OEKのCD

2017年4月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            
無料ブログはココログ

« OEK第343回定期公演。ギュンター・ピヒラー指揮によるウィーンの音楽集。やっぱりピヒラーさんのハイドンは最高です。ラドヴァン・ヴラトコヴィッチさんの自然体のホルンも素晴らしい安定感でした #oekjp | トップページ | 直江学美&黒瀬恵デュオ・コンサートVol.3 篠崎史紀さんをゲストに迎え,20世紀末の音楽を核として統一感のあるプログラムを楽しませてくれました。 »

2013/11/17

チョン・ミョンフン指揮東京フィル他による「トリスタンとイゾルデ」(演奏会形式,全曲)を富山のオーバード・ホールで鑑賞。演技がい分,非常に集中してワーグナーの世界に入ることができました。声楽陣も大変充実していました。

今年はワーグナーの生誕200年ということで,ワーグナーの作品が取り上げられる機会が多い...はずなのですが,石川県ではほとんど演奏されていません。というわけで,富山市のオーバード・ホールで行われたチョン・ミョンフン指揮東京フィルによる演奏会形式による「トリスタンとイゾルデ」の全曲を聞いてきました。

この日は,これからの北陸地方では段々と貴重になってくる快晴(いわゆる小春日和)ということで,屋外で過ごしたい気持ちもありましたが,チョン・ミョンフン指揮のワーグナーの作品全曲を北陸で聞く機会の方が貴重だろう,ということで,高速バスに乗って,富山まで出かけてきました。

「トリスタンとイゾルデ」は,西洋音楽史的に言うと調性音楽の極限の音楽ということで,曲の最初の前奏曲から半音階進行を含む,微妙ですっきりしない気分が続きます。チョン・ミョンフンさんは,曲の最初の部分でまず,このモチーフを非常に丁寧に演奏し,一気にホール内を「トリスタン」の気分に変えてくれました。

演奏会形式ということで,歌手の演技はほとんどなく(トリスタンとイゾルデが見つめ合ったり,手を取ったりぐらい...という程度でしょうか。ただし,ドラマの進行に応じて,結構,頻繁に出入りはしていました),かなり集中して音楽の流れだけに入りこむことができました。第2幕や第3幕の各後半では,剣を抜いて切り合いをするようなシーンが本来はあるのですが,そういった部分の動きが全くなかったので,基本的にトリスタンとイゾルデ,そして,その2人に混乱させられるマルケ王,この3人の心情の動きを音楽の動きで味わう,という形になっていました。もちろん,セット付きの本格的な舞台を観たい気持ちもありますが,ワーグナーの音楽をじっくりと味わうには,今回の形は理想的だったのでは,という気がしました。

というわけで,この3人の歌が核になるのですが,いずれも素晴らしい声を聞かせてくれました。トリスタン役は予定していた歌手が変更になりアンドレアス・シャーガーさんが歌いました。最初の方は結構リリックな感じかなと思って聞いていたのですが,曲が進むにつれて鬼気迫る雰囲気になっていきました。第3幕の最初の部分は,延々とモノローグが続くのですが(プログラムによると「鬼門」とのことです),この部分でのイゾルデを待ちわびる狂気を帯びた雰囲気は迫力満点でした。

イゾルデ役のイルムガルト・フィルスマイヤーさんもドラマティックな役柄にぴったりでした。イゾルデの方は第1幕では,怒りまくっているのですが,媚薬を飲んでからは,少し優しくなりつつも,情熱はパワーアップして,第3幕最後の「愛の死」まで,ずっとドラマを引っ張っているような「大変さ」があります。フィルスマイヤーさんについては,何といっても声に迫力があり,私の居た4階席でもビンビン声が伝わってきました。高音部は絶叫するような感じでしたが,ワーグナーを聞いたという迫力がしっかり伝わって来ました。これから注目の歌手になっていくと思います。

マルケ王はミハイル・ペトレンコさんでした。基本的にこの王様は,「まともな大人」の役柄で,威厳があると同時に「どうして裏切られるのだろう」という悲哀のようなもの漂わせています。ペトレンコさんの歌はその気分にぴったりでした。その他,ブランゲーネ,クルヴェナールなどのイゾルデとトリスタンの忠臣たち,メロート,牧人,舵手などの脇役たちもすべて見事な声を聞かせてくれました。

ドラマの展開の中では,やはり第2幕の長大なラブシーンが凄いと思いました。DVDで予習した感じだとかなり長く感じたのですが,実際に見ると全く長いとは感じませんでした。オペラの中では時間は違った進み方をする,と感じました。

第3幕の前半のトリスタンのモノローグの方はさすがに長く感じましたが,その分,「イゾルデはまだか,まだか」という気分が高まり,その後に続く,2人の再会と別れのドラマがさらに一層盛り上がりました。そして,やはり全曲を締めるイゾルデによる「愛の死」の歌唱が印象的でした。

一般的に聞かれている「前奏曲と愛の死」だと20分程度で終わるのですが,4時間以上かけて(休憩含む),この「愛の死」に到達するのとでは,やはり重みが違います。終結感のない曲の最後の最後で静かに静かに安定する,というのは,やはり感動的です。

その他,この曲を実演で聞いてみると,結構,舞台裏で演奏する場面が多い曲だと思いました。全幕について舞台裏での演奏がありました。この中では,第3幕の最初の方でのイングリッシュホルンの演奏が特に印象的でした。全曲を通じていちばん静かな場面ですが,その他の部分で激しく熱いドラマが続くので,この部分の静かな美しさが際立っていました。

演奏時間は20分の休憩2回を入れて13:00から17:30まで掛かりましたので,さすがに疲れましたが,もっとも良い形でこの曲を楽しむことが出来たと思いました。富山のオーバードホールでオペラを観たのは今回が初めてでしたが,4階席からでも大変ステージがよく見えました。金沢歌劇座よりは,大きな規模のオペラを上演できるホールですので,是非今後も今回のような形の公演を期待したいと思います。

« OEK第343回定期公演。ギュンター・ピヒラー指揮によるウィーンの音楽集。やっぱりピヒラーさんのハイドンは最高です。ラドヴァン・ヴラトコヴィッチさんの自然体のホルンも素晴らしい安定感でした #oekjp | トップページ | 直江学美&黒瀬恵デュオ・コンサートVol.3 篠崎史紀さんをゲストに迎え,20世紀末の音楽を核として統一感のあるプログラムを楽しませてくれました。 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« OEK第343回定期公演。ギュンター・ピヒラー指揮によるウィーンの音楽集。やっぱりピヒラーさんのハイドンは最高です。ラドヴァン・ヴラトコヴィッチさんの自然体のホルンも素晴らしい安定感でした #oekjp | トップページ | 直江学美&黒瀬恵デュオ・コンサートVol.3 篠崎史紀さんをゲストに迎え,20世紀末の音楽を核として統一感のあるプログラムを楽しませてくれました。 »

最近のコメント

最近の記事

最近のトラックバック