OEK新シーズン開幕公演は岩城宏之生誕80年記念.ベートヴェンの全?交響曲を効率よく鑑賞.田島睦子さんのプーランクも生き生き #oekjp
9月になりOEKの定期公演の新シリーズが始まりました。毎年,岩城宏之音楽賞の受賞者との共演,コンポーザー・オブ・ザ・イヤーによる新作の初演というパターンで始まっていましたが,今年は,岩城宏之OEK永久名誉音楽監督の生誕80年を記念して岩城宏之メモリアルコンサートになりました(今シーズンは,コンポーザー・オブ・ザ・イヤーはなし?)。
メモリアルコンサートは,9月6日に東京でも行われていたのですが,内容の方はかなり違っていました。東京公演では,ジュディ・オングさん,ペギー葉山さんの歌といったクラシック音楽以外と一柳さん,武満さんらの現代音楽とが混在し(その他,合唱や打楽器のステージもあり),最後は第9の第4楽章で締めるというものでした。
金沢公演の方は,池辺さんがOEKのために書いた「悲しみの森」で始まった後,今年の岩城音楽賞受賞者の田島さんとの共演でプーランクのピアノ協奏曲,後半は西村朗さんによる「ベートーヴェンの8つの交響曲による小交響曲」とベーーヴェンの第9の4楽章が演奏されました。東京公演は,お祭り的なガラコンサートでしたが,金沢公演の方は,意外に普通の公演でした。
特に西村さんの作品については,もっとふざけた感じの作品かと思っていたのですが,意外に真面目な曲でした。ベートーヴェンの8番までの全交響曲の全楽章のモチーフを散りばめた曲で,知的遊戯といった趣きでした。最後に演奏された第9の第4楽章の方は,「いつものベートーヴェン」ですので,その点では,ちょっと違和感を感じましたが,定期公演の後半の曲としては,丁度良いと感じました。
第9の方は,4楽章だけということで,聞く方としても,やはりちょっと勝手が違いました。普通は3楽章までじわじわと期待を高め,4楽章で一気に盛り上がるというパターンですので,「全曲聞きたくなった」というの正直な感想です。演奏の方も,熱っぽく盛り上がるというよりは,がっちりとまとめるような堅固さのある演奏でした。
独唱者では岩城さんと旧知の間柄の木村俊光さんを久しぶりに聞くことができたのが嬉しかったですね。声も非常に立派でした。声の艶は全盛期ほどではなかったと思いますが,曲全体の士気を高めるような力を持っており,岩城さんのメモリアル公演にぴったりでした。
演奏会の前半では,田島さんのソロによるプーランクがとても楽しめました。田島さんは7月のミンコフスキとの定期公演に続いてのプーランクの演奏でしたが,実に堂々と華麗に演奏していました。曲自体,ロマン派の曲のパロディみたいなところがあり,「ラフマニノフが旅行でパリに来て,気分良く作曲していった」ような独特の面白さがありました。田島さんはこれで,すっかりプーランクの専門家になりましたね。
この日は,池辺晋一郎さんと西村朗さんという「N響アワー」の司会者コンビによるトークコーナーもありました。時間があれば,どれだけでも岩城さんのエピソードが出てきそうでした。今だから話せるということ出てきて,会場は非常に和やかな雰囲気になりました。
終演の際に井上道義さんから,1年後の定期公演から「少しやり方を変えます」というアナウンスがありました。マイスター公演の方を,金・土2回ずつの形にするようです(井上さんはそう思っているということで,確定ではないとのことですが)。いろいろと挑戦していくのが,岩城さん時代からのOEKの伝統だと思います。金沢での公演回数が増えるということで,ファンとしては大いに期待したいと思います。2回公演となると,富山,福井,能登,加賀のお客さんに今以上に来ていただく必要があるでしょう。広報活動も今以上に重要になりそうです。
« 夏休みも終盤。久しぶりに雨の降った金沢。21世紀美術館でジャスミン・チョイさんの瑞々しくも華麗なフルートを聞いて生き返りました。 #oekjp | トップページ | アルデイッティ弦楽四重奏団+藪俊彦@金沢21世紀美術館。ケージと能舞取り合わせに加え,密室空間でのリゲティが凄かった!た »
この記事へのコメントは終了しました。
« 夏休みも終盤。久しぶりに雨の降った金沢。21世紀美術館でジャスミン・チョイさんの瑞々しくも華麗なフルートを聞いて生き返りました。 #oekjp | トップページ | アルデイッティ弦楽四重奏団+藪俊彦@金沢21世紀美術館。ケージと能舞取り合わせに加え,密室空間でのリゲティが凄かった!た »
コメント