井上道義音楽監督,定期公演に「初登場」
井上道義さんが,OEKの2代目音楽監督になって半年以上たちますが,意外なことに今回の定期公演が,音楽監督としての初登場ということになります。2007-2008の開幕の公演ということと合わせ,今回の公演はどこか華やいだ気分のある演奏会となりました。ただし,演奏されたのは,ハイドンとベートーヴェンということで,井上音楽監督の「古典志向路線」を改めて印象付けてくれました。
今回演奏された曲の中では,何と言っても最後にされた「運命」が,「さすが,ミッキー」という,エキサイティングな演奏でした。スポーツ新聞風に言うと「ミッキー大暴れ,奇跡の大勝利」という感じで,大変身振りの大きい第1楽章から,圧倒的な明るさと爽快感を持ったクライマックスへと,どこを取っても退屈させる部分はありませんでした。金管楽器をはじめ,オーケストラ全体が大変良く鳴っていました。第3楽章のコントラバスの速弾きなどソリスティックな面白さも楽しめました。定期公演「初登場」にふさわしい充実した演奏でした。
2曲目に演奏された,ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は,今月聞くのが2回目です。同じ月に別のソリストで同じ協奏曲を演奏するのは,かなり珍しいことだと思います。この日の演奏ですが,9月2日の演奏よりもOEKの方もソリストの方もスケールの大きさを感じました。ソリストは,チョーリャン・リンさんで,明るく伸びやかな音でとても円満な音楽を聞かせてくれました。第1楽章はちょっと音程が甘くなるような部分がありましたが,段々と音の鳴り方も良くなってきて,堂々たる音楽を楽しませてくれました。OEKの演奏の方は,冒頭からティンパニの存在感が際立っていました(シルヴィオ・グァルダさんという方だと思います)。
1曲目はハイドンの「アレルヤ」という珍しい交響曲でした。古楽奏法的な雰囲気のある演奏でしたが,それでもすっきりと流れるだけではなく,多彩な表情を感じさせてくれるのは,井上さんならではだと思いました。
この日の会場は,オルガン・ステージの部分が朝顔の蔓や葉に覆われておりびっくりさせてくれましたが(造花かもしれません),これは21世紀美術館を意識した,井上音楽監督のアイデアとのことです。今シーズンも何が出てくるか分からない,と期待させてくれる演奏会となりました。
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