OEKのCD

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2011年6月5日 - 2011年6月11日

2011/06/10

ダニエル・ハーディング指揮マーラー・チェンバー・オーケストラ金沢公演 ブラームス:交響曲4&1番。ストレートに曲の美しさを聞かせる快演。透明だけれども深いサウンドが魅力。1年後のOEKとの共演にも期待。

週末金曜日の夜。石川県立音楽堂で,ブラームスの交響曲2曲を聞いてきました。演奏は,ダニエル・ハーディング指揮マーラー・チェンバー・オーケストラ(MCO)です。このコンビは,大阪でブラームスの交響曲全集を演奏するので,その半分が演奏されたことになります。今回は,特に人気の高い4番と1番の組み合わせ,しかもチケット代もリーズナブルということで,会場はほぼ満席でした。

最初に4番が演奏されましたが,全く力んだところのない演奏で,オーケストラのくっきりとした音の美しさが自然に伝わってくるような演奏でした。楽器の配置は,コントラバスが下手側に来る古典的な対向配置でしたが,弦楽器の奏法はノン・ヴィブラートではなく,基本的にはオーソドックスなスタイルだったと思います。

それでも,曲全体の雰囲気は大変すっきりとしていました。ゆったりとした堂々たるテンポを取っていましたが,要所要所での音のキレ味の良さや木管楽器を中心としたクッキリとした音色が特徴的で,全体として爽快な後味が残りました。もったいぶったようなタメがないのも若々しく,ハーディングらしいと思いました。

4番では,変奏が進むにつれて,次々と音色が変わる4楽章の鮮やかさが特に印象的でした。聞いているうちに,どこか20世紀の音楽を聞いているような感覚になったのですが(これは,つい最近聞いた,OEKの定期公演の影響かもしれません),ブラームスの持つ音楽の現代性を浮き彫りにしていたような気がしました。曲の最後の方は熱くなっていましたが,それでも常に曲全体を俯瞰しているようなところがあり,大変スケールの大きな演奏になっていたと思いました(実際,室内オーケストラにしては,編成が大きく,弦楽器は,12-10-8-6-5ぐらいだったと思います)。

後半は,1番が演奏されました。やはり1番は盛り上がるので,この順番になったのだと思います。冒頭のティンパニの部分は,自然体で,深刻さとは無縁の穏やかな雰囲気で曲は始まりました。4番同様,曲全体を見通したようなメリハリがはっきりしており,各楽章ともに大きなクライマックスを切れ味良く,爽快に築いていました。大きな動作でスパっと音を切る姿がいかにも若々しく,ブラームスに命がけで立ち向かうといった壮絶さのようなものがないのが,ハーディングさんらしいところだと思います。

ハーディングさんとMCOは,楽譜にある音を鮮やかに再現しているのですが,それが恣意的ではなく,自然な音楽の流れになっているのが素晴らしいと思いました。各楽章ともMCOのメンバーの個人技も楽しめました。ハーディングさんは,メンバーの自発性を最高度に引き出しているようで,第4楽章などは,聞いていて,次々に花が咲いていくような,楽しさを感じました。

コーダの部分は,キレの良い音が続く,大変生き生きとした演奏で,このまま一気に走るのかな,と思ったのですが,いちばん最後の音は,長ーく伸ばした後,スッと音が減退していくように締めていました。金聖響さんのブラームス第1番もこういう終わり方をしていたのですが,力で威圧するようなところのない美しいエンディングというのは,とても新鮮です。

アンコールでは,交響曲第2番の第3楽章が演奏されました。吉井瑞穂さんの美しいオーボエ・ソロがソリストのように活躍していました。ここでは,ハーディングさんはほとんど手を動かさず,上半身を揺らすだけで指揮をしていました。ハーディングさんとMCOの関係の良さを見せてくれるようなアンコールでした。

その後,サイン会も行われました。実は,この日は休憩時間が25分もあり,その間,ハーディングさんが,ロビーに出てきて,自ら募金のお願いをしていました。この日は,ステージ上だけではなく,すぐ間近でもハーディングさんに接することができたのですが,その気さくさにも好感を持ちました。

ハーディングさんは,2012年7月のOEKの定期公演に登場することになっています。きっと,OEKファンだけではなく,OEKメンバーも,その虜にしてくれるのではないかと思います。1年後が今から楽しみです。

2011/06/08

板倉康明指揮のOEK定期公演は,シェーンベルクから始まるトンガッタ選曲。舘野泉さんによる吉松隆「ケフェウス・ノート」は,美しくかつ大胆な作品。 #oekjp

今日は板倉康明さん指揮OEKの定期公演を聞いてきました。前回のリープライヒさん指揮の定期公演も大胆な内容でしたが,今回の定期公演は,さらにそれの上を行くような演奏会でした。リープライヒさんの時は,現代的であっても,ヨーロッパ音楽的な匂いはあったのですが,シェーンベルクから始まったこの日のプログラムは,一般的なクラシック音楽からは,かなり離れた曲ばかりでした。

今回のプログラムは,吉松さんの作品を除くと,弦楽器のメンバーが非常に少なく,ホルンなどを除くとほとんど各パート1名といった感じの独特の編成の曲ばかりでした。そういう意味では,「もっとカンタービレ」シリーズに違いぐらいの曲ばかりだったのですが,たまにはこういう「室内楽に近いオーケストラ」という試みも面白いと思いました。

演奏された曲の中では,やはり舘野さんが登場した吉松隆のピアノ協奏曲「ケフェウス・ノート」がいちばん良かったと思いました。吉松サウンドといっても良い,詩的で静かで透明感のある雰囲気で始まった後,途中で,山下洋輔さんも顔負けの肘を使った奏法が出てきたり,全く退屈する暇のない作品でした。

舘野さんは,「左手だけで演奏するピアニスト」ということで,この作品を重要なレパートリーとして何回も演奏されています。舘野さんのピアノには,メッセージをトツトツと物語るような”静かな雄弁さ”があります。それだけではなく,芯の強さや熱さも感じさせてくれます。その演奏を聞いて,力が沸いてきた人も多かったのではないかと思います。アンコールでは,吉松隆編曲によるカッチーニのアヴェ・マリアが演奏されましたが,これも絶品でした。

演奏会の最初に演奏されたシェーンベルクの室内交響曲第1番は,調性はあるのですが,なくなる寸前という感じで,かなり歯ごたえがありました。他の作品についてもそうだったのですが,各楽器がソりスティックに主張しあう感じがスリリングな演奏でした。

後半最初に演奏された,M.リンドベルイのジュビリーズもトンガッタ感じの作品でしたが,かすかにシベリウス風味を感じさせるようなところがあり,シェーンベルクの曲よりは,分かりやすいと思いました。板倉さんの話によると,吉松さんの曲と通じる響きを持っているので,選曲したとのことでした。

演奏会最後に演奏された,アダムズの室内交響曲は,そのタイトルどおり,シェーンベルクの曲を意識しているのですが,ドラムスがリズムを刻み,シンセサイザーが所々で加わるなど,独特のノリの良さとサウンドをもった作品になっていました。コンサートマスターの松井さんをはじめとして,各楽器の見せ場も沢山ありました。ドラムスを担当していた渡邉さんは,特に活躍が目立っていました。最初は,単純にリズムを刻んでいたのが,段々と複雑なリズムになり,楽器が変わり...とドラムを聞いているだけでも楽しむことができました。

というわけで,今回は,新しいもの好きのOEKにとっても珍しいぐらいの大胆な選曲の公演でしたが,それでもお客さんがかなり沢山入っていました。「スターライト席」と「お試し会員効果」と「舘野さんの人気」のおかげもあったと思いますが,こういう新しいプログラムを自然に受け入れて,楽しもうとするお客さんが増えつつあるのはとても良いことだと思います。聞いているうちも,「普通のクラシック音楽」が懐かしくなってしまいましたが(これは,10日のハーディング指揮MCOに期待),いろいろな刺激を得るためにも,時にはこういう定期公演も良いなと思いました。

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