OEKのCD

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2013/06/29

OEK弾き振りシリーズ,今回はシュテファン・ヴラダーさん登場。颯爽とした「皇帝」を中心にウィーンの音楽をストレートに楽しませてくれました。 #oekjp

5月末の安永徹さん以来,OEKの定期公演は「指揮者兼ソリスト」の弾き振りシリーズとなっています。今回は,ピアニストとしてお馴染みのシュテファン・ヴラダーさんがOEKに初登場しました。

ヴラダーさんは,ウィーン出身ということで,今回のモーツァルトとベートーヴェンは,もっとも得意とするレパートリーだと思います。OEKのレパートリーの中心ということで,その期待どおり,どの曲も安心して楽しむことができました。

前半,ヴラダーさんは純粋に指揮者として登場しました。最初に演奏されたベートーヴェンの序曲「レオノーレ」 第1番は滅多に演奏されない曲だと思います。「レオノーレ」といえば第3番の序曲が有名で,歌劇「フィデリオ」としては,「フィデリオ」序曲が有名です。この曲は,そのちょうど折衷的な感じの曲のような感じでした。第3番ほどは長くはなく,舞台裏でのトランペットのファンファーレがないのですが,部分的に聞いたことのあるようなメロディが出てきました。

ヴラダーさん指揮OEKの演奏は,まず非常にくっきりとした弦楽器の音が印象的でした。演奏後,ヴラダーさんはコンサートミストレスのアビゲイル・ヤングさんとしっかり握手を繰り返していましたが,ヤングさんがしっかりとリードしている感じで,大変立派で勢いのある音楽を聞かせてくれました。

モーツァルトの交響曲第25番を実演で聞くのは久しぶりです。こちらもオーケストラがしっかりと鳴っているのが印象的でした。雑誌「音楽の友」で評論家の東条碩夫さんが「石川県立音楽堂で聞くOEKの音は最高」といった文章を書いていましたが,そのことを思い出しました。古楽奏法を思わせるほど,すっきりとした響きで始まりましたが,やせた感じはなく,しっかりとした聞きごたえのある音楽を聞かせてくれました。第1楽章は結構しっかりと繰り返しを行っており,2倍ぐらいの長さがあったと思います。第2,3楽章は比較的あっさりと(しかし,味わい深さにも不足しませんでした)聞かせた後,最終楽章は急き立てるような急速になりました。センチメンタルな感じや過剰なドラマはなく,しっかりとした音楽の中からさりげなく哀しみが漂うような見事な演奏だったと思います。

後半の「皇帝」はお待ちかねの弾き振りでした。ヴラダーさんは現在40代後半ということで,今いちばん充実している年代のピアニストだと思います。その予想どおり,最初の和音から堂々とした勢いのある音楽を聞かせてくれました。曲自体,「華麗」なのですが,軽くさらさら流れる感じはなく,どこか品格や風格を感じさせてくれるような落ち着きがありました。ピアノの音も美しかったですね。それと,(あいまいな表現ですが)「ベートーヴェンの音だ」と思いました。明るく美しいだけでなく,どこかロマンの香りが漂っていました。

ヴラダーさんの演奏中の動作ですが,文字通りの「弾き振り」でした。鍵盤を弾いていた手があけば(片手だけでも),間髪をおかず指揮の動作をされていました。「そこまで熱心に指揮しなくても良いかな」という気はしましたが,その分,オーケストラとピアノ演奏の一体感が素晴らしかったと思います。

OEKの演奏も,ヴラダーさんのピアノ同様で,勢いはあるけれども突っ走ることはなく,堂々とした強さを感じさせてくれました。第2楽章なども弱々しさはなく,堂々たる皇帝の歩みを感じさせる感じでした。第3楽章も大変生き生きとした音楽でした。最後の方で,ティンパニとピアノだけが静かに残る部分があります(大変好な箇所です)。今回はバロック・ティンパニを使っており,どこかカラッとした響きを出しており,面白い効果を出していると思いました(菅原淳さんでした)。その後のエンディングの部分は非常に颯爽としており,体操競技などでフィニッシュが格好良く決まったような気持ちよさがありました。

アンコールではリストのコンソレーション第3番が演奏されました。深い息の深さを感じさせてくれるような演奏で,これもまた見事でした。ピアニストとしても円熟していることを実感させてくれました。

というわけで,しっかりとモーツァルトとベートーヴェンの音楽を楽しませてもらいました。

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