今晩は「協奏曲の夕べ」。上原彩子の「皇帝」VSブーニンのモーツァルト:23番 with 山下一史/OEK。どちらのキャラクターもしっかり発揮された,「ピアノ・フェスティバル」風演奏会でした。#oekjp
先週の金曜日から4日の間に3回,石川県立音楽堂に来ています。OEKの場合,「芸術の秋」というよりは,「ピアノの秋」という感じで,名ピアニスト,話題のピアニストが続々登場しています。この日は,「協奏曲の夕べ~二大国際コンクール優勝者を迎えて」ということで,一晩で上原彩子さんとスタニスラフ・ブーニンさんという2人の人気ピアニストが山下一史指揮OEKと共演登場するという,贅沢な内容の演奏会でした。
主催者としては,チャイコフスキーコンクールの優勝者対ショパンコンクールの優勝者という意図があったようですが,そろそろ,コンクール歴については,無視してあげたいところですね(特にブーニンさんには)。
前半は上原さんのピアノで,ベートーヴェンの「皇帝」が演奏されました。OEKはこの曲を,いろいろなピアニストと何回も何回も演奏していますが,今回の上原さんのピアノには特に明るく華麗な印象がありました。今回は3階席で聞いたこともあり,ホールいっぱいに気持ち良く広がる音を楽しむことができました。上原さんのピアノの音には,磨き上げられた美しさがあるのですが,その表現は,神経質ではなく,「皇帝」のタイトルに相応しい,堂々としたスケールの大きさを感じさせてくれました。
後半はブーニンさんによるモーツァルトのピアノ協奏曲第23番でした。曲の長さからすると,「皇帝」が後半に来るのが普通ですが,やはり,ここは先輩のブーニンさんに敬意を表したのかもしれません。演奏自体も,上原さんの「皇帝」に劣らない,個性溢れる演奏でしたので,この配列で全く問題はありませんでした。
ブーニンさんと言えば,ショパンコンクールで優勝した頃から,一癖も二癖もあるような演奏を聞かせてくれていました。曲によっては,「ついていけない」と思うケースもありますが,今回のモーツァルトとはピタリと波長があってしまいました。「自然体」とは正反対の演奏で,随所に「ひっかかり」とか「孤独感」を感じさせるものでした。
第1楽章の第2主題に入る前に大き目の間を入れ,音量とテンポをぐっと落として,暗く演奏する辺り,大変魅力的でした。第2楽章もシチリア舞曲の揺れるような感じは無視してゴツゴツと演奏していました。どこかグールドの演奏するバッハのような印象があり,これもまた魅力的でした。最終楽章については,若い頃は,猛スピードで演奏していましたが(ブーニンさんが初来日(多分)した時に外山雄三指揮NHK交響楽団と共演したライブ録音CDを何故か持っています),この日の演奏は,かなり落ち着いたテンポで演奏しており,不思議なファンタジーの世界に遊ぶといった趣きがありました。この辺は,人によって受ける印象は違うと思いますが,私には大変魅力的な演奏でした。
お2人はそれぞれ,ピアノ独奏曲のアンコールを演奏しました。チャイコフスキーの「四季」の中の1曲とショパンのマズルカの中の1曲ということで,絵に描いたようにバランスの良い選曲でした。
今回はOEKではなくピアニストが主役の演奏会でしたが,こういう演奏会を金沢で行うことができるのも,OEKという存在があるからでしょう。”ビエンナーレ”ということで2年に1度ぐらいはこういうフェスティバル的な雰囲気のある演奏会を楽しむのも良いものですね。
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