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2013年11月17日 - 2013年11月23日

2013/11/23

直江学美&黒瀬恵デュオ・コンサートVol.3 篠崎史紀さんをゲストに迎え,20世紀末の音楽を核として統一感のあるプログラムを楽しませてくれました。

金沢を中心に活躍しているソプラノ歌手の直江学美さんとオルガン奏者の黒瀬恵さんは,年1回この時期にデュオコンサートを行っています。その3回目のコンサートを聞いてきました。毎年,NHK交響楽団コンサートマスターの篠崎史紀さんをゲストに招いているのが「目玉」の一つです。今回も篠崎さんのヴァイオリンやトークを交えたステージとなりました。

ソプラノとオルガンとヴァイオリンという組み合わせのコンサートは,滅多にないのですが,オルガンという楽器はピアノのような伴奏もできれば,オーケストラの代用もできますので,一種「何でもできる」編成ではないかと思いました。今回もバロック音楽,リヒャルト・シュトラウスのオリジナルはオーケストラ伴奏版歌曲,クライスラーのヴァイオリン曲,日本の歌曲・唱歌,そして,オルガンの独奏曲と色々な時代の色々な編成の曲を楽しむことができました。それがバラバラな印象を残すのではなく,オルガンの響きを核として,全体の雰囲気がしっかりまとまっていたのが良かったと思いました。

特に良いなぁと思ったのは,ソプラノ,ヴァイオリン,オルガンで演奏したリヒャルト・シュトラウスの「4つの最後の歌」の中の「夕映えに」でした。オリジナルはオーケストラ伴奏で,一度実演で聞いてみたい曲だったのですが,そのスケール感をしっかり楽しむことができました。直江さんの声はとても落ち着いた気分があるので,人生の末期を描いたこの曲の気分にぴったりでした。ソプラノに絡み合ってくる篠崎さんの繊細なヴァイオリンも雰囲気にぴったりでした。

篠崎さんのヴァイオリンでは,前半の最後に演奏されたクライスラー作曲のプニャーニの様式による前奏曲とアレグロがお見事でした。「さすが」という貫禄と技巧を楽しませてくれました。もともと,クライスラーならではの,バロック風を模したような曲なのですが,それに黒瀬さんの重厚なオルガンが加わり,「オペラ座の怪人」がヴァイオリンを弾いているような,どこか妖しい(?)気分たっぷりでした。

後半の最初の方では,篠崎さんと直江さんを中心としたトークコーナーがありました。毎年この時期に忙しい篠崎さんが金沢でのこの演奏会に来ているのは...実は...カニが目的(の一つ)だったとか,篠崎さんのヴァイオリン関係グッズとして,いろいろな和風の工芸品を使っているとか,「へぇ」という感じの楽しいトークを楽しむことができました。

この日は耳で音楽を楽しむだけではなく,視覚的に楽しませようという試みもありました。シュトラウスの歌曲では,夕映えの気分を出すように,徐々に照明を暗くしていったり,ヴィドールのオルガン交響曲第5番のトッカータでは,目まぐるしく動く曲想に合わせて,パイプオルガンのパイプに当てられた照明が変化したり,各曲ごとに趣向が凝らされていました。照明については,もう少し鮮やかな方が効果的かなという気もしましたが,先日,しいのき迎賓館で行われて人気を集めたプロジェクション・マッッピングを思い出しました。

後半では,シンプルな美しさを持った日本歌曲も印象的でした。ピアノ伴奏で聞くのとは一味違った,イマジネーションの広がりを感じさせてくれるような演奏でした。

この演奏会については,第1回目から「聞いてみたいな」と思っていたのですが,今回初めて聞いてみて,その魅力を実感できました。ソプラノ,オルガン,ヴァイオリンという独特の組み合わせであるからこそ,趣向を凝らす必要があり,そのことが,演奏の新鮮さにつながっているのだと思います。こういう演奏会が金沢出身のアーティストが中心となって継続している点が素晴らしいと思います。是非,「第4回」の企画に期待したいと思います。

2013/11/17

チョン・ミョンフン指揮東京フィル他による「トリスタンとイゾルデ」(演奏会形式,全曲)を富山のオーバード・ホールで鑑賞。演技がい分,非常に集中してワーグナーの世界に入ることができました。声楽陣も大変充実していました。

今年はワーグナーの生誕200年ということで,ワーグナーの作品が取り上げられる機会が多い...はずなのですが,石川県ではほとんど演奏されていません。というわけで,富山市のオーバード・ホールで行われたチョン・ミョンフン指揮東京フィルによる演奏会形式による「トリスタンとイゾルデ」の全曲を聞いてきました。

この日は,これからの北陸地方では段々と貴重になってくる快晴(いわゆる小春日和)ということで,屋外で過ごしたい気持ちもありましたが,チョン・ミョンフン指揮のワーグナーの作品全曲を北陸で聞く機会の方が貴重だろう,ということで,高速バスに乗って,富山まで出かけてきました。

「トリスタンとイゾルデ」は,西洋音楽史的に言うと調性音楽の極限の音楽ということで,曲の最初の前奏曲から半音階進行を含む,微妙ですっきりしない気分が続きます。チョン・ミョンフンさんは,曲の最初の部分でまず,このモチーフを非常に丁寧に演奏し,一気にホール内を「トリスタン」の気分に変えてくれました。

演奏会形式ということで,歌手の演技はほとんどなく(トリスタンとイゾルデが見つめ合ったり,手を取ったりぐらい...という程度でしょうか。ただし,ドラマの進行に応じて,結構,頻繁に出入りはしていました),かなり集中して音楽の流れだけに入りこむことができました。第2幕や第3幕の各後半では,剣を抜いて切り合いをするようなシーンが本来はあるのですが,そういった部分の動きが全くなかったので,基本的にトリスタンとイゾルデ,そして,その2人に混乱させられるマルケ王,この3人の心情の動きを音楽の動きで味わう,という形になっていました。もちろん,セット付きの本格的な舞台を観たい気持ちもありますが,ワーグナーの音楽をじっくりと味わうには,今回の形は理想的だったのでは,という気がしました。

というわけで,この3人の歌が核になるのですが,いずれも素晴らしい声を聞かせてくれました。トリスタン役は予定していた歌手が変更になりアンドレアス・シャーガーさんが歌いました。最初の方は結構リリックな感じかなと思って聞いていたのですが,曲が進むにつれて鬼気迫る雰囲気になっていきました。第3幕の最初の部分は,延々とモノローグが続くのですが(プログラムによると「鬼門」とのことです),この部分でのイゾルデを待ちわびる狂気を帯びた雰囲気は迫力満点でした。

イゾルデ役のイルムガルト・フィルスマイヤーさんもドラマティックな役柄にぴったりでした。イゾルデの方は第1幕では,怒りまくっているのですが,媚薬を飲んでからは,少し優しくなりつつも,情熱はパワーアップして,第3幕最後の「愛の死」まで,ずっとドラマを引っ張っているような「大変さ」があります。フィルスマイヤーさんについては,何といっても声に迫力があり,私の居た4階席でもビンビン声が伝わってきました。高音部は絶叫するような感じでしたが,ワーグナーを聞いたという迫力がしっかり伝わって来ました。これから注目の歌手になっていくと思います。

マルケ王はミハイル・ペトレンコさんでした。基本的にこの王様は,「まともな大人」の役柄で,威厳があると同時に「どうして裏切られるのだろう」という悲哀のようなもの漂わせています。ペトレンコさんの歌はその気分にぴったりでした。その他,ブランゲーネ,クルヴェナールなどのイゾルデとトリスタンの忠臣たち,メロート,牧人,舵手などの脇役たちもすべて見事な声を聞かせてくれました。

ドラマの展開の中では,やはり第2幕の長大なラブシーンが凄いと思いました。DVDで予習した感じだとかなり長く感じたのですが,実際に見ると全く長いとは感じませんでした。オペラの中では時間は違った進み方をする,と感じました。

第3幕の前半のトリスタンのモノローグの方はさすがに長く感じましたが,その分,「イゾルデはまだか,まだか」という気分が高まり,その後に続く,2人の再会と別れのドラマがさらに一層盛り上がりました。そして,やはり全曲を締めるイゾルデによる「愛の死」の歌唱が印象的でした。

一般的に聞かれている「前奏曲と愛の死」だと20分程度で終わるのですが,4時間以上かけて(休憩含む),この「愛の死」に到達するのとでは,やはり重みが違います。終結感のない曲の最後の最後で静かに静かに安定する,というのは,やはり感動的です。

その他,この曲を実演で聞いてみると,結構,舞台裏で演奏する場面が多い曲だと思いました。全幕について舞台裏での演奏がありました。この中では,第3幕の最初の方でのイングリッシュホルンの演奏が特に印象的でした。全曲を通じていちばん静かな場面ですが,その他の部分で激しく熱いドラマが続くので,この部分の静かな美しさが際立っていました。

演奏時間は20分の休憩2回を入れて13:00から17:30まで掛かりましたので,さすがに疲れましたが,もっとも良い形でこの曲を楽しむことが出来たと思いました。富山のオーバードホールでオペラを観たのは今回が初めてでしたが,4階席からでも大変ステージがよく見えました。金沢歌劇座よりは,大きな規模のオペラを上演できるホールですので,是非今後も今回のような形の公演を期待したいと思います。

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