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2019/12/08

OEKと北陸聖歌合唱団の「メサイア」(抜粋)公演は,三河正典さん指揮による,じっくりとしたテンポによる,晴れやかで気持ち良い演奏。独唱の皆さんの歌唱も充実。#oekjp

本日は年末恒例のOEKと北陸聖歌合唱団の「クリスマス・メサイア」公演を聞いてきました。今年は,抜粋版による演奏で,指揮は三河正典さん指揮でした。第1部はほぼ全曲が演奏され,第2部と第3部は「はずせない」定番曲中心という感じでした。

プログラムに掲載されていた,北陸聖歌合唱団による60年に渡る公演リストを見ると,三河さんは今回で4回目の登場。地元の指揮者以外では,最多の登場回数です。今回の演奏を聞いて,北陸聖歌合唱団と三河さんの相性は抜群だと思いました。三河さんのテンポ設定は,基本的に遅めでしたが,そのことにより,合唱団だけでなく,オーケストラの演奏についても,表現が徹底していると感じました。それでいて,演奏全体はすっきりまとまっており,「ハレルヤ・コーラス」をはじめ,合唱団が大きく歌い上げる部分は,とても晴れやかでした。聞いている方も気持ち良かったのですが,歌っている皆さんも気持ちよかったのではないかと思いました。

「アーメン・コーラス」などでは,三河さんは,曲中の要所要所で非常に大きな間を取っていました。最後は,非常に壮麗でスケール感たっぷりに締めてくれました。

今回はソリストの皆さんも素晴らしい歌唱の連続でした。序曲に続いて,テノールの伊達達人さんの,全く苦しげな感じのしない瑞々しい声。バリトンの高橋洋介さんは,過去,OEKの定期公演にも登場しています。第1部と第3部の魅力的なアリアを威厳のある美しい声で聞かせてくれました。

メゾ・ソプラノのパートは,今回はカウンターテノールのデキョン・キムさんが担当しました。古楽の歌唱法で,非常にすっきりとしているのですが,その中に優しさの溢れており,第2部の長いアリアなども自然な哀しみがこもっているようでした。ソプラノは,お馴染みの朝倉あづささんではなく,韓錦玉さんでした。韓さんの声にも暖かみがあり,第1部後半などは,クリスマスの物語をお母さんが子どもに読み聞かせてくれているような親しみやすさを感じました。

今年も無事に平和な気分で「メサイア」を楽しむことができました。少々早いのですが,今年の演奏会通いは本日で最後になりそうです。アンコールの「きよしこの夜」を聞きながら,無事1年が終わりそうなことに感謝したいと思います。

PS.今回は,「メサイア」に先だって,春日朋子さんによる,パイプオルガン演奏で2曲演奏されました。これまで,プレコンサートの形だったのですが,このスタイルの方がじっくりと楽しめるので,良いなと思いました。

2019/12/07

12月恒例のPFUクリスマスチャリティコンサート。今年の指揮は,OEK初登場のキハラ良尚さん。オーソドックスでありながら,非常に新鮮で勢いのあるベートーヴェンの7番を聞かせてくれました。村治奏一さんとの共演のアランフェス,池辺さん監修の映画音楽集も楽しめました。

本日は12月恒例のPFUクリスマスチャリティコンサートを石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。このコンサートも回を重ね,今回で28回目とのことです。毎年のように,OEKが登場していますので,ほとんど12月の定期公演のようなものですね。

今回登場したのは,若手指揮者のキハラ良尚さん,ギター奏者の村治奏一さんでした。お二人ともOEKと共演するのは初めてだと思います。この2人に加え,案内役として池辺晋一郎さんが登場しました。

前半は,スッペの「軽騎兵」序曲で始まりました。非常に有名な曲ですが,あまりにも親しみやすい曲なので,演奏会で聞くのはかえって珍しい,といった曲かもしれません。キハラさんの指揮は大変率直で,のびのびとこの曲を魅力を伝えてきました。じっくり聞くと気持ち良い曲だなぁと思わせてくれました。

この曲ですが,実は,次に演奏された池辺さん作曲の黒澤明監督の映画「影武者」の音楽への伏線でした。池辺さんが「影武者」の映画音楽を担当した際,ラッシュ(未編集プリント)に「軽騎兵」序曲が入っていたそうです。「軽騎兵」序曲のイメージで音楽を付けて欲しいという黒澤監督のメッセージなのですが,その真意はよく分からないということで,あれこれ策を駆使して,「金管楽器の音を入れたい」ということが分かり,作曲したとのことです。

この「影武者」の音楽ですが(どういう場面で使われていたのか分からないのですが),「軽騎兵」というよりは,ベートーヴェンの「英雄」の第2楽章の葬送行進曲のような感じの曲でした。途中トランペットが出てくるということで,ワーグナーの「神々の黄昏」の「ジークフリートの葬送行進曲」的な感じもありました。「軽騎兵」序曲のような「景気」の良さ(池辺さんの本日のダジャレの一つです)はありませんでしたので,恐らく,戦いに敗れた感じの場面で使われたのかなと思いました。

続いて,武満徹「3つの映画音楽」から,第1曲「調練と休息の音楽」と第3曲「ワルツ」が演奏されました。「ワルツ」の方は,井上道義さんの時代から,アンコールピースとして何回も聞いてきた曲でしたが,第1曲の方を聞くのは...久しぶりだと思います。ちょっとブルースっぽい雰囲気のある魅力的な作品で,「ワルツ」並みに聞かれても良い曲だなぁと思いました。「ワルツ」の方は,井上さんに比べるとあっさりとした感じで,シュッとした感じの美しさがありました。

前半の最後は,村治奏一さんの独奏で,ロドリーゴのアランフェス協奏曲が演奏されました。金沢の冬とは正反対のカラッとした明るさのある演奏でした。村治さんのギターの音の澄んだ音が心地良く響いていました。有名な第2楽章も,ノスタルジックな雰囲気よりは,どこかニヒルでクールな雰囲気を感じました。第3楽章は力強さと同時に,ニュアンスの豊かさを感じました。キハラさん指揮OEKも,しなやかにバックアップをしていました。

アンコールでは,タレガの「アルハンブラの思い出」が演奏されました。最初の部分は,オッと思わせるほど揺らぎのある独特のテンポ感で始まりました。村治さんならではの語り口にグッと引きつけてくれるような演奏でした。

後半は,OEK十八番のベートーヴェンの交響曲第7番が演奏されました。9月の定期公演でも取り上げたばかりの得意曲です。ただし,私自身は都合でこの公演を聞けなかったので,そのリベンジ(?)の意味と,初めて聞く指揮者がどういう演奏を聞かせてくれるかの期待を込めて,大変楽しみにして聞きました。

そのキハラさんの演奏ですが,奇をてらった所のない,伸びやかな演奏だったと思いました。堂々とした部分は堂々と,テンポの速い部分はぐいぐい進む,というメリハリがしっかり効いていました。この曲を何回も演奏している,OEKの持つ安定感をベースにしつつも,要所要所で,力強い表現やデリケートなニュアンスを効かせたり,非常にバランスの良い演奏だと思いました。

特に後半の第3,第4楽章の流れの良さは,若手指揮者ならではだと思いました。しっかりと音やバランスが整ったままで,心地良く疾走するような演奏でした。第4楽章の最後の部分なども熱狂的に燃え上がるというよりは,ゴールインした後もそのまま,ゴールを超えてズーッと走り抜けていってしまうような,余裕のある伸びやかさを感じました。

案内役の池辺さんは,「キハラさんは,これから必ず名前をたびたび聞くようになる指揮者です」と紹介されていました。これからの活躍が大いに楽しみです。ちなみに,ちょっと気になる「キハラ」というカタカナ表記ですが,もともとは漢字表記だけれでも,「芸名(?)」として使っているとのことです。俳優でいうと「キムラ緑子」のような感じですね。

まだ時期的には早いのですが,「クリスマス・チャリティコンサート」ということで,アンコールでは,アダンの「オー・ホーリー・ナイト」が池辺さんのお弟子さんの日高さんによる編曲版で演奏されました。池辺さんは「クリスマス・ソングの中ではこの曲がいちばん好き」と語っていましたが,実は私も同様です。「ジングルベル」「赤鼻のトナカイ」などと比べると,大人っぽい雰囲気があり,聞いているうちに,どこか切ない感じにさせてくれるような美しさがあります。日高さんのアレンジは,OEKにぴったりの編成用のもので,期待どおりの美しさと切なさを味わうことができました。これからも,PFUコンサートのアンコール曲として毎年使ってもらっても良いかなと思いました。

2019/11/29

岩城宏之さんの遺産の一つ,ジュリアン・ユー編曲による室内オケ版「展覧会の絵」は,多彩で大胆な響きの連続。大変楽しめました。津田裕也さんの「平然と美しい」ピアノによるショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番も絶品でした。

昨日のリハーサル見学に続き,本日はオーケストラ・アンサンブル金沢の定期公演マイスター・シリーズを聞いてきました。指揮は,常任客演指揮者の川瀬賢太郎さん,ピアノは津田裕也さんでした。

本日の公演の面白さは,まず選曲にありました。最初にオリバー・ナッセンがムソルグスキーの作品をオーケストレーションした「ムソルグスキー・ミニアチュアズ」,次にショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番。最後にムソルグスキー作曲,ジュリアン・ユー編曲による室内オーケストラのための「展覧会の絵」が演奏されました。現代の作曲家がアレンジした,「ひねりの効いた」ムソルグスキーの作品と,いつもとは一味違って「結構,素直な感じの」ショスタコーヴィチという,川瀬さんこだわりのプログラムでした。そして,その狙いどおりの,大変面白い演奏会になりました。

最初の「ムソルグスキー・ミニアチュアズ」は小品2曲ということで,フルコースの前菜のような感じの位置づけでした。ムソルグスキーというよりは,メンデルスゾーンといった趣きのある,愛らしい曲2曲。この曲を聞きながら,作曲者の故オリバー・ナッセンさんは,大変体格が立派な方だったなぁということを思い起こしました。大きなナッセンさんが作った,珠玉の小品といった作品でした。

続く,ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番は,昨日,リハーサルを聞いたばかりだったので,特に面白く聞くことができました。古典的といって良いような明快さのある曲想で,両端楽章の生き生きとした表情がまず印象的でした。冒頭,ファゴットが軽快なメロディを演奏するのですが,飯尾洋一さんのプログラム解説に書かれていたとおり,「なるほど,チャイコフスキーの「悲愴」交響曲の第3楽章の主題とよく似ているなぁ」と思いました。

それを受けて出てくる津田裕也さんのピアノは非常にクリアで,力んだところのない,心地良い音を聞かせてくれました。派手なパフォーマンスはなく,平然と地に足のついたタッチで鮮やかな音楽を楽しませてくれました。初めて実演で聞く曲でしたが,「絶品!」と思いました。

第2楽章は,川瀬さんが「ショスタコーヴィチのすべての曲の中でも特に美しい部分」とおっしゃられていたとおりの楽章でした。ショスタコーヴィチの緩徐楽章は,美しさと同時に冷たさとか不気味さが漂うのが定番ですが,この楽章については,素直に美しく,ほのかにロマンティックな気分も漂っていました。息子(指揮者として有名なマキシム・ショスタコーヴィチ)のために書いた曲という点が反映しているのだと思います。津田さんのスタイルにぴったりの楽章でした。

第3楽章は再度軽快な雰囲気に戻りますが,途中,ピアノ練習曲の定番「ハノン」のパロディ風パッセージが出てくるあたりが面白いところです。津田さんは,この部分も平然と鮮やかに演奏しており,お客さんは唖然として聞いているといった感じでした。

アンコールで演奏されたショパンのマズルカのしっとりとした落ち着きも絶品でした。金沢の冬の空気にピッタリでした。

後半の「展覧会の絵」は,数あるこの曲の編曲の中でも特に型破りなものだと思います。OEKは故岩城宏之さんとこの曲を演奏しており,CD録音も残していますが,実演で聞くとそれを遙かに上回るような面白さを体感できました。多彩で大胆な響きの連続でした。

岩城さんの録音と違うのは,弦楽器の人数をOEKの通常の編成で演奏していることです。特にジュリアン・ユーの楽譜には人数についての指示はなく,岩城さんは弦楽器各1名という「超室内オケ」編成で演奏していたのですが,今回は編成を大きくすることで,より響きの多様性が表現されていたと思いました。

「展覧会の絵」といえば,まず「プロムナード」のメロディが印象的ですが,ジュリアン・ユー版では,ヴィオラが演奏します。ラヴェル版でのトランペットとはあえて正反対の音を使ったという感じです。この日は,おなじみダニール・グリシンさんが担当していましたが,あらためて「素晴らしい音だ」と思いました。大きく浮遊するような,不思議な大らかさが漂っていました。基本的にプロムナードが出てくるたびにグリシンさんが活躍していたので,絵を見て回っている「お客さん」役を担当していたとも言えます。

その次に活躍が目立ったのが,エキストラの河野玲子さんをはじめとする打楽器奏者の皆さんでした。シロフォンなどの鍵盤打楽器が加わって,急に「中国風」の雰囲気になったり,多種多様な音を楽しませてくれました。

その他の楽器(というが,すべてのパートだと思います)も,特殊奏法続出で,次から次へと音色やテクスチュアが変化していきました。ピアノ版だと素直に一続きのメロディを,複数の楽器に分けて,妙なぎこちなさを強調したり,管楽器の方々に「音」を出さずにヒューという息の音だけを出させたり,SF映画の音楽のようになったり...「技のデパート金沢支店(?)」という感じでした。恐らく,バランス良くまとめるのは難しかったと思うのですが,川瀬さんは非常に精緻,かつ生き生きと各曲を聞かせてくれました。

最後の「キエフの大門」も独特でした。最後の最後の部分は...最近では「珍百景」の音楽ですが...大げさに盛り上がるのを避け,室内楽的な雰囲気のまま進んでいきました。そして最後,チャイムの音の余韻をしっかりと響かせて静かに終了。諸行無常の響きあり,といったところでしょうか。

実は,昨日のリハーサルの時,川瀬さんは「お客さんには,最後の音の余韻をしっかり持ち帰って欲しい。アンコールはなしにしましょう」といったことを語っていました。「なるほど,アンコールなしで正解」と思いました。

色々なアイデアの詰め込まれた,OEKの遺産を発掘した今回の演奏会は大成功だったと思います。演奏会全体の時間的にはやや短めでしたが,新鮮な「展覧会の絵」を中心に,OEK以外では聞けないようなプログラムをしっかりと楽しめた演奏会でした。

2019/11/27

川瀬賢太郎指揮OEK定期公演の前日リハーサルと川瀬さん+OEK楽団員との交流会に参加。音楽作りのプロセスの一端とメンバーの素顔に接してきました。

本日は,うまい具合に午後から仕事を休むことができたので,石川県立音楽堂楽友会主催による,OEK定期公演のリハーサル見学会+楽団員との交流会に参加してきました。この企画は4回目なのですが,今回は指揮者の川瀬賢太郎さんも参加されていたのが,「スペシャル」な点でしょうか。

まず,明日の定期公演のリハーサルが,13:30から石川県立音楽堂コンサートホールでスタート。インスペクターのオーボエの加納さんが,日程の確認をさっと行った後,ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番のリハーサルが始まりました。ピアニストはOEKと初共演となる津田裕也さんでした。

まずリハーサルで感じたことは,残響がとても長く感じるということです。お客さんが入っていないので当然なのですが,非常に贅沢な雰囲気をあじわうことができました。前日までのリハーサルとは違い,本日のリハーサルは,楽章単位で最後まで通した後,気になる点をチェックするという感じでした。

ここで面白かったのが,OEKのメンバーが「ハイッ!」と手を上げて,「○小節目はどうしますか?」「もう一度お願いします」という感じで,川瀬さんと意見交換を行っていた点です。OEKの人数は,ほぼ学校の1クラス分(40人程度)ですので,「主体的で対話的な授業」を川瀬さんを中心に行っている,という感じにも見えました。

指揮者の役割は,メンバーに解釈や方向性を示すことだと思いますが,実はメンバーの方もいくつかの表現方法の選択肢を持っており,そのすり合わせを行っているという感じでした。指揮者の仕事というのは,実力のあるアーティスト集団の中から最上のものを引き出す「コーチ」的な存在とも言えるのかもしれないですね。

リハーサルは順調に進み,45分程度で終了しました。ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番は20分程度の曲なので,その2倍ぐらいの長さで終わっていた感じです。川瀬さんは,とても丁寧な言葉遣いで,とても効率よく指示をされており,現代の指揮者の「リハーサル力」は,ビジネスの世界にもそのまま使えそうと思いました。

その後,カフェ・コンチェルトに場所を移し,川瀬さんとOEKメンバー6名との交流会になりました。ケーキ2個+飲み物飲み放題で,7つのテーブルに分かれて立食形式で和やかに歓談をしました。

交流会で役だったのが,楽友会の幹事さん特製の「プロフィールシート」でした。一般的なプロフィール紹介だけでなく,「へぇ」というような「会話のネタ」がうまく盛り込まれていました。例えば,ヴィオラの古宮山さんのところには,「今はまっているのはオキシ漬け」と書かれており,「一体これは何だ?」というところから会話が広がっていました。

ちなみに本日参加されたOEKメンバーは次の方々でした。

  • ヴァイオリン:トロイ・グーキンズさん(当初出席予定だった原三千代さんの代理)
  • ヴィオラ:古宮山由里さん
  • チェロ:早川寛さん
  • フルート:岡本えり子さん
  • オーボエ:加納律子さん
  • クラリネット:遠藤文江さん

私も,ケーキとコーヒーを手にして,各テーブルを回り,全員とお話することができました。指揮者の川瀬さんには,次のようなことを尋ねてみました。

リハーサルの進め方はいつも今日のような感じなのでしょうか。
昨日までみっちりやっていたので,本日は通した後,気になるところを確認する感じだった。

プログラムは川瀬さんが考えたのでしょうか?
ムソルグスキー生誕180年の年にちなんで考えた。ジュリアン・ユー編曲の「展覧会の絵」は岩城さんが残した録音を聞いて,再演しようと思った。

弦楽器の編成はCDよりも増やしているようですね
岩城さんのCDでは,弦楽器は各パート1名で演奏しているが,実は楽譜では,特に1人で演奏せよという指示はない。ソロとトゥッティといった指示があり,通常の編成でも良いと考えられるので,今回は通常の編成で演奏することにした。

ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番はとても良い曲でしたね
ショスタコーヴィチが自分の息子のために書いた曲で,ある意味,いちばんショスタコーヴィチらしさが出ている曲である。この曲は何回も演奏している好きな曲である。

OEKが演奏するのは今回が初めてです。
ホルンが4本入るなど,OEKにとっては編成がやや大きいことと,演奏時間が演奏会に入れるにはやや短いので,意外に実演で演奏される機会は少ないのかもしれない。

ピアニストの津田さんはこの曲が得意なのでしょうか。
津田さんは,同世代の馴染みの演奏家。この曲を演奏するのは,津田さんは初めて。川瀬さん自身は,過去何回も共演しており,今回はこの曲と取り上げることにした。

・・・といったお話をさせていただきました。とても良い作品でしたので,明日の演奏が大変楽しみになりました。

その他,「特製プロフィールシート」をもとに各テーブルを回ってみました。少々緊張する面もありましたが,とても和やかに歓談をすることができました。

最後にサイン入り色紙のもらえる抽選会が行われて(私は見事ハズレでしたが),お開きとなりました。今回のような交流会は,演奏会への期待を高め,メンバーへの親近感が一気に増す好企画だと思いました。川瀬さん+OEKメンバーの皆様,ありがとうございました。

2019/11/23

能美市根上総合文化会館で行われたNHK-FM「古楽の楽しみ」の公開収録に参加。メゾ・ソプラノの波多野睦美さん,司会・チェンバロの大塚直哉さんを中心にイタリア古典歌曲,英国のバロック歌曲など美しい曲を沢山楽しんできました。

本日はNHK-FM「古楽の楽しみ」の公開収録が能美市根上総合文化会館で行われたので聞いてきました。この収録ですが,NHK金沢のローカルニュースの時に流れていた「お知らせ」を見て,入場整理券を抽選で入手して参加できたものです。実は「古楽の楽しみ」は聞いたことはなかったのですが,大昔,「バロック音楽の楽しみ」というタイトルだった頃は,朝の目覚まし時計代わりによく聞いていました。出演者は,番組の司会者の一人である,チェンバロ奏者の大塚直哉さんに加え,メゾ・ソプラノの波多野睦美さん,バロック・ヴァイオリンの大西律子さん,宮崎蓉子さん,池田梨枝子さん,バロック・チェロの山根風仁さんの合計6人でした。

今回は2回分を収録したのですが,テーマの方は1回目が「イタリア古典歌曲を中心に」,2回目が「イギリスのバロック歌曲を中心に」ということで,波多野さんによる歌がメインでした。短めの曲が多かったので,各回ともトークを交えて,9曲ずつ演奏されたのですが,日頃,聞く機会の少ないバロック時代の美しい歌曲やアリアをしっかりと聞くことができ,大変充実感のある時間を過ごすことができました。

私自身,バロック以前の音楽を聞くのは少々苦手で(正直なところ,良いと思うけれども,あまり区別がつかないのです),特にCDや放送などで聞いた場合,BGMのような感じで聞き流してしまいます。今回の会場は,根上総合文化会館という室内楽を聞くのに最適のホールだったこともあり,バロック音楽の良さを気持ちよく味わうことができました。

特に波多野さんの声が素晴らしいと思いました。叫ぶような感じは全くなく,会場の空気と一体となったような,非常に自然で透明感のある声を聞かせてくれました。ヴィブラートが少なく,スッと耳に入ってくるのですが,心地良い暖かみがあり,曲の内容に応じたドラマを伝えてくれました。どの曲も素晴らしかったのですが,「2回目」の収録の最後の方で歌われた,パーセルの歌劇「ディドとエネアス」のアリアに,真っ直ぐに耳に飛び込んでくるような切実な美しさがあり特に印象的でした。ちなみにこのアリアですが,11月7日に行われたオーケストラ・アンサンブル金沢の小松定期公演で,小泉詠子さんの歌で聞いたばかりだったので,思わぬ形で聞き比べができました。どちらも良かったのですが,オーケストラ伴奏版よりはさらにインティメートな雰囲気が感じられました。

この波多野さんの声と,バロック・ヴァイオリン,バロック・ヴィオラ,バロック・チェロ+チェンバロの声の取り合わせも最高でした。現代の楽器よりも少しテンションが低いのですが,その分,しっかりと耳に絡んでくる...といった優しさを感じました。この波多野さんと古楽器の組み合わせの雰囲気は,「癖になる」かもしれません。

今回は歌曲が中心だったのですが,もう一つのテーマは「チェロとチェンバロが演奏する,バスの動き」でした。しつこく繰り返されるオスティナート・バスにも,色々なタイプがあることを,大塚さんが丁寧に説明をされました。この説明があるかないかで,曲の楽しみ方は大きく違うと思いました。大塚さんは,司会をしながらチェンバロを弾かれており大変だったと思いますが,演奏もトークもとても丁寧で,安心感を感じました。チェンバロの方は,石川県の輪島さんという方が作られているものを使っていましたが,この音も素晴らしく,聞いていて爽やかさを感じました。

収録の方は,55分の番組を2回ということで,休憩時間も合わせると,約3時間かかりましたが,大変充実した内容だったと思いました。本日の収録は,12月18日(水)と19日(木)にNHK-FM 6:00~6:55で放送される予定ですので,関心のある方は是非お聞きになってみてください。

PS.収録に先だって,「拍手の練習」がありました。数年前,NHKの別の番組の公開収録にも参加したことがあるのですが(朝ドラ「まれ」の感謝祭です),その時同様,「NHK推奨の拍手」の説明がありました。普通よりも,拍手を速く叩いて欲しいとのことでした。その方が大きく盛り上がっているように聞こえるとのことでした。私自身,結構,拍手についてはのんびり叩いていたので,最初は慣れなかったのですが,終わるころには,こちらの方になじんで締まった感じです。

 

2019/11/19

アフターセブンコンサート2019:夜のクラシック第2回 今回は宮田大さんがゲスト。リラックスした気分の中,チェロの音に酔ってきました。週末だったら...本当に酔いたかったところです。

今晩は,仕事が終わった後,夕食をサッと食べて,石川県立音楽堂で行われた,19:15開始の「アフターセブンコンサート2019:夜のクラシック(夜クラ)第2回」を聞いてきました。このコンサートのコンセプトどおり,開始時間が15分遅いだけで,結構,ゆったりとした気分になるものです。

今回のアーティストは,チェロの宮田大さん,司会は加羽沢美濃さん,ピアノは,ジュリアン・ジュルネさんでした。演奏された曲は,「夜クラ」らしく,仕事帰りの大人向けの曲にぴったりの,ちょっと粋な感じの曲が並んでいました。カサド,ガーシュイン,ピアソラということで...お酒を飲みながら聞くのにぴったりの,ラテン系+アメリカの音楽が並んでいました。

宮田大さんの演奏を聞くのは初めてだったのですが(トークによると,宮田さん自信,金沢に来るのは今回が初めてだったそうです),まず,その音が素晴らしいと思いました。あいさつ代わりに演奏されたカサドの「親愛なる言葉」での,明るく,引き締まった音に一気に引きつけられました。チェロの音の密度が高く,その音に浸っているだけで,充実した幸福感のようなものを感じました。

その後,加羽沢さんとのトークになったのですが,実は加羽沢さんは熱烈な宮田さんのファンで,プログラムに書いてなかったカッチーニのアヴェ・マリアが息長く,しっとりと演奏されました。

この日のメインのプログラムは,チェロとピアノ用に編曲されたガーシュインの「パリのアメリカ人」でした。オリジナルのオーケストラ版の沸き立つような雰囲気感じはなかったのですが,小粋で品の良い雰囲気が出ていたと思いました。中間部のブルースのような雰囲気が特に素晴らしいと思いました。

加羽沢さんによる,宮田さんに捧げるピアノ曲が演奏された後(どこかドビュッシーの曲を思わせるような,とても魅力的な空気感の漂う作品),最後にピアソラの「ブエノスアイレスの冬」と「ブエノスアイレスの秋」が演奏されました。抒情的でほのかに甘い雰囲気が漂う「冬」と,野性味や躍動感が溢れる「秋」。そのコントラストが面白いと思いました。

アンコールでは,加羽沢さんと宮田さんのデュオでポンセの「エストレリータ」が演奏されました。オリジナルはヴァイオリン用の曲ですが,チェロで演奏すると...夜の星という感じになりますね。このコンサートにぴったりの(アルコールを飲みたくなるような)気分を残しつつ,演奏会を締めてくれました。

終演後,宮田大さんとジュリアン・ジュルネさんのサイン会が行われましたが,コンサートの魅力に寄ったお客さんで大盛況でした。まだ火曜日ということで,真っすぐに家に戻ったのですが,とてもリラックスした気分にさせる演奏会でした。宮田さんのチェロは,また是非実演で聞いてみたいと思います。

2019/11/13

洋邦コラボレーション・コンサート コラージュ:能による3つの情景。渡邊荀之助ファミリーとコンスタンチン・リフシッツさんを中心とした,アートの素晴らしさを讃えるような「展覧会の絵」。石川県立音楽堂邦楽ホールの機能を使いまくっていました。

今晩は,「洋邦コラボレーション・コンサート コラージュ:能による3つの情景」という石川県立音楽堂ならではの演奏会(というよりはパフォーマンスといったところでしょうか)が行われたので聞いてきました。石川県立音楽堂には,洋楽用,邦楽用の2つのホールがありますが,その2つの要素をコラボさせようという試みです。同様のコンセプトの演奏会は,ホールの開館以来,毎年のように行われて来ましたが,今回の「能」と「ピアノ」を中心としたコラボレーションは,特に素晴らしい内容だったと思います。

演奏会の構成は,謡と囃子による居囃子「松風」,ピアノ独奏によるヤナーチェクの「草かげの小径にて」第2集,能舞とピアノのコラボによるバッハのパルティータ第6番のサラバンド。そして,能舞,モダンバレエ,ピアノ,笛によるムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」全曲というものでした。

最初の居囃子からステージの照明効果が素晴らしく,非常にドラマティックな雰囲気が出ていました。逆に言うと正統的な邦楽の世界とは別世界になっていたのですが,新しい切り口で邦楽を聞かせようという今回の演奏会のコンセプトにはぴったりでした。

その後の曲については,コンスタンチン・リフシッツさんのピアノと渡邊荀之助ファミリーの能舞が中心となっていました。何と言っても,後半に演奏された「展覧会の絵」が素晴らしかったですね。渡邊荀之助さん,茂人さん,さくらさんの親子孫3代に川瀬隆士さんが加わった4人による舞が実に華やかでした。そこに,中村香耶さんのモダン・バレエが絡み,和洋が渾然一体となって,芸術を賛美するようなパフォーマンスとなっていました。

リフシッツさんのピアノは,冒頭のプロムナードから大変堂々とした歩みでスタート。私がこれまで聞いたこの曲の演奏でも特に遅いテンポでしたが,その中に精緻な表現から豪快な表現まで,多彩な音楽が詰まっていました。「バーバヤガーの小屋」の前の「カタコンベ」の部分では,意表を突いて謡も加わり,死者の霊を弔うような,何とも言えない不思議な雰囲気が漂っていました。

最後の「キエフの大門」は,出演者総出演の壮麗な「大団円」という感じでした。その点では,本来の能とは全く違う,能のキャラクターを活かした総合芸術といった趣きでしたが,その辺に他では見たことのないオリジナリティを感じました。

邦楽ホールのステージは,色々な部分が,「上がったり,下がったり」させることができるのですが,それを駆使して,次は誰がどこから出てくるのだろう,というわくわくとした気分にさせてくれました。邦楽ホールでしか実現できない,金沢ならではのパフォーマンスだったと思います。

この「華やかなステージ」と対照的だったのが,バッハのサラバンドのステージでした。渡邊荀之助さんは出家した尼さんのような面+衣装で登場。リフシッツさんの演奏する,悲しみと甘美さに満たされたようなピアノ演奏の雰囲気そのままの舞を見せてくれました。
以上以外にも,リフシッツさんの独奏でヤナーチェクのピアノ曲が演奏されました。どこかジャズのピアノ曲を聞くような自在さが感じられると同時に,精緻で多様なタッチの素晴らしさを堪能できる演奏でした。

邦楽ホールの機能を使い尽くしたような,工夫に溢れたパフォーマンスに触れながら,石川県立音楽堂の素晴らしさも実感できた演奏会でした。

2019/11/07

オーケストラ・アンサンブル金沢小松定期公演・秋に,ブザンソン指揮者コンクールで優勝したばかりの沖澤のどかさんが登場。ディーリアスに始まり,フォーレで終わる,こだわりの「なつかしさ」のあるプログラム。小泉詠子さんの新鮮なメゾ・ソプラノとの相性もぴったりでした。#oekjp

このところ2週連続で,木曜日の夜に富山市まで出かけて演奏会を聞いていたのですが,本日(木曜日)は,小松市まで出かけ,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の小松定期公演秋を聞いてきました。今回の注目は,つい先日,ブザンソン国際指揮者コンクールで優勝したばかりの,沖澤のどかさんが指揮者として登場することでした。

ただし,この演奏会自体は,このニュースの前からしっかり決まっていたもので,予定どおり,沖澤さんこだわりの,しっとりとした美しさのある曲が並ぶプログラムが演奏されました。もしも優勝することが分かっていたならば,もう少し華やかな雰囲気の曲が演奏された気がしないでもありませんでしたが,これまでのOEKの演奏会で演奏されたことのない曲が並ぶ,OEKファンなら大喜び(?)といった感じのプログラムでした。それに加え,石川県出身のメゾ・ソプラノ。小泉詠子さんの素晴らしい声を楽しむことができました。

今回のプログラムで意表を突いたのは,後半最後に演奏された曲が,フォーレの組曲「マスクとベルガマスク」だったことです。OEKが演奏するのは初めてだったかもしれません。沖澤さんは,OEKのキャラクターにあった曲を選んだとのことですが,まさにその通りの,小粋で変化にとんだ美しい作品でした。個人的には「オーケストラの演奏会の最後は,やっぱり交響曲かな」とは思うのですが,今回の場合,沖澤さんのトークを聞いて納得しました。

本日のプログラムの最初に演奏された,ディーリアスの「春初めてのカッコウを聞いて」と対応させる形で,フォーレの「マスクとベルガマスク」の終曲のパストラールを配置したとのことでした。説明を聞いてからこの曲を聞くと,なるほどディーリアスと非常によく雰囲気が似ており,「なつかしい」気分にさせてくれました。

この「なつかしさ」というのが今回のプログラムのポイントだったのですが,曲の雰囲気自体「なつかしさ」があるのと同時に,プログラムの最後で最初に演奏された曲を思い出させるという二重の意味での「なつかしさ」にこだわっていたことになります。この選曲のセンスが素晴らしいと思いました。

沖澤さんの指揮については,今年の6月,シューベルトの交響曲第5番などを聞いたことがありますが,オーケストラを強く引っ張っていくというよりは,オーケストラが自発的に作り出す音楽に乗りながら,気づいてみれば,自然と沖澤さんの考える音楽へと導かれている。そういう感じの音楽だなと思いました。

今回演奏された曲で面白かったのは,後半に演奏されたシュニトケの「古典様式による組曲」でした。この曲もOEKが演奏するのは初めてでしょうか?曲の雰囲気としては,レスピーギの「古風な舞曲とアリア」ような感じで,一見,とても心地良く聞きやすい音楽なのですが,所々,隠し味のような感じで,「ちょっと違和感があるな」という毒が混ざったような響きが混ざってきます。それがわざとらしくなく,とてもスマートに品良くユーモアを感じさせてくれたのが良かったと思いました。

そして,この日のもう一人の主役が小泉詠子さんでした。小泉さんは,パーセル,モーツァルト,ロッシーニのオペラのアリアを歌いました。まずソプラノではなくメゾ・ソプラノという点が,まず,沖澤さんが考えた,ちょっと地味目のプログラムの雰囲気にぴったりだったと思います。

モーツァルトのケルビーノのアリア2曲はお馴染みの曲でしたが,パーセルの「ディドとエネアス」のアリア,ロッシーニの「アルジェのイタリア女」のアリアなど,魅力的なアリアを4曲聞かせてくれました。小泉さんの声には瑞々しさと,品の良さがあり,沖澤さんが作る自然体の音楽ともしっかりマッチしていました。

今回は沖澤さんと小泉さんの曲目解説を交えての演奏だったのですが,まず,パーセルの作品での痛切な響きと,低音楽器が半音ずつ下行していくラメント進行が印象的でした。このお二人を中心とした,バロックオペラの企画などあれば(ヘンデルの「メサイア」の全曲でも良いですね),聞いてみたいものだと思いました。

ロッシーニのアリアは,女性の2面性を描いたようなアリアでした。曲の前半での滑らかな美しさと,曲の後半での男を騙すしたたかさ。そのキャラクターをデフォルメしたような感じはありませんでしたが,古典的な雰囲気を保ちながら,鮮やかな歌い分けを楽しませてくれました。

というようなわけで,トーク以外の実質的な演奏時間はかなり短めの演奏会でしたが,その分,それぞれの曲をじっくりと楽しむことができました。今回の演奏会を聞いて,沖澤さんの指揮で,これまでOEKが取り上げてこなかったような作品を色々と聞いてみたいなと思いました。今後の活躍に大いに期待しています。

2019/11/02

今週末も富山に出かけ,岡田博美ピアノ・リサイタルを聞いてきました。平静かつ完成度の高い,凄い演奏の連続に感動しました。

先週の金曜日に続いて,仕事が終わった後,車で富山市まで出かけ,ピアニスト,岡田博美さんのリサイタルを聞いてきました。岡田さんについては,1980年代前半,日本音楽コンクールで1位になった頃から注目をしていたピアニストですが,金沢ではその演奏を聞く機会はありませんでした。先週同様,富山市で岡田さんのリサイタルのチラシをたまたま見つけたのをきっかけに,「これは行かねば」と思い,聞いてきました。ちなみに,岡田さんは富山県出身。「そういえば,そうだったな」と思い出しました。

今回,岡田さんの演奏を初めて聞いて,その凄さに感嘆しました。岡田さんはステージ上での動作は非常にさり気なく,ピアノに向かうとすぐに演奏をはじめ,表情を変えることも,大きな身振りで身体を動かすこともありません。常に平常心・自然体で演奏する中から,前向きな音楽が広がって来ました。

岡田さんのピアノの音には,常にバランスの良い暖かみと,弱音でもしっかりと聞こえる明確さがありました。ピアノの音の鳴り方も素晴らしく,大きな身振りはないのに,曲のクライマックスでは,どの曲でも力と余裕のある音に包まれました。驚くほど完成度の高い演奏の連続に感動しました。

前半演奏されたのは,ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第4番とブラームスのパガニーニ変奏曲でした。岡田さんの演奏で聞くと,どの曲でも曲の姿がストレートに伝わってくるのですが,特にソナタ形式の楽章を持つ作品については,ステージ上に彫刻が立っているような,存在感を感じさせてくれました。

ブラームスのパガニーニ変奏曲は,特に技巧的な作品でしたが,岡田さんは,この曲でも多彩な技巧と音色を平然と聞かせてくれました。非常に鮮やか,かつ,力強い演奏で,この曲の持つ迫力を,ハッタリなしで,ストレートに伝えてくれる素晴らしい演奏でした。

後半の最初は,三善晃のアン・ヴェールという作品でした。今回のプログラムの中では唯一の現代曲でしたが,他の曲同様,曲の魅力がストレートに伝わってきました。決して親しみやすい雰囲気の作品ではなかったのですが,岡田さんのピアノの音の明快さ,透明感。演奏全体に漂う,ピリッと締まった雰囲気などが相俟って,物語性のようなものを感じました。

最後にショパンのピアノソナタ第2番が演奏されました。前半のベートーヴェンやブラームスに比べると,ロマン派の曲らしい感情の揺れのようなものが伝わって来たのですが,甘いムードに溺れるような部分はなく,前半同様のガッチリとした構築感を感じました。

この曲で特に印象的だったのは,後半の2つの楽章でした。有名な葬送行進曲については,その和音の響きが美しく,暗く落ち込むような感じでなはく,弔いの鐘が美しく響いているように感じました。中間部のデリケートな歌も素晴らしいと思いました。

この楽章の後に続く第4楽章は,メロディが全然ない,非常に不思議な楽章なのですが,今回の演奏は,寒々とした雰囲気というよりは,繊細で軽やかなヴェールに会場全体が覆われたような独特の美しさに覆われました。曲の最後の和音も非常に立派な響きで,満ち足りた雰囲気をもった「葬送」のような印象を持ちました。

上述のとおり,どの曲についても,曲の魅力がストレートに伝わって来ました。この日,会場では,岡田さんがレコーディングした沢山のCDを販売していましたが,音楽にストレートに向き合う岡田さんのレパートリーの広さを改めて実感しました。岡田さんが富山で演奏会を行うのは9年ぶりとのことですが,「1回も聞き逃せない」ピアニストではと思いました。機会があれば,また聞きに行きたいと思います。

2019/10/31

ラルフ・ゴトーニ指揮OEK定期公演は,ハイドンとべートーヴェンの交響曲を中心とした暖かみとユーモアと味わい深さのある内容。OEKらしさを楽しませてくれる演奏会でした。#oekjp

本日は,5年ぶりの登場となる,ラルフ・ゴトーニさん指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の定期公演を聞いてきました。前回のマルク・ミンコフスキさんの時同様,ソリストが登場しない演奏会でしたが(今回,協奏曲は1曲あったのですが,ゴトーニさんの弾き振りでした),オーケストラの編成は対照的で,ほぼOEKのスタンダード編成(コントラバスが1名増強されていただけ)による,古典派の交響曲を中心とした演奏会となりました。

前回の「フル編成オーケストラ」的OEKの演奏も良かったのですが,今回のスタンダードOEKによる,熟練のハイドンやベートーヴェンを聞いて,改めて古典派の交響曲の楽しさを実感しました。

ゴトーニさんについては,クールな音楽作りの印象を持っていたのですが,本日の演奏を聞いて,旧知の仲間と一緒に暖かみとユーモアのある音楽を作っているような,アットホームな雰囲気を感じました。メインで演奏された,ベート-ヴェンの交響曲第8番はいろいろなキャラクターを持った曲で,解釈によっては大変立派で豪快な雰囲気にもなりますが,今回の演奏は,基本的にすっきりと端正に聞かせながらも,神経質な雰囲気はなく,非常に伸びやか。そして,所々,かなり大胆なルバートを入れるなど,「遊び」の感覚があると思いました。本日の演奏は,若々しく張り切ったような生きの良い演奏...というよりは,速すぎないテンポで,きっちりと切れよく演奏しつつも,随所でしみじみとした味わいを感じさせてくれました。ゴトーニさんの演奏の円熟味のようなものを感じました。

前半に演奏された,ハイドンのピアノ協奏曲ニ長調と交響曲第83番「めんどり」にも同様の雰囲気はありましたが,よりスッキリと古典的な清潔感を感じさせてくれました。ピアノ協奏曲の方では,ゴトーニさんのピアノの,軽快でありながら暖かみのある演奏が印象的でした。最終楽章,「途中でハンガリー風になる」というのは,「ハイドンあるある」といった感じでした。

交響曲第83番は,ト短調の曲ということで,オッと思わせるようなドラマティックで引き締まった音で始まるのですが,第2主題になると,すっと穏やかな気分になり,「コッコ,コッコ...」というフレーズが弦楽器やオーボエに出てきて「めんどり」的気分になります。ハイドンの交響曲には,正直を言うと「意味不明」のニックネームがありますが,この曲については,「納得のめんどり」だと思います。

このシリアスさとリラックスした感じの自然なコントラストが良いなと思いました。第2楽章も「めんどり」に通じるような,「同音連打」で始まりましたが,途中,急に音量がアップする部分があったので,「驚愕」を先取りするような雰囲気もあるなと思いました。いずれにしても,OEKのハイドンは,指揮者によって,毎回毎回,味わいが違い,聞くのが楽しみです。

本日のプログラムは古典的な曲が中心でしたが,後半の最初に1曲だけプロコフィエフ作曲,ルドルフ・バルシャイ編曲による「束の間の幻影」の抜粋が演奏されました。1分前後の短いピアノ曲による組曲をバルシャイが弦楽オーケストラ用に編曲した作品で,美しさと同時に,「怪しさ」のようなものが漂っていました。本当に短い曲が多く,「束の間の幻影」というタイトルにピッタリでした。演奏会の流れの中で,不思議な時空間を作っているようでした。

というわけで,編成的にもプログラム的にも,非常にOEKらしい内容の演奏会だったと思います。パワーや華やかさでアッと言わせるような内容ではありませんでしたが,心地良い充実感が後に残るような,非常に味わい深い内容だったと思います。

2019/10/25

とやま室内楽フェスティバル2019 スペシャルコンサート。”ほぼ東京カルテット”+練木繁夫+毛利伯郎でシューマンのピアノ五重奏曲。豊かな音楽に感激。レジェンドの皆さんからサインもいただいてしまいました。若手奏者たちの演奏も素晴らしいものでした。

本日は仕事が終わった後,北陸自動車道で富山市まで行き,とやま室内楽フェスティバル2019のスペシャルコンサートを聞いてきました。9月上旬に富山市に行った時に,このコンサートのことを知ったのですが,原田幸一郎,池田菊衛,磯村和英という元東京クヮルテットのメンバー3人+チェロの毛利伯郎さん,ピアノの練木繁夫さんという,いわば,室内楽のレジェンドが揃って,シューマンのピアノ五重奏曲を演奏するということで,これは聞かねばなるまいと思い出かけてきました。

その演奏ですが...期待をはるかに上回る,素晴らしいものでした。冒頭からどっしりと重厚。枯れた雰囲気もあるけれども,音楽が大きく息づいていているような豊かさを感じさせる部分が随所にありました。テンポはゆっくり目でしたが,音楽の裏には常に熱い情熱があり,レジェンドたちの心意気が感じられました。

前半は,レジェンドたちから指導を受けている,若手奏者による室内楽曲が3曲(いずれも抜粋)演奏されました。こちらも素晴らしい演奏の連続でした。今回の会場の富山市民プラザ アンサンブルホールに来たのは初めてでしたが,その名のとおり,室内楽の「アンサンブル」にぴったりのホールで,各楽器が音が非常によく聞こえる一方,天井が高いこともあり,適度な残響もあり音楽が伸びやかに聞こえます。若手奏者たち演奏には,音楽の緻密さと生きの良さが同居しており,集中して楽しむことができました。

特に最初に,クァルテット・インテグラが演奏した,ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第16番の抜粋は,4人が一体となって有機的な音楽を作り上げており,素晴らしいと思いました(全曲を聞いてみたかったところです)。

この「とやま室内楽フェスティバル」は,若手アーティストに対しての教育プログラムも行っているせいか,すべてが無料公演というのが特徴です。今回の公演も,無料というのが信じられないぐらいのレベルの高い演奏でした(さすがに入場整理券が必要でしたが)。

本日は17:30ぐらいに金沢を出発したので,間に合うか微妙なところでしたが,無事開演5分前にホールに到着。高速料金は,金沢森本IC~富山IC片道1260円(軽自動車),それに駐車料金500円(意外に安かったです)ということで,総額約3000円ぐらい掛かったのですが,来年度も同様な感じで聞きに行っても良いかなと思いました。

さらに,「何とかサインをもらおう」と思い,「出待ち」をして,伝説の元東京カルテットの3人から,うまい具合にサインをいただけました。こちらもまた良い思い出になりました。

2019/10/24

若松みなみ ソンジュン・キム ジヌウ・パク ピアノトリオの夕べ。ピアノ三重奏曲4曲が盛り込まれた,聴きごたえ十分の演奏会でした。

今晩は石川県立音楽堂では,楽都音楽祭「秋の陣」の「声楽の日」コンサートも行われていたのですが...そちらの方は断念し,金沢市アートホールで行われた,OEKのヴァイオリン奏者,若松みなみさん,同じくチェロ奏者のソンジュン・キムさん,そして,ジヌウ・パクさんのピアノによるピアノトリオの夕べの方を聞いてきました。金沢でピアノ三重奏曲をこれだけまとめて聞ける機会は少ないと思い,こちらを選択したのですが,期待以上にボリューム感満点の演奏会となりました。

演奏されたのは,ベートーヴェン,ブラームス,ドビュッシーのピアノ三重奏曲のそれぞれ「第1番」でした(ドビュッシーの曲は,「1番」ではないのですが,これ1曲しか作っていません)。いずれも若い時の作品ですが,今回の3人の演奏にも若々しさがありました。

今回,ゲストのような形で参加したジヌゥ・パクさんのピアノには,速いパッセージになるほど精気が増してくるような鮮やかさがありました。ベートーヴェンの1番(この曲は,作品1の1ということで,「1尽くし」です)は特に若々しい気分のある曲で,特にその演奏が冴え渡っていました。

最後に演奏されたブラームスの1番の方は,ソンジュン・キムさんの朗々とした伸びやかさのあるソロで始まった後,若松みなみさんのヴァイオリンを加えて,気持ちよくぐいぐいと進んで行きました。最終楽章のほの暗い熱さのある演奏が特に印象的でした。

ドビュッシーの曲については,そもそもピアノ三重奏曲があったことを今回初めて知ったのですが,「こんな素直で分かりやすい曲を作っていたのだなぁ」と思わせるほど,親しみやすい作品でした。ヴァイオリンとチェロを中心とした「しあわせ感」たっぷりの響きが,本当に心地よく響いていました。

この3曲とも,25分以上はかかる作品だったのですが,さらにもう1曲,間奏曲のような形で,シューベルトのノットゥルノが演奏されました。この曲は対照的にシューベルト最晩年の作品で,美しく透明感のあるハモリの中に不思議な寂しさが漂っていました。

ピアノ三重奏というスタイルは,室内楽でありながら,ヴァイオリンとチェロがソリスティックに活躍したり,二重奏のように美しくハモったり,各楽器が名人芸を聞かせたり...他の室内楽にはない,華やかさがあると感じました。演奏会の最後で,若松さんは,「ピアノ三重奏曲には名曲が沢山あります。これからもこの3人で演奏していきたい」といったことを語っていました。是非,今後も続けていって欲しいと思います。

ソンジュン・キムさんが最後に「本日は好きな曲を盛り込みすぎたので,アンコールはありません」と語っていましたが,その言葉どおり,充実の4曲を充実の演奏で楽しませてくれました。この3人による,ピアノ三重奏曲シリーズには,今後も期待したいと思います。

2019/10/22

風と緑の楽都音楽祭の延長戦企画 #ガル祭:秋の陣の #ピアノの日公演。#山田ゆかり さん,#竹田理琴乃 さん,#木米真理恵 さんによるピアノ協奏曲をたっぷりと楽しんできました。次年度以降も色々な楽器で定着していって欲しい企画です

本日は,毎年,春の連休中に行われている「風と緑の楽都音楽祭(ガル祭)」の延長戦企画といっても良い「ガル祭:秋の陣」を聞いてきました。この音楽祭については,ここ数年,秋にも実施する形に変わって来ているのですが,今年は「ピアノの日」「声楽の日」というネーミングを付けて,2日に分けて,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)と地元アーティストとが共演する形になっています。

本日は「ピアノの日」で,松井慶太指揮OEKと,金沢市出身の山田ゆかりさん,竹田理琴乃さん,木米真理恵さんの3人のピアニストが共演をしました。OEKと地元アーティストの共演といえば,北陸新人登竜門コンサートがありますが,3人とのその出身者です。このコンサートへの出演をきっかけとして,ガル祭を中心とした,地元での活躍が広がるという流れができつつありますが,今回の「秋の陣」はその総決算と言っても良い内容でした。

3人が演奏した曲は,山田さんがモーツァルトのピアノ協奏曲第23番,竹田さんがショパンのピアノ協奏曲第1番,木米さんがリストのピアノ協奏曲第1番でした。いずれも大変魅力的な作品。それを一気に3曲楽しめた,豪華さのあるプログラムとなっていました。

もちろん演奏内容も安心して楽しめるものでした。3人とも金沢を中心にOEKメンバーとの共演を含め,頻繁に演奏会を行っていますので,いわばずっと応援している「ご当地アイドル(?)」の晴れ舞台を見るようなワクワク感のようなものを感じていました。

山田さんのモーツァルトは,非常に軽やかな演奏でしたが,常に落ち着いた雰囲気がある,大人のモーツアルトだと思いました。特に第2楽章のシンプルな明るさの裏に常に深い思いが潜んでいるような雰囲気が良いなぁと思いました。

竹田さんのショパンは十八番と言っても良いのではないかと思います。新人登竜門コンサートでは,確か第2番の方を演奏しましたが,今回の第1番も素晴らしい技巧に支えられた,美しい演奏を聞かせてくれました。特にロマンティックな気分と瑞々しさの両立した第2楽章と非常にノリの良い鮮やかな音楽を聞かせてくれた第3楽章の対比が素晴らしいと思いました。

木米さんのリストは,楽器編成的にOEKが演奏する機会が少ない曲です。そういった作品を堂々たる演奏で楽しむことができました。金管楽器のパリッとした響きをがっしりと受け止め,浮ついた感じになることなく,正攻法で弾ききっていました。

というわけで,初めての試みである「秋の陣:ピアノの日」は大成功だったと思います。是非,今度は「弦の日」「管の日」にも期待したいと思います。

今回少し気になったのは,前半の演奏時間の長さでしょうか。モーツァルトとショパンが前半だったので,1時間以上かかり,少々疲れていたお客さんがいたような気がしました。竹田さんの演奏中,盛大にくしゃみをしている人がいましたが...ホール内が少々寒かったかもしれませんね。

というわけで,この際ゆったりと休憩2回でも良いのかなと思いました。

いずれにして,今年になってからOEKと地元ピアニストが共演する協奏曲公演が続いているのが嬉しいですね。ガル祭での,グリーグのピアノ協奏曲(平野加奈さんとの共演),岩城メモリアル公演でのベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番(鶴見彩さんとの共演),そして今回の3人。音楽祭の名前に「楽都」という単語が入っていますが,確実にそうなりつつあるなぁと実感をしているところです。

さて,今回は10月24日に「声楽の日」も行われ,是非行ってみたいのですが...この日はOEKのヴァイオリン奏者,若松みなみさんとチェロ奏者,ソンジュン・キムさんを中心とした室内楽公演もありますね。こちらも非常に充実したプログラムなので,どちらに行くか迷っているところです。

2019/10/12

台風が来ている中,室生犀星生誕130年記念として #室生犀星記念館 主催で行われた,谷川賢作さんとオンド・マルトノ&歌の原田節さんによる犀星詩コンサート@金沢21世紀美術館へ。詩と音楽のどちらも楽しめました。金沢の風雨が東海・関東ほど激しくなかったことに感謝しないといけません

台風が来ている中,室生犀星生誕130年記念として室生犀星記念館主催で行われた,谷川賢作さんとオンド・マルトノ&歌の原田節さんによる犀星詩コンサートが金沢21世紀美術館で行われたので,夕方から参加してきました。行けるかどうか,微妙な状況でしたが,金沢の風雨が東海・関東ほど激しくなかったことに感謝しないといけません

個人的には,オンド・マルトノという楽器を一度,生で見てみたい,聞いてみたい。しかも演奏は原田節さん。というあたりが注目ポイントだったのですが,谷川賢作さん作曲による,犀星・朔太郎・中也の詩につけた曲を原田さんが,オンド・マルトノを弾きながら,味わい深く歌うというのが実に良かったですね。

企画の趣旨としては,「犀星の詩」が主役で,「動物詩集」の詩につけられた,ユーモアあふれる曲を聞きながら,日本版「動物の謝肉祭」が作れるかも,と思いました。その他の詩人の曲では,ちょっと自虐的な感じのする,中也の「詩人は辛い」が面白かったですね。クラシック音楽の鑑賞にも通じるような内容だったので,じっくりと読んでみたいと思いました。

谷川さんの父上の俊太郎さんの詩,武満徹の曲による「ぽつねん」も,聞かせる曲でした。老婆を描いた作品で,ユーモアと同時に身につまされるような,怖さのようなものもありました。

谷川さんの曲は,ジャズ,タンゴ,クラシック,シャンソンなど色々なテイストが合わさったもので,多彩な詩の雰囲気にぴったりでした。そこに原田さんのオンド・マルトノの音が重なります。この楽器の音を生で聞くのは初めてでしたが,妙に艶めかしいヴィブラートがかかったり,邪悪な激しさがあったり,とても表現力が豊かで,人間の声に近い表情を持った楽器だと思いました。もちろんこれは,原田さんの技巧によるものだと思います。自分の声の一部になったような感じで,自由自在に多彩な音を出していました。

そして,原田さんの歌。「日本版トム・ウェイツ」と谷川さんは紹介されていましたが(実は...よく分からないのですが),不思議な味と力のある歌でした。最後のコーナーでは,原田さんはフランス語で色々な曲(夢見るシャンソン人形,いつものように(マイウェイのオリジナル版))を歌ったのですが,正真正銘,人生の悲哀を感じさせるシャンソンだなぁと思いました。
谷川さんと原田さんによる,CDを販売していたので,記念に買ってみようかな...と思ったのですが...うっかりほとんどお金を持っていないことに気付き,何も買わずにおきました(駐車場料金だけは確保しておかないといけないので)。

谷川さんは,大変おしゃべりの好きな方で,実は東京の自宅のことが大変気になっていますということでした。谷川さんの自宅に限らないことですが,何とか今晩を切り抜け,災害が少しでも少なくなることを祈っております。

マルク・ミンコフスキ指揮OEK マイスター定期は増強した編成によるドヴォルザーク特集。スラヴ舞曲op.72全曲と「新世界から」は,どちらも「ドヴォルザーク愛」にあふれた,熱くて深い演奏。外の雨とは「別世界」でミンコフスキさん音楽に浸ってきました。

本日は台風が関東・東海地方に迫る中,OEKの芸術監督,マルク・ミンコフスキ指揮によるマイスター定期公演を石川県立音楽堂コンサートホールで聞いてきました。プログラムは協奏曲なしのミンコフスキさんの指揮を楽しむプログラム。前半がドヴォルザークのスラヴ舞曲作品72(全曲),後半がドヴォルザークの交響曲第9番「新世界から」というドヴォルザーク特集でした。

ミンコフスキさんとドヴォルザークという組み合わせは,意外な気はしましたが,前半後半とも,ミンコフスキさんの「ドヴォルザークへの愛」が伝わってくるような,素晴らしい演奏でした。

前半のスラヴ舞曲集は,CDはかなり出ていますが,実演でこれだけまとまって演奏されることは珍しいと思います。特に,作品46の「続編」である,作品72の8曲の方は,超有名曲の72-2以外は,知る人ぞ知るといった曲が多いのではないかと思います。私自身,作品72の全曲を実演で聞くのは初めてでしたが,「スラヴ組曲」といった感じの多様性を感じさせる,聴きごたえのある演奏になっていたと思います。

もともとスラヴ舞曲の方は,速いテンポの舞曲とゆったりしたテンポの曲がバランス良く混ざっています。今回のOEKは弦楽器をかなり増強しており,12-10-8-8-4というフルオーケストラに近い編成でした。そのことにより音の重量感が増していました。その一方で,ミンコフスキの指揮は演奏全体にエネルギーを与えるような感じで,重量感とキレの良い動きが見事に合体していました。

曲の中では,最後の第8番が特に素晴らしい演奏だったと思います。夢見心地のようなしっとりとした気分のある演奏で,第1番~第7番までの生き生きとした世界を美しく,懐かしく振り返っていました。

後半はお馴染みの「新世界から」。ホールの外は,雨が降り続いていましたが,ホールの中は「別世界」。ミンコフスキさんの指揮にもお馴染みの曲に,新たなエネルギーを注入したような,気合い十分の演奏。「別世界から」という演奏だったと思いました。

前半のスラヴ舞曲同様,どの部分にもミンコフスキさんの「ドヴォルザーク愛」が感じられ,それがOEKの演奏のエネルギーになっていました。この日のコンサートミストレスは,アビゲイル・ヤングさんでしたが,そのお隣には水谷晃さん。チェロの首席奏者の方は客演の辻本玲さん。演奏全体を通じて,各パートが競い合いながらも一体となって盛り上がるような「熱気」がありました。

その一方,静かな楽章では,じっくりと間を取る部分があり,その「静けさ」に凄みを感じました。OEKにとって,「新世界から」は頻繁に演奏できる曲ではありません。恐らく,ミンコフスキさんにとっても,新たなレパートリーなのではないかと思います。その新鮮さが,「熱さ」と「深さ」につながっていた気がしました。

というわけで,雨の中出かけてきて,本当に良かったと思いました。この日の演奏会は北陸朝日放送が収録を行っていましたが,そろそろ,ミンコフスキさん指揮OEKによるCD録音を期待したいと思わせるような素晴らしい演奏会でした。

«石川フィルハーモニー交響楽団特別演奏会。バーンスタイン,スターウォーズ組曲,マーラーの「巨人」という素晴らしいプログラム。大編成オーケストラの魅力をしっかり楽しめました。

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