OEK定期公演にナッセンさん登場。キラキラとしたサウンドとパズルを解くような面白さを楽しめる掌の音楽集。終演後は,何と指揮者室でサイン会
今回のOEKの定期公演Mには,イギリスの作曲家・指揮者のオリバー・ナッセンさんが登場しました。ステージに登場したナッセンさんを見た瞬間,時節柄,最近金沢市の里山を脅かしている,”あの動物”を思い出してしまいましたが,演奏の方は,荒々しい野生的な世界とは正反対でした。どの曲についても,精密にできた玩具であるとか,大切にしまってあった宝物を,大きな手のひらで優しく包み込むように扱っているような緻密さと不思議な心地良さがありました。
今回のプログラムは,大半のお客さんにとって,1回も聞いたことがないような曲ばかりだったと思います。次のとおりです。
* マデルナ:「フィッツウィリアム・ヴァージナルブック」による陽気な音楽(1969)
* 武満 徹:群島S.-21人の奏者のための(1993)
* ナッセン:人形の宮廷のための音楽
* レスピーギ:ボッティチェッリの3枚の絵~「春」「東方三博士の礼拝」「ヴィーナスの誕生」
この選曲もまたお見事でした。マデルナとレスピーギが擬古典的な気分で共通し,武満さんとナッセンさんの作品が,オーケストラの編成の面白さで,好対照をなしていました。ナッセンさんの作品の中に含まれている曲に「パズル」という曲がありましたが,何もかもがきっちりと組み合わさっている,パズルを思わせるプログラムだったとおもいます。
武満さんの作品は,室内オーケストラを3つの群(=島)と2つの離れ小島に分け,ステージ+音楽堂全体に配置させるという面白い作品でした。音が色々な方向から飛び交う,実演でないと楽しめない曲でした。まさに浸るための曲でした。
ナッセンさん自身の作品は,弦楽器と管楽器の位置関係が反対で,しかもオーケストラを2つのグループに分けて,掛け合いをするという独特の作品でした。この曲もまた,精密なおもちゃを思わせるところがあるのですが,OEKがナッセンさんの手のひらの上でもてあそばれているような趣きがありました。
マデルナとレスピーギの作品も,大変聴きやすい作品でした。特にレスピーギの作品は,「これはレスピーギのサウンドだな」と思わせる,輝くような明るさが随所に出てきて,演奏会全体を気持ちよくまとめてくれました。ナッセンさんは,以前,OEKに客演したときには,ラヴェルのマ・メール・ロアを指揮されましたが,心底,こういうおとぎ話的な世界を愛しているのだな,と感じました。
今回のプログラムは,演奏時間的にもかなり軽めでしたが,ナッセンさんの好みがしっかりと貫かれていましたので,物足りない感じはしませんでした。ナッセンさんならではの「音による絵本集」といっても良い世界を楽しめた公演でした。
PS.今回もサイン会が行われましたが,いつものロビーではなく,何とステージ裏の指揮者室で行われました(やはり,移動されるのが大変なのです)。思わぬバックステージツァーを楽しむことができ,「へぇ,こうなっているのか」と得した気分になりました。
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