今年も沢山の演奏会に出かけてきましたが,その締めくくりとして,石川県立音楽堂で行われたチャイコフスキーのバレエ「くるみ割り人形」の全曲を見てきました。このバレエの全曲の見るのは,実は今回が初めてでしたが,本当に良い作品です。
「白鳥の湖」「眠れる森の美女」と比べるとややコンパクトなのですが,最初から最後まで見所がぎっしり詰まっており,全く退屈することなく,全曲を楽しむことができました。音楽の流れが素晴らしく,何のストレスも感じませんでした。
今回は,主要な役柄は,ドイツのエッセン市立歌劇場バレエ団が担当し,それ以外の部分を石川県立音楽堂特別編成バレエ団が担当しました。エッセンのバレエ団の方は,多国籍チームで,ロシア系,ラテン系,エジプト...と多彩なメンバーでしたが,「くるみ割り人形」の世界を過不足なく味わわせてくれました。マリーとくるみ割り人形,こんぺい糖の精と王子という2組のペアが出てきましたが,それぞれがメルヘンの世界と大人の世界をしっかりと伝えてくれました。
第1幕終盤のネズミとの戦争のシーンをはじめとして,オーケストラの音も大変ダイナミックでした。全曲を通じて,弦楽器を中心として,しっとりとした味わいがあるのも魅力的でした。「くるみ割り人形」と言えば,組曲版が有名ですが,それ以外にも楽しめる曲が沢山あると思いました(第2組曲を作れそうなぐらいです)。「花のワルツ」をはじめとして,幸福感たっぷりのステージが次々と続くのを見ながら,何とはなく涙腺が緩んでしまいました。
今回のステージは,エッセンのバレエ団以外に,地元の子供たちを含むダンサーが多数出演していました。マレック・テュマさんの演出は,音楽堂のステージの特徴を生かしたもので,贅沢な雰囲気はありませんでしたが,いろいろな所でアイデアが凝らされていました。特に1幕終盤の児童合唱の見せ方が「なるほど」というものでした(詳細はレビューで紹介しましょう)。
バレエには,歌舞伎や能などにも通じるような「型」のようなものがあると思います。楽しいディヴェルティスマンの後に,グラン・パ・ド・ドゥが続き...というのは固定的なパターンなのですが,それを見ながら,「バレエの型というのも良いものだなぁ」「こういう世界にはまってみたい」などと思いました。それと,「最後に全員が踊る」というのが,何とも言えず大好きです。
私の場合,数年に一度しかバレエを生で見ていないのですが,この「くるみ割り人形」については,地元ダンサーの登場の機会を作ることもできるので,「毎年」とは言わないとしても,定期的に上演して欲しい演目です。音楽堂の舞台は,狭いのですが,それが親しみやすい雰囲気にもなっていると思います。新装された金沢歌劇座のステージでの本格的バレエというのも見てみたい気はしますが,音楽堂での親しみやすいバレエというのも悪くはありません。いずれにしても,今回の公演は,観て元気が出てくるような内容だったと思います。1年を締めるのにぴったりの公演でした。
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