金沢21世紀美術館でマーラーの交響曲第5番のピアノ独奏版を大井浩明さんの演奏で聞いてきました。予想を超える超絶技巧と70分を超えるハードな演奏に驚嘆
金沢21世紀美術館で定期的に行っている「ベーゼンドルファーを弾く」シリーズの中の大井浩明さんの演奏会を聞いてきました。
今回は,昨日から今日にかけて4回の演奏会が行われ,まずクラシック以外のピアニストが3人が登場したのですが,何故か(?)その最後に大井浩明さんのピアノでマーラーの交響曲第5番のオットー・ジンガーによるピアノ独奏版の全曲を聞くという大変マニアックが企画が入っており,「これは聞き逃せない」ということで,喜んで聞きに行ってきました。
演奏は期待どおりの凄い編曲,凄い演奏でした。金沢21世紀美術館のシアター21は壁面も床も真っ黒の密室ということで,思い切り集中してマーラーのピアノ編曲版の世界に入ることができました
それにしても,ものすごい数の音符でした。第1楽章は,トランペット1本で始まりますのでシンプルに始まるのですが,すぐに大編成オーケストラの音をそのままピアノ独奏に編曲した感じの音の洪水になります。これが全楽章続いている感じでした。第2楽章の最後の方など大変輝かしい演奏でした。
ピアノ編曲版で聞くと,いろいろな声部の動きが非常にクリアになるのが面白いところです。今回のホールは残響がほとんどないので,その生々しい迫力がダイレクトに伝わってきました。第1楽章の最後の部分の「ドロドロドロ」という感じの弱音などは,オーケストラ版で聞くのとは違った,くっきりとした異様さのようなものがあり,面白いと思いました。第3楽章もウィーン風のワルツという感じではなく,細部がくっきりと表現された,ちょっと不気味なクールさを感じました
そして,有名な第4楽章アダージェットですが,今回は杉山洋一さんによる「スーパー・アダージェット」が使われていました。はじめは「やけに音が装飾的だなぁ?」という感じで聞いていたのですが,「これはいくらなんでも装飾的すぎる。メロディ・ラインがよく分からない」と思い,プログラムをよく見ると,「杉山洋一」と書いてありました。
この楽章については,耽美的でロマンティックという印象がありますが,何というか音の動きが凄まじく,聞いている方も思わず息が詰まって来そうな感じでした。
第5楽章のロンド・フィナーレの最初の方は,どこかバッハのフーガをピアノで聞いているような感じに聞こえました。この日は1曲目にバッハの6声のリチェルカーレが演奏されましたが,そのバッハの音楽と「つながっているなぁ」と感じました。楽章の最後の部分は明るく終わりますが,この部分での輝かしい迫力も圧倒的でした。
大井さんは,演奏後のトークで,井上道義さんの快気祝いでこの曲を選んだということを仰られていましたが,井上さんも大喜び(?)の演奏だったのではないかと思います。
演奏後,アンコールが3曲演奏されました。それぞれ趣向の凝らされた,面白い曲でしたが,詳細はレビューでご紹介しましょう。
大井さんが21美に登場するのは,今回が2回目だと思いますが,是非また「めったに聴けないような体験」をさせてほしいなぁと思います。
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