安永徹&市野あゆみ&OEK定期公演は素晴らしい充実感。管とピアノの絶妙のバランスを楽しめたモーツァルト,永遠に続くような天国的なマルティノフ,「何と自由!」と思わせるハイドン。言うことなしです #oekjp
ラ・フォル・ジュルネ金沢明けに久しぶりに聞く(と言っても1カ月以内ですが)OEKの演奏は,おなじみ安永徹さんの弾き振りと,市野あゆみさんのピアノによる定期公演でした。
安永さんと市野さんの公演には,ハズレが無いのですが,今回の公演は特に素晴らしかったと思います。古典派んの曲と聞いたことのない現代曲という地味目の組み合わせでしたが,どの曲にも工夫が凝らされており,OEKの魅力を100%引き出してくれるような演奏の連続でした。何よりOEKが伸び伸びと,そして一丸となって演奏している様子が伝わってくるのが良かったと思います。
前半は市野さんのピアノを加えてモーツァルトのピアノ協奏曲第24番が演奏されました。OEKの音にはベートーヴェンを思わせるような引き締まった雰囲気があったのですが,全体的にドラマティックになりすぎることはなく,さりげない美しさを持った市野さんのピアノと共にほの暗い穏やかさを湛えた大人の音楽を聞かせくれました。特に随所に出てくる木管楽器との掛け合いが素晴らしかったと思います。
後半はまずマルティノフという現代の作曲家による「カム・イン!ヴァイオリンと弦楽のための」という曲が演奏されました。全くどういう曲が知らずに聞いたのですが...ほとんどヒーリングミュージックという感じの心地よさを持った作品でした。ただし,曲が進むにつれて同じ構造が何回も繰り返されていることが分かり,どこか催眠的で天国的な気分になってきます。ところどころでチェレスタ(市野さんが担当していました)やパーカッションが入るのですが,同じパターンが繰り返されるので,ちょっとミニマルミュージック的なところもありました。ギドン・クレーメルが初演した曲ということですが,安永さんの独奏ヴァイオリンには,かっぷくの良い安定感があり,いつまでもいつまでも浸っていたいような気持になりました。
最後にハイドンの交響曲第88番が演奏されました。この曲については,フルトヴェングラーやワルターの演奏で馴染んでいたので,今回の演奏の最初の部分を聞いて。「おぉ」と思いました。倍ぐらいの速さだった気がします。しかも,音の強弱だけではなく,弦楽器のフレージングが実に多彩で,全く別の曲を聞くような新鮮さがありました。基本的には大変緻密な演奏なのですが,随所に細かい工夫(というか「遊び」と言った方が良いでしょうか)があり,聞いていて実にスリリングでした。
第2楽章は一見のんびりしているのですが,途中で強烈にティンパニとトランペットが音を鳴らしたり,ハイドンらしさ満載でした。第3楽章の田舎風のメヌエットも工夫満載でした。特にトリオの部分でのちょっとずらしたようなリズムの強調が面白かったですね。緻密に進んでいった後,最後に大きく見得を切り,一気に勢いを増して終わる第4楽章も楽しさ満点でした。
ハイドンの交響曲については古典派のセオリーに従って書かれている曲が多いのですが,今回の演奏を聞きながら「何と自由なのだろう」と感じました。五七五の俳句などの定型詩も同様なのかもしれませんが,今回のようなしっかりと考えられた演奏でハイドンの曲を聞くと,形式があるからこそ自由さが際立つのではないかと思います。
安永さんとOEKのコンビの演奏には,アットホームな雰囲気と同時に,一丸となって工夫とアイデアに満ちた音楽に取り組んでいるようなスリリングさが常にあると思います。6月4日には室内楽公演もありますが,こちらもまたスリリングな演奏を楽しませてくれそうです。
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