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2014年1月

2014/01/26

OEK&ラルフ・ゴトーニ・ウィーク始まりました。珍しいウェーバーの交響曲第1番は独創的な面白い曲。楽しめました。三重協奏曲は,急遽登場した水谷川優子さんを加えたゴトーニ・ファミリーによる堂々たる演奏 #oekjp

1月に入って2回目となるOEKの定期公演フィルハーモニーシリーズを聞いてきました。今回指揮者として登場したのは,ラルフ・ゴトーニさんです。ゴトーニさんは一昨年も同じ時期に来られて,フィルハーモニーとマイスターの両シリーズの指揮をされましたが(この時は室内楽公演にも登場していました),今回もまた両シリーズを指揮されます。マイスターの方は来週の土曜日なので,「ゴトーニ・ウィーク」ということになります。

マイスターの方は「ベートーヴェンの交響曲チクルス」ですが,本日の演奏会も前半はベートーヴェンの曲が取り上げられましたので,「チクルスの補遺」という感じになっていました。後半では,ウェーバーの交響曲第1番という,滅多に演奏されない曲が演奏されましたが,予想以上に面白い曲でした。

今回演奏された3曲ですが,コリオラン序曲がハ短調,三重協奏曲がハ長調,ウェーバーがハ長調というとで,全部,「ハ」で統一されていました。しかも,どの曲も180*年に作曲された曲ということで,時代的な統一感もありました。

ゴトーニさんは,毎回一ひねりのある選曲をされますが,今回もまた「さすが,なるほど」というプログラミングでした。

演奏の方も充実したものでした。コリオラン序曲はノンヴィブラートのすっきりとした音で始まりました。全曲はほの暗いトーンが一貫しており,重心の低い落ち着きと秘めたドラマを持った演奏になっていました。

続く三重協奏曲は,予定されていたチェロのヴォルフガング・メールホルンさんが急病のため,水谷川優子さんに変更になりました。奏者の交替の理由として「急病」という理由はよく聞きますが,今回は本当に直前に交替が発表されました。サイン会の時,水谷川さんにお尋ねしたところ昨日決まったとのことです。ちなみに「金沢にいらっしゃったんですが?」と尋ねたところ,ヴァイオリンのマーク・ゴトーニさんは「夫です」とのことでした。図らずも,ゴトーニさん+息子+その奥さん というファミリーな三重奏という形になりました。

演奏の方はやはり,マークさんのヴァイオリンの安定感のある美しさに比べると,水谷川さんのチェロの方はやや埋もれがちになっていましたが,その頑張りには盛大な拍手が送られていました。

この曲ですが,協奏曲のような感じで始まった後,ピアノ三重奏曲に変貌し,また協奏曲に戻る...という具合で,ベートーヴェンのこの時期の他の曲と比べると,曲全体としての大きな盛り上がりにやや不足する部分があるかな,と感じました。とはいえ,3人もソリストが登場する協奏曲というのは,やはり豪華ですね。ゴトーニさんの指揮とピアノの下で,たっぷりと楽しませてくれました。

後半のウェーバーの交響曲第1番は実演で聞くのは初めての曲でした。ウェーバーが20歳の頃の作品ということで,オーソドックスな交響曲からすると,「何か変?」という部分もありましたが,そこが魅力となっていました。例えば,第1楽章の第2主題(だと思います)は結構唐突に短調で出てきて,テンポが遅くなるのですが,そういった部分が「交響曲というより序曲」のような感じでとても新鮮でした。第4楽章の生き生きした楽想や,中間楽章でのオーボエの活躍など,同じく若書きの名曲,ビゼーの交響曲に通じる魅力があると思いました。ゴトーニさんの指揮はスケール感と同時に若々しさを感じさせるもので,この曲の魅力をしっかり伝えてくれました,

アンコールでは,シベリウスの「悲しいワルツ」が演奏されました。ゴトーニさんのお国モノということで,余裕たっぷりの指揮ぶりで,美しい5分間のドラマを楽しませてくれました。

ゴトーニさんは定期演奏会以外に1月30日のランチタイムコンサートにも登場します。今回もまた充実した演奏を楽しませてくれそうですね。

2014/01/22

今回の音楽堂室内楽シリーズは,池辺晋一郎「自己ベスト」室内楽曲集。前衛的な作品からヴァイオリン初心者用作品,さらにはビートルズまで。ご本人の解説付きでたっぷり楽しめました。#oekjp

真冬の天候の中(まだ雪はそれほどではありませんが),石川県立音楽堂交流ホールで行われた音楽堂室内楽シリーズ第6回「生誕70周年池辺晋一郎with OEKファミリー」を聞いてきました。今回は池辺さん自身が自分の室内楽作品について解説をしながら,演奏を楽しむという趣向で,演奏会全体で「ベストアルバム」になるような充実した内容でした。

前半は,前衛的な作曲家としての池辺さんに焦点を当てた内容で,カタカナで「ゲンダイオンガク」と書いてみたくなるほどの,ギシギシと軋むような不協和音に溢れた音楽の連続でした。ただし,池辺さん自身の解説を聞いた後だと,「なるほど」という感じで,とても面白く聞くことができました。

個人的に特に凄いと思ったのが,2曲目に演奏された「ストラータⅤ:弦楽四重奏のために」でした。最初から息継ぎの間がないぐらいに,せわしなく,同じような音型や同音反復が続くような作品で,バルトークの弦楽四重奏曲辺りをさらに,強く強く締めあげたような緊迫感がありました。

この日は,OEKの弦楽奏者を中心としたメンバーでしたが,特にヴァイオリンの松井さんは出ずっぱりで,しかも,激しい音の動きを持った作品ばかりということで,見ているだけで「お疲れ様でした」という感じが伝わってきました。

前半最後に演奏された「TANADA」という6つの楽器(ヴァイオリン,チェロ,フルート,クラリネット,ピアノ,打楽器という変則的な編成)のための曲も楽しめました。池辺さんがN響アワーの司会をされたいた頃,夏に新潟県の妻有に出かけたことがあるそうです。その時に見た棚田の印象からひらめいた曲とのことです。

池辺さんは,「音はほっておくと下がる」理論をお持ちですが(この話は以前聞いたことがあります),そのことと「棚田の景観」には通じるものがある,ということで曲の前半はやたらとキンキンとした高音中心,最後はひたすら下降。そんな感じの曲でした。最後の部分で「下がった後,休符,下がった後,休符」という動きを取っていたのは,やはり「棚田」を意識していたのだと思います。楽譜を見ても「棚田」のようになっているのかもしれないですね。

曲全体の響きも,メシアンの曲のような感じで(そういえば,「時の終わりのための四重奏」とちょっと似た編成でした),今回演奏された曲の中ではいちばん色彩的でした。聞きながら,メシアンが「剣の舞」をアレンジしたらこんな感じになるかも,と勝手に想像しながら聞いていました。

後半は趣きを変え,聞きやすい響きの作品ばかりでした。

最初に演奏されたのは,池辺さんがヴァイオリンを習っていた娘さんのために書いた作品集でした。作曲家の父が子供のために作品を書くというのは,何となくバッハとかモーツァルトの時代のようで,カッコ良いですね。

ヴァイオリンの発表会でヴァイオリン・アンサンブルで演奏できるカノンは,OEKのヴァイオリン奏者4人で演奏されました。比較的簡単に演奏できる曲だとは思いますが,とても華やかに響いていたのはさすがだと思いました。カノンの場合,最初に引き終えた奏者が「手持無沙汰」になるのですが,それについての「対策」が取られているなど,さすが池辺さんというアイデアも盛り込まれていました(詳細はレビューで書きたいと思います)。

ちなみにOEKのヴァイオリン奏者の上島淳子さんは,この「カノン」を子供の頃,ヴァイオリンの発表会で弾いたことがあるそうです(池辺さんの娘さんと同じ先生についていたとのことです)。子どもの頃に弾いた曲をプロになって,しかも作曲者自身の前で演奏するとは,誰も予想していなかったでしょうね。

同じく娘さんのために書かれたコンチェルティーノ第2番については,フランスの作曲家が作ったような流麗で洒落た味わいがありました。娘さん自身は,「カタカナの作曲家の曲を弾きたかった」と思っていたそうですが,こんな素敵な曲を贈られた娘さんは大変幸せだと思います。

最後はビートルズの曲をバロック風にアレンジしたものが2曲演奏されました。これは,1970年代に池辺さんがレコード会社から頼まれて編曲したもので,「バロックの名曲とビートルズの名曲を合体させてみよう!」という趣向です。イエスタディとレット・イット・ビーが演奏されましたが,それぞれバロック音楽の超名曲と見事に合体していました。これについても詳細はレビューで紹介したいと思います。アンコールでは,もう1曲ビートルズの曲が演奏してお開きとなりました。

今回,池辺さんの作品をずらりとまとめて聞いてみて,池辺さんの多彩さ多才さを実感しました。どの曲にも,色々なアイデアが詰まっています。注文に応じて作る場合も,そこに池辺さんらしいヒネリが入っているし,バリバリの前衛的な作品の中にも独自のスパイスが効いています。さすがに初期の前衛的な作品については,池辺さん自身に説明をして頂かないと分からない工夫もありましたが,どの曲にもしっかりとしたコンセプトと知的な面白さが埋め込まれているというのが素晴らしい点だと思いました。

今回の企画は,音楽堂ならでは,OEKならではの楽しめる企画だったと思います。今年度の音楽堂室内楽シリーズはこれで最終回ですが(今年は6回全部聞いてしまいました),次年度はどういうプログラムになるのか,楽しみにしたいと思います。

2014/01/19

新作オペラ「滝の白糸」金沢公演。千住明さんの音楽はミュージカルを思わせる分かりやすさ。中嶋彰子さん,鳥木弥生さんなど歌も万全。合唱団も大活躍。金沢発の定番オペラに育って欲しいと思います。 #oekjp

泉鏡花原作の「義血侠血」をオペラ化した「滝の白糸」が,一昨日の高岡公演に続いて,金沢歌劇座で上演されたので観てきました。この作品は石川県音楽文化振興事業団などが中心になって,千住明さんに作曲,黛まどかさんに脚本を依頼して作られた新作です。

主役の白糸役は中嶋彰子さん,相手の村越欣弥役が高柳圭さん。それに加え,重要な役柄に石川県出身の鳥木弥生さん,高岡出身の森雅史さんを配するなど,配役の面でもドラマの舞台となっている「北陸」を組み込んでいる点も注目です。

今回の上演ですが大成功だったと思います。「もっと良くなるかな?」という部分もあった気はしますが,何よりもこれだけ分かりやすく,しかも堂々としたオペラが金沢発で作られたことを喜びたいと思います。

作品の全体の印象としては,何よりも千住さんの音楽がミュージカルに近いぐらいに聞きやすいのが特徴で,全くストレスなく,オペラの世界に入ることができました。字幕も出ていましたが,私の居た2階席でも,ほとんど字幕を見なくても言葉が分かりました(オペラグラスを持参するのを忘れたのは残念でしたが...)。

千住さんはテレビドラマの音楽なども沢山担当されていますが,その力量が存分に発揮されていたと思います。ストーリー自体の持つ感情の動きを,しっかりと盛り上げてくれました。

歌手の中では,やはり主役の中嶋彰子さんの表現力の豊かさ,細やかさが素晴らしいと思いました。中嶋さんの声には,しっとりとした落ち着きがありました。強烈さはそれほど感じませんでしたが,芯は強く,それが「北陸」の気分にぴったりでした。各幕(今回は3幕構成でした)に見せ場があり,各幕ごとに違った盛り上がりを聞かせてくれたのはさすがだと思いました。第2幕最後での「狂気」も見ものでした。

この辺はヴェリズモ・オペラという感じでしたが,各幕ごとにキャラクターが違うようなヒロインというのは,中嶋さんとしても大変やりがいがあったのではないかと思います。

相手役の高柳さんの声は大変若々しく軽やかで,「学問を志す青年」の雰囲気が出ていました。最後の最後の部分は原作にない牢屋の場でしたが,特にこの部分での「愛の歌」は大変聞きごたえがありました。

欣哉の母役の鳥木弥生さんの歌は,作品全体の中でいちばん泣かせてくれました。これも原作にない設定でしたが,法廷で白糸への感謝の気持ちをせつせつと歌ってくれました(法廷の中で歌うアリアというのは...他にはあまりないかもしれません)。説明的にしつこくなりそうな部分なのですが,息子が立派に成長した喜びと,そのために白糸に犯罪までさせてしまった辛さとが入り混じった何とも言えない情感を,暖かみのある声で堂々と歌われました。名場面という感じでした。

鳥木さんが第2幕で歌ったアリアは,七五調(多分)になっており,日本語オペラの良さを感じさせてくれました。

敵役の森さんは,南京出刃打ち(といっても実はどういう芸なのか分からないのですが)ということで,「トゥーランドット」当たりに出てきそうなキャラクターでした。堂々たる体格と重みのある声で,白糸の世界をしっかりと踏みにじっていました。

この森さんの歌と鳥木さんの歌がドラマに深みを加えていたと思います。

それ以外の役柄を含め,合唱団の皆さんも大活躍でした。今回のプログラムでは,合唱団ではなく「ゾリステン」と書かれていましたが,確かにそのとおりで,その他の役柄をみんな演じてしまうソリスト集団という感じでした。天神橋での2人の出会いの前後で,オペラ全体のテーマ曲になるような合唱曲を歌っていましたが(歌詞に月とか浅野川とかが出てくる曲),この曲などは独立した曲として,金沢市で歌われていくかもしれませんね。

合唱団は,見世物小屋のお客さんになったり,高岡の場での乗客になったり,法廷の場の傍聴人になったり(バッハの「受難曲」などに出てきそうな感じで合いの手を入れていました)。これだけ多彩に合唱団が活躍する作品も珍しいのではないかと思います。

オペラの最後の部分では,白糸と欣哉の愛の歌に続いて,合唱団が大きく情感を盛り上げて締めてくれました。ほとんどセットと一体になったような大活躍でオペラ全体のフレームをしっかり作っていました。

セットは比較的シンプルで,見世物小屋,橋の上,法廷などに切り替わる「ステージ中のステージ」のような部分と可動式小ステージから成っていました。可動式部分が素早く動くので,場面転換が大変スムーズでした。

衣装の方は,リアルな水芸の衣装を着たりしていた白糸をはじめとして,どのキャラクターも次々と衣装を変えており,大変華やかでした。

個人的には,金沢のお客さんへのサービスとして,天神橋とか兼六園などをもう少し「具体的」に表現してくれても良かったかなと思いました。が,その分,「普遍的で永遠の愛の世界」という感じになっていたのかもしれません。

オペラの長さは,15分の休憩2回を入れてほぼ3時間でした。この長さについては,もう少しスッキリさせられる気はしました。特に第3幕の最後の部分は,感動的な鳥木さんの歌や,主役2人の牢獄の格子をはさんでの愛の歌など,聞かせどころの連続でしたが,もう少し流れがよくできるかな,という気がしました。

終演後は,最後の部分で主役が2人が歌っていた曲(この曲はオペラ中,何回か出てきていたと思います)のメロディがしっかり残り(ただし今は忘れてしまっていますが...),プッチーニなどのオペラを見たのと同じような「どこかロマンティックな香り」が後に残りました。

全体の雰囲気としては,上述のとおりミュージカルに近い部分もあったので,「劇団四季あたりがミュージカルとして上演しても面白いかも...」などと思ったのですが,いずれにしても,そのうち再演を期待したいと思います。メロディを覚えて聞くと,もっと楽しめそうです。

上演しているうちにさらに洗練されていって,ロングランとまでは言いませんが,ウィーンで愛されている「こうもり」のように,定期的に上演される作品に成長していって欲しいものです。

というわけで,上演に携われた多くの皆さんに皆さんに「良い作品をありがとうございます」と感謝をしたいと思います。

2014/01/08

OEKのニューイヤーコンサート 今年は前半がヘンデル,後半がオペレッタの音楽 藤木大地さんと中村恵理さんの素晴らしい声をまじえ,OEKらしさ満載。外は雨でも内はハレルヤ!もちろん恒例「OEKどら焼き」付き #oekjp

恒例のOEKのニューイヤーコンサートを聞いてきました。昨年は前半コルンゴルトの音楽が取り上げられましたが,今年の前半はヘンデル特集。女声歌手と男声歌手(性格には女声的男性歌手?)が登場する点は,昨年同様ということでしたので,特定の作曲家を特集する形が「井上道義+OEKのニューイヤー」の基本形になりつつあるようです。

井上道義さん指揮の場合,毎回毎回,色々な工夫がされ,楽しませてくれるのですが,今回は最初から「おやっ」と思わせてくれました。ヘンデルの水上の音楽からの抜粋ということで,すんなり始まると思ったのですが...ステージに登場したOEKメンバーの数はやけに少なくほとんど室内楽。しかも井上さんが出てきません。

この状態で序曲がとても丁寧に始まりました。次の曲でホルン2名,その次の曲でファゴット1名が加わり,そして,アラ・ホーンパイプで井上さんも含めて弦楽器がフル編成になり,のびやかに締めてくれました。そして,「あけまして,おめでとうございます」...こういう趣向でした。ハイドンの「告別」交響曲の反対のような感じで,照明もだんだん明るくなっていきました。ヘンデルも大喜び(?)というアイデアだったと思います。

その後,ソプラノの中村恵理さんとカウンターテノールの藤木大地さんが登場し,ヘンデルのアリアを3曲(1曲は重唱)歌いました。このお2人は1月3日に行われたNHKニューイヤーオペラコンサートに出演されたばかりで,そのまま一緒に金沢に移動して来られたような形になります。期待の若手二人の声は,どちらも瑞々しく,新年の気分にぴったりでした。

中村さんの声は,どちらかというと軽い方だと思いますが,声に芯の強さがあり,シャキッとした美しさが魅力だと思いました。藤木さんの方は,癒しの気分を持った,とても暖かい歌を聞かせてくれました。このお2人の相性はとても良いのではないかと思いました。

前半最後は,ヘンデルの合奏協奏曲op.6の最後の曲でした。ロ短調の曲ということで,ほの暗く,ピシッとした感じで始まった後,緩-急-緩-急と動いていきます。どの部分も音楽自体に魅力と聞きごたえがありました。サイン会の時,井上さんに「この曲,良かったです」と言ってみたら,「う~ん」としばらく考えた後,「なんか豪華なんだよねぇ」と振り返ってくれました。井上さんは,以前定期公演でヘンデル役を演じたことがあるくらい,ヘンデル好き(だと思います)が,さすが井上さんという感じの充実感のある演奏でした。それと,ヴァイオリンのサイモン・ブレンディスさんをはじめとしたソリスト・グループとトゥッティとが交錯する立体感が味わえるのは,ライブならではだと思います。

後半は,ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートと似た雰囲気になりましたが,オペレッタの序曲+アリアの間にオッフェンバックという構成になっているのは,やはり井上+OEKらしさなのかもしれません。曲全体が生きているような「こうもり」序曲に続いて,中村さんの独唱でアデーレのアリアが歌われました。これは本当に素晴らしい歌唱で,一流の歌を聞いたというインパクトの強さがありました。中村さんはバイエルン国立歌劇場で活躍されているそうですが,今後の活躍が楽しみです。

藤木さんの方はオルロフスキー伯爵のアリアを歌いました。この伯爵については,「エキセントリックなキャラクター」という印象があったのですが,藤木さんの歌はとても「いい人」っぽい感じに聞こえました。来月は「こうもり」全曲を楽しめますが,どういうオルロフスキーが登場するか楽しみです。

続いてオッフェンバックの「カンカン」と「ホフマンの舟歌」が演奏されましたが,マニュエル・ロザンタール編曲のバレエ音楽「パリの喜び」の最後の部分でした。実はこの曲は大好きなので,聞いていて「全曲を聞いてみたい」と思いました。井上さんの楽しげな指揮ぶりにぴったりの曲なので,そのうち是非全曲演奏を期待したいと思います。

「ヴェネツィアの一夜」の序曲に続いて,「酔っ払いの歌(アンネン・ポルカに歌を付けたもの)」が中村さんの歌で歌われました。この曲はニューイヤーコンサートでも何回か聞いていますが,毎回,いろいろな絡みかた,酔っ払い方で楽しませてくれます。楽譜は一体どう書いてあるのでしょうか?中村さんの良い方は最初は可愛らしい感じでしたが,だんだんと過激になっていく感じでした。

演奏会の最後は,おなじみの「美しく青きドナウ」でしたが,OEKらしくコーダの部分が短い版で演奏されていました。この曲については,やはり打楽器のロールが派手に入る長いコーダの方がウィーン・フィルの演奏で聞きなれていることもあり,「良いかな」と思うのですが,OEKの場合,あえてウィーン・フィル風を避けているのかもしれません。

事実,ウィーン・フィルでは恒例の「ラデツキー行進曲」は,井上さん指揮のニューイヤーコンサートでは演奏されていない気がします。「一緒に手拍子をしたい」というお客さんもいると思いますが,井上さんは,「予定調和的」「ウィーン・フィルの真似」というのは嫌いなのだと思います。

その代わりに演奏されたのが,藤木さんの独唱で歌われた「ペチカ」でした。藤木さんの暖かな声にぴったりの曲だと思いました。冬に聞く日本歌曲は良いなぁと思いました。

そして,最後の最後にヘンデルに戻って,ハレルヤ・コーラスのオーケストラ編曲版が演奏されました(そういえば,昨年9月のOEK創立25周年記念公演でもヘンデルで始まりヘンデルで終わっていましたね)。通常合唱が歌う部分をトロンボーンが演奏しているような感じで,会場が一気に明るくなりました(というか,照明自体明るくなっていました。「これでお開きです」という合図だったのかもしれません。)。

この季節,金沢では雪になることも多いのですが,今日は雨。演奏会の終わりはハレルヤ。というわけで,「雨のちハレルヤ」というニューイヤーコンサートでした。

PS. 恒例のOEKどら焼きのプレゼントもありました。一晩眺めた後,明日にでも食べてみたいと思います。

石川県立音楽堂&OEK機関誌「CADENZA」Vol.44が届きました。新作オペラ「滝の白糸」の準備状況の紹介など,邦和とも演劇的作品の紹介が中心 #oekjp

石川県立音楽堂&OEK機関誌「CADENZA」の最新号が,ニューイヤーコンサートに合わせるように郵送されてきました。その中からご紹介しましょう。

今号では,1月17日と19日に高岡と金沢で上演される新作オペラ「滝の白糸」の舞台稽古潜入レポート,邦楽ホールで行われる「干支の芸能シリーズ」に出演する野村萬斎さんのインタビュー,文楽の舞台についての紹介記事など演劇的作品についての記事がメインになっています。

クラシック音楽ファンとしては,やはり今回OEKが初演する「滝の白糸」の稽古レポートが興味深い内容となっています。演出家の十川稔さん,主役のソプラノ中嶋彰子さんのインタビューなど,送り手側の生の声を読むことができます。

井上道義さんの対談シリーズは金沢出身の俳優,篠井英介さんとの対談になっています。意気投合されたようなので,そのうち,井上道義指揮OEKと篠井さんが共演する公演も実現するかもしれません。篠井さんなら,和でも洋でも男でも女でも何でも行けそうです。個人的には,ストラヴィンスキーの「兵士の物語」の悪魔役などに期待しています。

今後の公演情報については,4月以降についてはまだ掲載されていませんでした。3月には9日に輪島市で,22日に津幡町でOEKの公演が行われます。

3月23日の石川県ジュニアオーケストラの定期公演には,ピアニストの宮下理香さんがゲスト出演します。グリーグのピアノ協奏曲を演奏するようですが,これは楽しみな共演になりそうです。

3月30日の「オーケストラの日」公演の内容ははっきりとは分かりませんが,このところ連続してOEK定期公演のプログラムに記事を書かれている潮博恵さんが講演をされるようです。どういう内容になるか期待したいと思います。

というわけで詳細は音楽堂等でお手に取って,お読みください。

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