OEKのCD

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2018/06/12

#川瀬賢太郎 指揮OEK小松定期の方は,珍しくチャイコフスキー:交響曲第5番がメイン。スコアが見えるような解像度の高さ!さすがOEKという演奏。#平野加奈 さんとのピアノ協奏曲第1番も大変鮮やか。帰宅途中,チャイ5の後のゴーゴーカレーで締め #oekjp

先週土曜日に,川瀬賢太郎さん指揮OEKによる,シューマンの「ライン」と武満徹の「系図」を中心とした素晴らしい定期公演を聞いたばかりでしたが,本日はOEKが単独で演奏する機会は非常に少ない,チャイコフスキーの大曲2曲を演奏する小松定期公演が行われたので,車で小松まで出かけて聞いて来ました。

OEK単独といっても,弦楽器の方は各パート2名ずつぐらい増員し,金管楽器も増強していましたので,この日のOEKは,合計60名ぐらいの編成になっていました。通常の1.5倍の人数ということで,OEK+といったところでしょうか。この編成によるチャイコフスキーですが,こまつ芸術劇場うらら大ホールの音響が,かなりデッドだったこともあり,各楽器の音が非常にクリアに聞こえてくるのが特徴でした。60名のオーケストラとなると,音がダイレクトに聞こえすぎて,少々疲れる部分もあったのですが,その分,OEKのアンサンブルのすばらしさを再認識することができました。

もちろん川瀬さんの音楽づくりの精緻さにもよると思いますが,各楽器の音の動きやニュアンスの変化が非常に鮮やかに分かり,スコアが見えるような演奏というのは,今回のような演奏なのではと思いました(想像で書いているのですが...)。交響曲第5番はもともと聞き所満載の作品ですが,その魅力が細部に渡るまで鮮やかに伝わってきました。

川瀬さんのテンポ設定は,土曜日の金沢での定期公演の時同様,あわてたようなところはありませんでした。時にはしっかりと間をとって,スケールの音楽を聞かせてくれました。そして,各楽章のクライマックスでは緊張感と高揚感を感じさせてくれました。その一方,全曲のクライマックスの第4楽章では,非常に流れの良い,推進力のある音楽を聞かせてくれました。コーダの部分での輝きと品格のある金管楽器の音も素晴らしいと思いました。

それにしても,今回の演奏では,色々な音が聞こえてきました。第1楽章の最後の部分のファゴットの音が非常に不気味に聞こえたり,第2楽章のホルン独奏のヴィブラートがクリアに聞こえたり,第4楽章主部に入ったところで,ホルンがタンギングのような感じで細かい音を吹く部分がとてもクリアに聞こたり,その後に続く,木管楽器の合奏で流れるようなメロディを演奏する部分がはっきり聞こえたり(最近,こういう部分が好きなのです)...どこをとっても臨場感たっぷりでした。

チャイコフスキーの交響曲第5番は何度聞いても楽しめる曲ですが,今回の演奏は,いつもとは違った部分に光を当ててくれたような,素晴らしい演奏だったと思います。

前半では,金沢出身のピアニスト,平野加奈さんとの共演でチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番が演奏されました。こちらも立派な演奏でした。平野さんがこの曲を演奏するのは,昨年末に金沢で行われた,ロシアの交響楽団との共演以来のことだと思いますが,この難曲に正攻法で取り組んだ,渾身の迫力が伝わってくるような演奏だったと思います。両手のオクターブで速い動きが続く部分などは,とても華やかでしたが,軽薄な感じになることはなく,曲全体としての立派さを感じさせてくれるような演奏だったと思います。

平野さんについては,石川県立音楽堂ができて間もない頃の,石川県新人登竜門コンサートに出演して以来(まだ中学生だったはずです),注目していたのですが,その後,次第に活躍の場を広げ,ついにはチャイコフスキーのピアノ協奏曲でOEKと再共演するようになりました。このことに感慨深さのようなものを感じています。こういう長いスパンに渡っての成長を見守ることができるのも,音楽を聞き続けることの喜びの一つだと思います。

というわけで,川瀬×OEKシリーズ第2弾も大変充実した内容でした。ツイッターの情報によると,川瀬さんは金沢カレーのゴーゴーカレーが大好きとのこと。これにちなんで,私も金沢に戻る途中,(すでに夜10時を過ぎていましたが)ゴーゴー・カレーを食べてしまいました。チャイ5の後に55ということで,妙に良い感じで元気が出ました。

2018/06/09

#川瀬賢太郎 指揮OEK定期公演 しっかり設計された見事な構成+熱気を持った「ライン」 #谷花音 さんのナレーション付きの #武満徹 #系図 は理想の名演では? ウルッと来ました #oekjp

9月からOEKの常任客演指揮者に就任する川瀬賢太郎さん指揮のOEK定期公演マイスターシリーズが行われたので聞いてきました。前回,川瀬さんがOEKを指揮した時は,現代曲中心のプログラムだったのですが(井上道義前音楽監督からのミッションだったとプレトークの中で紹介されていました),今回は,「いちばん好きなシューマンの「ライン」を持ってきた」とのことです。というわけで,9月の就任に向けての期待をさらに膨らませてくれるような演奏を聞かせてくれました。

その一方で,川瀬さんにとっては,「OEK=岩城さん時代から日本人現代作曲家を積極的に取り上げているオーケストラ」というイメージも持っており,その路線を踏まえて,前半は武満徹の後期の作品が2曲演奏されました。考えてみると,岩城宏之さんが亡くなられたのは,丁度6月の今頃でしたので,岩城さんに捧げる演奏にもなっていたと感じました。

最初に演奏された「波の盆」は,武満さんの曲の中でも特に美しい曲といわれている曲です。この曲はもともとはテレビドラマ用の音楽で,OEKもその主題歌(?)の部分をCD録音していますが,今回演奏されたのは,それよりはかなり長いもので,ドラマの色々な場面の音楽をつなげたような構成になっていました(プログラムに書かれていた演奏会用組曲版だったのかもしれません。この辺は,やや不明確でした)。

最初の一音から,「後期タケミツ・トーン」満載といった感じで,キラキラとした光としっとりとした音の流れとが,マイルドに解け合っていました。ゲストコンサートマスターの水谷晃さんを中心に,よく練られたサウンドを堪能できました。

続く,「系図」の方は,谷花音さんのナレーション付きで演奏されました。もともとはかなり大きな編成用の作品ということで,今回は,岩城さんがOEK用に編曲した「門外不出版」で演奏されました。プログラムにも,「ご遺族のご許可をいただき演奏」というコメントが付けられていました。

さてこの演奏ですが...谷花音さんのナレーションにすっかり参りました。武満さんも岩城さんも草葉の陰で涙を流しているのでは...と思わせるほど,パーフェクトな語りと雰囲気だったと思います。谷さんは,今14歳。水色のシンプルなワンピースで登場すると,何かそれだけで,「系図」の世界に空気が変わりました。

小柄な方だったので,もう少し幼く見えたのですが,コンサートホールのお客さんを前に,全く臆することなく,かといって,舞台慣れし過ぎている感じもなく,14歳の谷さんにできる最良の語りを聞かせてくれたと思いました。曖昧さがなくクリアで,どの言葉もはっっきりと耳に届きました。

谷さんは,子役として既に芸能界のキャリアを積んでいますので,プロの仕事として「少女役」を演じていたのだと思いますが,曲の雰囲気に本当にぴったりで,演じているか素のままなのか分からないような自然さがありました。

曲が始まり,最晩年の武満さんの音楽が聞こえてきただけで,胸に迫るものがありましたたが,「むかし,むかし」と谷さんのナレーションが始まると,これだけで,ウルッとなってしまいました。この曲を実演で聞くのは2回目ですが(1回目は岩城さん指揮OEK+吉行和子さんのナレーションによる,昔話風の味わいのある演奏),今回は全てに新鮮さを感じました。

最初,ホルンがくっきりと演奏するフレーズが,その後,フルートなどにたびたび出てくるのですが,こういった音楽が,「系図」の世界で描いている「家族崩壊」的な内容を優しく包み込んでいるんだな,と感じました,スチールドラムの演奏するモチーフも度々出てきましたが,こちらはちょっと不安げな気分を盛り上げているように思えました。

谷川俊太郎さんの詩には,「テレビではNG」的な言葉(漢字ドリルにもなっていますが...)が2カ所ほど出てくるので,個人的には,聞いていて少々恥ずかしい部分があるかなと思っていたのですが,谷さんのナレーションは,「表現読み」的なしつこさがなく,サラリとクリアしていました。

曲は「おじいちゃん」「おばあちゃん」「おとうさん」「おかあさん」と続きますが,何と言っても「おかあさん」の部分が泣かせます。最近,何とも言いようのない幼児虐待のニュースがありました。どうしてもそういうものと重ねてしまいたくなります。この部分の音楽と詩を聞きながら,子どもの言葉の純粋さ(または,純粋さの残っている子どもの言葉)の根源的な強さのようなものを感じました。

そして,最後の「とおく」。この部分で初めて,海の匂いを感じさせるようなアコーディオンの音がしっかりと登場します。何となく武満さんの音楽のルーツのように思える部分です。この透明感のある響きで,すべてが昇華されたように感じさせてくれます。

今回の演奏は,もしかしたら「2018年の今」でないと実現できない演奏だったのかもしれません。是非,谷さんには,将来いつかこの日の演奏会のことなどを思い出して欲しいものです。

後半演奏されたシューマンの「ライン」は,上述のとおり,川瀬さんの大好きな曲ということで,万全の演奏だったと思います。川瀬さんは「若手指揮者」だと思いますが,曲全体の設計をしっかりと構築した上で,エネルギーを要所要所で発散させるような老練さのようなものも感じました。お見事という演奏だったと思います。

第1楽章は,ゆったりとふんわりとした雰囲気で始まりました。強いアタックで始まるかなと予想していたので,「おっ」と思いましたが,何ともスケールの大きなラインの流れが始まりでした。その一方,力強く引き締めるような部分もあり,弛緩した感じはしませんでした。

その後の楽章も慌てすぎることなく,ラインの風景を楽しむような余裕のある,ニュアンス豊かな音楽が続きました。

第4楽章の「ケルンの大聖堂」の部分では,冒頭のトロンボーンを中心とした響きをはじめ,渋さと壮麗さの同居した音楽を楽しむことができました。先週,音楽堂のパイプオルガンの演奏を聞いたばかりだったので,この楽章をパイプオルガンで演奏しても面白いかもと想像しながら聞いてしまいました。各声部に次々とメロディが受け渡されていくような立体感を感じました。

最終楽章もじっくりとした雰囲気で始まりましたが,最後の部分でしっかりエネルギーを解放していました。川瀬さんは,広上淳一さんのお弟子さんということになりますが,今回の指揮振りをみて,しっかりとエネルギーをため込んだあと,ここぞというとき強く発散させる辺りに共通する部分があるのではと思いました。また音楽全体に漂う「格好良さ」は,井上道義さんに通じる部分があるなと思いました。

というわけで,川瀬さんへの期待がますます高まった公演でした。川瀬さんは,6月12日に小松市でチャイコフスキーの交響曲第5番なども指揮されますが(OEKが単独で演奏するのは大変珍しい曲です),是非,こちらも聞きに行ってみようと思います。

2018/05/31

#富田一樹 オルガン・リサイタル #石川県立音楽堂 のパイプオルガンをしっかりと鳴らした王道を行くようなバッハ演奏。プログラム全体として,統一感と多彩さを同時に楽しむことができました

富田一樹さんのオルガン・リサイタルが,石川県立音楽堂コンサートホールで行われたので聞いてきました。富田さんは,2016年のライプツィヒ・バッハ国際コンクールで優勝した方ということで,今回のプログラムも「ほとんどバッハ」というプログラムでした。

プログラムの構成としては,「前奏曲とフーガ」「トッカータ,アダージョとフーガ」「パッサカリア」などの重量感のある曲の間に,コラールなどの穏やかな感じの曲を配する絶妙の配置になっていました。前半後半とも,いかにもオルガン曲らしい,輝きと重厚さと力強さを持った曲の間に,1曲ごとに音色が変化する,柔らかな雰囲気を持った曲が挟まれていました。「トッカータとフーガ」「小フーガ」といった,超名曲が入っていなかったのも良かったと思います。プログラム全体として,統一感と多彩さを同時に伝えてくれました。

演奏された曲の中では,前半の最後に演奏された「トッカータ,アダージョとフーガ」と,後半の最後に演奏された「パッサカリア」が特に強く印象に残りました。

「トッカータ...」は3楽章からなるイタリア風の協奏曲の形式の曲でした。トッカータでのペダルだけによる迫力の演奏の後の,気力が充実した勢いのある音楽。アダージョの部分での少し甘さを持った静かな雰囲気。フーガの部分の輝かしさなど,変化に富んだ音楽を楽しむことができました。

「パッサカリア」の方は,この日演奏された曲の中でいちばん重量感のある曲で,荘厳な美しさ,日常とは別世界のような巨大な建築物に入ったような雰囲気を味わうことができました。いちばん最後の音はとても長く伸ばしており,演奏会全体を締めてくれました。

バッハ以外のブクステフーデ,パッヘルベル,シェイデマンの曲も,それぞれに特徴的で,演奏会全体の中でアクセントになっていると思いました。

これまであまり馴染んでこなかった,オルガンによるコラールも味わい深いと思いました。日常的には,寝る前などに聞いてみると,敬虔な気分で熟睡できそうな感じがしました。

石川県立音楽堂コンサートホールでのパイプオルガンだけでのリサイタルというのは,久しぶりの気がします。今回,富田一樹さんによる,王道を行くようなバッハ演奏を聞いて,年数回は,こういう演奏会に来て,気分を引き締めるのも良いかなと思いました。

2018/05/26

OEKオーボエ奏者 #加納律子 さんの初リサイタル。バロック音楽って良いものですねー。加納さんの金沢での20年が凝縮された,素晴らしい公演でした。#oekjp

オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のオーボエ奏者,加納律子さんのリサイタルが金沢市アートホールで行われたので聴いて来ました。加納さんは,OEKに入団して20年とのことです(早いものです)。今回は,それを記念しての初リサイタルということになります。

初リサイタルというのは意外だったのですが,その分,加納さんが演奏したいと思っているバロック音楽を集めてのプログラムとなりました。OEKファンとしては聞き逃せきません。今回配布されたプログラムの解説(とても分かりやすく,充実した内容でした)に書かれていたとおり,バロック音楽は,もともとバロック時代のオーボエを想定して書かれています。現代のオーボエは高性能であると同時に,演奏するのに非常にエネルギーが必要ということで,現代の楽器でバロック音楽を演奏することは,見た目以上に重労働のようです。

しかし,今回の加納さんの演奏は,そういう「大変さ」を感じさせることはなく,通奏低音のメンバーやOEKのフルート奏者の松木さやさんと共に,晴れやかで鮮やかなバロック音楽の世界を楽しませてくれました。

今回演奏された曲は,ヘンデルのオーボエ・ソナタ第3番へ長調,ヴィヴァルディのオーボエ・ソナタ ハ短調,C.P.E.バッハのトリオソナタ ニ長調,Wq.151,クープランのコンセール(新コンセール)第6番,J.S.バッハのオーボエ・ソナタ ト短調,BWV.1030bということで,一般的には知られていない曲ばかりでしたが,小ホールで聴くオーボエを中心とした室内楽は大変聴き応えがあり,存分に楽しむことができました。加納さんのオーボエの音は,OEKの中で聴いている時同様,真っ直ぐで,力のある気持ちの良い音でした。

最初のヘンデルのソナタは,メヌエットで終わる変わった構成の曲でしたが,上品な華やかさのある世界を楽しませてくれました。

ヴィヴァルディの曲は,全体にほの暗い歌に溢れていると同時に,技巧的な作品でした。最終楽章など,息継ぎをしているのかな?というぐらい吹きっぱなしでしたが,加納さんの演奏は余裕たっぷりでした。今回の通奏低音は,チェンバロの辰巳美納子とチェロ(エンドピンのないチェロでした)の懸田貴嗣さんが担当していましたが,どの曲でも,その安心感のあるベースの上に,加納さんがしっかりとコントロールされながらも,迫力たっぷりの音を聴かせてくれました。

前半最後のC.P.E.バッハの曲は,古典派に一歩近づいているだけあって,今回演奏された曲の中で,いちばん聞きやすい作品でした。そして,この曲では松木さんのフルートもお見事でした。加納さんの「妹分」という感じで,ぴったりと息の合った,「極上のハモリ」を聴かせてくれました。演奏後の加納さんのトークで,「実は,今日が私とさやちゃんの誕生日」という秘密(?)が披露されましたが,相性の良さの理由はここに合ったか,と妙に納得してしまいました。

後半はクープランのコンセール第6番が演奏されました。プログラムの解説を読んで,第4曲「悪魔のエール」というのが気になったのですが...「どこが悪魔?」という感じでした。曲の方は,ヘンデル,ヴィヴァルディとまたひと味違った,軽やかな明るさのようなものがあり,フランス王宮の雰囲気(と想像しているだけですが)に浸ることができました。

そして,最後は「やっぱり締めはJ.S.バッハ」という感じで,チェンバロとの組み合わせでソナタが演奏されました。元々はフルート・ソナタで,こちらのバージョンでは聴いたことのある曲でしたが,「まさに名品」という感じの,充実感がありました。フルート版とはまた違ったつややかさがある一方,チェンバロの辰巳さんと一体となって,対位法的な音の絡み合いを楽しませてくれました。

今回,加納さんは,地元の作家・安井美星さんのデザインした,和風テイストのある美しいドレスで演奏しました。こういう取り組みも素晴らしいと思います。演奏後,加納さんは「金沢に来て20年」の感謝の言葉をお客さんに伝えていましたが,今日の会場には,加納さんを応援しようお客さんが大勢集まっていました。加納さんの真摯にオーボエを演奏する姿が,しっかりと金沢のお客さんにも受け止められているのだと思います。

加納さんにとっては,今回が初めてのリサイタルとのことでしたが,これを機会に第2回,第3回...と続けて欲しいと思います。この日はOEKメンバーの姿を客席で見かけましたが,OEKの木管楽器メンバー総出演の演奏会があっても面白そうだと思いました。

2018/05/17

#池辺晋一郎 が選ぶクラシック・ベスト100 第4回  #小林沙羅 さんの歌を加え,#田中祐子 指揮OEKを中心に,色々な編成でフランス音楽を多彩に楽しませてくれました。平日の夜にぴったりかも #oekjp

OEKのファンタスティック・オーケストラコンサートシリーズで定期的に行われている「池辺晋一郎が選ぶクラシック・ベスト100」の第4回目が行われたので,聞いてきました。

この「ベスト100」シリーズは,毎回テーマを決めて,池辺さんが選ぶ「聴き所たっぷりの20曲」を演奏するというものです。今回のテーマはフランス音楽でした。このシリーズについては,池辺さん自身が「(全曲を演奏しない曲もあるので)欲求不満コンサートです」と語っていたとおり,「少々中途半端かな?」と思い,これまでは聞きに行かなかったのですが,今回初めて聞きに行ってみて,むしろ「通常のコンサートにはない豪華さがある」と感じました。

OEKは室内オーケストラなので,大編成の曲を演奏するのは(予算的に?)難しいのですが,それを逆手に取るように,室内楽曲が出てきたり,ピアノ伴奏の歌曲が出てきたり,バロック音楽があったり近代の曲があったり...大変変化に富んだ編成になっていました。交響曲が少ないフランス音楽の世界にぴったりの選曲だったように思いました。

聞く前は,「どの曲も途中で終わるのだろう」と予想していたのですが,大半の曲はしっかりと全曲を演奏していたと思います。例えば,10分近く掛かる,ベルリオーズの「ローマの謝肉祭」序曲など,OEKが滅多に演奏しない曲もしっかり全曲を演奏してくれたのも嬉しかったですね。この曲は,私がクラシック音楽を聞き始めた最初期の小学校高学年の頃に聞いた思い出の曲です。田中祐子さん指揮のキビキビとした気持ちよい指揮で爽快に楽しませてくれました。

ちなみにこの曲の打楽器なのですが,タンバリンが2人居たように見えました。これが沸き立つ躍動感のスパイスになっているんだなぁと実演を見て気づきました。

ソリストとして登場した,ソプラノの小林沙羅さんは,金沢ではすっかりお馴染みの歌手です。私自身,密かに(別に隠す必要はありませんが)応援している歌手の一人ですが,今回,聞きに行ったのも「小林さん目当て」の部分がかなりありました。小林さんは,予想以上に出番が多く,嬉しくなりました。その瑞々しさと華やかさを兼ね備えた歌をしっかり楽しむことができました。

小林さんが歌った曲は,グノーの歌劇「ファウスト」の中の「宝石の歌」(これも一度実現で聞きたかった曲でした),グノーの歌劇「ロメオとジュリエット」の中の「私は夢に生きたい」。さらに松井晃子さんのピアノ伴奏でデュパルクの「旅への誘い」,アーンの「妙なる時」,フォーレの「夢のあとに」,サティの「ジュ・トゥ・ヴ」が歌われました。まさに,フランス名歌曲集といった趣きがあり,この部分を聞いただけでも来た甲斐があったと思いました。

アーンの「妙なる時」だけは,全く聞いたことのない曲だったのですが,池辺さん自身の思い出の作品&お薦めの作品とのことでした。その言葉どおりの愛すべき作品でした。こういった曲に巡り会えたのも大きな収穫でした。

オーケストラ演奏の合間に,室内楽曲がかなり沢山演奏されていたのも特徴でした。今回は,ゲストコンサートマスターとして松浦奈々さんが参加していましたが,松浦さんを中心としたメンバーで,フランクのヴァイオリン・ソナタの一部,ドビュッシー&ラヴェルの弦楽四重奏の一部などが変奏されました。室内楽曲については,あえて完結感を無くし,「途中で終わりましたよー」という感じで終わっていたのも面白かったですね。池辺さんのお話だと,「もっと聞きたいと思わせる作戦」とのことでした。

室内楽編成の曲では,OEKの管楽メンバー5人+田島睦子さんのピアノで演奏された,「クープランの墓」のリゴードンが素晴らしい演奏でした。フランスの有名な管楽アンサンブルに「レ・ヴァン・フランセ」というアンサンブルがありますが,それと同じ編成だと思います。OEKの室内楽シリーズでも聞いた記憶はありますが,この編成で,また色々な曲を聴いてみたいものだと思いました。

OEKの演奏した曲では,池辺さんが語っていたとおり,フルートとハープが大活躍する作品が印象的でした。列挙すると,ビゼー「アルルの女」組曲第2番のメヌエット,ドビュッシー「小組曲」の「小舟にて」,フォーレの「ペレアスとメリザンド」のシシリエンヌという具合で,フルート音楽のファンには堪えられない,フルート名曲集になっていました。OEKの松木さんの,プリマドンナを思わせる豊かさのある演奏もお見事でした。

最後はドリーブのバレエ音楽「コッペリア」の中のマズルカが力強く演奏されてお開きと成りました。

全部で20曲も演奏したのですが,落ち着きのない細切れ感がなく,むしろ,大変じっくりとフランス音楽を楽しむことができました。一曲ごとが短く,疲労感も少なかったので,平日の夜に楽しむのにもぴったりだったと思います。

このシリーズ,食わず嫌い(?)でこれまで参加してこなかったのですが,個人的にはどなたにもお薦めできる内容だったと思います。楽器編成がコロコロ代わるので,演奏者の椅子のセッティングの変更がものすごく多いなど,裏方の仕事は大変だったと思いますが(恐らく,楽譜を揃えるのも大変だし,リハーサルも大変だったのではないかと思います),その労力に見合うだけの,楽しくて聞き応えのあるコンサートになっていたと思います。あと1回ありますので(テーマは...忘れました),是非聞きに行ってみたいと思います。

2018/04/29

風と緑の楽都音楽祭2018開幕。#石川県立音楽堂 では #横山幸雄 #森麻季 などスターの揃ったオープニング・コンサート。#三戸大久 さんの素晴らしい声と #ヘンリク・シェーファー 指揮 OEKの新鮮な響きは春の雰囲気にぴったり  #ガル祭

今年で2回目となる,いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭が開幕しました。ラ・フォル・ジュルネ金沢の頃から,この日はほとんど毎年晴れていた印象があるのですが,今年も大変気持ちの良い,少々暑いぐらいの好天になりました。

今年は開幕ファンファーレには行かず,午後のオープニング・コンサートから参加しました。演奏会の前に,前田家の当主で音楽祭の実行委員長である利祐氏,谷本石川県知事,山野金沢市長のあいさつが入るのもすっかり恒例です。

オープニングコンサートは,NHK朝ドラ「花子とアン」に出演していた,サラ・マクドナルドさんが日本語で司会を担当しました。ヘンリク・シェーファーさん指揮のOEKに加え,ピアニストと歌手が複数登場していましたので,ガラコンサートのような構成となっていました。

個人的には,昨年のように,大曲を全部演奏するような構成の方が好きですが,音楽祭全体の「予告編」として考えれば,とてもバランスの良い内容になっていたと思います。今回の音楽祭の「最初から最後まで」OEKを指揮するのが,ヘンリク・シェーファーさんですプロフィールによると「クラウディオ・アバドの指名でベルリン・フィルのアシスタント・コンダクターを務めたことがある」と言うことで,確かにアバドに通じるものがあるかもと感じました。

最初に演奏されたモーツァルトの「劇場支配人」序曲をはじめとして,すっきりとした透明感をベースに,キビキビとした音楽を聞かせてくれました。古楽奏法という感じではなかったのですが,ティンパニのくっきりとしたアクセントなど,強弱の付け方がとても新鮮だと思いました。モーツァルトの交響曲第40番は,第1楽章のみの演奏でしたが,5月3日以降での本公演での演奏が大変楽しみになってきました。

続いて登場したのが,川下新乃さんという小学校4年生の女子でした。今回オーディションで選ばれた方で,モーツァルトのピアノと管弦楽のためのロンドを見事に演奏しました。優しく,しっかりと弾かれたピアノも素晴らしかったのですが,それを包み込むOEKの演奏にも愛情が溢れていました。

ちなみにこのロンドですが,ラ・フォル・ジュルネ金沢でモーツァルトを取り上げた際もオープニングコンサートで演奏されたことを思い出しました。「チャン チャン チャン 休み/チャン チャン チャン 休み/チャン チャン チャン チャン チャン チャン チャン 休み」とういうリズムで始まる曲ということで...見事に三三七拍子の曲です。

続いて「大人のピアニスト」,おなじみ横山幸雄さんが登場し(衣装は,いつもどおりのソムリエ風のチョッキでした),モーツァルトのピアノ協奏曲第20番の第2楽章と第3楽章が演奏されました。何よりも第2楽章の音が美しかったですねぇ。さりげないのに素晴らしく磨き上げたような音でした。第3楽章もお見事だったのですが,この楽章については,もう少し「ひっかかり」のようなものがあって欲しいかなと思いました。

その後は歌手たちが続々と登場しました。最初は,こちらもお馴染みのソプラノの森麻季さんが登場。アレルヤを歌いました。3楽章からなるモテット全曲ではなかったので,後から考えると,非常に出番は短かったのですが,いつもどおりの天から降ってくるような軽く柔らかな声を聞かせてくれました。

その後,もう一人のソプラノのマリア・サバスターノさんが登場し,ドン・ジョヴァンニの中の「あの人でなしは私を欺き」が歌われました。森さんとは対照的に,やや暗めの強い声の方で,このアリアの雰囲気にぴったりでした。

続いて,プログラムに書かれていない曲が「サプライズ」のような形で演奏されました。登場したのは,マリンバの神谷紘美さんと田嶋翠さんで,お二人の二重奏でトルコ行進曲が客席の中程で演奏されました。軽やかさと迫力を兼ね備えた,表現力の豊かな演奏を間近で楽しむことができました。

そしてそのままマリンバ2曲目に突入...と思わせつつ,「フィガロの結婚」の中の「もう飛ぶまいぞこの蝶々」にするっと切り替わり,客席から三戸大久さんが登場。客席からフィガロが登場というのは,キャラクターにぴったりかもしれません。

そして三戸さんの声が素晴らしかったですね。すべてを包み込むような暖かさと豊かさを持った,惚れ惚れとする声でした。

最後,三戸さんとサバスターノさんの二重唱で,ドン・ジョヴァンニの中の「お手をどうぞ」が歌われてプログラムは終了したのですが,やはり,この曲で締めるのも少々弱い部分がありましたので,やはりアンコールが演奏されました。

演奏されたのは...ヨハン/シュトラウスの「こうもり」の中の「シャンパンの歌」でした。ここまでモーツァルト尽くしで,最後だけ別の作曲家というのは「?」の面もありましたが,ガラ・コンサートの締めにはぴったりの曲でした。

本日の夜に行われる演奏会も「ベートーヴェンの第9の第4楽章」ということで,個人的には「?」なのですが,この辺の「細かいところは気にしない,コンセプトのアバウトさ」が,ガル祭の特徴と言えるのかもしれません。

というわけでこれから5月5日まで,今週いっぱいはモーツァルト漬けで過ごしたいと思います。

2018/04/14

#クリストフ・エッシェンバッハ 指揮 #トンヨン・フェスティバル・オーケストラ アジアツァー 最終日の金沢公演。スケールの大きく,新鮮さのある「新世界」 #ツィモン・バルト との共演による深すぎるガーシュイン 聞き応え十分でした

韓国のトンヨンを中心に,世界のトップアーティストが集うトンヨン国際音楽祭という音楽祭が毎年行われています。その音楽祭の中心を担うオーケストラとして結成されたのがトンヨン・フェスティバル・オーケストラです。このオーケストラのアジア・ツァーの最終日の公演が金沢の石川県立音楽堂コンサートホールで行われたので聴いてきました。指揮はクリストフ・エッシェンバッハでした。

このオーケストラは,2015年にもクリストフ・ポッペン指揮で金沢公演を行っているのですが,今回の注目は何と言っても,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のメンバーが大々的に参加していることです。その他,香港シンフォニエッタのメンバーも加わっています。今回のツァーでは,これらのオーケストラの出身国を巡る形で,韓国,香港,金沢で演奏会が行われました。

もう一つの注目は,現代を代表する巨匠指揮者と言ってもよい,エッシェンバッハさんがアジアの多国籍オーケストラとどういう音楽を作るのだろうか,という点です。エッシェンバッハさんは,昨年はNHK交響楽団に客演し,ブラームスの全交響曲やベートーヴェンの第九を指揮されましたが,本日演奏されたドヴォルザークの交響曲第9番「新世界から」もそれらに連なるような大変スケールの大きな演奏だったと思います。

「新世界」については,超人気の名曲過ぎて,奏者側からすると新鮮味が薄く感じられる可能性があります(OEKの場合は,室内オーケストラなので,滅多に演奏しませんが)。今回のトンヨン・フェスティバル・オーケストラの演奏は,一期一会的な音楽祭用のオーケストラということもあり,響きが大変新鮮だと思いました。エッシェンバッハさんの指揮については,かなり大仰な演奏になるのでは,と予想していたのですが,第2楽章,第3楽章については,むしろ速目のテンポで,大変前向きな感じのする演奏でした。

第1楽章の最初の序奏部から提示部に掛けては,所々で,深く思いに耽るような意味深い間のようなものがあり,「エッシェンバッハさんらしいなぁ」と思いましたが(特に第1楽章提示部の繰り返しをする瞬間,大見得を切るようにテンポを落としていたのが,特徴的でした),楽章が進むにつれて,次第にシンフォニックな充実感を持った,スケールの大きな音楽へと発展していくようでした。

第4楽章では力強さと同時に,途中,ファンタジーの世界に飛翔するような雰囲気がありました。最後の部分で大きく盛り上がった後,澄んだ音を長く伸ばし,フッと終了。この何とも言えない清潔感と儚さも素晴らしいなぁと思いました。

個性的な演奏という点では,ツィモン・バルトさんをソリストに迎えてのガーシュインのピアノ協奏曲が大変個性的でした。実演で聴くのは初めての曲でしたが,軽い音楽と思われがちなガーシュインをこれだけ濃く深く演奏し尽くしたバルトさんの力量に感服しました。気軽に楽しく楽しみたいという人には,重過ぎる演奏だったかもしれませんが,ここまで徹底すると,「もしもブラームスがジャズの影響を受けたら...」といった趣が感じられ,すごいと思いました。エッシェンバッハさんの演奏の方向性ともよく合ったピアニストだと思いました。このコンピならではのガーシュインだったと思います。

アンコールでは,スコット・ジョップリンのラグタイム音楽の中から「イージー・ウィナー」が演奏されました。あまりにも重厚なラグタイムで,最初はミスマッチかなと思ったのですが,次第にそれがユーモアとなって感じられました。

この2曲以外にも,トンヨン出身の作曲家ユン・イサンの「Bara」という,かなり前衛的な作品が最初に演奏されました。トンヨン国際音楽祭は,現代音楽も積極的に取り上げているようで,今回の演奏についても,確かにとっつきにくかったのですが,点描的な音を持つ,意味深さのようなものを感じることができました。

このオーケストラのメンバーの中には,元OEKのティンパニ奏者だった,トム・オケーリーさんが加わっていたのですが,相変わらず迫力十分の演奏で,各曲とも演奏全体を引き締めていたのも印象的でした。「新世界」の2楽章のイングリッシュ・ホルンの演奏も,OEKの水谷さんが担当するなど,要所要所でOEKメンバーがしっかりと活躍していたのが嬉しかったですね。

個人的には,3年前の時のように,金沢では滅多に聞けない,マーラーの交響曲辺りを取り上げて欲しいなという思いもあったのですが,聞き慣れた名曲を新鮮な響きとスケールの大きな表現で楽しむことができたのは良かったと思います。この音楽祭には,毎回,有名指揮者やソリストとが登場していますが,今後,さらにアジアを代表する音楽祭へと発展し,金沢公演の方も継続して欲しいと思います。

2018/04/03

#植村太郎,#鶴見彩 デュオ・リサイタル 満開の夜桜にぴったりの,充実のブラームス「雨の歌」,シュトラウス,R.ヴァイオリン・ソナタ他でした。

満開の桜の中,植村太郎さんのヴァイオリンと鶴見彩さんのピアノによるデュオ・リサイタルが,金沢市アートホールで行われたので聞いて来ました。聞きに行こうと思ったのは,リヒャルト・シュトラウスのヴァイオリン・ソナタとブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番という大曲2曲が演奏されることです。特にリヒャルト・シュトラウスの方は,近年,人気が出ている曲ですが,金沢で演奏される機会は非常に少ないと思います。

植村太郎さんについては,実は今回初めてお名前を知ったのですが,そのしっかりとした余裕と安定感のあるヴァイオリンの音がまず素晴らしく,両曲とも,満開の桜の気分にぴったりの,聴き応え十分の演奏を聴かせてくれました。大げさな表現はなく,さりげなく演奏しているのに,しっかりと落ち着きのある音が広がり,音楽に常に余裕がありました。その中にロマン派の曲にふさわしい,熱い情感もほのかに漂っていました。

特にブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番の最終楽章での思いの熱さがあふれ出るような盛り上がりとその後に続く,名残惜しさが素晴らしいと思いました。

リヒャルト・シュトラウスのヴァイオリン・ソナタの方も聴き応え十分の演奏でした。もっと大げさに弾いてもらっても面白いかなとも思いましたが,華麗に駆け上っていくようなパッセージやたっぷりとした歌は,ロマン派音楽の到達点のような充実感を感じました。
両曲とも,落ち着きと安定感のある鶴見さんのピアノもドイツ音楽にぴったりだと思いました。最初に演奏されたシューベルトのソナチネ第1番もシンプルな曲想ながら,植村さんと鶴見さんによるしっかりとした音で聴くと聴き応え十分でした。

アンコールでは,ロマンティックな気分に溢れたグラズノフの瞑想曲に加え,シンプルな歌と名技性の両方が楽しめるとてもキャッチーな曲(タイトルを知りたいところです)の2曲が演奏されました。

充実感たっぷりの大曲と歌と技をたっぷりと楽しませてくれるアンコールということで,ヴァイオリン・リサイタルの王道を行くような素晴らしい演奏会だったと思います。演奏会後は,少し遠回りして夜桜を眺めながら帰ったのですが,その気分にもしっかりとマッチした演奏会でした。

2018/03/31

3月31日はミミにいちばん! 石川県立音楽堂で行われた #オーケストラの日 コンサートはOEKに加え,石川県ジュニア・オーケストラ,OEKエンジェルコーラス,いしかわ子ども邦楽アンサンブルが登場した春休みオーケストラ入門企画 #ガルちゃん #ひゃくまんさんも登場 #oekjp

3月31日は「オーケストラの日」ということで,全国的に色々な演奏会が行われています。金沢では,OEKに加え,石川県ジュニア・オーケストラ,OEKエンジェルコーラス,いしかわ子ども邦楽アンサンブルが登場し,春休みオーケストラ入門といった感じの親子で気軽に楽しめる演奏会が行われました。楽都音楽祭の宣伝を兼ねて,PRキャラクターのガルちゃん,さらには石川県のキャラクター,ひゃくまんさんも登場し,会場には和やかな雰囲気がありました。

まず,いしかわ子ども邦楽アンサンブルによって,箏曲と長唄が演奏されました。箏の合奏による,ゆったりとした優雅さ,声と鳴り物が加わっての活気のある盛り上がり。滅多に邦楽器を聞くことがないのですが,たまに聞くと気分が落ち着きますね。

その後はオーケストラを中心としたステージとなりました。鈴木織衛さん指揮OEKで,おなじみの「フィガロの結婚」序曲がきっちりと演奏された後,「みんなで挑戦!オーケストラ・クイズ」コーナーになりました。この日は,オーケストラの演奏会と邦楽器を啓蒙する冊子が配布されたのですが,それに関した質問などが5問出されました。お客さんには,AとBという文字が両面に大きく印刷されたA4サイズの紙が配布されており,それを上げて回答するという手順です。オーケストラメンバーも参加していましたが,こういうのは楽しいですね。

問題の中では「アイネ・クライネ・ナハトムジークは,A 朝の音楽,B 夜の音楽」というのが,結構意外だったようですね。確かに第1楽章を聞いた感じAかもしれません。「正解はBです!」「エー(A)」というようなリアクションでした。

クイズの最後の問題が「トルコ」でしたので,その流れでモーツァルトの「後宮からの逃走」序曲が,軽快かつエキゾティックに演奏された後,OEKエンジェルコーラスが加わって,同じモーツァルトの「アレルヤ」と「パパパの二重唱」が演奏されました。青島広志さん編曲の合唱曲の抜粋で,気持ちよく楽しませてくれました。

その後,石川県ジュニア・オーケストラのメンバーとOEKの合同演奏で,モーツァルトの交響曲第40番の第1楽章が演奏されました。この前の日曜日にジュニア・オーケストラの単独で演奏されたばかりの曲でしたが,プロのオーケストラとの共演とういうのは,子供たちにとっても,とても良い経験になったと思います。

最後は,全員で「ビリーブ」が演奏されました。お客さんも含め全員で合唱しておしまいというのは,定番ですね。

アンコールでは,こちらも定番曲の「ラデツキー行進曲」が演奏されました。司会の方の説明によると,「楽都音楽祭での企画用に使うためにVRカメラで撮影させていただきます」とのことでした。指揮をするゲームアプリのようなものを作るのでしょうか?ちょっと見てみたい気がします。

春休み中の土曜日の午後ということで,お客さんは親子連れが沢山いました。開演前,ホワイエでは,楽器体験コーナーも賑わっていました。本日のお客さんの中から,未来のOEKファンが出てきて欲しいですね。

2018/03/25

石川県ジュニアオーケストラ 第24回定期演奏会。今年はOEKに挑む(?)ようにモーツァルトの交響曲第40番の全曲を立派に演奏。後半は打楽器パートが大活躍。大いに盛り上げてくれました。

「もうすぐ桜も開花かな?」という気分になるような,穏やかな快晴の日曜の午後,石川県立音楽堂コンサートホールで行われた石川県ジュニアオーケストラの第24回定期演奏会を聞いてきました。指揮はお馴染みの鈴木織衛さんでした。

昨年のこの公演は,バレエとの共演という面白い試みでしたが,今年は,前半まず,オーソドックスにクラシック音楽の交響曲が演奏されました。やはりバレエと共演すると,オーケストラ以上にダンスの方が目立ってしまうので,原点に立ち返る形にされたのだと思います。

演奏されたのは,モーツァルトの交響曲第40番の全曲でした。これは,今年の連休の楽都音楽祭のテーマに合わせた選曲という意味もあったと思いますが,考えてみると,非常にチャレンジングな選曲と言えます。OEKがいつも演奏しているような,編成がそれほど大きくない曲ということで,言葉は悪いのですが,ごまかしが聞かないと言えます。

本日の演奏も,さすがにいろいろと粗の目立つ部分もありましたが,まず音楽全体の構成がとても立派で,妥協したところがなかったのが素晴らしいと思いました。ベースとなる弦楽器の音にしっかりとした音の芯があり,浮ついた感じになっていないのが良いと思いました。非常に明確に演奏された,立派な40番だったと思いました。

楽器編成的には木管楽器の人数がとても多いなど,少々変わったバランスでしたが,結果として,いつも聞くのと違ったフレーズがくっきりと浮き上がってくるような面白い効果が出ていました。交響曲は,特定のモチーフを地道に積み上げて大きな音楽を作るのですが,その辺の緊密感もしっかり出ていたと思いました。

前半が「トークなしのシリアスな音楽」だったので,後半は「トーク入りの楽しい音楽」の連続となりました。最初の2曲は打楽器奏者が主役として活躍する曲でした。

「鍛冶屋のポルカ」といえば,今年のOEKのニューイヤーコンサートでの楽しいパフォーマンスを思い出します。今回もまた,楽しいパフォーマンスを見せてくれました。金床の音も美しかったですね,

故・榊原栄さん作曲の「キッチン・コンチェルト」は,OEKとジュニア・オーケストラがいちばん頻繁に演奏いる曲です。台所にあるフライパンなどの道具を打楽器として使う大変楽しい作品です。ルロイ・アンンダーソンの曲のような軽快さのある伴奏に乗って,打楽器奏者が楽しく色々な「打楽器」を叩くということで,ジュニアのメンバーには,とても難しい曲だと思うのですが,「何年もこの曲を演奏している」と思わせるようなリラックスした気分まで出ていて素晴らしいと思いました。

さらに途中に出てくるカデンツァの部分では,打楽器パート総出演(7人ぐらいいたと思います)で,大変楽しいアドリブを聞かせてくれました。吹奏楽曲の定番の「宝島」の途中に打楽器のアドリブが出てくることがありますが,そういった楽しい気分満載でした。演奏後の鈴木さんのトークによると,ジュニアのメンバーにすべて任せたということでした。こういう自発性のある演奏は,これからも聞いてみたいなぁと思いました。

その後,カバレフスキーの組曲「道化師」の全曲が演奏されました。ギャロップだけが有名な曲なので,全曲が演奏されるのは比較的珍しいかもしれません。短いながらも色々な性格を持った曲が続き,多彩なドラマが次々と展開していくような演奏を生き生きと楽しませてくれました。

最後はエルガーの威風堂々第1番を文字通り,堂々と演奏してくれました。改めて品格の高さのある曲だなと感じさせてくれるような演奏でした。

アンコールでは,オーケストラ演奏用に編曲された「花が咲く」がとても美しく演奏されました。各パートに見せ場があるとてもよくできたアレンジでした。最後,オーケストラが一体となってワーッと自然に盛り上がる感じが感動的でした。

というわけで,今年の定期演奏会は,非常にジュニア・オーケストラらしい内容だったと思います。やはり交響曲を演奏するというのは,ジュニアにとっても大きな目標になるのではと改めて思いました。その点で,ジュニア・オーケストラのメンバーにとって「財産」になるような演奏会だったと思います。

2018/03/24

OEK2018-2019定期公演ラインナップ発表。#川瀬賢太郎,#ユベール・スダーン も本格始動。#鈴木雅明,#ムストネン,#ブラッハー など初登場指揮者も続々登場 #oekjo

OEKの2018-2019定期公演ラインナップが郵送されてきましたので,概要をご紹介しましょう。

■定期公演フィルハーモニーシリーズ
9月20日(木)19:00- 川瀬賢太郎指揮,小山実稚恵(ピアノ)
パーマネント・ゲスト・コンダクターになる川瀬賢太郎さん指揮によるベートーヴェンの交響曲第5番を中心としたストレートなプログラムで開幕

11月1日(木)19:00- 鈴木雅明指揮,RIAS室内合唱団 他
日本の古楽界を代表する指揮者,鈴木雅明さんがOEKに初登場。モーツァルトの40番に加え,メンデルスゾーンの声楽曲も演奏

11月29日(木)19:00- オリ・ムストネン指揮・ピアノ
OEK恒例の弾き振りシリーズ。今年度はオリ・ムストネンさんが登場。シベリウスなど北欧の音楽中心

1月12日(土)14:00- フォルクハルト・シュトイデ(リーダー・ヴァイオリン)
ニューイヤーコンサートは2018年に続いて,シュトイデさんの弾き振りによるシュトラウス・ファミリーの音楽

2月16日(土)14:00- 川瀬賢太郎指揮,藤村実穂子(メゾ・ソプラノ),半田美和子(ソプラノ)
日本を代表するメゾ・ソプラノ,藤村実穂子さんによるヴェーゼンドンク歌曲集。後半はメンデルスゾーンの「夏の夜の夢」

3月27日(水)19:00- ユベール・スダーン指揮,リーズ・ドゥ・ラ・サール(ピアノ)
プリンシパル・ゲストコンダクターとなるユベール・スダーンさんによるベート-ヴェン
「英雄」。リーズ・ドゥ・ラ・サールさんは久しぶりの登場

6月20日(木)19:00- コリヤ・ブラッハ-(リーダー・ヴァイオリン)
元ベルリン・フィルのコンサートマスター,ブラッハーさんがOEK初登場。ブラームスのヴァイオリン協奏曲の弾き振りというのはかなり珍しいかも。

7月18日(木)19:00- パトリック・ハーン指揮,辻井伸行(ピアノ)
シリーズの最後は人気ピアニストの辻井さんが登場。ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番を演奏

■マイスター・シリーズ
10月13日(土) 14:00-ユベール・スダーン指揮,堀米ゆず子(ヴァイオリン)
スダーンさんとOEKの共演は昨年のガル祭以来。ハイドンの「太鼓連打」を演奏。堀米さんとOEKの共演は...岩城さん時代以来ですね。

1月26日(土)14:00- ポール・エマニュエル・トーマス指揮,松田華音(ピアノ)
若手ピアニスト,松田華音さんとOEK初共演は,ラヴェルのピアノ協奏曲ト長調

3月9日(土)14:00- エンリコ・オノフリ指揮・ヴァイオリン
すっかりおなじみとなったオノフリさん指揮OEK。今回はハイドンのヴァイオリ協奏曲,モーツァルトの25番など。

6月8日(土)14:00- ピエール・ドゥモソー指揮
詳細は発表されていませんが,ルーセルのバレエ音楽「くもの饗宴」が演奏されます

7月6日(土)14:00- マルク・ミンコフスキ指揮
そしてマイスターの最後にミンコフスキさん登場。曲目は調整中とのことです。

■ファンタスティック・オーケストラ・コンサート
12月14日(金)19:00- 青島広志作曲 オペラ「黒蜥蜴」 沖澤のどか指揮
江戸川乱歩原作,三島由紀夫 による怪しくも魅力的な作品。関連の企画もあるようです。

2月3日(日)14:00- The殺陣 松木史雄(振付・演出),角田鋼亮指揮
タイトルだけではどういう内容か分からないのですが...音楽に合わせてチャンバラということになるのでしょうか?剣の舞ですね。

4月13日(土)14:00- 池辺晋一郎が選ぶクラシック・ベスト100 
今回は作曲家でくくられていないようですね。池辺さんの案内+松井慶太さん指揮です。

6月30日(日)14:00- OEKポップス さだまさし
渡辺俊幸さん指揮OEKと さだまさしさんが共演

以下,画像でも紹介します。

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2018/03/17

音楽監督としての最後の登場となる #井上道義 指揮OEK定期公演は,#反田恭平 さんとの共演によるプーランク+ハイドンの朝・昼・晩。充実感とサービス精神に溢れた演奏。最後にファンへのプレゼントのような素敵なアンコール。ありがとうございました #oekjp

井上道義さんのOEKの音楽監督としての最後の定期公演を石川県立音楽堂で聞いてきました。人気若手ピアニストの反田恭平さんも出演するとあって,非常に沢山のお客さんが入っていました。ホール全体にはどこか華やいだ雰囲気があり,節目となる記念すべき演奏会の内容も,よく晴れた天候と同様,大変晴れ晴れとしたものでした。

井上さんと反田さんが共演した曲は,プーランクのオーバードという作品でした。終演後のサイン会で,反田さんにお尋ねしたところ,井上さんからの提案で選曲されたとのことで,まさにOEKの編成にぴったり,かつ,反田さんの雰囲気にぴったりの作品でした。この日の井上さんは,最後ということもあってか非常に饒舌で,バレエ音楽でもあるこの作品のストーリーをとてもわかりやすく説明してくださりました。

ヴァイオリン抜きの変わった編成でしたが,室内楽編成のくっきりとした明快な響きと伸び伸びと闊達な反田さんのピアノとが相俟って,井上さんの語ったストーリーが鮮やかに表現されていました。特に主役ダンサーの少し諦めにも似た心情を表現したような,最後の部分での深い表現が特に印象的でした。

この曲は,井上さんにとっても反田さんにとっても,そしてOEKにとっても演奏するのが初めての作品でした。こういう曲を「最後の」演奏会に加える辺り,井上さんは常に前向きだなぁと感心します。そして,若い奏者を育てていこうとするスタンスも一貫しているなぁと思いました。

後半はハイドンの交響曲第6~8番「朝」「昼」「晩」が演奏されました。こちらも各曲ごとに,井上さんのトークを挟みながら演奏されました。解説なしでも気持ちよく楽しめる作品ですが,「ハイドンがエステルハージー候の下で働くようになって間もない若い頃に書いた曲で,優秀なオーケストラのメンバーを生かすためにソリスティックな部分が多い」とか「「朝」では日の出の様子や目覚めた人たちの様子を描写している」...といったことを聞いてから聞くとさらに楽しめます。解説を入れるかどうかは,好みが分かれるところですが,井上さんの「クラシック音楽を幅広い人たちに広めたい」というアウトリーチしようとする気持ちは,OEK在任中,ずっと一貫していたなと改めて思いました。

演奏の方は,ハイドンの意図どおり,オーケストラの首席奏者たちがソリスティックに活躍する部分の多い曲で,「ハイドン版オーケストラのための協奏曲」的な楽しさに溢れていました。特に活躍していたのは,コンサートミストレスのアビゲイル・ヤングさん,チェロのルドヴィート・カンタさん,コントラバスのマルガリータ・カルチェヴァさん,そして,フルートの松木さやさんでした。特にヤングさんは,相変わらずの安定感でした。どの曲もちょっとした協奏曲を思わせるほど,出番が沢山ありました。「晩」の最後の楽章での急速で軽やかなパッセージ(嵐を描写した部分ですね)など,「ブラーヴォ!」と声を掛けたくなる鮮やかさでした。

フルートの松木さんのソロの出番も非常に多く,「朝」の第1楽章や第4楽章などを中心に,爽快な音をしっかり聞かせてくれました。「朝」と言えば,グリーグの「ペールギュント」を思い出しますが,「朝といえばフルート」の原点がこの曲かもしれませんね。

「最後の演奏会」としては,かなり異例な選曲だと思いますが,井上さんとしては,OEKとの共演の原点に立ち返ろうというと意図があったようです。井上さんがはじめてOEKと共演した時(本当の最初は,渡辺暁雄さんの代役でしたが)に演奏した曲がこのハイドンの「朝」でした。その時の「面白さ」を思い出すといったことを途中のトークで語っていましたが,この曲が,OEK音楽監督としての活動の原点にあったのだと思います(その後,「朝」「昼」「晩」としてもう一度取り上げています)。

今から200年以上前,ハイドンによってとても面白い曲が書かれた。それを現代の演奏会でさらに面白く聞かせたい。そのためにはOEKはぴったり,という気持ちを常に持っていたのだと思います。その「回答」が,本日の演奏だったのではないかと思います。

井上さんといえば,派手なパフォーマンスの印象も強いのですが,今回のハイドンの演奏を聞きながら,見事なバランス感覚だと思いました。曲全体として,お客さんがいちばん心地よく楽しめるような,リラックスした伸び伸びとした気分を作ると同時に,OEKメンバーにとっても最高のパフォーマンスを発揮できるような,しかし,スリリングな感じも失わないような...大変バランスの良い音楽作りだったと思います。井上+OEKの原点であり完成形となる演奏だったと思いました。

終演後は,今回で退任する井上さんだけでなく,定年になるカンタさん,そして,コントラバスのカルチェヴァさんに花束が贈呈されました。カルチェヴァさんは,客演の首席奏者として頻繁にOEKに参加していましたが,今回の演奏会を最後に,OEKを離れるとのことです(ご家庭の事情)。カルチェヴァさんは,笑顔が大変魅力的な方で,OEKのベースをしっかりと支えてくださっていたので,非常に寂しくなります。今回の花束は,本当にサプライズだったらしく,カルチェヴァさんも感極まっていました。その光景を見て,きっとOEKメンバーにも愛されていたんだろうなぁとしみじみ思いました。

そしてこの花束に応え,大勢のお客さんにプレゼントをするような形で,アンコールが演奏されました。ハイドンつながりで,「お別れ」と言えば,「告別」かなとも思ったのですが,そんな安易な選択ではなく,井上さんが愛した,非常に魅力的な小品が演奏されました。武満徹の「他人の顔」のワルツです。

この曲は岩城さん時代から,何回か演奏されてきた定番のアンコール曲ですが,本日の演奏は,格別にキザで(良い意味です),したたるように陶酔的な演奏でした。カルチェヴァさんの涙を見た後だったので,この演奏を聞きながら,お客さんの方にも涙は伝染していたようです(終演後の雑踏の中から,「泣けたわぁ」という主婦の方の声が聞こえてきました。)。

そして,井上さんの踊るような指揮姿を最後に目に焼き付けてくれました。途中,井上さんは指揮の動作を止め,OEKの作る音の流れに身を任せていましたが,いろいろな思いが去来していたのかもしれませんね。

OEKの音楽監督を退任するとはいえ,井上さんがOEKを全く指揮しなくなるというわけではないと思います。一つの節目ということになります。一時代を築いてくれた井上音楽監督に心から感謝をしたいと思います。ありがとうございました。

2018/03/16

#梨ばろっこ in 金沢アートグミ #アンサンブル30 によるバッハの「フーガの技法」をゆったりと全曲聞いてきました。

富山市を中心に活動している古楽アンサンブルユニット,アンサンブル30(さんじゅう)の演奏会が金沢市のアートグミで行われたので聞いてきました。今回の演奏会のポイントは,何と言ってもバッハの晩年の謎に満ちた大曲「フーガの技法」の全曲が演奏されたことです。それに加え,これまで行ったことのない会場,「アートグミ」にも興味がありました。

「初めて実演で聞く曲」「長い曲を全部」「初めての場所」という,私にとっては,「行ってみたくなる」条件が,しっかりと揃った演奏会でした。

バッハの「フーガの技法」については,何の楽器で演奏するかはっきりと指定されていないこともあり,色々な楽器で演奏されることがありますが,今回はアンサンブル30のメンバー8人(ヴィオラ・ダ・ガンバ4,バロックヴァイオリン,フラウト・トラヴェルソ,バロック・リコーダー,チェンバロ)+黒瀬恵さんのオルガンで演奏されました。

フーガ16曲,カノン4曲,そして,本来は「フーガの技法」からは外れるようですが,オリジナル版に終曲として載せられているコラール1曲の全20曲が演奏されました。途中休憩を入れて,約2時間,バッハのポリフォニーの世界に浸ってきました。

バッハといえば,厳しく厳格なイメージもあるのですが,アンサンブル30の皆さんの演奏は,古楽器で演奏していたこともあり,どこか穏やかで,急ぎすぎないおおらかさを感じました。特に4挺のヴィオラ・ダ・ガンバの作る音に穏やかな雄弁さがあり,全体のベースを作っていると思いました。

面白かったのは,ほぼ曲ごとに編成が違っていた点です。第1曲はヴィオラ・ダ・ガンバのみで演奏していましたが,その後,フラウト・ドラヴェルソ(横笛)やバロック・リコーダー(縦笛)が加わったり,バロック・ヴァイオリンが加わったり,地味ながら多彩な世界が広がっていました。研究の結果,バッハ自身は,チェンバロのために書いたと言われていますが,複数の声部を聞き分けるには,今回のように色々な楽器で分担する方が分かりやすいのではないかと思いました。

フーガ15曲の後,カノンが4曲演奏されましたが,こちらでは2人の奏者による,「差し」の演奏になっており,こちらも面白いと思いました。

そして,最後に「追いかけっこ」の世界から離れて,全楽器で,コラールがしっとりと歌われました。この何とも言えない解放感は,フーガの技法のトリに相応しいと思いました。

アートグミという会場はもともとは北國銀行内の会議室のような感じの部屋だと思いますが,しっかりと音が聞こえ,文字通り「室内楽」という感じのある部屋でした。金庫(今は使っていないと思いますが)の上の部分にバッハの肖像画が飾られている前での演奏というのは,かなり不思議な光景でしたが,アットホームな雰囲気のある室内楽用の会場として十分に使えると思いました。

アンサンブル30の皆さんは,通常は富山で活躍されているのですが,金沢にはこういった古楽アンサンブルはありませんので,是非また,別の切り口の古楽の演奏会を金沢で行ってほしいと思います。

2018/03/10

OEK定期公演M テーマはドレスデンとパスティッチョ,#北谷直樹 さんらしく,刺激とサプライズに満ちた素晴らしい選曲と演奏。そして #ラフォンテヴェルデ の透明な声を交えた晴れ晴れとした祈りの音楽 #oekjp

OEK定期公演3月のマイスターシリーズには,北谷直樹さんが指揮・チェンバロで登場しました。北谷さんも,OEKの古楽担当という感じですっかり常連になっています。毎回,意外性のある選曲と知的で熱い演奏を聞かせてくれていますが,この日の公演も,その期待どおりの素晴らしい内容でした。

今シーズンのマイスター定期は,「ドイツ音楽紀行」ということで,毎回,ドイツの都市がテーマになっています。今回はドレスデンがテーマでした。これまでのマイスターシリーズでは,それほど「お題」に忠実な感じはしませんでしたが,さすが北谷さん。しっかりドレスデンにちなんだ曲を並べてきました。

ドレスデンが音楽都市として知られるようになったのは,17~18世紀のザクセン公,アウグスト2世の存在が大きいということで,このアウグスト2世の時代のドレスデンにちなんだ作品がプログラムの柱になっていました。

ヴェラチーニ,ゼレンカといった知り人ぞしるという作曲家の曲が,前半の最初に演奏されましたが,それぞれ大変楽しめる作品でした。ゼレンカの2つのオーボエ,ファゴットと通奏低音のためのソナタ第5番は,ほとんど「室内楽」の演奏でしたが,プログラムの解説に書いてあったとおり,超絶技巧が延々と続くようなパッセージがあるなど,大変充実した作品でした。こういう新たなレパートリーを発掘してくれるのは,OEKファンとしてもうれしいですね。いずれにしても,水谷さん,加納さん,柳浦さん,お疲れ様でした。

続くヴィヴァルディの協奏曲も大変魅力的な作品でした。最初のヴェラチーニ同様,ト短調で統一感が図られており,曲の最初の部分を聞いただけで,ちょっとロマンティックな気分を感じさせるほど,魅力的な雰囲気がありました。弱音で始まった後,一気に音が爆発するようなコントラストも印象的でした。

前半ではOEKのメンバー立ったまま演奏していましたが(もしかしたら曲ごとに編成が違っていたので,その影響もあったのかもしれません),オーセンティックな雰囲気と同時に,演奏全体にダイナミックさがあると思いました。

前半の最後は,「焼き直されたヴィヴァルディ」ということで,非常に凝った作りになっていました。自分または他人の作品を寄せ集めて新しい作品を作ることを「パスティッチョ」というとのことですが,北谷さんの感性でヴィヴァルディを再構成するとこうなるといった,面白い試みになっていました。

まず,バッハがヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲をオルガン独奏曲に編曲したものの第1楽章を,北谷さんがさらにチェンバロ協奏曲にアレンジしたものが演奏されました。ここでは北谷さんのチェンバロの涼しげで鮮やかな妙技を楽しむことができました。

続いて,ヴィヴァルディのオペラのアリアを北谷さんが,オルガンと弦楽のための曲に編曲したものが演奏されました。今度は北谷さんは小型のオルガンを演奏しながらの指揮でした。オルガンが加わることで,しっとりとした哀感がさらに深まっていたと思いました。

さてその後ですが,マックス・リヒターという現代の作曲家が,ヴィヴァルディの「四季」にインスパイアされて「改造」した曲の中から3つの楽章が演奏されました。おなじみのフレーズの一部を,繰り返し繰り返し演奏し,ヴィヴァルディがミニマルミュージック化したようなスリリングな面白さがありました。曲の終わり方は,予定調和的ではなく,スパっと断ち切れるようになっていたのが現代的でした。ここでは,コンサートミストレスのアビゲイル・ヤングさんのソロが圧倒的でした。自然に熱気が高まっていくような迫力たっぷりの演奏でした。

後半は,バッハのロ短調ミサの抜粋が演奏されました。最初プログラムを見た時,「なぜ抜粋なのだろう?」と疑問に思ったのですが,もともとこの曲は,ドレスデン王のために書かれたパスティッチョ的な作品ということで,最晩年のバッハが自分の過去の作品を寄せ集めて作ったような作品です。寄せ集めと言いつつ,非常に完成度が高いのですが,今回は,北谷さん自身がそれを再構成したプログラムと言えます。

演奏された曲は「グローリア」の一部,「サンクトクス」,「アニュスデイ」がベースでした。合唱の方は大編成の合唱団ではなく,声楽アンサンブル,ラ・フォンテヴェルデのメンバーを中心に古楽界で活躍する歌手を16名集めた精鋭でした。OEKの演奏同様,すっきりとした透明感のある素晴らしい合唱でした。

トランペット3本が加わる,グローリアの最初から祝祭的な気分がありましたが,北谷さんの選曲の意図としては,声楽を聞かせるだけではなく,OEKメンバー,特に管楽器メンバーを協奏曲的に活躍させようという意図も感じました。フルート2本が活躍する曲,オーボエ3本が入る曲,そして,狩のホルンが大活躍する曲など,オーケストラの定期公演に相応しい形に再構成されていたと思いました。

最後の曲は,オリジナルの全曲の最後でもある「Dona nobis pacem」(私たちに平和を与えたまえ)でした。平和そのものを感じさせてくれるような澄んだ響きの合唱に落ち着きのあるOEKの響きが加わり,現在,平和に暮らしていることのありがたみをしみじみとかみしめました。

2011年3月11日,北谷さんは当初,福島にいるはずだったのですが,たまたまスケジュールを変更し東京に居たとのことです。「今生かされているという感覚とそれに感謝する気持ち」とプログラムに書かれていましたが,そのことがしっかりと伝わってくる演奏だったと思います。

北谷さんは,古楽演奏の専門家ですが,学究的な冷たさはなく,演奏の透明感をベースとしつつ,常にお客さんを楽しませよう,演奏を盛り上げようという,熱い前向きな気持ちが伝わってきます。今回も,その通りの気分が伝わってくる,素晴らしい公演だったと思います。

2018/03/06

#サカリ・オラモ 指揮 #BBC交響楽団 金沢公演。ほれぼれとするくらい堂々としたブラームスの交響曲第1番。アリーナ・ポゴストキーナさんのほの暗いヴァイオリンも魅力的でした。

この時期恒例の東芝グランドコンサートが石川県立音楽堂で行われたので聞いてきました。今年は,サカリ・オラモ指揮BBC交響楽団でした。2月の後半から,「コンサートに行き過ぎ」なのですが,これまで聞いたことのないオーケストラが来ると,やはり行きたくなります。

プログラムの方は,チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲とブラームスの交響曲第1番がメインということで,やや「名曲過ぎる」プログラムでしたが,終わって見ると,「やっぱりブラームスは良い」「チャイコフスキーも良い」と大満足の内容でした。何より,もったいぶったところのないオラモさんの音楽作りと,BBC交響楽団のバランスの良さと芯の強さのあるサウンドが素晴らしいと思いました。

最初に演奏されたのは,ブリテンの歌劇「ピーター・グライムズ」の「4つの産みの間奏曲」と「パッサカリア」でした。初めて聞く曲だったこともあり,やや取っつきにくいところはあったのですが,大編成オーケストラによる多彩な響きを楽しむことができました。

続いて,アリーナ・ポゴストキーナさんの独奏で,チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲が演奏されました。ポゴストキーナさんの演奏は,非常に正統的で,センチメンタルな気分に溺れるようなところはありませんでした。音程も技巧も確かで,音楽が崩れることはなく,全体に安定感がありました。ただし,まじめで堅苦しい演奏というわけではなく,音色自体にほの暗い情感が常に漂っていました。そこが大変魅力的でした。オラモさん指揮の大船に乗ったような安心感のある演奏と共に,さりげないけれども,深さの残る演奏を聞かせてくれました。

後半はブラームスの交響曲第1番が演奏されました。金沢でこの曲を聞く場合,OEK+αぐらいの編成で聞くことが多いので,コントラバスが8本も入るプロの大編成オーケストラで聞くこと自体,私にとっては新鮮なことです。BBC交響楽団の音は,重厚なサウンドという感じではなく,しっかりとした芯のまわりに適度に肉が付いているような,バランスの良さを感じました(例によって,3階席で聞いていたせいもあるかもしれなせん)。

オラモさんのテンポは,全く慌てる部分はなく,全曲に渡って,非常に堂々とした音楽を聞かせてくれました。現代ではかえって珍しいほどの,惚れ惚れするほど構えの大きな演奏だったと思います。ただし,音楽が盛り上がる部分でも,これ見よがしに大げさな表現を取るような感じではなく,常に颯爽とした爽やかさも同居していました。

第1楽章冒頭のティンパニの連打の部分から,安定感と同時にエネルギーを感じさせる演奏でした。弦楽器の清々しい響き,管楽器のソリスティックな活躍も印象的でした。特にソリストが演奏しているように雄弁なフルートの音が特に素晴らしいと思いました。

第4楽章の終盤をはじめとして,音楽のどの部分を取っても,もったいぶったようなところはなく,変わったことはしていないのに,音楽を気持ちよく表現し切ったような爽快さが常に感じられました。

オラモさんの指揮からは,巨匠指揮者のような風格と安心感を感じました。第4楽章のコーダの部分で,金管楽器を中止にコラール風のメロディを演奏する部分では,本当に堂々と聞かせてくれました。「待ってました。たっぷりと!」と声を掛けたくなる感じでした。

上述のとおり「名曲過ぎる」プログラムでしたが,その名曲の名に相応しい,堂々たる演奏を楽しむことのできた演奏会でした。

«OEKと石川県内の大学オーケストラメンバーによる合同公演 #カレッジコンサート。今年は #田中祐子 さん指揮による,とても気っ風の良い,ボロディン,プロコフィエフ,ドヴォルザークを楽しみました。春らしい気分にさせてくれました #oekjp

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