雨の中,オノフリ&OEKの定期公演を聞いてきました。ヴィヴァルディ,モーツァルト,ハイドン インスピレーションとセンスの良さに溢れた素晴らしいドラマの連続。森麻季さんとのバランスもぴったりでした。#oekjp
予想外の激しい雨の中,足元がぐちゃぐちゃになりながら,OEK定期公演フィルハーモニーシリーズに出かけてきました。今回の指揮&ヴァイオリンは,2013年に続いて2回目の登場となるエンリコ・オノフリさん,ソプラノは森麻季さんでした。
今回は,前半はヴィヴァルディ作品集,後半はハイドンの交響曲第100番を中心としたプログラムでした。通常のオーケストラの編成からすると,必ずしも大きな編成ではないのですが,オノフリさんとOEKの作り出す音楽にはアイデアが満ち溢れ,自由と楽しさと洗練味に満ちた素晴らしい公演になりました。
オーケストラの公演に歌手が加わる場合,歌手だけが目立つ場合もありますが,森さんの声はオノフリ&OEKの響きにピッタリで,十分な華やかさを感じさせながらも,しっかり「OEKの定期公演」となっていました。
前半のヴィヴァルディは,オノフリさんの十八番です。ヴィヴァルディの曲は「似た曲ばかり」と思われがちですが,オノフリさんのリードで聞くとどの曲にも,生き生きとした生命力が吹き込まれます。バロック・ヴァイオリンならではのしっとりとした響きを中心に,センスの良さを感じさせる演奏を聞かせてくれました。OEKの響きはいつもよりは,古楽風でしたが,完全にノンヴィブラートというわけではなく,多彩なニュアンスを持った演奏を聞かせてくれました。
森麻季さんの歌では,ヴィヴァルディの歌劇「グリゼルダ」のアリア「2つの風にかき乱されて」が聞きものでした。ソプラノにしてはかなり低い音域が出てくる一方,コロラトゥーラ的なパッセージがずっと続く技巧的な曲で,大変な難曲だと思います。森さんは見事に聞かせてくれました。
# 今回,森さんは明るい水色のドレスで登場しましたが,「アナと雪の女王」といった感じでしたね。
後半は森さんの独唱でモーツァルトのコンサートアリアが歌われた後,ハイドンの交響曲第100番「軍隊」が演奏されました。この演奏では,バロックティンパニの乾いた音を中心にトルコ風のエキゾティックな気分と華やかなドラマ性を強く感じさせてくれました。
第2楽章では,トランペットの「見せ場」の前に少し大き目な間を入れ,立ちあがって演奏させていました。その後,トルコ軍が一気に攻めてくるような感じでティンパニのロールが続いていましたが,交響曲とは思えないようなドラマを感じさせてくれました。
その他の部分でもインスピレーションに満ちた瞬間の連続で,初めてこの曲を聞くような印象を残す,新鮮な演奏を聞かせてくれました。オノフリさんは,ステージ袖から出入りするたびに,飛び跳ねるように登場していましたが,OEKとの共演が嬉しくてたまらないような相性の良さを感じました。
アンコールでは,再度森さんが登場し,ヘンデルの「リナルド」の中のお馴染みの曲が歌われましたが,これもまた絶品で,「泣かせてください」というよりは「泣かされました」という演奏でした。最後に,もう1回「軍隊」の2楽章が演奏されて終演となりました(この演奏には,「本割」とちょっと違うところがありました。これについてはレビューで触れましょう)。
というわけで,足元はぐちゃぐちゃなままでしたが,演奏会後,気分はすっかり晴れ上がりました。OEKは,先日のベートーヴェン交響曲チクルスの時とは全く違う響きを聞かせてくれましたが,この柔軟性がOEKの素晴らしさだと思います。
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