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2014年3月

2014/03/30

本日は「オーケストラの日」公演。潮博恵さんによる講演はOEKファンなら「そのとおり」と思うような充実した内容。後半は「ドキドキする音楽」集。最後は楽器を持ち込んだ皆さんとOEKとの共演で「びっくり」交響曲 #oekjp

年度末の恒例イベントとなりつつある「オーケストラの日」公演が石川県立音楽堂で行われたので聞いてきました。今年は,「楽器を持って集まれ!~ドキドキ!オーケストラ~」ということで,いしかわ子ども邦楽アンサンブルの皆さんによる演奏の後,歌手の小泉詠子さんと原田勇雅さんの司会と歌を中心に進められました。

このコーナーでは,シュトラウスのポルカ「狩り」(ピストルの音入り),シューベルトの「魔王」,ビゼーの「カルメン」~ハバネラ,レハール「メリー・ウィドウ」ワルツなど,色々な観点から「ドキドキ」する音楽が演奏されました。この中では,石川県出身のメゾ・ソプラノ小泉詠子さんの瑞々しいカルメンが特に印象に残りました。

最後のコーナーでは,ハイドンの交響曲第94番「驚愕」の第1楽章と第2楽章の「例の場所」まで演奏した後,「本日はこの部分を楽器持参の方と一緒にやってみます」という趣向でした。ステージに上がって来たのは,オーケストラ用の楽器を持った石川県ジュニアオーケストラのメンバーなどが中心でしたが,中にはリコーダーや鍵盤ハーモニカを持ってきた人や年輩の方も混ざっていました。とても楽しげな雰囲気の中,OEKとの「夢の共演」が行われました。

最後,「驚愕」の第4楽章が角田鋼亮さんの指揮でビシッと演奏された後,アンコールでラデツキー行進曲が演奏されました。この演奏なのですが,OEKメンバーが1階席の通路まで出てきて(皆さん暗譜だった?),オーケストラの音に360度包まれながら演奏するという趣向でした。これは面白かったですね。

私が居た席は,ヴィオラの皆さんの付近だったのですが,ヴィオラの皆さんは普通手拍子を入れるタイミングとは反対の拍で「ッパ,ッパ,ッパ,ッパ...」と演奏していたので,近くで手拍子をしていると結構不思議な雰囲気になりました。

今回のコンサートですが,演奏に先立って,今年度ずっとOEK定期公演プログラムでOEKの25年の活動をいろいろな観点から振り返る記事を書かれていた音楽ジャーナリストの潮博恵さんが,その「総まとめ」の講演をされました。懐かしい写真をふんだんに使ったスライドとともに,OEKの活動を振り返った後,これからOEKはどういう方向に進めば良いか,といった提言をされました。この日のお客さんの中には長年OEKの応援をしてきた人も多かったと思いますが,そういった方にも示唆に富む内容だったと思います。

この内容については,今年の秋に本としてまとめて出版されるということで,大変楽しみです。レビューの方でも,もう少し詳細に紹介してみたいと思います。

2014/03/23

石川県ジュニアオーケストラ第20回記念定期演奏会。ゲストの宮谷理香さんとのグリーグのピアノ協奏曲を初め,立派な演奏を聞かせてくれました。

本日は午後から,石川県ジュニアオーケストラの第20回記念の定期演奏会を聞いてきました。このオーケストラが出来てから20年,人間で言うと成人式になるのか,と自分の子供のように感じてしまいます。

今回はその記念ということで,ピアニストの宮谷理香さんをゲストに招き,最後にグリーグのピアノ協奏曲が演奏されました。協奏曲については,交響曲を演奏するのとはまた別の難しさがあります。ジュニアオーケストラにとってこの曲はかなりの難曲だったと思いますが,最終楽章のコーダでの力強い響きを初め,立派な演奏聞かせてくれました。

宮谷さんのピアノもさすがで,冒頭部から引き締まった演奏を聞かせてくれました。全体にすっきりとした表情があり,「北欧のショパン」といった感じの演奏だったと思います。

その他のジュニア・オーケストラ単独の演奏も楽しいものでした。

前半のリロイ・アンダーソンの曲では打楽器奏者やトランペット奏者が”ソリスト”として活躍し,盛大な拍手を受けていました。前半最後のサウンド・オブ・ミュージックのハイライトはベネット編曲版で,映画版に出てこない曲も含まれていました。作曲当時のアレンジャーということで,正統的なサウンド・オブ・ミュージックを楽しませてくれました。

グノーの「ファウスト」のバレエ音楽の抜粋も個人的に大好きな作品です。鈴木織衛さんの安心感のある流麗な指揮の下で,とても気持ちよく音楽に浸らせてくれました。

石川県ジュニア・オーケストラの活動は,OEKを中心とした石川県のオーケストラ文化を育て,維持していく上で,非常に大切な役割を担っていると思います。今後もOEKとの2本柱のような感じで石川県立音楽堂で活動を続けていって欲しいと思います。

2014/03/21

オペラの愉しみ:ラ・フォル・ジュルネ金沢音楽祭2014プレイベント。トロヴァトーレ(ハイライト)を若手歌手の活きの良い声で堪能。エレクトーン演奏も予想以上に効果的 #lfjk

本日は,「オペラの愉しみ:ラ・フォル・ジュルネ金沢音楽祭2014「プラハ,ウィーン,ブダペスト:三都物語」プレイベント」を聞いてきました。ヴェルディの「トロヴァトーレ」は,直接今年のテーマとは関係ないと思いますが,前半は今現在プラハ歌劇場で上演されている曲からの抜粋でした。

というわけで,ラ・フォル・ジュルネの流れというよりは,1月,2月と連続して金沢で上演されたオペラに出演した歌手が登場する,”アンコール企画”的な感覚で楽しんできました。

今回登場した歌手は,「滝の白糸」に出演した石川県出身のメゾソプラノの鳥木弥生さん,「こうもり」に出演したソプラノの小川里美さんに加え,テノールの笛田博昭さん,バリトンの与那城敬さんが登場しました。いずれもこれからの日本のオペラ界の中心的存在になるであろう歌手ばかりということで,最初のヴェルディの「乾杯の歌」から,4人だけとは思えない圧倒的な迫力がありました。

前半はこの4人の「あいさつ」がわりの曲が歌われました。特に「トスカ」の中のアリアを歌った男声2人の声の輝かしさが印象的でした。この日の伴奏は,清水のりこさんのエレクトーンだったのですが,これがまた素晴らしいものでした(余談ですがエレクトーンというのは,ヤマハの電子オルガンの商品名で,例えばカワイの電子オルガンはドリマトーンと言います。)。

クラシック音楽愛好者からすると,電子オルガンというとちょっと軽く見がちなのですが,オーケストラ的なサウンドを非常に巧く再現しており,感心するばかりでした。特に「トスカ」のデ・デウムでは,大砲のような音を出したり,演奏の主役になっていました。

音自体が最適のバランスで作られている上,ちょっと残響が付いているような感じなので,東京ディズニーリゾートで行われている夜のアトラクションをうっとりと楽しんでいるような気分と似た感じになると思いました。

後半はこの日のメインである,ヴェルディの「トロヴァトーレ」ハイライトでした。私自身,このオペラの全曲を見たことがないのですが,今回のハイライトを聞いて十分に「見た感じ」になりました(十分以上です)。聞いて感心したのは,ヴェルディの音楽です。プッチーニの音楽は結構泣かせる感じのメロディが多いのですが,ヴェルディの方は,”血沸き肉躍る”的な熱さがありますね。特に「トロヴァトーレ」にはそういうところがあると思いました。

鳥木さんの解説によると,ソプラノ,メゾ・ソプラノ,テノール,バリトンのそれぞれに聞かせどころがあり,全員が主役のようなところがある,とのことでしたが,確かにそのとおりでした。しかも,それぞれが色々な組み合わせで,喜怒哀楽のありとあらゆる感情を表現します。4人の歌手とも前半以上に声の力を増していると同時に,後半に向かって,感情がどんどん熱く高ぶってくるような感じでした。ストーリー的には,やや釈然としないようなところがあるのですが,その辺は全く関係なく,熱くなれるような作品だと思いました。

一度生で聞いてみたかったマンリーコのアリアは,笛田博昭さんによる真っ直ぐな強さを持った見事な声で堪能できました(少し短かった?)。鳥木さんのアズチェーナは,「滝の白糸」に続く母親役でしたが,終盤でやはり「ジーン」と来るような歌を聞かせてくれました。そして,最後の最後の場面での「復讐だぁ」のポーズは夢に出てきそうな(?)インパクトがありました。

小川里美さんは,2人のイケメン(鳥木さん談)から愛される役なのですが,その感情の動きが本当にリアルに伝わってきました。終盤でのルーナ与那城さんとの絡みの部分など,「レオノーラ頑張れ!」という感じで見てしまいました。与那城さんは,バリトンなのですがテノールを思わせるような輝きがあり,イタリアオペラにぴったりだと思いました。

というわけで,是非,この4人+OEKで「トロヴァトーレ」全曲を観てみたいものです(実は,アンケートにも書いてしまいました)。

その企画は別として,電子オルガン伴奏によるオペラ・ハイライトシリーズも面白いと思いました。曲の解説の後,電子オルガン伴奏+若手歌手による「ハイライト」。プロジェクション・マッピング的な照明をつけるとさらに盛り上がると思います。

\2000で気軽にオペラの「いいところ」を楽しめる,まさに「オペラの愉しみ」という良い企画だったと思います。

2014/03/18

オスロ・フィルハーモニー管弦楽団金沢公演。明晰で雄弁,しかも爽快なマーラーの「巨人」。ヴァシリー・ペトレンコさん,これから人気が出そうな指揮者です。諏訪内晶子さんのメンデルスゾーンはバランス感覚抜群の安定した演奏

本日は,この時期恒例の東芝グランドコンサートを聞いてきました。今年は,オスロ・フィルハーモニー管弦楽団が登場しました。オスロ・フィルは1990年代にもこのコンサートで金沢公演を行ったことがあります。その時は,現在,ヨーロッパの複数のメジャー・オーケストラで重要な地位を締めているマリス・ヤンソンスが指揮者として登場しました。ヤンソンスさんの現在の活躍の基礎はこのオスロ・フィル時代にあるのではないかと思っています。

今回の指揮者は,ヴァシリー・ペトレンコさんでした。私自身,生で演奏を聞くのは今回が初めてですが,この東芝グランドコンサートに登場する指揮者は,昨年のヤニック・ネゼ=セガンにしても,その後,どんどん活躍の場を広げていますので,「先物買い」的な楽しみもあります。今回のペトレンコさんの指揮ぶりを見て,今回来て良かったと思いました。今後,どんどん人気が出そうな指揮者だと思います。

最初に演奏されたモーツァルトの「フィガロの結婚」序曲は,日頃OEKで聞いている編成よりはかなり大きかったのですが,演奏の雰囲気自体は,ギュッと引き締まっており,古楽奏法を思わせる雰囲気と密度の高さがありました。

続いて,お馴染み諏訪内晶子さんのソロで,メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲が演奏されました。諏訪内さんの演奏を聞くのは,昨年9月のOEKとの共演以来です。メンデルスゾーンの協奏曲を聞くのは,OEKが金沢市観光会館で定期公演を行っていた時代に岩城さんと共演したのを聞いて以来です(ちなみにこの公演は,伝説的超満員コンサートでした)。

演奏は諏訪内さんらしく,安定感抜群でした。甘くなり過ぎることも,よそよそしくなることもなく,しっかりと息の長いメロディをじっくりと聞かせてくれました。テンポの速くなる第3楽章でも十分にキレの良さを感じさせながらも,慌てた感じはありませんでした。ペトレンコさん指揮オスロ・フィルの演奏も,各楽章ごとに鮮やかに気分が変わっており,一体となって聞きごたえのある音楽を楽しませてくれました。

さて,後半は楽しみにしていたマーラーの交響曲第1番「巨人」です。マーラーの交響曲が金沢で演奏される時は,ほとんど毎回聞きに行っているのですが(と書くほど,頻繁には演奏されないのですが),今回の演奏は特に魅力的な演奏だったと思います。

第1楽章の冒頭部は,通常非常にデリケートな雰囲気で始まるのですが,今日の演奏には神経質な感じはまったくありませんでした。それでいて,とてもよく練られており,楽章が進むにつれて,音量が増し,だんだんと太陽の位置が高くなっていくように華やかさが増していきました。各楽器の音も非常にクリアでした。

第2楽章では,たっぷりとテンポを落とした中間部での緻密な表現と,自然な伸びやかさを感じさせる主部のコントラストが鮮やかでした。第3楽章でも,「哀しくもユーモラス」といった気分のあるコントラバスの独奏をはじめ,各部分の表情が鮮やかに変化をするのが見事でした。

第4楽章はオスロ・フィルの各パートの実力の高さをしっかり実感できました。楽章最初の強烈な一撃をはじめ,オーケストラ全体としての迫力は十分でしたが,それほど重苦しさは感じませんでした(3階席で聞いていたこともあると思います)。弦楽器のカンタービレも,じゅうぶんたっぷりと歌っているのですが,しつこく粘るような感じにはなりません。ペトレンコさんとオスロ・フィルの演奏からは,「巨人」の曲想にぴったりの若々しさを感じました。

ホルン(8本もいました)やトランペットなど,金管楽器の鮮やかさも素晴らしく,テンポをさらに一段階アップしたようなコーダ部分での若々しい表現にぴったりでした。

ちなみにコーダ部分でホルン奏者たちは,「全員起立」していました(別の部分ではベルアップも行っていました。)。音響的にそれほど効果に差はないと思いますが,実演でやってくれると,聞いている方の気分も盛り上がりますね。

アンコールでは,ブラームスのハンガリー舞曲第6番が演奏されました。最後の部分で茶目っ気を見せてくれるなど,ペトレンコさんの緩急自在の指揮ぶりをオーケストラ自体も楽しんでいるようなアンコールにぴったりの演奏でした。

というわけで,聴衆も大喜びの素晴らしい演奏でした。ペトレンコさんは,NAXOSからショスタコーヴィチの交響曲全集(?)のCDも出しているようですが,機会があれば,ロシア音楽なども聞いてみたいものです。

2014/03/16

本日の午後は「ピアノ協奏曲の午後」。ショパンの1番2番をはじめ,4曲の協奏曲をOEKとの共演で楽しみました。特に竹田理琴乃さんのショパンの2番は完成度の高い素晴らしい演奏 #oekjp

石川県ピアノ教会とOEKが数年に1回行っている,県内のピアニストたちとOEKが共演する「ピアノ協奏曲の午後」を聞いてきました。このコンサートですが,文字通り「休日の午後にピアノ協奏曲ばかりを取り上げる」という企画で,次の4曲のピアノ協奏曲が5人のピアニストによって演奏されました。

サン=サーンス/ピアノ協奏曲第2番
ショパン/ピアノ協奏曲第1番
モーツァルト/2台のピアノのための協奏曲第10番
ショパン/ピアノ協奏曲第2番

休憩はショパンのピアノ協奏曲第1番の後に入りましたが,前半後半ともに1時間以上かかるプログラムで,14:00から17:00近くまで掛かる,大変ボリュームのある演奏会となりました。

今回登場したピアニストの中では,やはり昨年日本音楽コンクールピアノ部門で3位に入賞した竹田理琴乃さんによる,ショパンのピアノ協奏曲第2番の演奏が一頭地を抜くような完成度の高い演奏でした。完全に手の内に入った演奏で,第2楽章でのじっくりと聞かせる歌から一気に駆け抜けるような最終楽章まで,言うことなしの演奏でした。竹田さんは,この曲を北陸新人登竜門コンサートの時に井上道義さん指揮OEKと共演したこともありますので,聞くのは2回目なのですが,さらに「歌心」が豊かになったように思いました。これからの活躍が本当に楽しみなピアニストです。

その他の曲も各曲の魅力をしっかり伝えてくれる演奏でした。

木下由香さんによるショパンのピアノ協奏曲第1番は,タッチがとても軽やかで特に第3楽章の民族舞曲的な感じが印象的でした。吉藤佐恵さんによるサン=サーンスのピアノ協奏曲第2番は,サン=サーンスにしては,ちょっと雰囲気が重いかなという気もしましたが,その分充実した響きをしっかり楽しませてくれました。この曲はOEKのレパートリーに入っている曲で,今度の新人登竜門コンサートでも演奏されますが,その聞き比べも楽しみです。

後半最初に,坂下麻子さんと菅野幸子さんによって演奏されたモーツァルトの2台のピアノのための協奏曲は,演奏全体に濃い雰囲気がありました。演奏全体に大人の雰囲気を持った品の良い温かみがあり,晩年のモーツァルトの音楽を聞くような深さを感じました。

今回の指揮は,三河正典さんでした。どの演奏もしっかりとしたサポートで,どのピアニストにとっても大変演奏しやすかったのではないかと思います。これから,ラ・フォル・ジュルネ金沢2014に向けて,県内のピアニストの演奏を聞く機会が増えてきますが,その期待を高めてくれるような,質量ともに充実感のある演奏会でした。

2014/03/08

OEKのベートーヴェン交響曲シリーズ,第3弾は井上道義指揮による第4番と第5番。キリっと引き締まった自信に満ちた見事な演奏は「トスカニーニもびっくり」の素晴らしさ。権代敦彦「クロノス」は3.11を前にした祈りの音楽 #oekjp

今日の朝,起きてみると雪が積もっていました。今年の金沢の冬は,積雪量が少なかったので,「もう降らないだろう」と思っていたので,一瞬「おっ」と思いました。が,交通に影響するほどでもなくかえって金沢の風情を増してくれるような「3月の雪」でした。

その中,OEKの定期公演マイスターシリーズ:ベートーヴェン全交響曲シリーズの3回目を聞いてきました。チクルス的にも真ん中ですが,演奏された曲も真ん中の「4番」と「5番」でした。この2曲が一つの演奏会で取り上げられるのは,かなり珍しいことだと思いますが,今回の井上道義さんのアプローチを聞いてなかなか良い取り合わせだと思いました。

井上さんの指揮は,非常に正統的で,両曲とも古典的な交響曲として捉えていたと思います。しっかりと凝縮した密度の高さと,「形の良さ」がありました。それに「熱い魂」がしっかり籠っていました。井上さんは,5番の演奏が終わった後のアンコールの前で「今日の4番の演奏は本当に良かった」とステージ上で語っていました。

このこと自体珍しいのですが,両曲ともOEKメンバーの演奏に自信に裏打ちされた積極性が感じられ,「言うことなし」の演奏だと感じました。この日のフルートは工藤重典さんでしたが,その他の木管のメンバーの演奏も生き生きと音が前に出てきていて,古典的な枠はあるのに,かえって自由と感じさせてくれるようなところがありました。

第4番では,生き生きとしたスピードにのって各楽器が次々ソリスティックに活躍する第4楽章が特に印象的でした。第5番は,名曲中の名曲ということで,どこを取っても素晴らしかったのですが,やはり第4楽章に入る前の「革命前の静けさ」的な気分と第4楽章に入ってからの晴朗さが印象的でした。

第3楽章では,マルガリータ・カルチェヴァさんとルドヴィート・カンタさんを中心とした低弦グループによるフーガの部分も圧倒的な迫力を持っていました。最終楽章はピッコロが加わり,その音ばかりが目立つ,ということもあるのですが,今日の演奏は,その音が非常によく溶け合っていたのも素晴らしいと思いました。

このチクルスでは,現代曲を1曲加えるのが定番になっています。今回は,権代敦彦さんの「クロノス-時の裂け目」が演奏されましたが,これが全体の「要」になるように,4番-クロノス-5番という順に演奏されました。この配置も良かったと思います。

プレトークで権代さんは,この曲は「ミ♭ レ ド」という3つの音から成る下行するモチーフばかりでできている,と仰られていましたが,第5番は,「ソソソミ♭ー ファファファレー」の積み重ねですので,発想としては共通する部分があります。オーケストラの演奏会としては異例の5人編成の曲でしたが(ピアノ,ホルン,バスクラリネット,打楽器,チェロ),あまり違和感なくベートーヴェンの曲と組み合わさっていたと思います。

この曲は2012年のラ・フォル・ジュルネ用に書かれた曲で,「震災」「原発」などについての権代さんの思い・祈りが込められているとのことです。重くのしかかるようなモチーフの繰り返し,軋むような音の重なり合い(チェロのソンジュン・キムさんの激しい演奏が特に印象的でした)の後,最後の方では祈りを象徴するように,鐘の音が入っていました。

「クロノス」というのは「時の刻み」ということで,アンコールでは「時の刻み」を表現したベートーヴェンの交響曲第8番の第2楽章がアンコールで演奏されました。

終演後のサイン会で井上さんに「第4番は本当に良かったですよ」と言ってみたところ,「今日のような演奏は滅多に聞けないよ。トスカニーニの演奏よりも凄い」と,結構熱く語ってくれました。”トスカニーニ”という名前が出てきて,ちょっと意外だったのですが,言われてみると今日の演奏の方向性はまさにトスカニーニ的だった気がしました。井上さんの思い通りの演奏が実現できた演奏会だったのだと思います。

残念ながら,この第4番が聞けるのは今回だけですが,第5番の方は,明日の輪島公演,3月24日の東京公演,そして,ラ・フォル・ジュルネ金沢の開幕公演直後の軽井沢公演でも演奏されます。是非ご期待ください(と,宣伝をさせていただきました)。明日の輪島公演では,工藤重典さんのフルート独奏も楽しめすので行ってみたいところですが....ラ・フォル・ジュルネ金沢までお楽しみは取っておきたいと思います。

2014/03/05

OEK2014-2015シーズン・プログラム(速報版) マリナー,C.ヤルヴィ,ポンマーなど初登場の指揮者が続々登場 #oekjp

家に帰ると,OEKから2014-2015シーズン・プログラムの「速報版」が届いていました。昨年までは,「速報版」というのは無かったと思いますが,ファンとしては「完全でなくても早く知りたい」という思いがありますので大歓迎です。その内容についてご紹介しましょう。

フィルハーモニー・シリーズは,今シーズン同様,開幕コンサート9/10で辻井伸行さんが登場します。共演するのがマルク・ミンコフスキさんです。すっかりOEKの常連になりましたね。今回はフランス音楽特集で,ビゼーの交響曲などが演奏されます。

10/10には,クラリネットの名手チャールズ・ナイディックさんが登場します。コープランドのクラリネット協奏曲というのも大変楽しみです。

10/30には,何とネヴィル・マリナーさんが登場します。マリナーさんはアカデミー室内管弦楽団の指揮者として有名です。90歳ぐらいになられると思いますが,伝説の指揮者と言っても良いと思います。そのマリナーさんがOEKを指揮するという,夢のような演奏会になりそうです。ちなみにマリナーさんはマイスターシリーズ11/2の方にも登場します。

10/30の方はモーツァルト特集で工藤重典さんとの共演によるフルート協奏曲第1番と交響曲35番,39番が演奏されます。

1/10のニューイヤーコンサートは井上道義さん指揮で,島田歌穂さんがゲストとして登場します。ミュージカルの曲が演奏されるのでしょうか?これまでにないニューイヤーコンサートになりそうです。

2/15にはクリスチャン・ヤルヴィさん指揮の「ペール・ギュント」全曲です。OEK合唱団も登場します。

3/20は井上道義さんと仲道郁代さんの共演です。シューベルトのザ・グレイト,ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番が演奏されます。

6/22には五嶋みどりさんが登場します。定期公演に五嶋さんが登場するのは初めてかもしれまん。指揮は井上道義さんで,バルトークのヴァイオリン協奏曲第2番を共演します。ブラームスの交響曲第2番も楽しみです。

7/24には広上淳一さんが登場します。曲目はソリストは未定です。

マイスターシリーズの方は,「オーケストラ・マスターワークス」と題して,オーケストラの名曲+ハイドンの交響曲という感じのプログラムになっています。毎回毎回,ハイドンの80番台を中心とした交響曲が演奏されます。演奏会は,いずれも土or日曜日の14:00開演です。

9/20は井上道義さんの指揮です。シューベルトの「未完成」,ハイドンの81番,シェーンベルクの「浄められた夜」が演奏されます。

11/2は上述のとおりマリナーさんの指揮です。マイスターの方では,モーツァルトの「ジュピター」,ハイドンの96番,ヴォーン=ウィリアムズの「揚げひばり」が演奏されます。「揚げひばり」では,アビゲイル・ヤングさんがソリストとして登場しますが,これも楽しみです。

1/24はシュフテファン・ヴラダーさんが純粋に「指揮者」として登場します。ブラームスの4番,ハイドン83番などが演奏されます。

3/7はマックス・ポンマーさんが登場します。マリナーさん同様,ベテラン指揮者のOEK初登場ということで,こちらも大変楽しみです。バッハの管弦楽組曲とハイドンの交響曲などが演奏されます。

7/18は井上道義さん指揮の日本センチュリー交響曲団+OEKの演奏会となります。演奏される曲が待望のストラヴィンスキーの「春の祭典」です。これは本当に楽しみです。

ファンタスティック・クラシカルコンサートについては詳細は未確定です。11/23に黒柳徹子さんがゲスト出演することは決まっています。

こうやって並べてみて気づくのは,
(1)これまで常連だった,ギュンター・ピピラーさん,山田和樹さん,金聖響さんなどが登場しない。
(2)4月,5月に定期公演がない
(3)ベートーヴェンの交響曲がない
といった点です。(2)については,ラ・フォル・ジュルネ金沢との関連もあるかもしれませんね。

個人的に注目しているのは,やはり,ネヴィル・マリナーさんです。演奏される曲では,「春の祭典」が楽しみです。というわけで,新シーズンも目が離せませんね。

2014/03/02

石川県学生オーケストラ&オーケストラ・アンサンブル金沢合同公演,今年のメインはボロディンの交響曲第2番。重厚で若々しい演奏を堪能しました。OEKのハイドンもお見事でした。#oekjp

この時期恒例の石川県学生オーケストラとオーケストラ・アンサンブル金沢の合同公演,カレッジ・コンサートを聞いてきました。この演奏会も回を重ね,今回で11回目になります。今年の指揮者は,小松長生さんで,金沢大学フィルハーモニー管弦楽団,金沢工業大学室内管弦楽団のメンバーとオーケストラ・アンサンブル金沢が合同で演奏しました。

1曲目はOEK側がトップ奏者になり,チャイコフスキーの「くるみ割り人形」組曲が演奏されました。名曲中の名曲ですが,OEK単独だとなかなか演奏する機会はない曲です。小松さんの指揮は非常に正統的で,この曲の魅力をストレートに楽しませてくれました。指揮する姿にも全くブレがなく,安心して楽しむことができました。花のワルツの最後の部分の威厳に満ちた終わり方など,「お見事!」という感じの演奏でした。

2曲目のハイドンはOEK単独の演奏でした。これもまた現代オーケストラによるハイドン演奏の見本のような見事な演奏だったと思います。冒頭からとても速いテンポでスッキリ,クッキリと明快な音楽を聞かせてくれました。ハイドンの後期の交響曲は非常に緻密に出来ていて,それらの音やフレーズの積み重ねを聞くだけでうれしくなります。今日の演奏は,そういった点で大変明快であると同時に,リラックスした気分もありました。

最終楽章のコーダの前では,何故か第2楽章ののんびりとしたメロディが再現してきて,「おお」と思いました(全く違和感がなかったので,気づかなかった人もいたと思います)。そういう遊びの感覚の後,ビシッと曲を締めてくれるあたり,緊張感とユーモアの絶妙のバランス感覚のある見事な演奏だったと思います。

後半のボロディンの交響曲第2番は,私自身,実演で聞くのは始めての曲です。他のオーケストラの実演でも聞いたことはないのですが,LPレコード時代などにはレコーディングも多かった曲です。LPレコードの片面にちょうど納まるぐらいの長さだったので,それが人気だったのかもしれませんが,本来,今でももっと演奏されるべき作品だと思います。

この演奏では,学生オーケストラ側がトップ奏者になっていました。冒頭の音型がとても印象的な曲ですが,非常に堂々と演奏しており,まず,学生オーケストラとOEKが一体になった”音の厚さ”を堪能できました。大型の恐竜がゆっくりと動きまわるような,独特の雰囲気が出ていました。恐竜は絶滅してしまっているので,言い方を変えると,やはりちょっと現代の感覚とずれた曲なのかもしれませんが,インパクトの強さは不滅だと思います。最後の部分の仰々しさも最高でした。

途中の楽章では,第3楽章でのホルンやクラリネットのソロが大健闘でした。この部分は,「中央アジアの草原」的な大らかさがありました。そうやって聞くと,第4楽章は草原を馬が走っているようにも感じられます。なかなか重厚さのある疾走感があり,とても楽しいエンディングになっていました。パーカッションも活躍していましたが,ひっぱたくようなタンバリンなど,若々しさに溢れた演奏でした。

今回はボロディンの交響曲第2番という,かなり意表を突く曲でしたが,こういう選曲は良いですねぇ。来年もまた,OEKメンバーもびっくりというような曲を聞いてみたいと思います。

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