今年の北陸新人登竜門コンサートは楽しめました。MVPはバストロンボーンの森川元気さん。竹多倫子さん,氷見健一郎さんの歌唱もお見事でした。
この時期恒例の北陸新人登竜門コンサート,今回は管楽器・声楽部門でした。ピアノ部門,弦楽器部門に比べると,「何が飛び出すか分からない」といった楽しさもある部門ですが,この日の演奏は,井上道義さんによる盛り上げもあり,「もしかしたら新人登竜門コンサート史上,過去最高かも?」というぐらい楽しむことができました。
何と言ってもバストロンボーン奏者の森川元気さんに拍手を送りたいと思います。この部門にバストロンボーン奏者が登場したのは初めてでしたが(そもそも協奏曲があるとは思いませんでした),森川さんは「選曲の勝利」という感じで,大変楽しい作品を聞かせてくれました。
今回演奏されたのは,ジャズの名曲「テイク・ファイブ」の作曲者デイヴ・ブルーベックの息子のクリストファー・ブルーベックの書いたバストロンボーン協奏曲でした。一体どういう作品なのだろう?と聞く前は予想もつかなかったのですが,本当に楽しい作品でした。ラプソディ・イン・ブルーのような感じの作品と言えば良いでしょうか。ジャズのテイスト満載だけれどもきっちりと3楽章から成っている作品で,クラシックの演奏会で聞いても違和感はありません。井上さんのキャラクターにもぴったりで,OEKメンバーも楽しそうに演奏していました。
赤いサスペンダーで登場した森川さんは,この曲を本当に自分の作品のように自在にのびのびと演奏してくれました。クラシック音楽の世界でのバス・トロンボーンは縁の下の力持ち的な存在だと思いますが,独奏楽器としての楽しさ,雄弁さをしっかりと伝えてくれました。それと何より,森川さんのキャラクターが素晴らしいですね。OEKの大澤さんに匹敵(?)するようなインパクトを感じました。これからどんどん活躍の場を広げて行って欲しいと思いました。
歌手のお2人も,とても完成度の高い歌を聞かせてくれました。特にソプラノの竹田倫子さんの歌にはしびれました。軽やかなソプラノというよりは,常にドラマをはらんだようなほの暗い強さを感じさせてくれる声で,「運命の力」のアリアは,思わず身を正して(?)聞いてしまいました。曲の最後の部分の激しさは,OEKの演奏と相俟って,「これぞヴェルディ」という感じでした。
バスの氷見健一郎さんの声は,大変つややかで,水もしたたるような美しさがありました。「シモンボッカネグラ」の方は,(井上さんの解説によると)「じじい役」,「ドン・ジョヴァンニ」のレポレッロのアリアの方はコミカルな曲ということで,ちょっと若過ぎるかな,ストレート過ぎるかなという気はしましたが,どちらも安心して楽しむことができました。
歌手のお2人については,これからきっとOEKのオペラ公演などに登場する機会も出てくるのではないかと思います。今後の活躍に期待したいと思います。
演奏会の前半は,指揮者なしでリヒャルト・シュトラウスの13管楽器のための組曲が演奏されました。昨年の「もっとカンタービレ」シリーズでもシュトラウスの管楽アンサンブルの作品を聞いたことがありますが,この曲はシュトラウスが20歳頃に書いた作品です。じっくりと管楽器のハーモニーの美しさを楽しませてくれるような演奏で,聞いていて安心感を感じました。
今回の演奏会は,ブルーベックの協奏曲をはじめとして独特のプログラムになりましたが,名曲ばかりではなく,こういう挑戦的な演奏が聞けるのも,新人登竜門コンサートの魅力だと思います。大変楽しめました。
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