あまんじゃくとうりこひめ
昨日5月31日と本日6月1日の2日連続で,林光作曲「あまんじゃくとうりこひめ」の上演が石川県立音楽堂邦楽ホールで行われました。私はこのうち,本日行われた昼間の公演の方を見てきました。
民話を題材とした30分ほどのオペラで,故岩城宏之さんが初演の指揮をしたという作品ということで,もうすぐ命日となる岩城さんを追悼するには絶好の作品です。この日は林光さん自身も会場に来られており,作品の作曲方法など,とても興味深いお話を聞かせてくれました。
作品の方もとても聞きやすい作品でした。機織りのシーンのたびに,打楽器が同じリズムを刻むのですが,その心地よい響きと,ストーリー全体に漂うなんとも言えない,ちょっと切なくなるような情緒が残る作品です。その切なさというのは,何でも人と反対のことをしたがる「あまんじゃく」という存在そのもののもつ切なさです。この日は,朝倉あづささんが歌われていましたが,とても愛嬌のある雰囲気で,それが民話的な雰囲気にぴったりでした。
うりこひめ役の仲谷響子さんも世間知らずの姫の雰囲気にぴったりでした。それと,ドラマの中では悪役だった(見る前はあまんじゃくが悪役かと予想していました),北山吉明さんの演じた「とのさん」も,ほのぼのとした感じでぴったりでした。リアルな悪役ではなく,憎めない「バカ殿」風が受けていました。
ただし,狭いホールでの日本語台本ということで,ほぼ歌詞は聞き取れたのですが,やはり,一部不明な部分がありました。この辺はプログラムの解説でもう少し補って欲しいと思いました。
前半は,高輪真知子さんが石川県の民話をOEKの伴奏で朗読するというものでした。多分,バッハの曲だったと思うのですが,朗読の全く邪魔にならない音楽でしたので,音楽が入ることでかえってリラックスして聞くことができた気がしました。高輪さんはとても味のある語り口で,その話芸を堪能できました。このホールの雰囲気的には,夏休みに伴奏付き怪談でもやってくれるとぴったり来るような気がしました。
今回の企画は,流れ的には,2006年末に行われた「オルフェオ」の上演に続くものだと思いますが,邦楽ホールを使った小規模なオペラには今後も期待したいと思います。
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