イリヤ・ラシュコフスキー ピアノ・リサイタル金沢公演 ショパンのエチュードop.25全曲は,鮮やかな技巧としっとりとした美しさに溢れた小宇宙。素晴らしい演奏でした。
冬が到来したような寒さの中,北國新聞赤羽ホールで行われたイリヤ・ラシュコフスキー ピアノ・リサイタルを聞いてきました。ラシュコフスキーさんは,昨年行われた第8回浜松国際ピアノコンクールで1位を受賞した若手ピアニストです。今回のリサイタルは,それを記念しての「優勝者ツァー」の一環でした。
今回演奏された曲は,ベートーヴェンの「熱情」ソナタ,ブラームス晩年の間奏曲集,ショパンのスケルツォ第1番,ショパンのエチュードop.25全曲,スクリャービンの炎に向かって というプログラムでした。今回,聞きに行こうと思ったのは,もちろんラシュコフスキーさんを聞いてみたかったからなのですが,このプログラムの素晴らしさもその理由の一つです。
特にショパンのエチュードop.25全曲は,有名な曲の割に,金沢ではなかなか実演で聞く機会がありません。それだけ,取り上げるのに勇気の必要な曲だからだと思いますが,ラシュコフスキーさんは見事な演奏を聞かせてくれました。ラシュコフスキーさんの音には,常にしっとりとした重さがあります。ショパンといえば,軽やかで華やかな印象がありますが,そういった面を残しながらも,常に大人の落ち着きを感じさせてくれました。この曲集の全曲を実演で聞くのは,実は初めてのことだったのですが,ラシュコフスキーさんは,この曲の魅力を堪能させてくれる演奏でした。
その他の曲も,それぞれ聞きどころがありました。ベートーヴェンの「熱情」は,後半のショパンに比べると,やや完成度が低い気はしましたが,その浅薄にならない練られた音はベートーヴェンに相応しいものでした。ブラームスの間奏曲は,晩秋の気分にぴったりで,柔らかく落ち着いた気分に浸ることができました。最後に演奏されたスクリャービンの炎に向かっては,他の曲に比べると,少々毛色の違う作品でしたが,神秘的なムードと硬質な力感の同居した演奏は,プログラムの最後に相応しい迫力がありました。
この日は,お客さんの数がそれほど多くなかったのが少々残念でしたが(今日の演奏だったら,もっと熱い拍手が欲しいですね),期待の若手アーティストの意欲溢れる演奏を味わうことができ,大満足でした。
PS. 終演後,サイン会が行われました。アンコール曲の掲示がなかったので,尋ねてみたところ,スクリャービンの(多分そうだと思っていました)エチュードop.42-5とのことでした。
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