスキさん音楽に浸ってきました。

本日は台風が関東・東海地方に迫る中,OEKの芸術監督,マルク・ミンコフスキ指揮によるマイスター定期公演を石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。プログラムは協奏曲なしのミンコフスキさんの指揮を楽しむプログラム。前半がドヴォルザークのスラヴ舞曲作品72(全曲),後半がドヴォルザークの交響曲第9番「新世界から」というドヴォルザーク特集でした。

ミンコフスキさんとドヴォルザークという組み合わせは,意外な気はしましたが,前半後半とも,ミンコフスキさんの「ドヴォルザークへの愛」が伝わってくるような,素晴らしい演奏でした。

前半のスラヴ舞曲集は,CDはかなり出ていますが,実演でこれだけまとまって演奏されることは珍しいと思います。特に,作品46の「続編」である,作品72の8曲の方は,超有名曲の72-2以外は,知る人ぞ知るといった曲が多いのではないかと思います。私自身,作品72の全曲を実演で聞くのは初めてでしたが,「スラヴ組曲」といった感じの多様性を感じさせる,聴きごたえのある演奏になっていたと思います。

もともとスラヴ舞曲の方は,速いテンポの舞曲とゆったりしたテンポの曲がバランス良く混ざっています。今回のOEKは弦楽器をかなり増強しており,12-10-8-8-4というフルオーケストラに近い編成でした。そのことにより音の重量感が増していました。その一方で,ミンコフスキの指揮は演奏全体にエネルギーを与えるような感じで,重量感とキレの良い動きが見事に合体していました。

曲の中では,最後の第8番が特に素晴らしい演奏だったと思います。夢見心地のようなしっとりとした気分のある演奏で,第1番~第7番までの生き生きとした世界を美しく,懐かしく振り返っていました。

後半はお馴染みの「新世界から」。ホールの外は,雨が降り続いていましたが,ホールの中は「別世界」。ミンコフスキさんの指揮にもお馴染みの曲に,新たなエネルギーを注入したような,気合い十分の演奏。「別世界から」という演奏だったと思いました。

前半のスラヴ舞曲同様,どの部分にもミンコフスキさんの「ドヴォルザーク愛」が感じられ,それがOEKの演奏のエネルギーになっていました。この日のコンサートミストレスは,アビゲイル・ヤングさんでしたが,そのお隣には水谷晃さん。チェロの首席奏者の方は客演の辻本玲さん。演奏全体を通じて,各パートが競い合いながらも一体となって盛り上がるような「熱気」がありました。

その一方,静かな楽章では,じっくりと間を取る部分があり,その「静けさ」に凄みを感じました。OEKにとって,「新世界から」は頻繁に演奏できる曲ではありません。恐らく,ミンコフスキさんにとっても,新たなレパートリーなのではないかと思います。その新鮮さが,「熱さ」と「深さ」につながっていた気がしました。

というわけで,雨の中出かけてきて,本当に良かったと思いました。この日の演奏会は北陸朝日放送が収録を行っていましたが,そろそろ,ミンコフスキさん指揮OEKによるCD録音を期待したいと思わせるような素晴らしい演奏会でした。

2019/10/06

石川フィルハーモニー交響楽団特別演奏会。バーンスタイン,スターウォーズ組曲,マーラーの「巨人」という素晴らしいプログラム。大編成オーケストラの魅力をしっかり楽しめました。

本日は,2019ビエンナーレいしかわ秋の芸術祭の一貫で行われた,石川フィルハーモニー交響楽団特別演奏会を石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。本日は同じ時間帯に,話題のピアニスト,藤田真央さんのリサイタルが市内で行われるなど,いくつか演奏会が競合しており(ついでに言うと大相撲金沢場所もやっていましたね),どれに行くか迷ったのですが,マーラーとジョン・ウィリアムズに惹かれて,石川フィルの演奏会を選びました。公演パンフレットにも書かれていたとおり,石川フィルさんは,通常の定期公演とビエンナーレの特別公演の場合とで方針を変えているようで,今回は大編成の難曲に挑戦する形になりました。

プログラムの前半は,バーンスタインのキャンディード序曲とウィリアムズのスターウォーズ組曲でした。キャンディード序曲は,長年,開幕にぴったりの充実感のある演奏でした。最初の元気のよい部分も良かったのですが,中間部に出てくる「求婚のテーマ」にも落ち着いた味があって特に印象的でした。それにしても...この曲は結構長い間「題名の音楽会」のテーマ曲だったので,曲が始まると,佐渡裕さんの顔が浮かんできてしまいますね。

「スターウォーズ」の音楽については,ベルリン・フィルが取り上げたり,グルターヴォ・ドゥダメルが取り上げたり,徐々にクラシック音楽化して来ている印象もあるのですが,金沢で「メインタイトル」以外の曲をまとめて聞く機会は少ないと思います。今回演奏された組曲は,作曲者自身が選曲した5曲で,1970年代から1980年代に公開された最初の三部作の音楽から成っていました。

メイン・タイトルについては,最初のファンファーレが鳴った途端,サントラと同じだと嬉しくなりました。途中,ホルストの「惑星」のような感じになっていくのですが,この辺は実演で聞くと,特に良いですね。組曲を通じて,フルートが素晴らしい演奏だったと思いました。SFにぴったりのクールな音でした。

「レイア姫のテーマ」と「ヨーダのテーマ」は,しっかり意識して聞いたことはなかったんですが,プログラムの解説を読みながら聞くと,「なるほど」と思いました。ライトモチーフをしっかりと組み合わせて,意味を込めていたり,素直な調性にして,健全な響きを出していたり,という作曲者の意図がよく伝わってきました。

「ダース・ベイダーのテーマ」は,「帝国のマーチ」ということで,メイン・タイトルの次に有名な曲ですね。指揮者の花本さんは,指揮棒を指揮台の下に用意してあったライトセイバー(それとも,日本刀のおもちゃ?遠くからだと判別できませんでした)に持ち替えての指揮でした。弦楽器のトップ奏者の頭を叩けそうな感じでした。この曲は,結構,色々な場所で聞くようになってきたので,曲想とは別に,聞くと妙に嬉しくなってしまうところがあります(個人の感想です)。

最後は,「王座の間」の音楽でした。この音楽には,落ち着きと華やかさがあり,映画同様,組曲の最後に聞くとしっかりと締まりますね。5曲セットで,小型交響曲を聞いたような充実感のある演奏でした。

後半のマーラーの交響曲第1番「巨人」が演奏されました。石川フィルは11年前にもこの曲を演奏しており,花本さんの指揮で聞いたことがあるのですが,熟練の指揮ぶりで,第4楽章のクライマックスに向けて大きく盛り上がる音楽を聞かせてくれました。

プレトークで,第1楽章の冒頭は弦楽器のフラジオレットを使っていること,第3楽章にはコントラバスとテューバという低音楽器による珍しいソロがあること,などオーケストラのメンバーを交えて紹介をしてくれました。プログラムの解説もとても充実しており,曲をさらに楽しむことができました。

第1楽章では,楽章の後半で,一気に目が覚めて,「自然」が動き出すような感じが鮮やかに表現されていると思いました。ホルン全員で力強く演奏する部分がバシッと決まっていて良かったですね。第2楽章は落ち着いたテンポのレントラー舞曲でした。トリオでの弦楽器の優しい音も非常に魅力的でした。第3楽章のコントラバス・ソロからは,素直な民謡風のメロディから,自然に哀愁がにじみ出ていました。テューバのソロは,実はこれまであまり意識して聞いたことはなかったのですが,良い味を出しているなぁと思いました。

第4楽章は,まず冒頭のシンバルの強烈の響きが良かったですね。その後は,プログラムの解説に書いてあった,「半音階で下がっていく不吉なモチーフ」に注目してみたのですが,このモチーフが結構しつこく何回も出てくるのが分かり大変面白く聞くことができました。途中対照的に弦楽器による美しいメロディが出てきますが,こちらの方は非常にねっとりと演奏されており,「マーラーの音だ!」と思いました。このメロディを聞くといつもずっと浸っていたいと思います。その辺の対比が続いた後,最後の大きな盛り上がりへとつながっていきます。

この日は,前半のジョン・ウィリアムズの時から「トランペットが大変」というプログラムということもあって,7人もトランペットがいましたが,この最後の部分では全員一斉に演奏していました(多分)。ティンパニ2台を中心とした打楽器の激しい連打と一体となって,滅多に味わえないような強烈な響きで全曲を締めてくれました。こういう響きを聞くと,アマチュアオーケストラの熱い演奏はいいねぇと思います。

マーラーの交響曲の後だったので,アンコールはないかも,とも思ったのですが,何と「花の章」(「巨人」のオリジナル版にあった楽章)が演奏されました。そうなってくると,最初から「花の章付き」で演奏しても良かった気もしましたが,今回の演奏を聞いて,アンコールにぴったりの曲だと思いました。

とてもリラックスした感じの曲なので,大曲の演奏の後にぴったりでした。トランペットが大活躍する曲なので,「お疲れのところ,もうひと頑張り」という感じもあったのですが,今回は7人も奏者がいたので,「花の章」のトランペットのパートを全員で分担して演奏していました。こういうのもとても良いと思いました。

というわけで,大編成のオーケストラ作品を,熱い演奏で気持ちよく楽しめた演奏会でした。

2019/10/03

念願の #イ・ムジチ合奏団 with #小松亮太 金沢公演。2つの「四季」を中心に,お客さんは大喜び。昭和時代からの念願がようやく叶い,イ・ムジチの魅力を体感できた演奏会でした。終演後の大サイン会も大盛況

本日はイ・ムジチ合奏団の来日公演の金沢公演を石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。ゲストはバンドネオン奏者の小松亮太さんでした。

イ・ムジチ合奏団は,私がクラシック音楽を聞き始めた昭和時代から,クラシック音楽やバロック音楽の定番中の定番でした。特にヴィヴァルディの「四季」については,イ・ムジチの名前とセットになって,日本に定着していったのではないかと思います。その後,古楽器による演奏や古楽奏法によるバロック音楽の演奏が定着していく中で,イ・ムジチについては,やや影が薄くなって来た印象を持っていたのですが,本日の演奏を聞いて,「さすが,イ・ムジチ。永遠に不滅かも」という実感を持ちました。

あえて元号で言うと,昭和時代,皆で同じものを聞いて楽しんでいた時代の良さのようなものを思い出させてくれる気がしました。もちろん,イ・ムジチの「四季」についても,コンサートマスターが変わるたびに,演奏のスタイルがどんどん変化してきており,今回の演奏も,私が最初に聞いた,フェリックス・アーヨの時代のロマンティックと言っても良いような甘さが漂う演奏とは全く違うのですが,お客さんに対する姿勢というのはずっと一貫しているのでは,と思いました。イ・ムジチの演奏を聞くのは,実は今回が初めてだったので,「長年の念願がかなった!」といううれしさと同時に,明るく健康的なイタリア音楽を品良く楽しませてくれる,というスタイルが一貫していることが何よりも素晴らしいと思いました。

イ・ムジチについては,来日直前にコンサートマスターのアントニオ・アンセルミさんが亡くなるという予期せぬ出来事があり,今回のコンサートマスターはマッシモ・スパダーノさんが担当していました。その交代によって演奏のスタイルに変化があったのかは分からないのですが,近年の古楽奏法を取り入れたような解釈や,くっきりとメリハリをつけた,モダンな感覚があり,時代とともにマイナーチェンジを続けているのだなと思いました。

それが過激にはならず,健全でバランスの良い品の良さに支えられているのがイ・ムジチの良さだと思います。今回の「四季」も,たっぷりと歌わせるというよりは,やや速めのテンポの演奏で,しっかりと抑制を聞かせながらも,スパダーノさんを中心とした名技をしっかり聞かせ,全体として,明るくスタイリッシュに楽しませてくれるような演奏だったと思いました。

前半は,バンドネオンの小松亮太さんとの共演でした。小松亮太さんは,石川県立音楽堂ができて間もないころ,一度,OEKと共演していた記憶がありますが,演奏を聞くのはその時以来です。イ・ムジチの「四季」とバランスを取るかのように,ピアソラの「ブエノスアイレスの四季」を中心にラテン系の曲を聞かせてくれました。

ピアソラの「四季」の方は,オリジナルは室内楽的な編成のはずですが,クラシック音楽の演奏会で演奏される機会も増えて来ています。特にイ・ムジチとの共演で聞くと,後半のヴィヴァルディと全く違和感なく,クラシック音楽として楽しむことができました。その分,ギラギラとした生々しさのようなものは消えていたのかもしれませんが,「本家・四季」からのれん分けした,新たなブランドを楽しむような面白さを感じました。

それにしても,小松さんのバンドネオンの音は耳と心に染みます。まっすぐな純真さとちょっと怪しげな空気が同居しているような魅力を感じました。ピアソラの曲以外に,小松さん自身による「夢幻鉄道」という作品が演奏されましたが,そのタイトルどおりの気分に惹かれました。

そして,この演奏会では,アンコールが大変充実していました。

前半では,小松さんがアンセルミさんを偲んでピアソラの「オビリビオン」を演奏しました。亡き人を静かに,しかし強く偲ぶような深い音楽でした。

後半でも,アンセルミさんを偲んでのヴェルディのアヴェ・マリア(「4つの聖歌」の中の1曲を弦楽合奏にアレンジしたもの)が素晴らしい演奏でした。美しいハーモニーにいつまでも浸っていたいと思いました。

そして,それ以外に何と3曲もアンコールが演奏されました。「夕焼け小焼け」を弦楽合奏用にアレンジした曲は,日本公演向け(もしかしたら定番曲なのでしょうか)のアンコールですが,お客さんも大喜びでした。最後の「1分で終わる」(チェロの方の紹介の言葉です)アンコールの後は,イ・ムジチの皆さんが客席に向かって手を振り,多くのお客さんがステージに向かって手を振り返すという,しあわせ感一杯の雰囲気で終了。

さらに,メンバー全員+小松亮太さんによるサイン会も行われました。これまで何回もサイン会に参加してきましたが,総勢13人がずらっと並ぶサイン会というのは...前例がないかもしれません。イ・ムジチ合奏団の日本での人気の高さは,こういう部分にもあるのかなと思いました。

何というか...昭和時代からの念願がようやくかなったような演奏会でした。

2019/10/01

今晩は,石川県立音楽堂で アンサンブル・ウィーン=ベルリン と アンサンブル金沢 の饗宴による贅沢なモーツァルト尽くしを楽しんで来ました。最後に演奏された,名優のセリフが延々と続くような協奏交響曲を聞いて,満腹しました。さすがのアンサンブルでした

今晩は,ビエンナーレいしかわ秋の芸術祭の一環で行われた,アンサンブル・ウィーン=ベルリンとユベール・スダーンさん指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)によるモーツァルト尽くしの演奏会を聞いてきました。

アンサンブル・ウィーン=ベルリンは,ウィーン・フィルとベルリン・フィルの首席管楽器奏者を中心とした木管五重奏団です。管楽器のソリストとOEKの共演ならば,過去何回もありましたが,管楽アンサンブルとOEKとの共演というのは初めてのことかもしれません。超有名な2つのヴィルトーゾ・オーケストラの首席奏者たちとOEKの共演ということで,お客さんだけではなく,OEKメンバーにとってもスリリングな公演だったのではないでしょうか。

まず,5人の奏者を歓迎するように,OEKお得意のモーツァルトの「ハフナー」交響曲がビシっと演奏されました。今回はバロック・ティンパニを使っていたこともあり,スダーンさんが指揮するモーツァルトには,古楽奏法を思わせるような響きがありました。ビシッと引き締まった雰囲気の中,さらっと流れるような雰囲気もあり,開演にぴったりの華やかさと軽やかさがありました。

続いて,アンサンブル・ウィーン=ベルリンの5人が登場し,モーツァルトの歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」」の中の5つの曲を木管五重奏に編曲したものが演奏されました。当初はモーツァルトの木管五重奏曲(弦楽五重奏を木管で演奏する編曲)の予定でしたが,演奏時間的に見ると,「コジ・ファン・トゥッテ」の方が丁度良いのではないかと思いました。

この演奏を聞いて,まず5人の奏者が作り出す,スケール感が素晴らしいと思いました。5人による演奏にも関わらず,「オーケストラが演奏を始めた?」と思わせる,豊かさを感じました。途中の曲では,5人の奏者それぞれが対話をするように進んだり,各奏者の華やかな見せ場があったり,全く退屈しませんでした。複数のオーケストラのメンバーによるアンサンブルとは思えないほど,演奏全体に安定感とまとまりがあるのに加え,上述のようなスケール感もあり,安心してモーツァルトのオペラの世界に身を任すことができました。

後半はOEKとアンサンブル・ウィーン=ベルリンとの共演になりました。最後に演奏される協奏交響曲K.297b(モーツァルトの作品なのか疑われているけれども,とても良い曲で,有名な作品)には,オーボエ,クラリネット,ファゴット,ホルンのみが参加するということで,まず,フルート協奏曲第1番が演奏されました。

カール=ハインツ・シュッツさんの演奏からは,どこまでも広がっていくような,伸びやかな自由さを感じました。音自体は引き締まっており,古典派の作品らしい,まとまりの良さがあるのも良いなぁと思いました。

演奏会の最後に演奏された,協奏交響曲には,トリに相応しい華麗な気分がありました。くっきり,バシッと決まったジョナサン・ケリーさんのオーボエ,明るく楽天的な心地よさのあったアンドレアス・オッテンザマーさんのクラリネット,楽々と柔らかい音を操るシュテファン・ドールさんのホルン,そして,存在感たっぷりだけれども,しっかりと全体を包み込むようなリヒャルト・ガラーさんのファゴット。闊達に対話をするように演奏する一方で,しっかり,OEKと溶け合うようなオーケストラ的な音を聞かせてくれました。

最終楽章は変奏曲形式ですが,この4人の奏者による名人芸やアンサンブルが,これでもかこれでもかと続く贅沢さがあり,すっかり満腹という感じになりました。この日のお客さんの数は,もったいないことにあまり多くなかったのですが,盛大な拍手が続き,皆さん大満足といった感じで演奏会は終了しました。

ベルリン・フィルやウィーン・フィルのメンバーとOEKとは,ヴェンツェル・フックスさんをはじめとして,結構頻繁に共演をしていますが,木管アンサンブルとオーケストラの共演には,また格別の面白さと贅沢さがあると感じました。

2019/09/17

#朝日新聞 プレゼンツ「オーケストラ・アンサンブル金沢 おしゃべりクラシック」#松木さや #永野光太郎 フルート,チェンバロ,ピアノによる優雅な時間。リーズナブルで贅沢な演奏会でした

本日は午後から休みを取って,「朝日新聞プレゼンツ オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK) おしゃべりクラシック」を聞いてきました。出演したのは,OEKのフルート奏者,松木さやさんとピアノ,チェンバロ奏者の永野光太郎さんでした。この「おしゃべりクラシック」シリーズには以前から関心があったのですが,なかなか行くことができなかったのですが,まだ「夏休みモード」が残っている時期ということで,休暇を取って,約1時間,石川県立音楽堂交流ホールでゆったりと楽しんできました。

チラシの感じだと,松木さんが主役,というイメージだったのですが,実は永野さんの方も大活躍で,フルートとチェンバロのための作品2曲,フルートとピアノのための作品1曲に加え,ピアノ独奏のための小品が2曲演奏されました。というわけで永野さんの方が出ずっぱりでした。

今回,フルートで演奏された作品は,モーツァルトとJ.S.バッハ(不確実なのですが)のソナタとフランスのヴィドールによる組曲でした。標題のついた曲がなかったので一見地味目でしたが,松木さんのフルートには,いつもどおりの余裕たっぷりの美しさが溢れていました。不自由な部分が全くないような健康的な気分と優雅な世界を満喫することができました。音量の小さなチェンバロとの共演の曲でも,しっかりと音量的なバランスが取れており,伸びやかさだけでなく抑制された美しさも味わうことができました。

特にモーツァルトのソナタK.14(モーツァルト8歳!の時の作品)の最終楽章では,チェンバロは,非常に繊細な音を使っており,フルートの音色とあいまって,小さな宝物を丁寧に扱うような美しさを味わうことができました。

伝バッハの曲も「オブリガートチェンバロのための作品(右手パートもしっかり楽譜に書かれている作品)」ということで,チェンバロとフルートのコラボレーションを楽しむことができました。この曲では,第2楽章のシチリアーノのかげりのあるメロディが大変有名です。松木さんの息の長い,流麗さのある演奏でたっぷりと楽しむことができました。

その後,永野さんのピアノ独奏でショパンのピアノ小品が2曲演奏されました。チェンバロの音も良いのですが,やはりピアノの音を聞くと,落ち着きます。特に「やさしい雨」が降り注いでいるような感じの「雨だれ」は,平日の午後に聞くのにぴったりだと思いました。

最後に演奏されたのは,松木さんお気に入りのヴィドールの組曲でした。組曲というタイトルになっていますが,楽章の構成的にはソナタと同様だと思いました。初めて聞く曲でしたが,各楽章のキャラクターの違いが鮮明で,大変親しみやすい作品でした。どの楽章もメロディが美しく,隠れた名曲(もしかしたらフルート界では有名な曲なのかもしれませんが)だと思いました。チェンバロとの共演の時と比べ,音域的にも広くなり,演奏全体の伸びやかさもさらにアップしている感じでした。

アンコールでは,ドビュッシーの「小組曲」の中の「小舟にて」がじっくりと演奏されました。この曲はオーケストラ版では何回も聞いたこともありますが,今回の演奏では,いつもにも増して,松木さんのフルートの美しさを堪能できました。

というわけで,聴きごたえ十分でした。ホテルのレストランがランチタイムの時だけ,夜の時間帯よりもリーズナブルな価格設定でメニューを提供する,というのは良くありますが,今回の公演の料金は,何と500円。その雰囲気のある演奏会だと思いました。お客さんもとてもよく入っていました。というわけで,今後も平日午後の公演も「要チェック」と言えそうです。機会があれば,また,このシリーズを聞きにきたいと思います。

2019/09/14

岩城宏之メモリアルコンサート #鶴見彩 さんのピアノによる誠実さのある協奏曲第4番。#ユベール・スダーン さん指揮OEKによる,新鮮で骨太の交響曲第5番。このベートーヴェン2曲に加え, #木村かをり さんのクールなピアノによる #湯浅讓二のピアノ・コンチェルティーノ #oekjp

毎年9月,OEKの秋の新シーズンの開始の時期に行われている,岩城宏之メモリアルコンサートを聞いてきました。この演奏会では,その時の岩城宏之音楽賞受賞者とOEKが共演することになっています。今年はピアニストの鶴見彩さんが受賞しました。

鶴見さんといえば,石川県新人登竜門コンサートに出場して以来OEKとのつながりの深い方で,金沢で行われるOEKメンバーとの室内楽公演にも頻繁に登場されています。OEKのメンバーにとっても,「ファミリー」と言って良いような信頼を寄せている実力者です。

その鶴見さんが選んだ協奏曲は,ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番。「皇帝」や第3番に比べるとちょっと控えめだけれども,ロマンティックな香りや美しい瞬間にあふれ,さらには,ベートーヴェンらしい芯の強さのようなものも求められる作品です。この選曲は,鶴見さんの雰囲気にぴったりだと思いました。

演奏の方も,第1楽章冒頭の印象的なソロから誠実さのある演奏を聞かせてくれました。大げさになりすぎないけれども,しっかりとした足取りの中から美しさがにじみ出てくるようでした。第3楽章を中心に軽快な音の動きも心地良く,しかし浅薄にならず聞かせてくれました。

ユベール・スダーンさん指揮OEKの演奏も,共感に溢れたもので,鶴見さんをしっかりバックアップしていました。第3楽章に出てくる,チェロやヴィオラのオブリガードのメロディを室内オーケストラらしい響きで美しく聞かせてくれたのも印象的でした。第3楽章のコーダの部分の力強い演奏などは,「これからもがんばって」と強く後押しをしてくれているようでした。

前半では,岩城さんの夫人であり,音楽賞の審査者でもあった,木村かをりさんの独奏で,久しぶりの再演となる湯浅讓二さんのピアノ・コンチェルティーノが演奏されました。木村さんの演奏は,相変わらずクールでした。この曲自体にも涼やかな雰囲気があり,ピアノとオーケストラが一体になって透明感のある世界を作っていました。曲の最後の方は,ピアノの音がクリアな空気に溶け込んでいくような不思議な雰囲気を感じました。岩城さんは,生前「初演魔」と呼ばれていましたが,過去のコンポーザー・イン・レジデンスの作品の中から,特に特徴的な作品を再演していくのも意義のあることだと思います。

演奏会の後半では,ベートーヴェンの交響曲第5番が演奏されました。定番中の定番の作品ですが,スダーンさんの解釈は非常に新鮮でした。全体的に速めのテンポで,所々,前のめりな性急さを感じさせる部分もありましたが,この辺もしっかり計算されている感じで,曲全体として聞くと,揺るぎない安定感を感じました。

各パート,各楽器ごとの歌わせ方に独特の強弱を付けているなど,「小技」を色々と盛り込んでいるようなところもありましたが,そのアイデアの数々がビシッと決まっており,演奏全体を非常に生気のあるものにしていました。

ただし,全体の印象としては,細かい部分にこだわることよりは,楽章ごとに,太い筆でしっかり描かれたような骨格をしっかり感じさせるような演奏で,4つの楽章の性格がきっちりと描き分けられた,交響曲らしい演奏だったと思いました。

スダーンさん指揮OEKは,来週は定期公演として,同じベートーヴェンの交響曲第7番を演奏します。同じ奇数番の曲を,どう聞かせてくれるのか大変楽しみです。

PS. この日は終演後,サイン会が行われました。サイン会には毎回のように参加しているのですが,本日はすぐに帰宅する必要があったので,参加できませんでした。残念。

2019/09/07

オーケストラ・アンサンブル金沢 高岡特別公演 with #合唱団OEKとやま #山下一史 さんの指揮でコダーイのミサ・ブレヴィス,ブダ城のテ・デウムなど挑戦的なレパートリーを楽しんできました。「歌いたい」という意欲がしっかり伝わる演奏でした。 #oekjp

本日は富山県の高岡市で行われた,オーケストラ・アンサンブル金沢 高岡特別公演 with 合唱団OEKとやまを聞いてきました。この公演は,過去2回は,8月末に富山市で行われていましたが,今回は少し時期が遅くなり,場所を高岡市に変えて行われました。

この合唱団の前身の「合唱団おおやま」との共演の時は,あまり知られていない作曲家による「知る人ぞ知るレクイエム」の名作を取り上げるのが恒例でしたが,一昨年,「合唱団OEKとやま」の名称に変わってからは,ヴェルディのレクイエム,ベートーヴェンのミサ・ソレムニスとメジャーな路線に変更した感じでした。今年はどうなるのかな...と思っていたのですが,今年度はしっかり(?)当初のマイナー路線に戻ってくれました。

メインで演奏されたのは,20世紀ハンガリーの作曲家,コダーイによる,ミサ・ブレヴィス(小ミサ曲)でした。コダーイは,有名な作曲家ですが,そのミサ曲となると,北陸地方で演奏される機会はほとんどないと思います。選曲については,いつも合唱団側から出されているようですが,最初,指揮の山下一史さんが「本当にできる?」と言ってしまったぐらいに難しい作品とのことです。

この作品が後半に演奏されましたが,非常に良い曲だと思いました。そして,「歌いたい」という意欲が伝わってくる素晴らしい演奏だったと思いました。「小ミサ曲」ということで,ミサ曲にしては,やや小ぶりでしたが,それでも30分以上はありました。楽器編成的には,ミサ曲には定番のトロンボーン3本に加え,テューバも入っていました。トランペット3本,ホルンも4本ということで,OEKの編成は金管楽器がかなり増強されていたことになります。こういった楽器が加わることで,OEKは冒頭からパイプオルガン的な響きを出していました。

曲の雰囲気的は,予想していたよりもオーソドックスな感じでした。ハンガリー風という感じはそれほどしませんでした。グローリア,クレドといった曲の最初の一節はテノールが語るように歌うあたり,本物のミサ(参加したことはないのですが)の気分がありました。歌詞の内容に沿って,曲想が変わっていく感じもオーソドックスな部分がありましたが,やはり20世紀の作品ということで,音のダイナミックレンジが広く,変化に富んだサウンドを楽しむことができました。

合唱団の方は,自身で選曲しただけあって,「歌いたい」という意欲がしっかりとした声となって伝わってきました。大編成のオーケストラに負けない力を感じました。OEKとのバランスの良さは,22回も共演している,この合唱団とOEKのつながりの強さによると思いました。

この曲は第2次世界大戦の末期に書かれ,演奏されているのですが,終盤の楽章に出てくる「平和への祈り」が特に切実なものに感じられました。「アニュス・デイ」で終わるのも良いのですが,この曲では「イテ・ミサ・エスト」という「平和を与えてくれた神に感謝」する楽章で終わっていました。作曲当時の状況を考えると,少し不安で不穏な雰囲気を持ちながらも,希望を感じさせ,聞き手を励ますような歌だったと感じました。

こういう素晴らしい曲を実演で聞けたことに感謝したいと思います。

前半でも,もう1曲コダーイ作曲による「ブダ城のテ・デウム」という作品が演奏されました。こちらの方はもう少しコンパクトな作品でしたが,ミサ・ブレヴィスと全く同じ編成で,充実した響きに満たされた,聴きごたえのある作品でした。何よりも,全体の雰囲気がとても格好良いと思いました。

この2曲のコダーイの作品には,4人のソリストも登場しましたが,それぞれ,瑞々しさがあり,宗教音楽に相応しい雰囲気があると思いました。特に,「テ・デウム」の最後の部分に出てきた,ソプラノの金川睦美さんのソロが印象的でした。曲の最後がソロになることで,祈りの気分がより切実なものに感じられました。金川さんの声には,あふれるような感動がこめられていました。

コダーイの2曲については,機会があれば再度聞いてみたいと思いました。

演奏会の最初には,富山県出身の作曲家,岩河三郎さんによる「富山に伝わる三つの民謡」という合唱とオーケストラのための作品が演奏されました。民謡を素材にした曲ということで,コダーイの曲と組み合わせるのにぴったりだと思いました。

この作品は,簡単に言うと富山県の3つの民謡を合唱曲に編曲したものなのですが,民謡本体の前に,イメージを含ませるような序奏的な部分が付いているのが特徴です。オリジナルの歌詞も付いているので,ジャズのスタンダードナンバーで言うところの「ヴァース」のような感じのイメージに近いと思いました。

全体の雰囲気は,少し懐かしさを感じさせるぐらい親しみやすさがあり,各曲とも気持ちよく盛り上がります。聞いていても心地良かったのですが,歌っていても気持ちの良い作品なのでは,と思いました。富山県の合唱団にとっては,特に大切な作品なのではと思いました。石川県にも,こういう合唱曲が欲しいな,とも思ったのですが,「越中おわら」と「こきりこ」に匹敵するような有名な民謡は石川県にはないかもしれないですね(山中節ぐらい?)。

ちなみに,この日のOEKは,金管楽器をはじめとして客演の方が多かったのですが,コンサートマスターがベルリン・フィルの町田琴和さん,ヴィオラのトップが東京フィルの須田祥子さん,チェロのトップがルドヴィート・カンタさんと,お馴染みの有名ソリストが集まっている感じで,万全の演奏だったと思います。ティンパニも常連の客演奏者の菅原淳さんが担当していましたが,特にコダーイの2曲では,パイプオルガンのペダルのような音をしっかり表現しており,素晴らしいと思いました。

今回の会場の高岡文化ホールに行くのは初めてだったのですが,大きさ的にはOEKにぴったりのサイズでした。多目的ホールということで,もう少し残響があると良いかなと思いましたが,その分,各楽器の音がしっかりと聞こえて来て,特に管楽器のソロなどをしっかり楽しむことができました(「こきりこ」の部分での,松木さんのフルートソロなどが特に印象的でした)。

本日は実験的に北陸自動車道も国道8号線も使わず,「山の方」から車で高岡に行ってみたのですが,我が家からは70分ほどで到着しました。駐車料金も掛からなかったので,今後も機会があれば,高岡には来てみたいなと思いました。

この公演が終わると,「夏の終わり」の気分になります。ここ数日,再度,夏の暑さが復活してきているのですが,行き帰りのドライブも含め,気持ちよく夏の最後の休日を楽しむことができました。

2019/08/31

#若林工房 創立15周年記念 #イリーナ・メジューエワ ピアノ・リサイタル(富山県民会館ホール)。CDの公開録音を兼ねた無料公演で,非常に完成度の高い内容。一気にメジューエワさんのファンになってしまいました。

本日は午後から富山市に出かけ,イリーナ・メジューエワさんのピアノ・リサイタルを聞いてきました。会場は富山県民会館ホールでした。このリサイタルですが,通常のリサイタルとは違い,若林工房という富山県にあるCD制作会社の公開録音を兼ねたものでした。入場料自体は無料(要整理券)だったのですが,本日の演奏を収録したライブCDを会場で先行予約できるなど(実演販売ですね),CD制作・販売とリサイタルを連動させることで,アーティストと聴衆とのつながりを深める効果があると感じました。「これは面白い」と思いました。

そして何より,メジューエワさんの演奏が素晴らしかったですね。CD収録だからということもあったと思いますが,非常に完成度の高い演奏の連続で,こんなに素晴らしいピアニストだったのか,と感嘆しました。一気にメジューエワさんのファンになってしまいました。

逆に言うと,そういうアーティストだからこそ,レコーディング向きと言えます。本日のプログラムの巻末に,若林工房制作のディスコグラフィが付いていましたが,15年の間に(本日は若林工房創立15周年記念イベントでした)100セット以上のタイトルを発売しており壮観でした。その核となっているアーティストがメジューエワさんです。

今回のプログラムは,前半がモーツァルトとメンデルスゾーン,後半がショパンとスクリャービンという構成でした。20分以上の曲はなく(15分程度のモーツァルトのピアノ・ソナタK.280がいちばん長い曲だったと思います),5~10分程度の小品中心だったのですがよく考えられた選曲になっており,それほど知名度の高い曲はなかったにも関わらず,聴きごたえ十分の充実感が感じられました。

メジューエワさんについては,ジャケット等の写真の印象からすると,柔らかく軽やかな演奏をされるのかなと予想していたのですが,むしろカッチリとした剛性感とクリアさのある演奏に特徴があると思いました。速いパッセージでも乱れる部分は皆無,曖昧な部分や甘い部分はなく,限りなくパーフェクトに近づこうという意志の強さを感じさせる演奏だったと思いました。

ただし,堅苦しくピリピリ張り詰めたような緊張感はなく,あくまでも自然体でバシッと決めてくれる,気持ちの良さがありました。演奏する時の雰囲気は常に平静で,全体に優雅なオーラも持っています。左手が空いている時,指揮をするような感じで手を動かすのが「癖」のようでしたが,音楽と奏者とがしっかり一体化しているような集中度の高さを感じました。

メジューエワさんについてはジャケットの顔写真でのしっかりとしたまなざしが印象的ですが,そのイメージどおり,「この方に任せておけば間違いない」と感じさせる安定感があると思いました。

今回演奏曲は,次のとおりでした。
モーツァルト/幻想曲ニ短調,K.397
モーツァルト/ピアノ・ソナタへ長調,K.280
メンデルスゾーン/無言歌(6曲)
ショパン/2つのノクターン, op.27
ショパン/スケルツォ第2番,op.31
スクリャービン/左手のための2つの小品, op.9
スクリャービン/2つの詩曲, op.32
スクリャービン/練習曲, op.42から2曲
スクリャービン/焔に向かって, op.72

どの曲も素晴らしかったのですが,特にショパンとスクリャービンを並べた後半が面白かったですね。演奏された曲は,基本的には古い曲→新しい曲の順に並んでいましたが,ショパンとスクリャービンを続けて演奏すると,スクリャービンの曲のムードが「ショパンそっくり」の雰囲気から,だんだんと神秘的になり,最後はメロディ中心の音楽から脱却していく変化を実感できました。

ショパンの曲については,しっかりと強く歌われるメロディが印象的でした。スクリャービンでは,最後に演奏された「焔に向かって」が凄い曲でした。実演で聞くのは初めてでしたが,その狂気に満ちた気分に魅力を感じてしまいました(危険かも?)。ただし,メジューエワさんの演奏は,完全にのめり込んでしまっているのではなく,燃える焔を外から描いているような冷静さがまだ残っていると思いました。その辺が,聞きやすさとなっていた気がしました。

アンコールは3曲も演奏されたのですが,最後にショパンのノクターンop.9-2をスクリャービンの後に改めて聞くと,何とシンプルで清々しい歌なのだろうと,ショパンの良さも再発見できました。

前半に演奏された,モーツアルトとメンデルスゾーンについても,軽やかに流れていく感じの演奏ではなく,それぞれに確固たるメッセージが込められている感じで,聴きごたえがありました。

というわけで...若林工房さんの戦略どおり,「会場限定!本日のライブ音源収録CDを特別価格で先行予約」に飛びついてしまいました。もともと入場無料でしたので,CD特別価格2000円でも安いぐらいです。来年1月に郵送されてくる予定ですが,それを再度聞くのが非常に楽しみです。

さらに...予約者には「非売品」のメジューエワさんの録音をCD-Rプレゼントという,マニアックな特典もありました。今回配布されたプログラムも(恐らく,そのままCDの解説に使う内容だと思います),大変分かりやすい内容でした。

その他,今回の使用ピアノは「1925年製スタインウェイCD135」というヴィンテージ物だという点をアピールするなど,色々な点でお客さんを喜ばせようという工夫がありました。もちろん,終演後メジューエワさんのサイン会もあり参加。

若林工房さんの活動については,今後も注目していきたいと思います。

2019/08/25

いしかわミュージックアカデミーフェスティバル・コンサート。OEKにIMA出身者が加わった特別編成オーケストラによるロシア音楽。古海行子さんのピアノも大変美しく誠実な演奏 #oekjp

本日の午後は,現在石川県立音楽堂などを中心に行われている,いしかわミュージックアカデミー(IMA)関連で行われた,IMAフェスティバル・コンサートを石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。

このコンサートの目玉はIMA出身の弦楽奏者がOEKと一緒にロシア音楽を演奏するという点です。OEKの弦楽セクションに次の皆さんが参加する形で,ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番とチャイコフスキーの交響曲第5番が演奏されました。

(ヴァイオリン)伊藤亮太郎,入江真歩、城戸かれん、坂口昌優、関 朋岳、坪井夏美、毛利文香、吉江美桜
(チェロ)上村文乃、増山頌子、松本亜優

この中で,現在,NHK交響楽団のコンサートマスターの伊藤亮太郎さんが今回のコンサートマスターも務めました。

その他,OEKメンバーの青木恵音さん,ソンジュン・キムさんもIMA出身者です。

「特別編成」と書かれていましたが,「大編成」というわけではなく,通常のOEKの弦楽セクションに2名ずつ追加されたような形になっていました。その効果は特にチャイコフスキーの交響曲第5番に随所に出てくる,甘いメロディの部分で効果的で,いつも以上に濃厚なカンタービレを楽しむことができた気がします。

ただし...演奏全体としては,指揮者の黄維明さんのテンポ設定が遅めで,音楽の流れがどこか停滞しているように感じました。第4楽章はめくるめくように曲想が変わり,次々と違う景色が見えてくる...ような演奏を期待していたのですが,ずっと同じ景色が続く...といった印象を持ちました。

もちろん弦楽セクションはしっかりと鳴り,管楽器も輝かしい音を出し,ティンパニが要所でくさびを打ち込んでいたのですが,どうも音楽が熱く盛り上がらない気がしました。音楽の枠組みは大きく,美しく,強い部分も沢山あるのだけれども,どこか物足りない,そういった印象を持ってしまいました。

前半のラフマニノフも堂々たる音楽でした。この曲では独奏の古海行子さんのピアノが素晴らしかったと思いました。古海さんもIMAの出身者で,第4回高松国際ピアノコンクールで優勝し,注目を集めている若手ピアニストです。OEKとは,池辺晋一郎さんによる「ベスト100」企画のソリストとして既に共演済で,その時から注目をしていました。実は,今回は古海さんによる協奏曲演奏の全曲を聞けるのを楽しみに聞きに来た面もあります。

古海さんのピアノは第1楽章冒頭の「鐘」の音のような和音の部分から響きが美しかったですね。フェスティバルオーケストラの低弦の音にも透明感があり,非常に良くマッチしていました。古海さんの演奏は,大変誠実で,特に抒情的なメロディの甘くなりすぎないじっくりとした歌わせ方が良いと思いました。スケールの大きなピアノ,という感じはしませんでしたが,第3楽章などでも,地にしっかりと足のついた,ハッタリのない真面目な音楽を聞かせてくれました。ラフマニノフ以外の作品も今後聞いてみたいと思いました。オーケストラの音では,特にチェロ・パートの熱く盛り上がるような歌がこの曲に合っているなぁと思いました。

昨年まで行っていたIMAの講師とOEKメンバーによる室内楽企画が,今年は行われなかったのは残念でしたが,IMAの同窓生とOEKとの合同演奏企画というのは,良いアイデアだと思います。”フェスティバルオーケストラ”という名前にしては,会場の雰囲気は地味目でしたが,これからも継続していって欲しい企画だと思いました。

2019/08/18

甲子園の星稜対仙台育英戦を途中までテレビ観戦ご,IMAライジングスター・コンサート2019へ。今年も水準の高い演奏の連続。特に印象的だったのは #荒井里桜 さんと #ジュヒ・イム さんの演奏。甲子園同様,若い人たちの持つエネルギーの大きさを実感できました

本日の午後は,夏の高校野球の準々決勝,星稜対仙台育英の試合を見終わった後,いしかわミュージックアカデミー(IMA)のライジングスターコンサートを聞きに行こうと思っていたのですが...予想以上に星稜高校の打線が好調だったせいか,なかなか試合が終わりません。10点差ぐらいになったところで,「このまま勝てそう」と思い,石川県立音楽堂に出かけました。

IMAは,「専門的な演奏技術と音楽性を学び取る国際性あふれる音楽セミナー」として,1998年から金沢市で行われているもので,今年で22年目となります。そのライジングスターコンサートは,過去IMA音楽賞・奨励賞を受賞した受講生や,国内外のコンクールで入賞経験のある優秀な受講生が出演するコンサートです。

ほとんど毎年聞いているのですが,そのレベルは非常に高く,その後,ソリストやプロのアーティストとして活躍している人も沢山います(例えば,ヴァイオリンの辻彩奈さんとか)。今年もまた,高度な技と鮮やかな表現力の饗宴のような演奏を楽しんできました。

出演したのは次の皆さんでした。
竹内鴻史郎,前田妃奈,荒井里桜,ウンジュン・パク(ヴァイオリン),江口友理香(チェロ),小竹島紗子,ジュヒ・イム(ピアノ)

どの演奏も安心して楽しむことができましたが,特に印象的だったのは,ヴァイオリンの荒井里桜さんとピアノのジュヒ・イムさんの演奏でした。このコンサートですが,ヴァイオリンについては,実は,毎年同じような曲が繰り返し演奏されています。具体的に言うと,サラサーテやフバイのカルメン幻想曲,サン=サーンスのヴァイオリン曲,ショーソンの詩曲です。技巧的な面を楽しむか,表現力を楽しむかで分かれる感じなのですが,毎年のように聞いていると,やはり,ショーソンの詩曲の方に聞き応えを感じます。

今年は,荒井里桜さんが,この「詩曲」を演奏しました。交流ホールならではのリアルさのある音から,熱く歌い上げるような「情」がしっかり乗った音まで,臨場感たっぷりの音楽を聞かせてくれました。荒井さんは,既に日本音楽コンクールで第1位を取っている方ですが,これからさらに海外での活躍が増えてくるのではないかと思います。

ピアニストの方では,ジュヒ・イムさんが演奏した,ストラヴィンスキーの組曲「火の鳥」(一部でしたが)が素晴らしい演奏でした。グリッサンドが頻繁に出てくる,非常に華やかな演奏でしたが,とにかく,技巧の切れ味と硬質な音色に圧倒されました。「カスチェイ王の踊り」から終曲までを演奏したのですが,曲想に応じた音の質感の変化が素晴らしく,スケールの大きさを感じました。

チェロは一人だけだったのですが,1週間ほど前に石川県立美術館で,ルドヴィート・カンタさんの演奏で聞いたばかりの,シューマンのアダージョとアレグロが演奏されたのが,個人的には面白かったですね(ピアノの方は,どちらも鶴見彩さん)。江口友理香さんの演奏には,丁寧に楷書で書かれた書を見るような清々しさがありました。

今年のIMAでは,過去IMAに参加した弦楽器奏者がOEKに加わって,チャイコフスキーやラフマニノフの曲を演奏するという楽しみな演奏会があります。IMAについては,非常に水準が高いの割に金沢市民にはまだまだ定着していないところがありますので,この公演をきっかけに地元での注目度がもう少し高まって欲しいものだと思います。

2019/08/12

おなじみの #ルドヴィート・カンタ さんと #鶴見彩 さんによる #フランス近代絵画と珠玉のラリック展 記念コンサート@ #石川県立美術館 展覧会と同時代の気分をヨーロッパと日本に分けて楽しむことができました。それにしても美術館は避暑にぴったり。カンタさんは連日の大活躍です。

本日は,石川県立美術館で行われている「フランス近代絵画と珠玉のラリック展」に合わせて,「移りゆく時代,挑戦する作曲家」と題して行われた無料コンサートを聞いてきました。演奏は,お馴染みのルドヴィート・カンタさんのチェロと鶴見彩さんのピアノによるデュオでした。

# それにしてもカンタさんは,連日,兼六園周辺で大活躍です。

演奏会のコンセプトは,展覧会の出展内容に合わせ,ドビュッシー,サティ,フォーレなど19世紀から20世紀初頭のフランスの作品が中心でしたが,もう少し幅を広げ,同時代に活躍した瀧廉太郎,成田為三,山田耕筰といった日本人作曲家の作品も取り上げていました。展覧会と同時代の気分をヨーロッパと日本に分けて楽しむことができました。

県立美術館のホールは,ややデッドですが,非常に音がクリアに聞こえますので,室内楽の演奏会にはぴったりです。曲想に応じて,2人の奏者の音の変化の面白さをしっかり楽しむことができました。

ドビュッシー最晩年のチェロ・ソナタには,楽章ごとにちょっとひねったようなキャラクターのある曲です。カンタさんの演奏は,枯れたような味,ユーモアを持った味から伸びやかな気分まで,色々な音を聞かせてくれました。サティの「ジムノペディ第1番」は,空調のよく効いた室内で効く快適音楽という感じでした。鶴見さんのクリアですっきりとした演奏は,猛暑の中の清涼剤になっていました。サティのジュ・トゥ・ヴの方は,チェロとピアノによるデュオで演奏されました。珍しい組み合わせだと思いますが,これが良かったですね。どこか2人の男女が粋な会話をしているようなムードがありました。

そしてお馴染みの日本歌曲,3曲。過去にもカンタさんの演奏で聞いたことがありますが,何というかカンタさんの十八番といっても良いと思います。落ち着きと味わい深さのある,誰もが納得という演奏でした。

最後のコーナーでは,イザイの無伴奏チェロの中の1楽章が暗くじっくり演奏された後(カンタさんは「暗い曲,イザイもそんな人」と言っていましたが,好きな曲なのだと思います),カサドの「愛の言葉」で熱く締めてくれました。どこかラテンの気分があり,夏の気分にもぴったりでした。

アンコールでは,フォーレのシチリアーノが演奏されました。一般的にはフルートのイメージのある曲ですが,チェロで演奏するとよりしっとり感が増す感じです。

それ以外に,テーマから外れる形でシューマンの「アダージョとアレグロ」が演奏されました。これもまた素晴らしい演奏でした。チェロの音は人間の声に近いと言われていますが,まさにそういう演奏で,前半は秘めた思いがしっかりと歌われ,後半ではそれが一気に湧き上がってきました。お二人の息もぴったりでした。

展覧会の方は,既に別の日に観ていたのですが,印象派,エコール・ド・パリなどの絵画作品に加え,ルネ・ラリックによるガラス工芸作品が多数展示されているのが特徴です。それにしても,夏の美術館は,避暑にも最適ですね。石川県立美術館は21美ほど混雑していないのも良いですね。

2019/08/01

#鈴木雅明 オルガン・リサイタル:真夏のバッハ どの季節に聴いてもバッハの音楽の素晴らしさには揺らぎがありません。立派さだけでなく甘美さもあるのがオルガン音楽の魅力だと実感 #石川県立音楽堂

梅雨が明け,連日,金沢でも暑い日が続いています。その中,「真夏のバッハ」と題した鈴木雅明さんによるオルガン・リサイタルが石川県立音楽堂コンサートホールで行われたので聞いてきました。真夏といっても,ホールの中は空調が効いていて快適。バッハはどの季節に聴いてもバッハ。ということで,”バッハの権威”による,夏の暑さにも負けない,バッハのオルガン音楽の揺るぎない素晴らしさに浸って来ました。

今回演奏されたのは,タイトルどおりバッハの音楽ばかりでしたが,有名なトッカータとフーガ,小フーガといった曲は入っておらず,鈴木さんが本当に演奏したい曲が選ばれていた印象でした。最後に演奏された,パッサカリアとフーガは,有名な作品ですが,それ以外は,聴いたことのない作品ばかりでした。

今回は,鈴木さんのトークと合わせての演奏会でした。各曲について,しっかりと解説をしていただきましたが,それが全く邪魔にならず,バッハの音楽を聴いた印象だけがしっかりと残ったのがとても良かったと思いました。

プログラムの構成は,複数楽章からなるガッチリした感じの作品とコラール風の作品とがうまく組み合わされていました。個人的には,「プレリュード,トリオとフーガ,BWV.545+529//2」のような,急緩急の構成の作品がいちばんしっくりと来ると思いました。鈴木さんは,ヨーロッパを中心に世界各地のオルガンで演奏されていますが,その土地土地での経験を踏まえた,揺るぎのない自信に満ちた音楽を聴かせてくれました。

輝きのある生命力に溢れたプレリュードとオーケストラ曲を思わせる華麗さのあったフーガの間で,しっとりとトリオが演奏されましたが,この部分での「一人で室内楽」といった感じが絶品だと思いました。どこか甘美な気分を感じました。

後半最初に演奏された,パストラーレBWV.590も初めて聴く作品でしたが,クリスマスの気分にぴったりの気分を持った組曲で,すっかり気に入りました。バグパイプを思わせる楽章に続いて,繊細の愛らしさのある第2楽章,声楽曲のような美しさのあった第3楽章。そして,ブランデンブルク協奏曲第6番の終楽章を思わせるような第4楽章。とても魅力的な作品でした。

ファンタジアというタイトルの曲は2曲演奏されましたが,ドイツの重厚な音楽とは一味違う透明感のある美しさを感じました。特にBWV.562(フーガの部分がないので,全体的に静かな曲でした)の落ち着いた澄んだ響きが特に気に入りました。個人的には...夜,アルコールを飲みながら聴くのに丁度良さそうな曲だと思いました。

コラール作品では,前半,コラール・パルティータというかなり長い作品が演奏されました。鈴木さんの選んだ音は,派手過ぎることはなく,シンプルな美しさがありました。演奏会全体を通じても,音量に圧倒されるような威圧的な感じがなかったのがとても良いと思いました。

さすがにコラール・パルティータについては,昼間の疲れが出て(本日は暑い中,野外で活動していたもので...),少々ウトウトしかけたのですが,後半に演奏されたコラール「おお人よ,汝の罪の大いなるを嘆け」では,一つ一つの音が染みこむように耳に入ってきました。ヴィブラートが掛かったような音が大変魅力的でした。

最後はパッサカリアとフーガで締められました。恐らく,この曲はオルガン・リサイタルの「トリ」の曲の定番だと思います。鈴木さんの演奏は,深々と落ち着いた雰囲気で主題が演奏された後,全く揺らぐことのないテンポで一つ一つの変奏が演奏されて行きました。これが素晴らしかったですね。その揺るぎのなさが,ヒタヒタと終末に近づいていくような迫力を生んでいると思いました。最後の,世界が大きく広がるようなフーガの華麗さも素晴らしいと思いました。

パイプオルガンの演奏会は,ここ何年かは少なかったのですが,昨年ぐらいから少しずつ公演が増えてきていると思います。このことを歓迎したいと思います。夏でも冬でも,季節を問わずに楽しめるバッハのオルガン曲は定番ですが,鈴木さんがトークの中で「フランスのオルガンは少し鼻にかかったような音がする」とおっしゃられるのを聴いて,「フランスのオルガン」の特集(音楽堂のオルガンで表現できるか分からないのですが)も聴いてみたいものだ思いました。

2019/07/18

#パトリック・ハーン 指揮OEK定期公演は,弦楽合奏を中心とした,シンメトリカルな構成のOEKならではのプログラム。#辻井伸行 #ルシエンヌ と共演したショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番は,美しさだけではなく,凄みのある鮮やかさを実感できる素晴らしい演奏。 #oekjp

本日はオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の2018/2019シーズンの最後となる,フィルハーモニー定期公演を石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。指揮は,定期公演初登場のパトリック・ハーンさん,ピアノ独奏は,お馴染みの辻井伸行さん,トランペット独奏は,ルシエンヌ・ルノダン=ヴァリさんでした。

6月以降のOEKの定期公演では,若い指揮者が次々登場しているのですが,ハーンさんはまだ24歳。定期公演に登場する指揮者としては異例の若さです。ルシエンヌさんに至っては,まだ10代(のはず)。何と辻井さんがいちばん年輩という,若いアーティストたちとOEKの共演ということになりました。この3人のコラボレーションが本当に素晴らしいものでした。人気の辻井さんが登場するとあって,会場は大入り満員(心なしか,いつもよりホールの残響が少なく感じるほどでした)。シーズンの最後は大いに盛り上がりました。

プログラムは,3曲演奏されたうち,最初と最後に,弦楽合奏によるディヴェルティメントとセレナードを配し,その間にショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番を入れるというシンメトリカルな構成になっていました。ショスタコーヴィチの曲も弦楽オーケストラのための曲で,そこにピアノとトランペットが加わる形になります。

どの曲についても,ハーンさんの指揮ぶりには,安心感がありました。熟練の指揮ぶりといった感じでした。バルトークもチャイコフスキーも,冒頭部分を大げさに演奏できる曲ですが,両曲とも,しっかりと抑制された感じで始まりました。その一方,細かなニュアンスの変化が非常に丁寧に付けられており,全曲に渡って,目の詰んだ高級な着物を観ているような,職人技の素晴らしさのようなものを感じることができました。バルトークの第2楽章での,充実した響きが特に素晴らしいと思いました。

チャイコフスキーは,音楽自体に常に推進力があり,落ち着いた雰囲気で始まった,段々とノリ良く音楽が進んでいく心地よさがありました。対照的に,儚げな美しさに溢れた第3楽章の美しさも印象的でした。第2楽章ワルツでの,ちょっと粋な感じの歌わせ方も印象的でした。ハーンさんは,楽章の最後の部分など,大げさなタメを作って締めるのではなく,それを避けるように,すっきりと締めていました。この辺に20代前半の指揮者ならではの,新鮮さを感じました。

そして,協奏曲も素晴らしい演奏でした。ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番は,過去,OEKは何回も演奏してきましたが,その中でも特に素晴らしい演奏だったと思います。まず,第1楽章の最初の部分での,辻井さんのピアノの深々とした音が素晴らしかったですね。その後,めまぐるしく曲想を変えていくのですが,この最初の部分の迫力のある雰囲気があったので,全曲に安定感があったと思いました。ショスタコーヴィチの音楽については,どこかひねくれた気分を感じるのですが,辻井さんの率直さのある演奏で聞くと,ロシアのピアノ協奏曲の伝統を引く曲なのだな,と感じさせてくれる部分もあると思いました。

辻井さんのピアノに絡む,ルシエンヌさんのトランペットの音も見事でした。非常に柔らかい音で,しっかりと存在感を示しながらも,ピアノやオーケストラと見事に溶け合っていました。これだけしっかりとコントロールされたトランペットの音というのは,なかなか聞けないのではと思いました。

緩徐楽章では,いつもどおり,辻井さんのピアノのタッチの美しさを堪能できました。以前,OEKと共演した,ラヴェルのピアノ協奏曲の時よりも,さらに深い音楽を聞かせてくれたと思いました。ショスタコーヴィチの音楽の持つ,ひんやりとした感じにぴったりの音楽を聞かせてくれました。

第4楽章は,ショスタコーヴィチならではの,皮肉やユーモアを交えた,故意にドタバタしたムードにした音楽なのですが,辻井さんのピアノは,とにかく鮮やかで,テンポが上がっても慌てた感じになりません。楽々と演奏するルシエンヌさんのピアノと合わせて,非常にクールな演奏を聞かせてくれました。若い世代による,格好良い,ショスタコーヴィチという感じでした。

アンコールでは,ガーシュインのプレリュード第1番(オリジナルはピアノ独奏曲)が,辻井さんとルシエンヌさんのデュオで演奏されました。この曲では,ルシエンヌさんは大変伸びやかな音で演奏し,辻井さんはしっかりとベースを支えていました。

演奏後,ルシエンヌさんと辻井さんは,手に手を取って,ステージと袖の間を往復していましたが,その姿が何とも言えず微笑ましく感じました。本日と同様のプログラムで,OEKは国内ツァーを行いますが,是非,大勢の人に楽しんでもらいたいものです。

というわけで,今シーズンのOEK定期公演は,3人の実力十分の若手の饗宴で締めくくられました。8月は,OEK単独の公演はお休みですが,9月以降の新シーズンでも,若手とベテランとがうまく組み合わされた,多彩な公演に期待したいと思います。

2019/07/06

OEK定期公演にマルク・ミンコフスキさん登場。ブラームスのセレナード第1番という一見地味目の作品を,生気に溢れる演奏で楽しませてくれました。クリストフ・コンツさんとの共演によるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲も申し分のない素晴らしさ

本日は,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の芸術監督,マルク・ミンコフスキさん指揮によるマイスター定期公演を石川県立音楽堂コンサートホールで聞いて来ました。

ミンコフスキさんは,実質的には,昨年7月末に行われた,ドビュッシーのオペラ「ペレアスとメリザンド」公演で芸術監督に就任したのですが,その後,約1年間出番がありませんでした。今回は,待望の公演ということになります。前回はオペラ公演での指揮でしたので,通常のオーケストラのみによる演奏会となると,さらに久しぶりということになります。

今回は,ブラームスのセレナード第1番ニ長調がメインプログラム。前半は,その気分にあわせるかのように,同じ調性で書かれたベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲が演奏されました。どちらも重厚で暗いイメージのある両作曲家の作品の中では,明るく穏やかな性格を持つ曲です。本日の素晴らしい演奏を聞いて,満を持して登場したミンコフスキさんが,「OEKにぴったり」と考えて選曲したプログラムだったのだな,と改めて思いました。両曲とも45分程度かかる曲でしたので,聴きごたえも十分でした。

前半に演奏されたベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲では,ソリストとしてクリストフ・コンツが登場しました。コンツさんは,ウィーン・フィルの第2ヴァイオリンの首席奏者なのですが,近年は指揮者,ソリストとしても活躍の場を広げているとのことです。ミンコフスキさんは,自分が信頼する,若いアーティストを次々と金沢に連れてきていますが,コンツさんもその一人だと思います。

コンツさんの演奏には,どの部分にも瑞々しさがありました。演奏は,非常に丁寧で,「とても育ちの良い」雰囲気がありました。第1楽章と第2楽章は,正統的で堂々たる弾きっぷり,第3楽章は若々しくキリっと演奏していましたが,急速なテンポになっても乱雑な感じにならないのが素晴らしいと思いました。

ミンコフスキ指揮OEKの演奏も万全でした。ミンコフスキさんの指揮からは,音楽に生気を加えるようなエネルギーの大きさを感じました。そのオーラが,OEKの演奏だけでなく,コンツさんの演奏にも広がっていたと思いました。この曲では,ファゴットも結構活躍するのですが,この日のエキストラの奏者の方のくっきりとソリストに寄り添うような演奏が素晴らしいと思いました。

ちなみに,ミンコフスキさんは,結構,手を高く上げて指揮することがあったのですが...ポーズをしばらく止めることが何回かあったので...右手を斜め上に上げて止めるポーズはウルトラ・マン(?)に変身するときのポーズに似ているのでは...変なことを考えながら聞いていました(古い話題で失礼しました)。

後半のブラームスのセレナード第1番は,しばらく前に故オリバー・ナッセンさん指揮の定期公演でも聞いたことがありますが,今回のミンコフスキさん指揮の演奏は,さらに生気に溢れる演奏だったと思いました。

第1楽章は,低弦が支える上で,ホルンが鼻唄風のメロディを演奏して始まるのですが,まず,この雰囲気が素晴らしいと思いました。リアルに牧歌的だと思いました。この日は,コントラバスはステージ奥の高い場所に配置されていました。また,弦楽器メンバーは,各パート2名ずつ程度増強していました。その辺の効果がしっかり出ていたと思いました。

第1楽章は軽快に始まった後,楽章の最後の部分では,旅の気分が終わるのを惜しむかのように,深く沈みこむ感じがあったのが素晴らしいと思いました。その後,6楽章まであるのが,交響曲ではなく,セレナードらしいところです。

第3楽章はさすがに長く感じましたが,その長さが段々と心地良さとなって感じられて来ました。第5楽章でのホルン4本による力強い主題をはじめ,管楽器がソリスティックに活躍する部分が多く,退屈しませんでした。いつくしみような感じのメヌエットも印象的でした。最終楽章は,非常に生き生きとしたテンポで演奏され,力強く全曲を締めてくれました。

というわけで,前半後半ともミンコフスキさんの指揮の「熱さ」を感じさせてくれる演奏だったと思います。

9月からの,2019-2020のシーズンでは,ミンコフスキさんは2回登場しますが,今回のセレナード第1番に続き,第2番も演奏される予定になっています。もう一つの公演は,ドヴォルザークの「新世界から」。これまでのOEKとの共演では,古楽器オーケストラの専門家としてではなく,通常のオーケストラの指揮者として,古典派以降の曲を取り上げています。どんどん新しいレパートリーに取り組んでくれるのが嬉しいですね。ミンコフスキさんのネットワークで,次々と若く生きの良いアーティストが紹介されるのにも期待したいと思います。

«#コリヤ・ブラッハー さんの弾き振りによるOEK定期公演。前回とはがらっと変わって,「今日のOEKはベルリン・フィル化していた?」と思わせるような強靱な響きのベートーヴェンの4番とブラームスの協奏曲。初めて聴くブリテンの変奏曲も大変魅力的でした。 #oekjp

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