OEKのCD

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2014/09/06

岩城宏之メモリアルコンサート。内藤淳子さんの真摯なヴァイオリンでメンデルスゾーンをじっくり堪能。山田和樹指揮による包容力のある「宗教改革」も見事。ウンスク・チンの新曲は斬新な響き #oekjp

OEKの2014/15のシーズンが始まりました。

9月上旬の新シーズン最初の定期公演は,毎年「岩城宏之メモリアルコンサート」ということが多かったのですが,今年はこのコンサートは定期公演ではなく,純粋に「メモリアルコンサート」として開催されました。今回は,今年の岩城宏之音楽賞を受賞したヴァイオリニストの内藤淳子さんとの共演を中心に,メンデルスゾーンの作品とOEKの委嘱作品が演奏されました。指揮は,病気療養中の井上道義さんに代わって山田和樹さんが登場しました。

山田さんは,2006年の北陸新人登竜門コンサートで岩城さんの代理でOEKを初めて指揮した後,指揮者としての活躍の場を広げましたので,今回のコンサートの指揮者にはぴったりと言えます。

演奏会に先立ち,岩城宏之音楽賞の表彰式があった後,ウンスク・チン作曲の大アンサンブルのための「グラフィティ」という作品が演奏されました。この曲は,当初7月の定期公演で井上道義さん指揮で演奏される予定だったものです。ウンスク・チンさんは,OEKの前のコンポーザー・オブ・ザ・イヤーだった方です。今回の特徴はOEKの単独委嘱ではなく国際的な共同委嘱となっている点です。そのため,世界初演ではなくアジア初演ということになります。

この作品ですが,「大アンサンブルのための」という表現どおり,独特の編成でした。弦楽器の数は室内楽並みに少ないのですが,管楽器はトロンボーンやテューバも含め一通りそろっています。何といっても打楽器が大活躍します。この日は6人(多分)ぐらい打楽器奏者がいました。の

曲の方は...かなり前衛的でメロディがない作品でした。ピアノ,ハープや打楽器の多彩な音,弦楽器の特殊奏法など含め何が飛び出してくるか分からない曲でした。新曲の場合,15分以内のことが多いのですが,この曲については国際共同委嘱作品ということもあるのか,3楽章からなるかなりの大作で30分ぐらい掛かっていたと思います。「グラフィティ」というタイトルは,「壁に描かれたストリートアート」的な落書を意識しています。どこか取り留めもないところがありましたが,その辺をどう感じるかが好みを分かつところだったと思います。

続いて内藤淳子さんが登場しました。内藤さんは,金沢市出身のヴァイオリニストで現在,ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の第1ヴァイオリン奏者として活躍されています。この内藤さんの独奏によるメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲ですが,大変立派な演奏で,感動しました。

冒頭部分はちょっと音程が上ずったような感じになりましたが,その後は非常にゆっくりとしたテンポでじっくりと聞かせてくれました。第1楽章の最後のカデンツァなどは,深く沈潜するような感じでした。華やかな協奏曲というよりは緻密な室内楽的な雰囲気があるのも素晴らしく,内藤さんならではメンデルスゾーンの世界を堪能させてくれました。この曲は非常によく演奏される曲ですが,スター奏者による甘美な演奏とは一味違った,知的な抑制の効いた演奏は大変新鮮に感じました。

今後は,内藤さんとOEKメンバーによる室内楽,さらには内藤さんつながりでロイヤル・コンセルトヘボウのメンバーとOEKメンバーとの共演なども期待したいと思いました。

後半では,内藤さんの演奏曲目に合わせるようにメンデルスゾーンの交響曲第5番「宗教改革」が演奏されました。山田さんは今年2月のOEK定期演奏会で,メンデルスゾーンの交響曲第2番「讃歌」の見事な演奏を聞かせてくれましたばかりですので,そのアンコール公演のような感じです。

この曲は,題材的にメンデルスゾーンの作品にしては渋く,交響曲と宗教曲が混ざったようなところがあります。第1楽章はコラールが何回か出てきますが,その明るく透き通った感じがOEKらしいところだと思います。第2楽章は,山田さんとOEKにぴったりのスケルツォ風の楽章でした。正真正銘メンデルスゾーンといった感じの瑞々しい音楽を聞かせてくれました。

第3楽章は無言歌を思わせる美しい楽章でした。特にサイモン・ブレンディスさんを中心とした弦楽器の透明感に溢れた美しさが印象的でした。そのまま第4楽章に入っていくのですが,そのつなぎのコラールのメロディが印象的でした。フルートの岡本さんをはじめ,木管楽器のアンサンブルが素晴らしく,聞いていて妙に敬虔な気分になりました。

曲の終結部はコラールと対位法的な音の動きが組み合わさって大きく盛り上がります。ブルックナーの交響曲のフィナーレに通じるものがあると感じました。山田さんは大げさにまとめるのではなく,すべてを暖かく包み込むように柔らかな雰囲気で締めてくれました。

この日のプログラムは,現代曲で始まり,メンデルスゾーンの渋い交響曲で終わるというやや地味目な構成でしたが,お客さんの反応は大変良かったと思います(特に内藤さんのヴァイオリンに対する拍手が暖かかったですね)。金沢で,こういうプログラムが普通に取り上げられるようになり,お客さんが自然に楽しめるようになったのもOEKの活動の積み重ねによるものだと思います。ステージ上の岩城さんのポートレートを眺めながら,そんなことを感じました。

PS.この公演では,OS,A席を購入した定期会員に,潮博恵さんによる25周年記念本「古都のオーケストラ,世界へ!」が配布されました。この本については,別途紹介しましょう。

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