OEK定期公演。OEKは登場せず,マルク・ミンコフスキ指揮レ・ミュジシャン・ドゥ・ルーヴル・グルノーブが登場。あの手この手で楽しませてくれました。
昨年の7月,OEKの定期公演に登場したマルク・ミンコフスキさんが今度は手兵のレ・ミュジシャン・ドゥ・ルーヴル・グルノーブとともにOEKの定期公演に登場しました。
この日のプログラムは,前半がシューベルトの「未完成」,後半がモーツァルトのミサ曲ハ短調(これも未完成)ということで,「未完成」の曲を組み合わせていたのですが,毎回,いきなりプログラムを変えてしまうのがミンコフスキさんです。「未完成」の前に,まず,グルック作曲,ワーグナー編曲による序曲が演奏されました。
続いて「未完成」が演奏されましたが,この日の編成は古楽オーケストラとしては,かなり大きめの編成だったこともあり,独特のサウンドを楽しむことができました。古楽器というとノンヴィブラートで軽やかという印象があるのですが,このオーケストラからは,何とも言えない音の暖かみを感じました。ミンコフスキさんの作る音楽は,特に弱音になると,ちょっと不思議で魅力的な表情になります。そのミステリアスな気分が「未完成」にぴったりでした。強奏部分でのちょっと野性的なサウンドとの対比も面白く,聞き慣れた曲から,一味違った魅力を引き出していました。
その後,何とアンコールが演奏されました。通常,前半のプログラムでアンコールが演奏されるのは協奏曲の時だけですが,この日は「未完成」の後に同じシューベルトの交響曲第3番の最終楽章が演奏されました。最初のグルックを含めて,お客さんを驚かせてやろう,というミンコフスキさんのたくらみだったのかもしれません。音楽する喜びに溢れた,快速で駆け抜ける演奏でした。
後半のモーツァルトのミサ曲も,ミンコフスキさんらしさ満載のステージでした。まず,合唱団の人数の少なさに驚きました。何と10人でした。この少数精鋭の合唱団,というよりは,ボーカル・アンサンブルが素晴らしく,時にソロを担当したり,重唱になったり,そして合唱になったり...変幻自在にフォーメーションを変えて歌っていました。
この日のステージは,「特注」のような感じで,前半はステージ奥の台の上にコントラバスが4人並んでいたのですが,後半ではこの台の上に10人の合唱団が並んでいました。その前に,お立ち台のような小さなステージがあり,ソロを取る時はここで歌う形になっていました。
ミサ曲2曲目のグローリアは,小さな曲が合わさっており,それぞれに曲想や編成が違うので,このお立ち台に次から次へとソリストが交代で登場するような形になっていました。曲自体,オペラのアリアのような曲があったりしたので,ちょっとしたガラコンサートを聞くような楽しさがありました。
それぞれの歌手も個性的で,しかも聞きごたえ十分の歌の連続でした。オーケストラの古楽奏法同様,どちらかというとすっきりとした感じなのですが,味が薄い感じは全くなく,声の饗宴という感じになっていました。全体として,教会の中で聞く宗教曲という感じは薄かったのですが,これだけ楽しませてくれるミサ曲というのもすごいと思いました。
今回は,OEKならではの「定期公演が乗っ取られる」定期公演でしたが,これだけの短期間の間に3回目の公演ということで,ミンコフスキさんは,すっかり石川県立音楽堂と金沢市のことが気に入ったのではないかと思います。今後も音楽堂の「常連」として金沢の聴衆を驚かせて欲しいと思います。
PS. このオーケストラは,ミンコフスキさんがお辞儀をすると,全員で一斉にお辞儀をするようなルールになっているようです。OEKも定期公演の終演の際に「一同礼」をしていますが,外国のオーケストラでこれだけ何回も頭を下げてくれるオーケストラも珍しいと思います。日本人からすると,とても親近感を持ってしまいますね。
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