アルデイッティ弦楽四重奏団+藪俊彦@金沢21世紀美術館。ケージと能舞取り合わせに加え,密室空間でのリゲティが凄かった!た
オーケストラの定期公演シリーズ同様,金沢21世紀美術館も9月に展覧会の入れ替えを行っています。本日から始まった,「ソンリュミエール,そして叡智」にあわせるかのように,美術館内のシアター21で,アルデイッティ弦楽四重奏団の室内楽の演奏会が行われたので聞いてきました。
今回の演奏会ですが,「サイレンス01:大拙からケージ,そして22世紀へ」という副題が付いており,金沢出身の哲学者・鈴木大拙とその影響を受けている作曲家,ケージの作品が取り上げられました。金沢特別企画として,地元の宝生流能楽師の藪俊彦さんがケージの4楽章からなる弦楽四重奏曲に合わせて舞いました。藪さんとクラシック音楽との共演については,ラ・フォル・ジュルネ金沢などでもお馴染みなのですが,現代音楽との組み合わせというのは今回が初めてかもしれません。
まず驚いたのは,4楽章ごとに面や衣装やカツラが変わっていたことです。それほど長くない曲だったので,一種早変わり的な感じになっており,視覚的には飽きずに楽しむことができました。ただし,禅の世界の影響を受けているケージの曲に合わせる能としては,もう少しシンプルな演出でも良かったのかなと思いました。
アルデイッティ弦楽四重奏団の演奏を聞くのは初めてだったのですが,「さすが!」と思いました。このシアター21は,「残響ほとんどゼロ」というホールなので,特に弦楽奏者にとっては演奏しにくいホールなのですが(音程の狂いなど演奏の粗が目立ちやすいホールです),今回の場合,それを逆手に取るかのように,非常に緻密で,集中力十分の演奏を聞かせてくれました。
最初に演奏された,一柳さんのインタースペースの時から,間近で聞く生の音の迫力にグッと引き付けられていたのですが,次のリゲティの弦楽四重奏曲第2番はさらに凄い曲,そして,凄い演奏でした。ハンガリー出身の作曲家ということで,少しバルトークを思わせるような所もあるのですが,さらに前衛的で,メロディは全然ありません。楽章ごとにハーモニクスやピツィカートなどの特殊奏法が次々と登場し,まずは,その技巧に圧倒されました。CDで聞くと,こういう曲はなかなか聞き通せないのですが,今回のような至近距離で聞くと,曲のテンポやリズム,音色や肌触りの変化が非常に鮮やかに伝わってくるので,メロディの有無など全く問題になりません。ホールの響きがないので,誰が演奏しているのかがくっきりと分かります。前衛的な曲の生々しい演奏にどっぷりとつかったような感じになりました。
弦楽四重奏なのに,どこか管楽器のように聞こえたり,3楽章のピツィカードなどは打楽器のように聞こえたり,現代音楽のスペシャリストとしての,この弦楽四重奏団の凄さも強く実感しました。
このところ,いわゆる「現代音楽」については,旗色が悪くなっている感じですが,狭い部屋で演奏者と一体になって聞くと,「非常に面白い」ということが分かりました。ただし,やはりこれは名曲を素晴らしい団体で聞いたからかもしれません。
このサイレンスのシリーズですが,02が10月中旬に,今度は昨年オープンした鈴木大拙館で行われます。こちらには,一柳慧さんが登場します。こちらは恐らく,池の回りで演奏することになると思うのですが,どういう雰囲気になるか,非常に楽しみです。
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