OEKのCD

2022年9月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
無料ブログはココログ

« OEKのニューイヤーコンサート 今年は前半がヘンデル,後半がオペレッタの音楽 藤木大地さんと中村恵理さんの素晴らしい声をまじえ,OEKらしさ満載。外は雨でも内はハレルヤ!もちろん恒例「OEKどら焼き」付き #oekjp | トップページ | 今回の音楽堂室内楽シリーズは,池辺晋一郎「自己ベスト」室内楽曲集。前衛的な作品からヴァイオリン初心者用作品,さらにはビートルズまで。ご本人の解説付きでたっぷり楽しめました。#oekjp »

2014/01/19

新作オペラ「滝の白糸」金沢公演。千住明さんの音楽はミュージカルを思わせる分かりやすさ。中嶋彰子さん,鳥木弥生さんなど歌も万全。合唱団も大活躍。金沢発の定番オペラに育って欲しいと思います。 #oekjp

泉鏡花原作の「義血侠血」をオペラ化した「滝の白糸」が,一昨日の高岡公演に続いて,金沢歌劇座で上演されたので観てきました。この作品は石川県音楽文化振興事業団などが中心になって,千住明さんに作曲,黛まどかさんに脚本を依頼して作られた新作です。

主役の白糸役は中嶋彰子さん,相手の村越欣弥役が高柳圭さん。それに加え,重要な役柄に石川県出身の鳥木弥生さん,高岡出身の森雅史さんを配するなど,配役の面でもドラマの舞台となっている「北陸」を組み込んでいる点も注目です。

今回の上演ですが大成功だったと思います。「もっと良くなるかな?」という部分もあった気はしますが,何よりもこれだけ分かりやすく,しかも堂々としたオペラが金沢発で作られたことを喜びたいと思います。

作品の全体の印象としては,何よりも千住さんの音楽がミュージカルに近いぐらいに聞きやすいのが特徴で,全くストレスなく,オペラの世界に入ることができました。字幕も出ていましたが,私の居た2階席でも,ほとんど字幕を見なくても言葉が分かりました(オペラグラスを持参するのを忘れたのは残念でしたが...)。

千住さんはテレビドラマの音楽なども沢山担当されていますが,その力量が存分に発揮されていたと思います。ストーリー自体の持つ感情の動きを,しっかりと盛り上げてくれました。

歌手の中では,やはり主役の中嶋彰子さんの表現力の豊かさ,細やかさが素晴らしいと思いました。中嶋さんの声には,しっとりとした落ち着きがありました。強烈さはそれほど感じませんでしたが,芯は強く,それが「北陸」の気分にぴったりでした。各幕(今回は3幕構成でした)に見せ場があり,各幕ごとに違った盛り上がりを聞かせてくれたのはさすがだと思いました。第2幕最後での「狂気」も見ものでした。

この辺はヴェリズモ・オペラという感じでしたが,各幕ごとにキャラクターが違うようなヒロインというのは,中嶋さんとしても大変やりがいがあったのではないかと思います。

相手役の高柳さんの声は大変若々しく軽やかで,「学問を志す青年」の雰囲気が出ていました。最後の最後の部分は原作にない牢屋の場でしたが,特にこの部分での「愛の歌」は大変聞きごたえがありました。

欣哉の母役の鳥木弥生さんの歌は,作品全体の中でいちばん泣かせてくれました。これも原作にない設定でしたが,法廷で白糸への感謝の気持ちをせつせつと歌ってくれました(法廷の中で歌うアリアというのは...他にはあまりないかもしれません)。説明的にしつこくなりそうな部分なのですが,息子が立派に成長した喜びと,そのために白糸に犯罪までさせてしまった辛さとが入り混じった何とも言えない情感を,暖かみのある声で堂々と歌われました。名場面という感じでした。

鳥木さんが第2幕で歌ったアリアは,七五調(多分)になっており,日本語オペラの良さを感じさせてくれました。

敵役の森さんは,南京出刃打ち(といっても実はどういう芸なのか分からないのですが)ということで,「トゥーランドット」当たりに出てきそうなキャラクターでした。堂々たる体格と重みのある声で,白糸の世界をしっかりと踏みにじっていました。

この森さんの歌と鳥木さんの歌がドラマに深みを加えていたと思います。

それ以外の役柄を含め,合唱団の皆さんも大活躍でした。今回のプログラムでは,合唱団ではなく「ゾリステン」と書かれていましたが,確かにそのとおりで,その他の役柄をみんな演じてしまうソリスト集団という感じでした。天神橋での2人の出会いの前後で,オペラ全体のテーマ曲になるような合唱曲を歌っていましたが(歌詞に月とか浅野川とかが出てくる曲),この曲などは独立した曲として,金沢市で歌われていくかもしれませんね。

合唱団は,見世物小屋のお客さんになったり,高岡の場での乗客になったり,法廷の場の傍聴人になったり(バッハの「受難曲」などに出てきそうな感じで合いの手を入れていました)。これだけ多彩に合唱団が活躍する作品も珍しいのではないかと思います。

オペラの最後の部分では,白糸と欣哉の愛の歌に続いて,合唱団が大きく情感を盛り上げて締めてくれました。ほとんどセットと一体になったような大活躍でオペラ全体のフレームをしっかり作っていました。

セットは比較的シンプルで,見世物小屋,橋の上,法廷などに切り替わる「ステージ中のステージ」のような部分と可動式小ステージから成っていました。可動式部分が素早く動くので,場面転換が大変スムーズでした。

衣装の方は,リアルな水芸の衣装を着たりしていた白糸をはじめとして,どのキャラクターも次々と衣装を変えており,大変華やかでした。

個人的には,金沢のお客さんへのサービスとして,天神橋とか兼六園などをもう少し「具体的」に表現してくれても良かったかなと思いました。が,その分,「普遍的で永遠の愛の世界」という感じになっていたのかもしれません。

オペラの長さは,15分の休憩2回を入れてほぼ3時間でした。この長さについては,もう少しスッキリさせられる気はしました。特に第3幕の最後の部分は,感動的な鳥木さんの歌や,主役2人の牢獄の格子をはさんでの愛の歌など,聞かせどころの連続でしたが,もう少し流れがよくできるかな,という気がしました。

終演後は,最後の部分で主役が2人が歌っていた曲(この曲はオペラ中,何回か出てきていたと思います)のメロディがしっかり残り(ただし今は忘れてしまっていますが...),プッチーニなどのオペラを見たのと同じような「どこかロマンティックな香り」が後に残りました。

全体の雰囲気としては,上述のとおりミュージカルに近い部分もあったので,「劇団四季あたりがミュージカルとして上演しても面白いかも...」などと思ったのですが,いずれにしても,そのうち再演を期待したいと思います。メロディを覚えて聞くと,もっと楽しめそうです。

上演しているうちにさらに洗練されていって,ロングランとまでは言いませんが,ウィーンで愛されている「こうもり」のように,定期的に上演される作品に成長していって欲しいものです。

というわけで,上演に携われた多くの皆さんに皆さんに「良い作品をありがとうございます」と感謝をしたいと思います。

« OEKのニューイヤーコンサート 今年は前半がヘンデル,後半がオペレッタの音楽 藤木大地さんと中村恵理さんの素晴らしい声をまじえ,OEKらしさ満載。外は雨でも内はハレルヤ!もちろん恒例「OEKどら焼き」付き #oekjp | トップページ | 今回の音楽堂室内楽シリーズは,池辺晋一郎「自己ベスト」室内楽曲集。前衛的な作品からヴァイオリン初心者用作品,さらにはビートルズまで。ご本人の解説付きでたっぷり楽しめました。#oekjp »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« OEKのニューイヤーコンサート 今年は前半がヘンデル,後半がオペレッタの音楽 藤木大地さんと中村恵理さんの素晴らしい声をまじえ,OEKらしさ満載。外は雨でも内はハレルヤ!もちろん恒例「OEKどら焼き」付き #oekjp | トップページ | 今回の音楽堂室内楽シリーズは,池辺晋一郎「自己ベスト」室内楽曲集。前衛的な作品からヴァイオリン初心者用作品,さらにはビートルズまで。ご本人の解説付きでたっぷり楽しめました。#oekjp »

最近のコメント

最近の記事

最近のトラックバック