北陸初となる石田組ツアー2022/2023金沢公演@北國新聞赤羽ホール。前半のクラシック+後半の映画音楽+ロック音楽,どの曲からも石田組長とメンバーの真面目さと秘めた熱さが伝わってきて,存分に楽しめました。いつかOEKとの共演など実現して欲しいものです。
本日の午後は,神奈川フィルの首席ソロ・コンサートマスター,石田泰尚さんを中心とした弦楽アンサンブル,石田組の演奏会を北國新聞赤羽ホールで聴いてきました。石田さんについては,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のゲスト・コンサートマスターとして金沢に来られたことはありますが,「石田組」として北陸で演奏会を行うのは今回が初めてです。というわけで,単純に「テレビの音楽番組に出ている人たちを生で見られる」「一度は聴いておかねば」という軽い感じで聴きにいくことにしたのですが...その気合いの入った演奏に改めて感銘を受けました。
前半はモーツァルトとメンデルスゾーンという,オーソドックスなクラシック音楽。後半は,石田さんのソロによるピアソラの後,映画音楽や古典的なロック音楽を弦楽合奏で演奏するという構成でした。
まず前半の室内楽が良かったですねぇ。1曲目のモーツァルトのディヴェルティメントK.138は,石田組長抜きの弦楽四重奏編成。ただし組長のテイストを反映したように,ビシッと美しく聴かせてくれました。2曲目は,メンデルスゾーンの八重奏曲でした。チラシにはこの曲が掲載されていなかったので,大好きなこの曲がプログラムに載っているのを見て,「おっ」と思いました。
石田組については,公演のたびに編成が変わるそうですが,今回はヴァイオリン4,ヴィオラ2,チェロ2の8人。まさにこの曲にぴったりの編成でした。メンデルスゾーンが10代の頃に書いた,「天才の証拠」のような作品ですが,石田組に皆さんは,慌てず騒がず,充実感のある引き締まった音楽を聴かせてくれました。第4楽章の最初の部分は,チェロ,ヴィオラ,ヴァイオリンの順に1人ずつ速いパッセージを弾いて開始します。今回の配置だと音が左右に飛び交っていたので,「組内の派閥抗争か?」という感じでしたが,すぐに一体感とスピード感のある音楽へ。キリッとした格好良さのある音楽になっていました。
後半は石田さんの独奏によるピアソラのアディオス・ノニーノで開始。孤高のソロっという感じが格好良かったですね。じっくり聴かせる曲で,クラシック音楽として定着していっても良い曲では,と思いました。
その後,メンバー紹介や組員の決め方などについての楽しいトークが入った後,映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のテーマ。このアラン・シルヴェストリの音楽は,何回聴いても気分が高揚します。弦楽器によるキリキリとした輝くような感じにもぴったりでした。
映画「シンドラーのリスト」は,ヴァイオリン独奏曲の定番ですね。石田さんの真摯なソロをしっかり楽しめました。映画「荒野の七人」のテーマは,この映画のみならず西部劇全体のテーマ曲のような作品。ユニゾンが美しく,「石田組の八人」といった団結力を感じました。
最後はロック音楽の古典2曲。実は,個人的にこの分野がいちばん知識がない分野です。レッド・ツェッペリン「天国への階段」,ディープ・パープル「紫の炎」の両曲とも名前だけは聞いたことはありますが,よく知らない曲でした。ただし,今回聴いてみて,弦楽合奏で聴いても全く違和感がないと思いました。
「天国への階段」の方は,かなりメロディアスな曲で,ヨーロッパの民謡のような親しみやすさを感じました。最後の方,ヴィオラがうなるような感じになったり,音楽の熱気が増していく感じが良いなぁと思いました。
トリの「紫の炎」はテンションの高い急速な曲ということで,バルトークの曲に通じる感じがあると思いました。途中,急速な弦楽合奏になる部分などは,バロック音楽の「嵐」の表現に非常に似ていると思いました(多分,そういうアレンジなのだと重います)。先日,OEKの定期公演できいた,ピアソラ作曲(デシャトニコフ編曲)による「ブエノスアイレスの四季」の世界に通じるものもあると思いました。というわけで,この曲の室内オーケストラ版などがあれば聴いてみたいものだと思いました。
最後,アンコールに応え,まず,クライスラーの「美しいロスマリン」。これはネタバレになってしまいますが...
石田さん以外の3人のヴァイオリニストが順番にソロを取った後,最後のピツィカートのみ石田さんが演奏という,楽しい趣向でした。
アンコール2曲目は,フレディ・マーキュリーの「I was born to love you」。弦楽器によるキューンキューンという不思議な音が印象的なノリの良い演奏でした。そして3曲目は,全員お揃いの「組」のTシャツに着替えて「川の流れのように」。「会場のみなさまお疲れ様でしたという」メッセージが音になって伝わってくるような,ファンサービスのような演奏でした。
というわけで,石田組北陸初公演は大成功だったと思います。また,別のレパートリーで聴いてみたいですね。OEKファンとしては,石田組とOEKによる合同演奏などにも期待したいと思います。
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