OEKのCD

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2022/06/20

今晩は,金沢初登場の九州交響楽団演奏会@石川県立音楽堂へ。現田茂夫さん指揮,須川展也さんのサックスによる,明るく開放的な気分のある公演。サックスの魅力とラテン系の音楽の魅力の両方をしっかりと楽しめる演奏会でした。オーケストラ・キャラバン企画は,今年も色々楽しみですね。

今晩は,昨年度から始まった「オーケストラ・キャラバン」の一環で行われた,九州交響楽団金沢公演を石川県立音楽堂で聴いてきました。プログラムのポイントは,「サクソフォンが加わるオーケストラ曲」。ソロで登場したり,オーケストラのメンバーとして登場したり,全曲で須川展也さんが演奏に加わっていました(4月のOEK定期での上野耕平さんの時と似た感じかも)。

前半はまず,須川さんのサックスのソロをフィーチャーした曲が3つ演奏されました。ご挨拶がわりの,ドーシー作曲のウードルズ・オブ・ヌードルズという曲は,須川さんの鮮やかな音と指の動きを堪能できるような曲。いきなりのジャズっぽい作品ということで,一気に別世界に連れていかれた感じでした。サクソフォーンという楽器の,一気に主役になってしまうような,良い意味での「押しの強さ」も味わえる楽しい曲でした。

2曲目は,真島俊夫作曲のシーガルという作品。1曲目とは打って変わって,ゆったりとしたバラードっぽい作品。エンニオ・モリコーネの曲の世界につながるような,甘い切ない世界を味わわせてくれました。須川さんの演奏には,時間の感覚を忘れさせてくれるような陶酔感がありました。

3曲目の石川亮太作曲の日本民謡による狂詩曲は,発想としては,外山雄三作曲の「ラプソディ」と同様で,日本の有名な民謡が次々出てくるラプソディです。途中,緩徐楽章風になったり,カデンツァのような感じになったりする点で,サックス協奏曲的な感じもある作品でした。最後は阿波踊り+ソーラン節でしたが,阿波踊りには絶妙のスウィング感があり,サックス向きなのではと思いました。

前半最後は,吹奏楽の定番中の定番曲,アルフレッド・リード作曲のアルメニアン・ダンスPart1を中原達彦さんがオーケストラ用に編曲した版でした。もしかしたら,この日いちばんの注目曲だったかもしれませんね。私自身,吹奏楽版は何回か聴いたことがありますが,オーケストラ版で聴くのはもちろん初めてのことです。その第1印象は,スケールが大きくなったなぁというものでした。弦楽器のカンタービレが出てくると,オリジナルの管弦楽曲のようなスケール感を感じました。その一方,吹奏楽版でのクラリネットの合奏が作りだすような独特の音色感もやはり魅力的だなとも思いました。最後の部分,オーケストラ版で聴くととても軽快でしたが,アマチュアの吹奏楽団が熱く演奏する感じも良いなぁと感じますね。変わらないのは,パーカッションの爽快さでしょうか。この日の客席には,制服を来た学生・生徒さんの姿を沢山見かけましたが,大きな刺激を与えてくれる演奏だったのではないかと思いました。

後半は視点が逆転し,クラシック音楽の中でサクソフォンが使われている曲が2曲演奏されました。というわけで,必然的にフランス音楽ということになります。今晩登場した九州交響楽団の演奏を実演で聴くのは初めてでしたが,ラテン系の音楽の開放感にぴったりなのではと思いました。「九州=南の方=明るい」という先入観を持っているせいもあるかもしれませんが,ビゼーのアルルの女組曲第2番の第1曲パストラールの冒頭の脱力したのびやかな音を聞いて,とてもリラックスした気分になりました。これは,指揮者の現田茂夫さんの指揮の力も大きいと思います。

2曲目の「間奏曲」では,九響メンバーとして演奏していた須川さんのサックスの抑制された美しさを実感できました。3曲目は有名なメヌエット。楚々とした感じのあるフルートの後,管楽器が次々加わって,色彩感が出てくる感じが素晴らしかったです。終曲のファランドールは,非常に遅いテンポで開始。最後の部分は大きく盛り上がっていましたが,全体的に無理なくしっかりと楽しませてくれるのが現田さんの指揮の特徴かなと思いました。

演奏会の最後はラヴェルの「ボレロ」でした。いちばんの「重労働」の小太鼓奏者は,指揮者の真正面,フルートの前という「特等席」でしっかりと,しかし,ラテン的なカラッとした感じを伝えるリズムを刻んでいました。演奏後,現田さんは「ソリスト」のような感じで指揮台の横まで連れてきて,小太鼓奏者の方の健闘をたたえていました。

この曲では,第1ヴァイオリンが大々的に加わり,小太鼓が2台に増えるあたりから,気分がより開放的になってきます。そして最後は満を持して,銅鑼,シンバルなどが炸裂。演奏を聴きながら,今度生まれ変わったら(?),この日の演奏のように,銅鑼を思い切り叩いてみたいなぁと思いました。

そして,アンコールが1曲ありました。これはもしかしたら九響さんの得意のパフォーマンスなのかもしれませんが,スーザの行進曲「星条旗よ永遠なれ」が演奏されました。佐渡裕さん指揮シェナ・ウィンドオーケストラのアンコールの定番ですが,そこまでは速いテンポではなく,しっかりと手拍子を楽しめるような快適なテンポ。そして,最後の部分では,オーケストラメンバーが全員起立(チェロの皆さんも立ってましたねぇ)。やはり,皆で盛り上がるお祭りのような開放感が九州交響楽団さんの持ち味なんだなぁと幸せな気分になりました(月曜日から既に疲れ気味だったのですが,とりあえず疲労感がリセットされました)。

このオーケストラ・キャラバン企画ですが,金沢に居ながらにして全国各地のオーケストラを安価で楽しめるのが良いですね。コロナ禍が契機となって始まった企画ですが,是非,継続して欲しいと思います。今度は(個人的な思いですが),札幌や山形など,これまで金沢に来たことのない「北の方」のオーケストラの演奏を聴いてみたいものです。

2022/06/18

本日は第34回教弘クラシックコンサートへ。鈴木恵理奈さん指揮,ソプラノ木村綾子さんによる,ジュピターとオペラアリアを中心とした,オール・モーツァルトプログラム。やっぱり #oekjp の原点はモーツァルトかなと思わせてくれる,充実した演奏会でした。お2人のトークも聴く楽しみが増えるような内容でした。

本日の午後は,第34回教弘クラシックコンサートを石川県立音楽堂で聴いてきました。この公演は,OEK創設時から毎年この時期に行われている日本教育公務員弘済会石川支部主催による入場無料の演奏会です。昨年までは「県教弘クラシックコンサート」という名称でしたが,今年からは「教弘クラシックコンサート」に変更になりました。が,回数としては34回目となります。

出演は,今年の1月に新作オペラ「禅」を指揮した,鈴木恵理奈さん,ソプラノは楽都音楽祭でも大活躍されていた木村綾子さん。そして,オーケストラはOEKでした。

演奏会に先立って主催者の方からひとことご挨拶があり,今年度から演奏会の名称を変えたので,原点に立ち返って,OEKや若手演奏家を応援する内容にしたとのことです。OEKファンとしては大変うれしいポリシーですね。OEKが何回も演奏してきたモーツァルトを若手指揮者と地元で活躍する歌手の演奏で楽しむオーソドックスな煮ようとなりました。

演奏された曲目は,前半が歌劇「フィガロの結婚」から序曲と「恋とはどんなものかしら」,歌劇「魔笛」から「ああ私にはわかる、消え失せてしまったことが」,コンサート用アリア「偉大な魂、高貴な心を」。後半は交響曲第41番「ジュピター」ということで,実質的な演奏時間はやや短めでしたが,曲の間に鈴木さんと木村さんによるトークが入っていましたので,休憩も含めて90分ぐらいの公演でした。

鈴木さんの指揮には,慌てた感じは全くなく,テンポが速くなっても,常に音楽に余裕が感じられるような,気持ちの良い演奏を聴かせてくれました。演奏前にトークにあったとおり,「ジュピター」交響曲では,各楽章のキャラクターをしっかり,的確に描き分けていました。第4楽章最後のフーガの部分は,巨大な音楽が立ち上がるというよりは,澄み渡った晴れた夜空に美しく星がきらめくような爽快さを感じました。これは,個人の勝手な感想ですが,鈴木さんのトークを聴いて,色々とイメージを広げながら聴いてしまいました。

前半の木村さんの歌も充実した内容でした。今回歌われたアリアについては,少年ケルビーノの恋する気持ちや,恋人に振られたと思って絶望的に落ち込むパミーナの気持ちが歌われていたのですが,鈴木さんが語っていたとおり,「こういう感情は普遍的だなぁ」と思いました。アリアだけを切り取って聴いただけで,全曲へのイメージが大きく広がるような演奏でした。

ちなみに鈴木さんは「恋とはどんなものかしら」の曲目解説の時に,イタリア語の歌詞をいくつか事前に紹介されていましたが,これがとても良かったですね。イタリア語の熱さが伝わって来て,聴く前にテンションが上がりました。鈴木さんは,ケルビーノのことを「ズボン役」として紹介されていましたが,鈴木さんの指揮ぶりにもケルビーノを彷彿とさせるような瑞々しさを感じました。

木村さんは,楽都音楽祭の司会でもおなじみですが,今回の歌唱も素晴らしく,特にパミーナのアリアでの凛とした感じと,深く落ち込んだ感じの対比が素晴らしいと思いました。

アンコールは2曲ありましたが。木村さんの歌を交えてアヴェ・ヴェルム・コルプスが演奏されましたが,合唱以外で聴くのは...多分初めてでしたが,天上の音楽というよりは,人間的な情感のあふれた音楽に聞こえました。

アンコール2曲目は,ディヴェルティメントK.136の第3楽章。鈴木さんは指揮台まで走るような感じで登場しましたが,何かそのテンポ感とぴったりで,若々しさが溢れていました。

というわけで,やっぱりOEKのモーツァルトは良いなぁと原点に立ち返ったような気分にさせてくれました。

2022/05/28

本日は加納律子オーボエ・リサイタル Vol.2「ラプソディ」へ。加納さんの充実した音楽活動の積み重ねを伝えてくれるような充実した内容。ダニイル・グリシンさん,鶴見彩さんとともに聴きごたえのある演奏を楽しませてました。秘密兵器ルポフォンも初めて聴きました。結構重そうでしたね。

本日はオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のオーボエ奏者,加納律子さんのオーボエ・リサイタルを金沢市アートホールで聴いてきました。この公演は,コロナ禍の影響で順延になっていたもので,加納さんのリサイタルとしては2回目。「ラプソディ」というサブタイトルがついていました。

「オーボエ・リサイタル」という名称でしたが,前半・後半とも,OEKの客演首席ヴィオラ奏者のダニイル・グリシンさんが演奏する曲があったり,この日のピアノ担当だった鶴見彩さんによる独奏曲が入っていたり,「加納律子と仲間たち」といった室内楽公演のような雰囲気もありました。そして,何より最後のヒンデミットの三重奏曲に登場した,ルポフォンという楽器(初めて見ました)が「目玉」となっていました。

この公演に行こうと思ったのは,加納さんのオーボエの音を間近でしっかり聴いてみたいという思いがあったからです。そして期待どおり,どの曲でも,バランスの良い暖かみのある,安定感抜群の音を楽しませてくれました。今回演奏された曲は,どれも複数楽章からなる15分程度ぐらいの曲ばかりだったのですが,グリシンさんや鶴見さんの力のこもった演奏との相乗効果もあり,大きなものに包み込まれるような,スケールの大きさを感じさせてくれるような演奏の連続でした。

まず,最初に演奏されたシューマンの3つのロマンスから見事な演奏でした。染み渡るようなオーボエが一気に浪漫の世界に導いてくれました。次のブリテンの世俗的変奏曲は初めて聴く曲でしたが,「ド#・レー」というモチーフが何かに取り憑かれたように何回も出てきて,最後の部分では鬼気迫るような空気が漂っていました。

前半最後のレフラーの2つのラプソディは,演奏会全体のタイトルが「ラプソディ」でしたので,全体の核となるような曲だったと思います。グリシンさんのヴィオラの深い音と合わせて,神秘的な世界に誘ってくれました。

後半最初のサン=サーンスのオーボエ・ソナタはこの日演奏された曲の中でいちばん気楽に聞ける作品でした。古典的な清澄さと自由でロマンティックな気分とが重なり,聞く方も,とても優しい気分にさせてくれました。

続いて,鶴見さんのピアノ独奏で,ブラームス最晩年の間奏曲が2曲演奏されました。ブラームスがクララために書いた作品ということで,最初に演奏された3つのロマンスとうまくバランスが取れているなと思いました。クララへの思いがストレートに伝わってくるような誠実な演奏だったと思います。

そして最後に,加納さんがオーボエからルポフォンに楽器を持ち替え,ヒンデミットの三重奏曲が演奏されました。ルポフォンという楽器は,オーボエよりも1オクターブ音域が低い楽器で,2009年に発表されたバス・オーボエとのことです。ヒンデミットのこの曲は本来,ヘッケルフォンとヴィオラとピアノのための三重奏だったのですが(それにしても,ヒンデミットは変な(?)組み合わせを思いついたものです),今回はヘッケルフォンの代わりにルポフォンで演奏されました。

楽器の感じとしては,サクソフォンのような感じでした。サックスよりは,かなり重そうな感じで,加納さんは両手を使って運搬していました。音の感じもサックスに似たところがあり,暖かで柔らかな感じでした。

ヒンデミットのこの曲は,ストラヴィンスキーやショスタコーヴィチの曲を思わせるような狂気をはらんだようなところがあったり,結構晦渋な感じもありましたが,加納さんのルポフォンに加え,グリシンさんと鶴見さんの演奏の迫力が素晴らしく,大変充実した音楽となっていました。特に曲の最後の部分は,何かフリー・ジャズを聴くような不穏な空気をまとった狂気があり凄いなと思いました。

この日は客席を1個おきにしていたこともありチケットは完売でした。演奏会の最後,アンコールに代えて,加納さんが金沢で演奏活動を行えることについて感謝の言葉を述べていましたが,お客さんの方からすると,そのまま加納さんへの感謝の言葉として返したいと思いました。加納さんの充実した音楽活動の積み重ねを伝えてくれるような充実した演奏会でした。

2022/05/26

今晩は冨田一樹オルガン・リサイタル@石川県立音楽堂へ。バッハの作品を中心とした,バランスの良いプログラム。特に「〇〇とフーガ」系の曲の多様性と面白さを楽しむことができました。

今晩は,石川県立音楽堂コンサートホールで行われた冨田一樹オルガン・リサイタルを聴いてきました。プログラムは,先週土曜日のOEK定期公演に続き,J.S.バッハ。「〇〇とフーガ」といったバッハのお得意の構成の曲4曲を中心に,コラールなどの小品を挟んだ,とてもバランスの良い選曲でした。

バッハの前にまず,ブクステフーデ,スウェーリンク,パッフェルベルのオルガン曲が3曲演奏されました。この中では,最初に演奏されたブクステフーデの前奏曲が大変インパクトがありました。大オルガンをイメージして作った曲で,バッハにつながる重厚な壮麗さがあるなと思いました。

バッハの「〇〇とフーガ」系の曲は,構成的には似た感じなのですが,それぞれ冒頭部分の「つかみ」の部分の音色や音の動きが個性的で,その違いを聞くのが面白いなと思いました。後半最初に演奏された,前奏曲とフーガハ長調は,冒頭のジグザグした感じと,フーガの部分のとても大らかで真っすぐな感じの対比が面白く,王道を進むような立派さを感じました。演奏会の最後に演奏された,トッカータとフーガ ニ短調(ドリア旋法)のスケール感も素晴らしかったですね。演奏会全体を締めるのに相応しい壮大さに包まれました。

オルガンの曲については,最後の音を長く伸ばすのがパターンで,それが聴きどころでもあるのですが,冨田さんは,重厚感のあるフーガを含む曲の間に演奏された,小品については,それほど音をのばさず,すっきりと終わっている感じでした。足鍵盤を使わない可愛らしい雰囲気の曲や素朴な味を持った曲があったり,プログラム全体にメリハリがついていまるのが良いなと思いました。「G線上のアリア」として知られる,管弦楽組曲第3番のエアをオルガン独奏で聴くのは初めてでしたが,オリジナルの雰囲気がそのまま再現されており,オルガンの表現力の豊かさを実感しました。「永遠に続いて欲しい」と思わせる平和な音楽でした。

冨田さんは,1曲目の前と最後の曲の後にトークを入れていましたが,その簡潔で親しみやすい解説もとても良かったと思いました。冨田さんが石川県立音楽堂に登場するのは今回が3回目でしたが,今回の公演で,しっかり固定ファンをつかんだのでは,と思いました。バッハのオルガン作品は,まだまだ沢山ありますので,是非,4回目の公演を楽しみにしています。

2022/05/21

#アンジェラ・ヒューイット さんのオーラがホール内に溢れる弾き振りで,バッハの協奏曲5曲が演奏された #oekjp 定期公演。素晴らしかったです。ピアノと弦楽器の音の溶け合いが素晴らしく,2年越しの待望の演奏を楽しむことができました。

本日午後は,アンジェラ・ヒューイットさんのピアノ弾き振りによる,OEK定期公演マイスターシリーズを石川県立音楽堂コンサートホールで聴いてきました。この公演は,2年前の5月に予定されていたのですが,コロナ禍の影響で中止。今回,仕切り直しで開催された念願の公演でした。

プログラムはヒューイットさんが得意とするバッハのピアノ協奏曲を5曲。OEKの定期公演で,協奏曲ばかり5曲というプログラムは大変珍しいことです(バッハのブランデンブルク協奏曲6曲というのが一度ありましたね)。もう一つ,バッハの協奏曲をピアノで演奏するのも,近年珍しいと思います。私自身,これらの曲のうちのいくつかは,チェンバロ協奏曲として聴いたことはありましたが,ピアノで聴くのは今回初めてだと思います。

OEKの編成は,全曲弦楽セクションのみ。ヒューイットさんは,ステージ中央に斜めにピアノを置き,要所要所でコンサートマスターのヤングさんなど,各パートに合図を出しながらの弾き振りでした。

演奏された協奏曲は,前半が3番,5番,7番,後半が2番,1番でした。ヒューイットさんのピアノには,バリバリと技巧を聴かせるような派手なパフォーマンスはないのですが,赤いドレスでステージに登場した瞬間から,ステージがパッと明るくなるようなオーラがあり,その安定感と暖かさのあるピアノに,すべてのお客さんが魅了されていたのではと思いました。

何よりヤングさんを中心としたOEKメンバーの音としっかりバランスを取りながら生き生きとしたアンサンブルを楽しませてくれたのが良かったですね。ピアノと弦楽器の音が融合した時の,軽すぎず,重すぎずの心地良い暖かさを持ったサウンドが素晴らしいと思いました。

5曲の中では,後半最後に演奏された1番が曲の構成的にも,いちばんガッチリとした聴きごたえがありました。ピリッとした切れ味の良い音,くっきりとした歌が続く第2楽章,疾走感のある第3楽章と,次のモーツァルトの時代などにつながるような,協奏曲らしい協奏曲となっていました。

それ以外の曲もすべて,急ー緩ー急の構成で,2楽章だけがアダージョになったり,ラルゴになったり,シチリアーノになったり...とバリエーションがありました。元々は他の楽器のための協奏曲をクラヴィーア用に編曲したものばかりで,第3番と第7番はそれぞれ,ヴァイオリン協奏曲第2番と1番が原曲です。ヴァイオリン版は実演で何回か聴いたことがありますが,やはり,ヒューイットさんの演奏の作り出す音楽が何とも言えず優雅で,ヴァイオリンで聴く時とは一味違った,たっぷりした質感が良いなと思いました。

ヒューイットさんは全曲の演奏が終わった後,大きく手を広げたまま,しばらくストップモーションになっていましたが,そのポーズにぴったりの高貴な雰囲気が曲の後にスッと残るような心地よさがありました。

第5番の第2楽章「ラルゴ」は,特に有名な曲です。スイングルシンガーズというヴォーカルグループがこの楽章を歌ったもので馴染んでいたので,実は「ダバダー」という声が頭の中で鳴ってしまっていたのですが,シンプルで静謐な美しさのある原曲の味わいも絶品だと思いました。チェンバロで聴くよりも,少しロマンティックな香りが香る感じだったかもしれません。

というわけで,「2年間待っていた」待望の公演をしっかりと楽しむことができました。今回の共演をきっかけに,ヒューイットさんには是非,金沢にもう一度来ていただきたいですね。

2022/05/17

今晩は1週間前に続いて,アビゲイル・ヤング・アンド・フレンズ第2夜@金沢市アートホールへ。ブラームスの五重奏曲2曲を中心に,弦楽四重奏プラス・ワンの音の厚みと楽しさを実感できる選曲。ヤングさんを中心とした熱いアンサンブルで会場もヒートアップ。遠藤文江さんの表情豊かなクラリネットも素晴らしかったですね。

今晩は,1週間前に続いて,アビゲイル・ヤング・アンド・フレンズと題した室内楽公演の第2夜を金沢市アートホールで聴いてきました。出演者は,OEKのコンサートマスター,アビゲイル・ヤングさん,首席第2ヴァイオリンの江原千絵さん,ヴィオラ客演首席奏者のダニイル・グリシンさん,チェロ奏者のソンジュン・キムさん,クラリネット奏者の遠藤文江さん。そして,客演のヴィオラ奏者の般若佳子さんの6人でした。

本日もブラームスの室内楽が中心でしたが,その前にシェーンベルクの若い時の室内楽曲が1曲入っていたのがヤングさんらしいところかもしれません。後年の無調音楽時代とは一味違った,ブラームスの音楽につながるような,ちょっとゴツゴツした感じの音楽がイントロダクションとして演奏されました。

その後は,クラリネット五重奏曲と弦楽五重奏曲第2番という五重奏曲2曲が演奏されました。先週は六重奏曲第1番が演奏されましたが,改めて,ブラームスの「やや大きめ」の室内楽作品の魅力を実感できました。それぞれ,弦楽四重奏プラス・ワンという編成でしたが,1つ加わることで音の厚みが増し,演奏の楽しさや起伏の大きさも増幅されている感じでした。

ブラームスのクラリネット五重奏曲を実演で聴くのは久しぶりのことです。ブラームスが作曲活動から引退していた時期(といってもまだ50代ですが)の作品ということで,全体的に物悲しい気分が溢れているのですが,遠藤さんのクラリネットの表現は大変多彩かつ力があり,ぐっと心に迫ってくるような瞬間が沢山ありました。この曲は結構暗いイメージを持っていたので,CDなどではあまり聞いてこなかったのですが,本日の演奏を聴いて,聞きどころに溢れた名曲だなぁと認識を新たにしました。

後半に演奏された,弦楽五重奏曲第2番はCDも持っておらず,聴くのもほぼ初めての作品でしたが,プログラムの解説(ヤングさんによる解説。大変充実したに内容でした)に書かれていたとおり,交響曲を思わせる充実した気分があり,演奏会の最後を締めるのに相応しい熱さがありました。

まず第1楽章の最初の輝かしい響きが素晴らしかったですね。ブラームスは,この曲を自分の最後の作品にしようとしていたらしいのですが,そのことが実感できるような全力をつぎ込んだようなエネルギーが溢れていました。中間の2つの楽章は哀愁の漂う穏やかさや懐かしさがあり,リラックスして聴くことができました。

最終楽章はどこかエキゾティックなハンガリー風のムード。楽章の最後はどんどんテンポを上げていくスリリングな演奏。ブラームス晩年の作品と思えない熱狂が素晴らしく,演奏会全体も大きく盛り上げてくれました。演奏後の拍手も大変盛大でした。アンコールでは,この熱狂をクールダウンするように,ブラームスの「子守歌」。すべてがピタリとはまった選曲でした。

アビゲイル・ヤングさんを中心とした2週連続の室内楽公演企画は,大成功だったと思います。ファンとしては続編を期待したいですね。シューマンやシューベルトでも同様の企画は実現可能だと思います。というわけで,是非,よろしく(?)お願いたします。

2022/05/15

第20回北陸新人登竜門コンサート 弦・管・打楽器部門はモーツァルト尽くし。#ユベール・スダーン さん指揮OEKによる充実の演奏の上で,2人の若い奏者による初夏の気分に相応しいクラリネットとフルートを楽しむことができました。#藤田菜月 #安嶋美裕

本日は,20回目となる北陸新人登竜門コンサートを石川県立音楽堂コンサートホールで聴いてきました。今年は,弦・管・打楽器部門でしたが,OEKと共演したのは,クラリネットの藤田菜月さんとフルートの安嶋美裕さんのお2人。しかも2人ともモーツァルトの協奏曲を演奏。恐らく,それとコーディネートしたのだと思いますが,OEKが単独で演奏した曲もモーツァルトの曲ばかり。今回の指揮者は,古典派音楽をプログラムの中心としているユベール・スダーンさんでしたので,定期公演を思わせるようなオールモーツァルト・プログラムとなりました。

藤田さんが演奏した曲はクラリネット協奏曲,安嶋さんが演奏した曲はフルート協奏曲第2番という,どちらも有名な作品。連休が終わった初夏の日曜の午後に聴くにはぴったりの両曲でした。ユベール・スダーンさん指揮OEKによる万全の演奏の上で,それぞれ気持ちの良いソロを聴かせてくれました。

藤田さんの演奏は,スムーズなテンポ感で演奏されていました。時々デリケートで柔らかい雰囲気で演奏される弱音が美しいなと思いました。明るさの中に淡い悲しみを滲ませたような部分も良いなと思いました。

安嶋さんの演奏は,曲の性格にもよると思いますが,より外向的な演奏で,勢いのあるOEKの演奏にぴったりマッチした活気のある演奏を聴かせてくれました。第1楽章のカデンツァでは,一瞬,「フィガロの結婚」のフレーズが出てくるなど,生き生きとした雰囲気のある演奏でした。

そして,今回の公演で良かったのは,最初と最後に演奏されたスダーンさん指揮OEKによる交響曲2曲でした。交響曲第1番は全体の序曲のよう,最後に演奏された31番「パリ」は,楽器編成がフル編成になり全体を締める華やかさがありました。

# 「パリ」の第2楽章は2つの版があるとプログラムの解説に書いてありましたが,本日演奏されたのは,3拍子版(多分)でした。この版で聴くのは初めてかもしれません。

両曲とも,アーティキュレーションや強弱の変化が明快な,インテンポによる自信に溢れた演奏。瑞々しさと堂々とした安定感があり,短めの曲でしたが両曲とも聴きごたえ十分でした。今回は,図らずもモーツァルト尽くしになったのだと思いますが,連休中の楽都音楽祭での大活躍に続き,さすがスダーンさんという演奏を楽しむことができました。

2022/05/10

今晩は ,アビゲイル・ヤング・アンド・フレンズ第1夜@金沢市アートホールへ。OEKファンとしては,「こういう公演を聴きたかった」という,#oekjp のコンサートマスターのヤングさんを中心とした色々な編成によるブラームスの室内楽尽くしの公演。1週間後の第2夜も聞き逃せません。

今年のガル祭が終わってまだ1週間も経っていないのですが,OEKのコンサートマスター,アビゲイル・ヤングさんを中心とした「アビゲイル・ヤング・アンド・フレンズ」という大変魅力的な室内楽公演が行われたので聴きに行ってきました。この公演は2週連続で金沢市アートホールで行われ,本日は第1夜でした。

プログラムは2回ともブラームスの室内楽がテーマです。出演は,ヤングさんの仲間たちということで,本日はOEKメンバーを中心に次のような方々か登場しました。江原千絵(ヴァイオリン),ダニイル・グリシン,般若佳子(ヴィオラ),ルドヴィート・カンタ,ソンジュン・キム(チェロ),藤田めぐみ(ピアノ)。全部で7人登場しましたが,全員が登場する曲はなく,色々な組み合わせの室内楽が演奏されるという趣向でした。

演奏されたのは,ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第2番,ヴィオラ,チェロとピアノのための三重奏曲イ短調, op.114,弦楽六重奏曲第1番の3曲でした。ブラームスの室内楽というと,「渋い」「秋のイメージ」という先入観を持ってしまうのですが,小ホールで聴く演奏は迫力満点。どの曲も新鮮で切れば血が出るような熱い演奏を楽しませてくれました。

何よりヤングさんのヴァイオリンが素晴らしかったですね。まず,1曲目のソナタ第2番で,たくましく安定感抜群の音を楽しむことができました。そして,美しい歌に溢れたこの曲の魅力を存分に楽しませてくれました。ヤングさんと学生時代からの知人でもある,藤田めぐみさんの柔らかく包容力のあるピアノも大変魅力的でした。

2曲目の三重奏は,元々はクラリネット,チェロ,ピアノのための曲なのですが,ヴィオラで演奏しても良いという曲です。この曲ではヴィオラのダニイル・グリシンさんとチェロのソンジュン・キムさんの多彩な表現力が素晴らしかったですね。ヴィオラとチェロのための二重ソナタといった感じがあり,この二人の音が作り出す音のテクスチュアを楽しむことができました。特にグリシンさんの音の幅の広さに改めて感動しました。いちばん地味な曲かなと思っていたのですが,大変スリリングな演奏となっていました。

後半は弦楽六重奏曲第1番。ブラームスが若い時に作った曲で,編成が大きい分,他の2曲よりも,曲に込められた感情の幅が特に大きいと思いました。ロマンティックな気分が溢れるカンタさんのチェロで始まった後,第1楽章は,今年のガル祭のテーマ同様,「ロマンのしらべ」に包まれました。第2楽章は特に有名な楽章ですがが,一転して大変力強い演奏でした。もがき苦しむような切ない曲,という印象を持っていた楽章でしたが,本日の演奏は,かなり速いテンポで荒々しいほどの力強さ。それが大変新鮮に響いていました。

第3楽章スケルツォは途中から,限界に挑むような猛スピードにテンポアップ。ヤングさんと仲間たちが,真剣に楽しんでいるような鮮やかな演奏でした。第4楽章は色々なメロディが次々と出てくる多彩な雰囲気。最後の喜びにあふれた雰囲気も良かったですね。

というわけで,OEKファンとしては,「こういう公演を聴きたかった」という内容の公演だったと思います。1週間後の第2夜はクラリネットも加わり,また別のブラームスの世界が楽しめそうです。

2022/05/03

#ガル祭 2022 本日の金沢は音楽祭日和といった感じの快晴。そして待望の本公演スタート。まずは #oekjp 弦楽メンバーによるシューベルトの弦楽四重奏曲「死と乙女」@金沢市アートホール。じっくりとした味わいのある第2楽章を中心に生で聴く室内楽の楽しさが伝わってくるような演奏。本日はゆったりとしたスケジュールで開始です。

本日の金沢は「音楽祭日和」といった感じの快晴。そして,いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭 2022は本日から本公演です。私の方は,今年は本公演3日目中心にチケットを購入していますので,本日は,とりあえず,音楽堂の2ホール,アートホールのそれぞれ1つずつ,合計3公演にとどめています(体力温存のためです)。

まずは10:30から金沢市アートホールで,OEK弦楽メンバー(松井直さん,上島淳子さん,丸山萌音揮さん,大澤明さん)によるシューベルトの弦楽四重奏曲「死と乙女」を聞いてきました。この曲を実演で聴くのは久しぶりですが,改めて良い曲だなぁと思いました。

特にじっくりとした味わいのある第2楽章が大変聴きごたえがありました。長年OEKメンバーとして一緒に演奏してるメンバーならではの,絶妙の空気感のようなものを感じることができました。CDなどで聴いていてもよく分からないのですが,小ホールでの公演だと,各楽器の音が和音となって組み合わさったり,線となって絡み合ったり,まさに有機的に変化していく感じがよく分かりました。

第2楽章以外は,切迫感のある雰囲気が中心ですが,あまり声高になることはなく,落ち着いた威厳のようなものを感じさせてくれました。演奏されたのはこの1曲でしたが,充実の40分(ぐらい)でした。

本日は一旦,昼食を食べるに自宅に戻った後,今度は石川県立音楽堂会場の方に行く予定。金沢市の場合,自転車の移動でもそれほど時間がかからないのが良い点です。本日は自宅とホールを行ったり来たりということで,健康的に過ごそうと思います。

2022/05/01

#ガル祭 2022 本日はエリア・プレイベントとして行われた #岡本潤 さんなど北陸ゆかりの若手奏者を中心としたシューベルト/ピアノ五重奏「ます」他を北國新聞赤羽ホールで鑑賞。アンサンブル楽しさが生き生きと伝わってくるような素晴らしい演奏でした #篠原悠那 #荒井結 #平野加奈 #中村翔太郎

#ガル祭 2022 本日5月1日は「吹奏楽の祭典」を金沢歌劇座で行っていたはずですが(悪天候のためしいのき緑地から変更になったはず),今年はこちらには行けず,石川県出身のコントラバス奏者岡本潤さんなど北陸縁の若手奏者を中心としたシューベルト/ピアノ五重奏「ます」他を北國新聞赤羽ホールで聴いてきました。この曲は,シューベルトの作品の中でも特に親しみやすい曲ですが,本日の5人の演奏からは,アンサンブルする楽しさが生き生きと伝わってくる感じでした。

本日の奏者の中で北陸新人登竜門コンサートに出演したことのある奏者は,コントラバスの岡本潤さん,ヴァイオリンの篠原悠那さん,チェロの荒井結さん,ピアノの平野加奈さんの4人。いずれもその時の演奏を聞いたことがあるので,私にとっては,その成長をしっかり確認することのできた公演となりました。ちなみにヴィオラの中村翔太郎さんだけは,石川県との関係はなく,岡本さん同様,NHK交響楽団に所蔵しているというつながりがあります。6年前,金沢蓄音器館で,岡本さんが出演する「ます」公演を聴いたことがあるのですが,その時もヴィオラとして中村さんが参加していましたので,「盟友」といった感じですね。

「ます」の演奏ですが,第1楽章から,岡本さんのコントラバスを中心にどっしりとした落ち着きがあると同時に,生き生きとした流れの良い音楽が続きました。平和な気分に包まれた第2楽章に浸っていると,しみじみと「仲間とアンサンブルできる」喜びが伝わってきました。第3楽章はキリっとしたテンポ。途中,コントラバスとチェロが強い音で「ダダダダ」を気合(?)入れる部分がありますが,この部分はいつ聞いても楽しいですね。

有名な第4楽章は静かな気分で始まった後,次々と各メンバーが活躍。特に平野さんのピアノの息もつかせぬパッセージがお見事でした(「ます」が無呼吸で泳いでいるといったイメージでしょうか)。変奏の最後の部分で,各楽器がちょっとタメを作るように演奏する部分があるのですが,この部分もとても楽しそうでした。第5楽章のちょっとエキゾティックな舞曲が延々と続く感じは,シューベルトならではですね。最後の部分は胸のすくような気持ちよい雰囲気で締めてくれました。

「ます」の前に,ヴァイオリン,ヴィオラ,コントラバスの三人で,ドホナーニの三重奏曲が演奏されました。こちらは全体に渋い雰囲気を持った作品でしたが,「ます」同様,5楽章構成で,変化に富んだ楽想をじっくりと楽しませてくれました。

ちなみにこの日の衣装の色は,「ます寿司」をテーマにしたとのこと。平野さんは見るからに「ます」でしたが,言われてみると,岡本さんと篠原さん方も,やや「ます」かなという感じ。中村さんは,「ごはん」役ということで白。荒井さんは黒っぽい色でしたが,こうなってくると,「緑」にしてもらって,「笹」役を担当してもらえれば,パーフェクトだったかもしれません。

今回のメンバーのうち何名かは,今後も音楽祭の本公演の方で色々登場されるとのこと。こちらも楽しみにしたいと思います。

2022/04/29

#ガル祭 2022オープニングコンサート。テーマ #ロマンのしらべ にあわせてロマン派作品が10曲以上並んだガラコンサート。昭和の香りもする親しみやすい公演でした。#田中祐子 #金子三勇士 #クリストフ・コンツ #小林沙羅 #コンスタンティン・インゲンパス #北野友里夏 #木村綾子 #高柳圭 #oekjp

本日午後は,石川県立音楽堂コンサートホールで行われた,いしかわ・金沢風と緑の楽都音楽祭2022のオープニングコンサートを聞いてきました。演奏は田中祐子さん指揮オーケストラ・アンサンブル金沢祝祭管弦楽団,ということでいつもより増強された編成による演奏でした。

内容は,今年のテーマ「ロマンのしらべ」に合わせて,ドイツ~オーストリア系のロマン派の作曲家の作品を10曲以上並べたるガラコンサートでした。公演時間は75分程度でしたので,一部の曲は省略されていましたが,ピアニストの金子三勇士さん,ヴァイオリンのクリストフ・コンツさん,ソプラノの小林沙羅さん,バリトンのコンスタンティン・インゲンパスさんが登場する華やかさ。さらには,北野友里夏さんによるバレエも加わっていましたので,今年の音楽祭全体を圧縮したような充実感がありました。

演奏された曲は,小中学校の音楽室の壁に貼ってあるような音楽家の作品が次々登場する感じでした。本日は「昭和の日」ですが,印象としては「ロマンの香り」に加え,「昭和の音楽室の香り」も漂うような名曲集だったと思います。

最初に演奏されたウェーバーの「舞踏への勧誘」と最後のリストのハンガリー狂詩曲第2番は,どちらも有名曲ですが,OEKが演奏する機会は非常に少ないと思います。久しぶりにLPレコードを取り出して聞いたような懐かしさを感じました。リストの方は最後の音のタイミングが少々ずれてしまいましたが,その辺もご愛敬という感じでした。

ブラームスの「大学祝典序曲」は,50代以上の人には,ラジオ講座のテーマ曲としてお馴染み(私も該当しますが...番組の方は聞いていなかったですね)。ファゴットで演奏されるテーマを聞くと,やはり昭和の香りがする感じです。ただし,曲の最初の部分が省略されていたのは残念でした。OEKが演奏する機会は非常に珍しい曲なので(もしかしたら初めて?),どうせなら全曲聴きたかったですね。

登場したソリストたちの演奏もそれぞれ楽しめました。過去,何回もOEKと共演をしている小林沙羅さんによるメンデルスゾーンの「歌の翼」はゆったりとした暖かみのある歌唱。シューベルトの「ます」は,クラリネットの伴奏が楽し気な雰囲気を作る中,最後の方,少しドラマティックな気分に盛り上がる感じが良かったですね。

コンスタンティン・インゲンパスさんの歌を聞くのは初めてでしたが,とても品の良い美しさがあり,ドイツ・リートにぴったりだと思いました。歌った曲は,シューベルトの菩提樹と魔王。岩城さん指揮OEKとヘルマン・プライさんが共演した懐かしのアレンジでしたが,瑞々しい気分があり,「風と緑の5月」に聴くのにぴったりでした(シューマンの「詩人の恋」にもぴったりかも)。

ヴァイオリンのクリストフ・コンツさんは,弾き振りでクライスラーの「美しいロスマリン」を演奏。キリっとした表情とリラックスしたムードが合わさった美しい演奏。本日のコンツさんの出番は,この2分程度だけという贅沢さでした。本公演に向けての絶好のPRになりました。

金子三勇士さんの方も,シューマンの「トロイメライ」だけの出演。最後,ゆったりと眠りに入っていくような深さを感じさせる演奏でした。5月3日のOEKとの共演の方も大変楽しみです。

北野友里夏さんが躍ったのは,ショパンの「レ・シルフィード」の中の前奏曲。これもまた昭和の時代からお馴染みの「太田胃散」のCMでお馴染みのあの曲です(ちなみに,胃腸調ならぬイ長調です)。しっとりとしていながら軽やかな,風の精そのものの踊りを観て,正真正銘ロマンの世界だなぁ,感じ入りました。

その他,ワーグナーとメンデルスゾーンの結婚行進曲の聴き比べもありました。ワーグナーの方はやはり,合唱がないと少し寂しいかもしれません。最後アンコールで,レハールの「メリーウィドウ・ワルツ」がインゲンパスさんと小林さんのデュオを交えて演奏されてお開きとなりました。この曲ですが,本来はテノール+もう少し重い声質のソプラノが歌う曲なので,この日の司会を務めていた,高柳圭さんと木村綾子さんに歌っても良かったのではと思いました。とてもスムーズでユーモアを交えての司会ぶりだったので,本職の歌の方も聞いてみたかったなと思いました。

音楽祭の方は既にプレイベントが色々と行われていますが,明日以降,本格的に石川県立音楽堂を中心に160もの公演が行われます。3年ぶりにほぼフルスペックで開催される音楽祭をのんびりと楽しんでみたいと思います。本日は雨でしたが,特に本公演の方は晴れて欲しいですね。

PS. 今年もオープニングコンサートに先立って,オープニング・セレモニーが行われましたが,その顔ぶれが1年前と大きく変わっていたのが新鮮でした。ラ・フォル・ジュルネ時代から10年以上,谷本石川県知事でしたが,今年は馳知事に。そして金沢市長も村山さんに交替。村山金沢市長は,フルート奏者として4月24日に行われた「市民オーケストラ」公演に出演者として登場済。さらには,これからもエリアイベントに登場とのこと。この展開は,選挙の時には予想できなかったことですが,「楽都金沢」にとっては良いことかもしれません。

PS2.本日,春の叙勲の発表があったのですが,実行委員長の池辺晋一郎さんが受章。この発表もオープニングセレモニーであり,馳知事から花束などを贈呈。さらにはウクライナから日本に避難している,タチアナ・ラヴロワさんと娘のヤナさんによるチェロの二重奏も演奏されました。というわけで,いつもにも増して,盛沢山なオープニング・セレモニーでした。ちなみに,ラヴロワさん母娘(遠くからだと姉妹のように見えました)は,セントラル愛知交響楽団に加わって演奏するとのことです。

2022/04/22

#田中祐子 指揮 OEK定期公演は,ミヨー,イベールのフランス音楽+藤倉大の作品。#上野耕平 さんの粋で艶っぽいサックスが協奏曲以外でも大活躍。エキストラの #藤原功次郎 さんのTbが炸裂したイベールの「パリ」を聞いて,この1週間の憂さ(?)が吹き飛んだ感じでした。

本日は,田中祐子さん指揮によるOEK定期公演を石川県立音楽堂で聞いてきました。田中さんは,ここ数年,OEKを何回も指揮されていますが,金沢で行われる定期公演に登場するのは今回が初めてです。本来は,丁度2年前の4月の定期公演に登場予定でしたが,コロナ禍で中止になってしまいましたので,今回はその「リベンジ」公演ということになります。

本日のプログラムは,ミヨー,イベールといった20世紀フランスの作曲家の作品と近年人気の藤倉大さんの作品を組み合わせたもので,田中さんの意欲がしっかりと前面に出た生き生きとした公演となりました。本日のもう一つの注目は,若手サクソフォン奏者,上野耕平さんとの共演でした。イベールの協奏曲に加え,藤倉さんの作品以外の2曲でも「OEKのメンバー」として演奏される大活躍でした。その美しく艶っぽい音色と粋な演奏ぶりを,演奏会全体を通じて堪能できました。

最初に演奏された,ミヨーの「世界の創造」は,1989年4月のOEKの記念すべき第1回定期公演でも演奏された作品です。定期公演で取り上げられるのは...もしかしたら,その時以来かもしれません。冒頭から上野さんのサックスの音を中心とした甘く蠱惑的な響きに包まれた後,ガーシュインのような雰囲気になったり,ストラヴィンスキーの「兵士の物語」のような雰囲気になったり,変化に富んだ,この曲でしか聞けないような響きを楽しむことができました(弦楽器の数が少なく,管楽器の方が多いというオーケストラとしては異色の編成)。田中さんの作り出す音楽には,何とも言えぬ密度の高さとクリアで生き生きとした鮮やかさとがありました。

続くイベールの「アルト・サクソフォンと11の楽器のための室内小協奏曲」も,各楽器1名程度の編成で,ミヨーの編成とかなり似ていました。絶妙のカップリングだと思いました。冒頭,どこか雑然とした感じで始まった後,上野さんのサックスが入ってくると,一瞬にして空気が颯爽とした感じに変貌。これが粋で格好良かったですね。軽快で若々しい雰囲気に溢れた演奏でした。

第2楽章はサクソフォンのモノローグで開始。上野さんの音は,どこを取っても美しいのですが,この部分では特にその魅力を味わうことができました。しつこくなり過ぎず,シュッとした感じなのに,しっかりとしたボリューム感と艶っぽさのある素晴らしい響きを楽しむことができました。最後の部分は,有無を言わさぬ鮮やかさで終了。チェロ以外,全員立ったまま演奏していたOEKメンバーの演奏も鮮やかで,タイトル通りの「室内楽的な気分のある協奏曲」をしっかりと楽しむことができました。

後半最初は藤倉大さんによる「UMI(海)」という作品でした。ここまで弦楽器の数が室内楽程度の数でしたので,ここで初めてオーケストラっぽい編成になりました。最近,藤倉さんのお名前を色々なところで聞くのですが,実はその作品を実演で聴くのは今回が初めてでした。第1楽章冒頭,弦楽器の静かな音がグリッサンドで動いていくような響きから,「初めて聞く音」の連続でした。寄せてくる波を思わせるように音が変化したり,チェレスタの上で色々な楽器が次々と音をつないでいったり,その多彩な響きに浸ること自体が面白い作品でした。第2楽章は,最後大きく盛り上がる感じで,心地よい世界に入っていく感じでした。ドビュッシーに交響詩「海」という名曲がありますが,それを21世紀的に表現したらこんな感じになるのかなと,思わせるような作品でした。

演奏会の最後は,イベールの交響組曲「パリ」でした。実演で聴くのは初めての曲でしたが,個性的な小品が6つならんだとても楽しい作品でした。定期公演の「トリ」を締めるには,やや雑然とした感じかなという気はしましたが,オーケストラの各楽器がソリスティックに活躍する部分も多く,日常の憂さばらしにはぴったりといった曲でした。

1曲目は,映画音楽「ジョーズ」を思わせるような列車の描写,5曲目は汽船の描写。クラリネットの音が本物の汽笛のようでした。どちらも乗り物好きには「たまらない」曲だったと思います。第3曲「パリのイスラム寺院」では,加納さんのオーボエを中心に,怪しいけれどもクールな雰囲気が漂っていました。

第2曲「郊外」「ブローニュの森のレストラン」では,トランペットやトロンボーンののびのびとした響きが爽快でした。第4曲ではここでも上野さんのサックスが活躍。スピード感のあるワルツが快適でした,そして,このところ頻繁にOEKの公演に加わっている藤原功次郎さんのトロンボーン!実はこの第4曲はアンコールでも演奏されたのですが,ソロパートでは立ち上がっての演奏。その,遊び心満載の大らかな演奏で,一気に主役になってしまいました。第6曲「祭の行列」はさらに上機嫌な作品。ここでも藤原さんのトロンボーンの伸びやかさが印象的でした。

というわけで,上野さんのサックス,藤原さんのトロンボーンなど気持ちよく響く管楽器の音を中心に,この1週間の嫌なことをすべて忘れさせてくれるような,金曜日の夜に聴くのにぴったりの演奏会でした。

2022/04/17

本日は #カムカウム ロスを埋めるため石川県立音楽堂で行われた #森山良子 さんと #渡辺俊幸 さん指揮 #oekjp の公演を聞いてきました。エネルギーとジャズのテイストの溢れる歌唱と平和への祈り,そしてカムカムでの激走の話題などの楽しいトーク。渡辺俊幸さん編曲のハリウッド風モーツァルトも最高でした

本日の午後は,石川県立音楽堂で行われた,森山良子さんと渡辺俊幸さん指揮のオーケストラ・アンサンブル金沢による,ファンタスティック・オーケストラコンサートを聞いてきました。森山さんといえば,4月8日に最終回を迎えたNHKの朝ドラ「カムカム・エヴリバディ」の終盤を大きく盛り上げた「アニー・ヒラカワ」役として感動的なシーンの数々に加わっていました。ので...本日は正直なところ,その「ロス」を埋めるために聴きにきました。そしてその「ロス」を”ほぼ”埋めてくれるようなパフォーマンスの数々を楽しませてくれました(”ほぼ”というのは,あの曲が歌われなかったからなのですが,これは今後の楽しみにしたいと思います)。

この日のプログラムは前半は,渡辺俊幸さんの作曲・編曲による,映画音楽やテレビドラマ音楽を集めたもので,渡辺さんの鮮やかな編曲の数々を楽しむことができました。途中,「もしもモーツァルトがハリウッドの映画音楽家だったら」という曲が演奏されたのですが,そのアレンジの職人技が素晴らしいと思いました。モーツァルトのジュピター交響曲の4楽章のテーマ(主役),クラリネット協奏曲の2楽章のテーマ(愛のテーマ),交響曲25番の冒頭のテーマ(敵役)という構想どおりの面白さでした。

後半は森山良子さんの歌を中心としたステージでした。約1時間,すべての曲を歌い,間にはトーク...ということで,まず,その体力が素晴らしいと思いました。トークの中で,「カムカム」の中で,何回も走らされたエピソードが紹介されていましたが,本日の公演を聞いて,そういう森山さんを見越しての設定だったのではと思わせるほどでした。

# カムカムの話題など,まだまだお話を伺いたかったですが,この辺は森山さんが担当しているラジオ番組「オールナイトニッポン」でも聞けそう。

まず最初に予定を変更して,オーケストラ演奏なし,森山さん自身のギターのみで「さとうきび畑」が歌われました。ロシア軍のウクライナ侵攻という状況に対して,平和を祈るメッセージが込められた,感動的な歌でした。

その後,森山さんの名刺代わりのように「この広い野原いっぱい」と「涙そうそう」の「人気曲(森山さんの曲の中でこの2曲+「ざわわ」がいつも上位に来るそうです)」が歌われた後,この日のテーマだった,映画の中の曲,さらにはオペラアリアまで歌われました。私が森山さんの声を聞くのは...15年ぶりぐらいなのですが,その時と変わらぬ,安心して聴ける声でした。特に高音がしっかりと出ているのが素晴らしいと思いました。

ヴェルディの「椿姫」の乾杯の歌は,本来は男性と女性が交互に歌う曲ですが,本日は森山さんが一人で担当。1回目はイタリア語,2回目は日本語で歌う感じで,「飲みごたえ満点」の歌を聞かせてくれました。その後に,飲み過ぎた「酔っぱらい」の歌が続くという楽しい構成。この曲はシュトラウスの「アンネンポルカ」に歌詞をつけたものですが,森山さんのキャラクターにぴったりだと思いました。

「私お気に入り」などでは,英語の発音が素晴らしいと思いました。私が書くまでもないことですが,「さすがアニーさんだ」と思いました。ジャズのテイストもしっかりと漂っていましたので,アンコールで,「On the sunny side of the street」を歌ってくれないかなとも思ったのですが,今回アンコールで歌われたのは,「聖者の行進」でした。サッチモつながりの楽曲かもしれませんが,これがまた驚きのパフォーマンスでした。OEKがすっかりビッグバンド化し,厚みのある音を聞かせた後,森山さんと楽器ソロとが掛け合いを続けるという趣向。森山さんが色々な楽器の声色で歌うあたりが素晴らしかったですね。大盛り上がりでコンサートは終了しました。

改めて「平和な世界」で音楽を楽しめることの喜びを感じさせてくれるような公演でした。唯一の心残りについては,是非,「森山良子ジャズを歌う」みたいな感じの続編でお願いしたいと思います。

2022/04/03

#藤田真央 モーツァルト ピアノ・ソナタ全曲演奏会第3回「華麗なる輝きを放ち」@北國新聞赤羽ホールを聞いてきました。全く気負ったところのない雰囲気から,自信にあふれた多彩な表現が自然に湧き出ていました。特に緩徐楽章の美しさは息を呑むほどでした。

本日は藤田真央さんによる,モーツァルト ピアノ・ソナタ全曲演奏会シリーズの第3回「華麗なる輝きを放ち」を北國新聞赤羽ホールで聴いてきました。第2回は残念ながら聴けませんでしたので,1年前の第1回以来,1年ぶりということになります。

今回は,ソナタ第2番,第12番というヘ長調の作品の間に,第6番,第11番という変奏曲形式を含むソナタ2曲と挟むという,よく考えられた選曲となっていました。藤田さんのスタイルは前回同様,ベースは全く力んだところのない自然体の音楽で,その中から多彩なフレージング,ダイナミックス,音と音の対話などが,くっきりと自在に浮かびかがってきました。気負いなく,自信にあふれた見事な演奏の連続でした。

第2番は第1楽章のクリアで明快な気分に続く,シチリアーノ風の第2楽章の美しさに息を飲みました。第6番は厚みのある気分でぐいぐい迫ってくる感じで開始。第3楽章は長大な変奏曲ですが,各フレーズが常に対話をしているようで,プログラムの中で藤田さんが書いていたとおり,物語を紡いでいくようでした。

後半は「トルコ行進曲」を含む,第11番。驚いたのは,全楽章ほぼアタッカで演奏していた点です。基本的に停滞しないテンポでしたので,全曲を一気に楽しませてくれる感じでした。変奏曲の繰り返しもしっかりと行っていたのも特徴的でしたが,2回目に出てくる時はニュアンスを変え,アドリブ的な音もかなり沢山入れていました。このセンスが素晴らしいと思いました。第1楽章は6つの変奏なのですが,それが12の変奏になったようが楽しさを感じました。トルコ行進曲は中庸のテンポで軽快な演奏。文字通り玉を転がすようなタッチの美しさが印象的でした。

最後に演奏された12番は,最初に演奏された第2番同様,ヘ長調の曲ということで,伸びやかな雰囲気で開始。ここでも第2楽章がせつなくなるような美しさでした。が,レガートとノンレガートを意識的に使い分けて演奏している感じでした。第3楽章の強烈なスピード感も素晴らしく,もしかしたら,グレン・グールドのモーツァルトを意識しているのかなという気もしました。ただし,エキセントリックな感じはせず,自然な音楽になっているのが,藤田さんらしさだと思いました。

アンコールでは,モーツァルトの曲に加え,ショパンの曲も2曲演奏されました。この辺は,モーツァルトだけで閉じて欲しい思いもありましたが...最後に演奏された,エチュードop.25-1のアルペジオの美しさに魅せられてしまいました。「エオリアンハープ」と呼ばれることもある曲ですが,まさにハープのような感じでした。

藤田さんのモーツァルトシリーズですが,今回で丁度半分。次回は10月22日に行われます。モーツァルトのピアノ・ソナタ全集のCD録音もこの頃に発売されるようなので,色々な意味で楽しみな公演になりそうです。

2022/03/25

OEKメンバーによる金澤弦楽四重奏団のデビュー公演&ベートーヴェンチクルス第1回目を金沢市アートホールで聴いてきました。今回は1,8,12番の3曲。これから一緒に全曲制覇したくなるような,緻密で真摯で聴きごたえたっぷりの演奏の連続。充実の時間を過ごしました。#oekjp

ようやく金沢にも春がやってきたかな,と思わせる3月末の金曜日の夜,金沢市アートホールで行われた,金澤弦楽四重奏団によるベートーヴェンの弦楽四重奏曲チクルスの第1回公演を聞いてきました。この金澤弦楽四重奏団という,素晴らしい名前のクワルテットは,青木恵音,若松みなみ(ヴァイオリン),古宮山由里(ヴィオラ),ソンジュン・キム(チェロ)という,金沢の音楽ファンにはおなじみの,OEKの弦楽器メンバー4人から構成されています。プログラムに書かれているプロフィールによると,2019年結成となっていますが,演奏会を行なうのは今回が初めてです。

「全16曲あるベートーヴェンの弦楽四重奏曲を演奏する目的で結成」と書かれているとおり,今回を皮切りに,全曲演奏に挑戦するようです。その記念すべき第1回公演で演奏されたのは,第1番,第8番「ラズモフスキー第2番」,第12番の3曲でした。私自身,ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の全曲を生で聴いたことはないのですが,今回の素晴らしい演奏を聴いて,「いっしょに全曲制覇したいな」という気持ちになりました。

まず,どの曲も,慌てることのないテンポでくっきりと演奏されていたのが演奏されていたのが素晴らしいと思いました。いつも室内オーケストラの中で一緒に演奏しているメンバーということで,その音のバランスもとても良いと思いました。弦楽四重奏というと第1ヴァイオリンが中心になることが多いのですが,青木さんの音は安定感抜群でしっかりとした音を聞かせながらも一人だけが目立つことはなく,4人が一体となったような練られたサウンドとパート間の緻密な音の受け渡しを楽しむことができました。金沢市アートホールで聴くと,しっかり内声部の音も楽しむことができるので,4人の「音の職人」がベートーヴェンの音楽に真摯に取り組んでいる様をしっかり感じ取ることができました。

今回演奏された3曲は,前期,中期,後期から1曲ずつ選ばれていましたが,それぞれ30分前後かかる「大曲」で,終演時間は9:15頃になりました。上述のとおりとてもじっくりと真正面から取り組んでいるような演奏ばかりでしたので,大変充実した時間を過ごすことができました。

第1番はいちばん古典的な作品でしたが,「ベートーヴェンは最初からすごい」と感じさせる緻密さがありました。第2楽章は「ロメオとジュリエット」の墓場の場面から構想を得たと解説に書かれていたとおり,ひんやりとした悲しみがじわじわ伝わってきました。音の動きが特徴的な第3楽章,軽く鮮やかな第4楽章と,非常に均整のとれた音楽を楽しむことができました。

第8番は「ラズモフスキー」と呼ばれる四重奏曲の第2番です。冒頭の鋭い和音2つを聴いて,まずビシッと気合を入れられました。第2楽章は平穏さの中に緻密な緊張感も漂う感じ。どこか思わせぶりの第3楽章の後,ガッチリとしたリズムの上で颯爽と第1ヴァイオリンが弾むような第4楽章。ベートーヴェンの「傑作の森」の曲らしいなぁと思いました。

第12番は,「変わった曲」揃いの後期の弦楽四重奏曲の中では,いちばんオーソドックスな曲かもしれません。第1楽章冒頭の和音には,広々とした空気感を感じさせる厚みがありました。静かで誠実な雰囲気のある第2楽章の後は生き生きとした第3楽章スケルツォ。第4楽章は,プログラムの解説に「田園」交響曲の終楽章を思わせる大合奏と書かれていたとおりの雰囲気(恐らく,メンバーの方が書かれたものだと思いますが,とても分かりやすい曲目解説でした)。曲の最後の方,一音一音をしっかりと演奏しながら,感情がじわじわと高まっていく感じが素晴らしいと思いました。「いい音楽をきいたなぁ」という終わり方でした。

というわけで,私もこのクワルテットの演奏を聞きながら,一緒にべートーヴェン制覇に挑戦したいとと思います。次回は12月25日クリスマスとのことです。

«川瀬賢太郎指揮 #oekjp 定期公演。深い感動を感じさせてくれた杉山洋一さんの新曲。20歳の亀井聖矢さんによる美しく完成されたショパン。そして清々しく思い切りの良いスコットランド。充実感溢れる公演でした

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