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2011/05/15

声楽アンサンブル ラ・ムジカ第9回演奏会は,ラヂッチ・エヴァさんのさよなら公演に。ラターのレクイエムも感動的でした。

今日は午後から声楽アンサンブル ラ・ムジカ第9回演奏会を聞いてきました。ラ・ムジカさんは,以前からOEKメンバーとの共演による合唱曲を演奏してきましたが,今回は,ジョン・ラターのレクイエムが演奏されるということで,これを目当てに聞きに行きました。

この曲は,フォーレのレクイエムの系統を引く,静かで,美しく,親しみやすい作品です。過去,金沢で演奏されたことがあるのかは不明ですが,是非音楽堂で聞きたかった作品です。指揮の大谷研二さんから,「ラ・ムジカの指揮をされてきたラヂッチ・エヴァさんがハンガリーに帰国されることになったので,今回は団員それぞれが,その思いを込めて演奏する」といったアナウンスがありました。エヴァさんとラ・ムジカさんについては,外から見ていても名コンビだと思っていたので,非常に残念ではありますが,人間の世界に「永遠」というものはありません。私自身もその思いを抱きながら聞くことにしました。

今回のラターの器楽の編成は,フルート,オーボエ,チェロ,ティンパニ,グロッケン,ハープ,そして,オルガンという変則的なものでしたが,この響きが非常に色彩的かつ透明で,悲しみを秘めているはずのレクイエムがとても聞きやすいものになっていました。これはフォーレのレクイエムにも共通する性格ですが,ラターの方は,ミュージカルにでも出てきそうな親しみやすいメロディや黒人霊歌を思わせる気分など(歌詞にも英語が含まれています),クラシック音楽のカテゴリーに収まらないような分かりやすさがあるのが特徴です。

ラ・ムジカの皆さんは,この曲を本当にじっくりと歌ってくれました。名残を惜しむのにぴったりの歌でした。歌詞の最後の「エテルナ(永遠)」という言葉が実に感動的でした。

演奏会前半に歌われた曲も楽しめました。ハンガリー語の曲と日本語の曲が歌われましたが,日本語の歌詞に外国人が曲を付けた 組曲「ざくろ」の中の2曲が特に新鮮に感じました。ここでは,ハンドドラムとコントラバスが加わっていたのが,特に効果的でした。最初のステージのコダーイとバルトークの曲も,澄んだハーモニーとキレの良いリズムが印象的でした。

アンコールでは,エヴァさんとラ・ムジカさんのお得意のレパートリーの「ガブリエラの歌」が歌われました。ここでは,過去にラ・ムジカに参加されていた方も含めた合唱団がバックコーラスをつとめる中,エヴァさんが力が沸き出てくるような感動的な歌を聞かせてくれました。

通常はこれで演奏会は終わりかもしれませんが,今回はさらに,東日本大震災の被災者のためにコダーイの合唱曲が歌われました。エヴァさんについては,またハンガリーから来ていただくことは可能だが,震災で亡くなられた方にはもう会えない...そういう思いを込めてのアンコールだったのだと思います。

今回の演奏会は,ラ・ムジカの皆さんにとって大きな節目になる公演でしたが,私たち音楽ファンにとっても忘れられない演奏会になったと思います。エヴァさんの歌が金沢で聞けなくなるのは,とても寂しいことですが,何年か後にまた金沢に来て,ガブリエラの歌を聞かせて欲しいものです。

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