サイレンス02:大拙からケージ,そして22世紀へ。ライトアップされた鈴木大拙館の水鏡の庭で一柳慧さんを中心とした室内楽。まさにサウンド・オブ・サイレンスという雰囲気!
9月に金沢21世紀美術館で行われたアルディッティ弦楽四重奏団の演奏に続く,「サイレンス02」として,今回は,開館して丁度1年になる鈴木大拙館で一柳慧さんを中心とした室内楽の演奏会が行われてきたので聞いてきました。鈴木大拙館は金沢出身の建築家谷口吉生さんによって設計された博物館です。ただし,普通の博物館とはコンセプトが違い,建物+庭の全体の雰囲気で鈴木大拙の思想のイメージを伝えようという,独特の建物です。歩いて5分ほどの所にある金沢21世紀美術館の「弟分」的な感じで,予想以上に多くの入館者を集めているようです。
建物のいちばんのポイントは,「水鏡の庭」という池というかプールのような場所の中に四角い「思索空間」と呼ばれるスペースがある点です。今回は,この水鏡の庭と思索空間を使ってクラシック音楽の演奏会を行うという冒険的な試みでした。次のような雰囲気です。
もともと演奏会用の場所ではなく,しかも,「ほとんど野外」という場所ですので,どうなるかと思ったのですが,大拙館のコンセプトをしっかり生かした,私自身,「かって味わったことのない」ような独特の演奏会となりました。
一柳さんはピアノを担当し,思索空間の中で演奏していたのですが,それ以外のヴァイオリン,ハープ,フルート,笙などの楽器は,水鏡の庭の至るところで演奏し,建物全体が静かな音に包まれました。演奏された曲は,一柳さんの作品とケージの作品が交互に演奏された後,バッハのヴァイオリン協奏曲第1番(ピアノ伴奏版)で締められました。
ケージの作品は静かな作品が多く,虫の声が聞こえる静かな空間にぴったりの気分を作っていました。一柳さんの曲の方も,東洋のハープ「くご」の独奏曲があったり,笙とヴァイオリンのニ重奏があったり,東洋と西洋を融合させたような面白さが伝わってきました。
ケージのナンバー・ピースVという曲は,この日登場した全奏者で演奏したのですが,ケージらしく偶然性に任せるようなところがあり,沈黙と静けさを強く感じさせてくれました。演奏中,目の前の水面を眺めながら,半分瞑想するような感じになりましたが,「鈴木大拙館でケージ」というのは,最高の取り合わせだと思いました。是非機会があれば,この雰囲気を再度味わってみたいものです。
最後のバッハは,人間的で有機的な雰囲気に感じられました。現実世界にちょっと戻されたような感じでしたが,この曲の雰囲気も(特に第2楽章は),「秋の庭」の気分にぴったりでした。背景が「本多の森」というのも最高です。
今日は結構寒く,休憩なしで1時間以上外に居たので風邪気味になりそうでしたが,薪能気分で味わう室内楽というのは,非常に面白いと思いました。今回は座布団に座って聞いていたのですが(こういうケースも珍しいと思います),演奏会の時間をもう少し短くし,色々と館内を歩きまわりながら聞くというというスタイルでも面白い気がしました。
いずれにしても「大拙館でケージ」の続編を期待したいと思います。武満徹とかサティとかでもぴったりかもしれないですね。
PS.ちなみに,明日14日の18:00~も同じ公演が行われます。定員は70名程度でしたが,当日券も発売されるようです。
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