金沢歌劇座でのOEKの「椿姫」。王道を行くような正統的な公演。地方発の本格的オペラ上演の最適解かも #oek
今日は,久しぶりに金沢歌劇座に出かけてきました。数年前から数回改修をしていますが,去年はずっとさらに改修を行っており,さらにオペラを上演しやすい劇場になったようです。具体的にどこが変わったのかは,はっきり分からなかったのですが,ステージが広くなり,設備も最新のものになったようです。
今回の「椿姫」公演は,「本格的なオペラ公演にも対応できますよ」ということをアピールするための公演ということになります。そして,そのとおりの王道を行くような正統的なオペラを楽しむことができました。
今回の「椿姫」は,新潟・富山・石川・福井・兵庫の5会場で行うという点も特徴です。ヴィオレッタ,アルフレート,ジェルモンの主役クラス3人を日本を代表する歌手で固め,衣装や舞台も本格的なものにする代わりに共同制作にすることによって,公演回数を増やすという工夫がされていました。これまで金沢歌劇座で何回かオペラを見てきましたが,今回のやり方が最適解なのかもしれない,と思わせる立派な内容でした(地元の合唱団が出ないのは,ちょっと寂しい気はしましたが)。
まず,森麻季さん,佐野成宏さん,青山貴さんの3人の歌が見事でした。森さんと佐野さんについては,以前も聞いたことがありますが,特にジョルジョ・ジェルモン役の青山さんの歌が圧倒的と言って良い素晴らしさでした。このオペラは,第2幕で,ヴィオレッタが,ジェルモンの説得によって,アルフレートをあきらめる部分が,ドラマ上のポイントだと思うのですが,青山さんの余裕のある説得力十分の歌を聞いて納得しました。老人役というよりは瑞々しさを感じさせてくれるようなところがありましたが,その惚れ惚れとするような美声には有無を言わせぬ魅力がありました。
この第2幕第1場を核として,他の幕や場も全て,隙なくきっちりと充実した舞台を作り上げていました。森さんのヴィオレッタは,とても上品で第1幕などはちょっと線が細い気はしたのですが,一声聞いて,「森さんだ」と分かるしっとりとした声が魅力で,第3幕に向けて,どんどん熱さを増して行きました。終幕の最後の部分は,絶唱という感じで,死の直前に輝きを見せるのが感動的でした。ヴィオレッタが亡くなった代わりに,聴衆の方に生命力が伝わったような終わり方で,個人的には,聞いていてエネルギーをもらうことができました。
佐野さんの方は,絶好調ではなかった気がしたのですが,アルフレートらしい,ストレートさと豪快さがあり,大変スケールの大きな歌を聞かせてくれました。新国立劇場合唱団の皆さんの歌も立派でした。群衆シーンがこれだけ映えていたのも,やはりプロの合唱団ならではだと思います。現田茂夫さん指揮OEKの演奏も,大変じっくりと聞かせてくれるもので,オペラ全体の雰囲気同様,王道を行くような安定感たっぷりの演奏でした。
舞台装置と照明も印象的でした。セットは決して大げさなものではなかったのですが,非常にうまく出来ていました。全幕を通じて,6本の柱の間に,可動式のついたてのようなものが置いてあったのですが,これが各場面ごとに表情を変え,シンプルながら,豪華な雰囲気を作っていました。各幕ごとに,基調となる色彩感が分けられていたのも印象的で,各幕ごとに鮮やかな印象が残りました。
金沢歌劇座は,建物全体としてはオペラハウスというほどには豪華な感じはないのですが,今回の公演を見て,「手軽に本格的なオペラを楽しめる場所」になったなぁと実感しました。この公演は,OEKのある金沢市がイニシアティブを取った5都市による共同制作方式の第1作ということになりますが,誰もが納得の出来だったと思います。これからの富山・福井・新潟・兵庫公演(これにはOEKは出ませんが)についても,大きな成果を上げるのではないかと期待しています。
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