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2008/09/18

クレーメルさん,再登場!OEK定期PHも開幕

OEKの2008~2009の定期公演シリーズのフィルハーモニーの方も開幕しました。こちらの方は,先日の第九公演に引き続き,ギドン・クレーメルさんとクレメラータ・バルティカ(KB)との共演となりました

今回は何と言っても,クレーメルさんの独奏によるシベリウスのヴァイオリン協奏曲が注目でした。OEKがこの曲を演奏すること自体珍しいのですが,クレーメルさんの面目躍如たる演奏でした。クレーメルさんというのは,言うまでも無く,かなり不思議なヴァイオリニストです。「巨匠」という言葉がこれほど似合わない人はいないのではないかと思います。演奏中の姿勢は絶えず中腰で,足元はちょっと爪先立つような感じで,かなり上下に動きます。音は大変スリムで,シンフォニックな曲想とは全く反対を向いているようなところがあります。

それでいてこの曲を完全に自分のペースで聞かせてくれます。第1楽章と第2楽章は,かなりゆっくりとしたテンポで演奏され,スリムだけれども耳にしっかり絡み付いてくるような粘り気のある音で迫ってきます。第3楽章は,幾分,推進力はあるのですが,それでもバリバリ弾くという感じではなく,どこか怪しいムードを漂わせていました。

このシベリウスの曲については,ロマン派音楽の流れで演奏しても効果の上がる曲ですが,今回の演奏は,現代的な感性で捉えられた,非ロマン的な演奏だったのではないかと思います。それでも,クールなだけではなく,どこか人懐っこい表情もあると思いました。それがまた演奏の不思議な魅力になっていたと思います。

後半に演奏されたグリーグのペールギュントの方は,井上道義さんの面目躍如という演奏でした。シベリウスについては,やはり,クレーメルさんを意識してか,かなり抑制された演奏をしていたと思うのですが,後半の方は,思う存分ドラマを盛り上がるような演奏を聞かせてくれました。

OEK単独のカレリア組曲も良かったし(個人的にこの曲は本当にたまらなく好きな曲なのです),KB単独のホルベルク組曲の強靭さも素晴らしかったし,一つのコンサートで,オーケストラ音楽のいろいろな側面を楽しむことができました。

アンコールもまた「なんじゃこりゃ?」という面白い曲でした。これについては,後でレビューで紹介しましょう。

PS.今回もCD収録も行っていました。クレーメルさんと井上/OEK+KBというのは,OEKファンにとっては,夢の組み合わせではないかと思います。大いに期待したいと思います。

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コメント

 新シーズン開幕にふさわしい、素敵な企画でしたね。十分に堪能いたしました。
 クレーメルさんですが、私は前回の岩城さんとの共演を聴き逃していますが、10数年前に東京でリサイタルを聴いて以来だったので、登壇した瞬間から、懐かしい人に再会した気分でした。(だいぶお老けになっていて、驚きましたが)
 管理人さんもご指摘どおり、クレーメルさんの奏でるヴァイオリンには、どうしても「不思議な」あるいは「面妖な」といった形容を使いたくなりますね。
 決して力まないのだけど、静かに発するオーラ?は、聴いている者を、じわじわと金縛り的に引き付ける、そんな感じです。
 昨晩のシベ・コンでも、始めは抑え気味でスタートし、終楽章にむけて、徐々に求心力を高めていく流れが素晴らしく、聴き終えた瞬間、生きていく勇気をもらったような気分になりました。
 アンコールのスヴェンセンが、たまたま私も好きな作品だったので、好印象でした。静かな叙情美に、ホール全体が幻惑されていたようです。 
 KBの若くて自在な合奏には、一陣のつむじ風を感じました。
 そして、大好きなペール・ギュントでは、この作品が、本来、劇音楽であったことを思い出させる、いろいろな意味で"劇的な"演出があって、これまた大変満足いたしました。

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