いしかわミュージックアカデミー15周年記念環日本海交流コンサート 井上道義/OEKと5人の名手が共演。神尾真由子のバーンスタインはロマンティック&ダイナミック! #oekjp 。
いしかわミュージックアカデミー(IMA)も,今回で15回目となります。それを記念して,今年の環日本海コンサートは一段と豪華な内容となりました。チェロのジャン・ワン,工藤すみれ,ヴァイオリンのクララ=ジュミ・カン,神尾真由子,ピアノの後藤正孝の5人のソリストが井上道義指揮OEKと共演しました。IMAで講習を受けた後,世界に羽ばたいて活躍している若手アーティスト4人と講師として参加している名手ジャン・ワンということで,どの曲も聞きごたえがありました。
最初の工藤すみれさんの独奏によるロココ変奏曲は,とても端正で,技巧よりは内容を感じさせる演奏でした。OEKも,この曲を過去何回も演奏しているだけあって,万全のサポートを聞かせてくれました。続く,ブラームスの二重協奏曲は,OEKが演奏するのは,久しぶりだと思います。個人的には,ちょっと苦手な曲だったのですが,今回のクララ=ジュミ・カンさんとジャン・ワンさんとの共演は,大変雄弁でスケールの大きな演奏でした。大曲を一気に楽しませてくれました。ジャン・ワンさんの艶やかで奥の深さを感じさせてくれる音にまず惹かれたのですが,クララさんの方も互角に渡り合っていました。毎年思うのですが,さすがです。それに触発されるように,井上/OEKもダイナミックな音楽を聞かせてくれました。
この演奏は,日中韓の共演ということになりました。最近は,竹島や尖閣諸島の問題で,日中,日韓の関係がギクシャクしていますが,この日の演奏会には,国境はなかったですね。IMAは,日中韓の若手アーティストが集まる場として定着してきています。今後,国の問題が個人レベルでの国際交流に水を差すことがないことを願っています。
後半はまず,ピアノの後藤正孝さんが登場し,リストのピアノ協奏曲第1番を演奏しました。過去の日本海交流コンサートでは,若手ヴァイオリニストばかりが登場していた印象がありますので,ピアノ協奏曲,しかもOEKが滅多に取り上げない,リストのピアノ協奏曲が演奏されたのは,とても新鮮でした。後藤さんは,完全にこの曲を手の内に入れており,安心して楽しむことができました。ピアノの音が大変明快で,大きく飛翔するような軽やかさがあったのがとても印象的でした。
最後にお馴染みの神尾真由子さんが登場しました。井上道義さんは神尾さんに絶大な信頼を持っているようで,考えてみると,このコンビで色々な協奏曲を聞いてきました。今回演奏されたバーンスタインのセレナードはその中でも特にすばらしい演奏だったと思います。この曲は,OEKが岩城さん時代から何回も演奏している曲ですが,こんなにロマンティックな曲だとは思いませんでした。曲の最初の部分から,神尾さんヴァイオリンの非常にデリケートで暖かな音の魅力満載でした。6人のパーカッションによる色彩感とダイナミクスも素晴らしく,安心して楽しめる演奏になっていました。終楽章でジャズ風に音楽がスイングする部分では,井上さんならではの”踊る指揮”が見られました。こういう部分でのノリの良さと音楽の盛り上げ方は,他の指揮者には真似できないものですね。終演後は盛大な拍手が続き,(恐らく予定外の)アンコールで,このスイングする部分が再度演奏されました。
今回は,大変充実した演奏の数々を非常に安い価格で聞くことができました(私の座席は3階席だったのですが,何と1000円でした)。その割に空席が結構あり,もったいないと思いました。IMAの後は,井上さんによる指揮講習会が始まります。全国的に暑い夏が続いていますが,8月末までは,金沢に集まっている若手アーティストたちの熱い演奏に浸りたいと思います。
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