OEKのクリスマス・オペラ公演「ヘンゼルとグレーテル」を観てきました。この公演は2日連続で行われることになっていますが,そのうち今日23日の方はファンタジー定期として行われました。
邦楽ホールでは,これまでもたびたび小編成のオペラ公演が行っており,成果を上げてきましたが,今回もまた楽しめる内容でした。オペラ公演は,純粋な定期公演に比べると,総合芸術だけあって,多面的に(?)突っ込みどころが多いのが楽しいところです。
フンパーディンクの「ヘンゼルとグレーテル」は,子供でも楽しめる,西洋のオペラでは珍しい作品です。大人が1人で見に行って「どういうものだろうか?」と観る前は思ったりしましたが,ほとんど違和感なくオペラに浸ることができました。最初の方で,「トントントン」とか出てきた時は,「おかあさんといっしょ」的世界のようで,ちょっと照れくさかったのですが,大詰めで同じ曲が出てきた時は,とても喜びに溢れて感動的に響いていました。これが,オペラですね。
スムーズな展開も良かったですね。邦楽ホールは,さすが演劇用ホールだけあって,舞台転換が大変スムーズで,ストレスなく作品を楽しむことができました。確かに子供向けの演出もありましたが,前半最後のバレエ,後半最後の児童合唱と随所にオペラらしい見せ場があり,全く退屈しませんでした。特に最後の部分は,感動的でした。ヘンゼルとグレーテルが魔女をやっつけた後,子供たちが大勢出てきて,両親と再会し,冒頭のホ
ルンの重奏と同じメロディの合唱曲を歌う辺りは,分かっていても気持ちが熱くなりました。
歌手の中では,グレーテル役の西野薫さんとヘンゼル役の直江学美さんが役柄にぴったりの歌と演技でした。大人が子供の役を演じるのは「どうかな?」と見る前は思っていたのですが,大人だからこそ演じられるのだと思います。特にしっかりもののグレーテルにぴったりの張りのある声を聞かせてくれた西野さんの声は素晴らしいと思いました。
その他の歌手では,お父さん役の星野淳さんの声量たっぷりの朗々たる歌が印象的で,「ドイツのおとうさん」というキャラクターを強く印象付けてくれました。その他,お馴染みの地元の歌手の皆さんの歌も魅力的でした。前半の最後に稲垣さんの「眠りの精」,後半の最初に安藤さんの「露の精」が出てくるのですが,オペラ全体がシンメトリカルな感じになっており,構成も見事だと思いました。
唯一の敵役の魔女は,テノールの志田さんが歌っていました。セリフがやや聞き取りにくかったのがちょっともどかしい気はしましたが(この日は,あらすじを伝える字幕があったので,大きな問題ではありませんでしたが),濃いキャラクターを見事に演じていました。
上述のとおり,エコール・ド・ハナヨ・バレエの皆さん,OEKエンジェル・コーラスの皆さんの活躍も素晴らしく,終演後は,とても良い雰囲気のカーテンコールが続きました。
今回のOEKの編成は,弦楽器が5人だけ,管楽器はホルン以外は1人だけというコンパクトな編成で,それを補強するように,ピアノが加わっていました。もともとはワーグナーの流れを引く大編成なのですが,邦楽ホールで上演する分には,「ぴったり」で,物足りなさは全くありせんでした。ピアノが入っているあたり,どこかリヒャルト・シュトラウスの「ナクソス島のアリアドネ」を思わせるような感じもあり,オリジナリティのある,OEK版「ヘンゼルとグレーテル」となっていました。
是非,このパターンでの続編を期待したいと思います。「ヘンゼルとグレーテル」についても,時々,この時期に,再演していって欲しいと思います。