OEKのCD

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2014年6月8日 - 2014年6月14日

2014/06/13

ヴァレリー・アファナシエフ ピアノ・リサイタル金沢公演 ベートーヴェン:ピアノソナタ30-32は,不機嫌・不愛想・不自然だけど大胆不敵で不思議な世界

昨日に続いて金沢は激しい雨。その中,連日演奏会に出かけてきました。本日は,ヴァレリー・アファナシエフのピアノ独奏による,ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第30~32番の公演でした。金沢でこの3曲が演奏されるというのは非常に珍しいことです。まずは「この3曲を生で聞ける!」ということで,この演奏に行くことにしました。

この日の客層ですが,心なしか男性が多い気がしました。金沢市アートホールは,もともと小規模なホールですが,開演前男子トイレに列が出来ていたというのは過去にあまり経験がありません(変な話題で失礼しました)。アファナシエフは,ギドン・クレーメルとの共演で名前が知られてきましたが,私も含め,ややマニアックなお客さんが多かったのかもしれません。

演奏の方ですが,正直なところ,アファナシエフさんの演奏にはちょっとついていけない部分がありました。まず,ステージに登場して演奏し始めるまでの雰囲気が,いかにも不機嫌で不愛想です。30番については,もっとデリケートに神妙に始まると思っていたので,いきなり無造作に弾き始め,意表を突かれました。

ピアノの音は硬質で,堂々とした音で強く迫ってくるようでした。この音は素晴らしいと思ったのですが,演奏全体としては,どこか不機嫌さを鍵盤の上で発散し,故意に悪ぶっているような感じに思え,素直に楽しむことができませんでした。

基本的にテンポはかなり遅め。部分的に異様に遅くなる部分があり,細部を拡大して見せるようなところがあったのが印象的でした。各曲とも,速いパッセージでは,金沢弁で言うところの,ムタムタな感じの部分もあり,やや雑な印象を与える部分もありました。

ベートーヴェンの後期の作品については,理想の高みに向かって登っていくような静かな感動が満ちているのですが,アファナシエフさんの演奏には,そういう感じはなく,怒りや苦悩を鍵盤にぶつけているような印象を持ちました。各曲とも,演奏が終わった後,余韻を楽しむような素振りもなく,ブツっと終わっていたのにも驚きました。

アファナシエフさんは「普通」に演奏することに反発し,「不機嫌さ」「不自然さ」を意図的に演じているのではないかと思いました。こういった一筋縄では行かない雰囲気が,他のピアニストにない個性と言えます。

終演後,サイン会を行っており,その時,アファナシエフさんは結構笑顔を見せていたので,やはりステージ上では「不機嫌キャラ」を演じていたのかな,という気がしました。

というわけで,アファナシエフさんに対しては,単純に「良かった」「感動した」というよりは,「変な演奏だった」と言ってあげる方が喜ばれる(?)のではないか。そんな気がしました。

私自身,ベートーヴェンのこの3曲を実演で聞くのは初めてだったので,まずは普通の演奏で聞くべきだったのかもしれませんが,この日の演奏が強いインパクトを残したこと自体は,忘れられないと思います。

2014/06/12

雨の中,オノフリ&OEKの定期公演を聞いてきました。ヴィヴァルディ,モーツァルト,ハイドン インスピレーションとセンスの良さに溢れた素晴らしいドラマの連続。森麻季さんとのバランスもぴったりでした。#oekjp

予想外の激しい雨の中,足元がぐちゃぐちゃになりながら,OEK定期公演フィルハーモニーシリーズに出かけてきました。今回の指揮&ヴァイオリンは,2013年に続いて2回目の登場となるエンリコ・オノフリさん,ソプラノは森麻季さんでした。

今回は,前半はヴィヴァルディ作品集,後半はハイドンの交響曲第100番を中心としたプログラムでした。通常のオーケストラの編成からすると,必ずしも大きな編成ではないのですが,オノフリさんとOEKの作り出す音楽にはアイデアが満ち溢れ,自由と楽しさと洗練味に満ちた素晴らしい公演になりました。

オーケストラの公演に歌手が加わる場合,歌手だけが目立つ場合もありますが,森さんの声はオノフリ&OEKの響きにピッタリで,十分な華やかさを感じさせながらも,しっかり「OEKの定期公演」となっていました。

前半のヴィヴァルディは,オノフリさんの十八番です。ヴィヴァルディの曲は「似た曲ばかり」と思われがちですが,オノフリさんのリードで聞くとどの曲にも,生き生きとした生命力が吹き込まれます。バロック・ヴァイオリンならではのしっとりとした響きを中心に,センスの良さを感じさせる演奏を聞かせてくれました。OEKの響きはいつもよりは,古楽風でしたが,完全にノンヴィブラートというわけではなく,多彩なニュアンスを持った演奏を聞かせてくれました。

森麻季さんの歌では,ヴィヴァルディの歌劇「グリゼルダ」のアリア「2つの風にかき乱されて」が聞きものでした。ソプラノにしてはかなり低い音域が出てくる一方,コロラトゥーラ的なパッセージがずっと続く技巧的な曲で,大変な難曲だと思います。森さんは見事に聞かせてくれました。

# 今回,森さんは明るい水色のドレスで登場しましたが,「アナと雪の女王」といった感じでしたね。

後半は森さんの独唱でモーツァルトのコンサートアリアが歌われた後,ハイドンの交響曲第100番「軍隊」が演奏されました。この演奏では,バロックティンパニの乾いた音を中心にトルコ風のエキゾティックな気分と華やかなドラマ性を強く感じさせてくれました。

第2楽章では,トランペットの「見せ場」の前に少し大き目な間を入れ,立ちあがって演奏させていました。その後,トルコ軍が一気に攻めてくるような感じでティンパニのロールが続いていましたが,交響曲とは思えないようなドラマを感じさせてくれました。

その他の部分でもインスピレーションに満ちた瞬間の連続で,初めてこの曲を聞くような印象を残す,新鮮な演奏を聞かせてくれました。オノフリさんは,ステージ袖から出入りするたびに,飛び跳ねるように登場していましたが,OEKとの共演が嬉しくてたまらないような相性の良さを感じました。

アンコールでは,再度森さんが登場し,ヘンデルの「リナルド」の中のお馴染みの曲が歌われましたが,これもまた絶品で,「泣かせてください」というよりは「泣かされました」という演奏でした。最後に,もう1回「軍隊」の2楽章が演奏されて終演となりました(この演奏には,「本割」とちょっと違うところがありました。これについてはレビューで触れましょう)。

というわけで,足元はぐちゃぐちゃなままでしたが,演奏会後,気分はすっかり晴れ上がりました。OEKは,先日のベートーヴェン交響曲チクルスの時とは全く違う響きを聞かせてくれましたが,この柔軟性がOEKの素晴らしさだと思います。

2014/06/08

石川県立音楽堂「午後の音楽散歩:OEKメンバーシリーズ 西本幸浩,若松みなみヴァイオリン・デュオリサイタル」を聞いてきました。サラサーテの曲を中心とした大変楽しめるプログラム。西本さんのトークも大変冴えていました。

石川県立音楽堂で定期的に行っている「午後の音楽散歩」はいつもは平日で行っていることもあり,ほとんど行ったことはなかったのですが,今回からOEKメンバーによるシリーズも始まり,しかも日曜日に行われたので聞きに行くことにしました。

今回登場したのは,仙台フィルのコンサートマスター西本幸浩さんとOEKの第2ヴァイオリン若松みなみさん,ピアノの犬伏啓太さんでした。実は西本さんと若松さんはご夫妻で,犬伏さんも大学時代からの仲間ということで,交流ホールの雰囲気に相応しい親しみやすさがある演奏会となっていました。

ただし,演奏された曲には,それほど有名な作品はありませんでした。このことは,”ヴァイオリン2台のための作品”という制限のせいだと思いますが,それを逆手に取るように,工夫の凝らされた楽しめる内容になっていました。何より今回司会を担当していた西本さんのトークが冴えていました。どの曲もトークと併せて聞くと,より一層楽しくことができました。

最初バッハのトリオソナタの1つの楽章で始まった後,バルトークの2つのヴァイオリンのための小品,そして1人ずつの作品が2曲,最後に再度二重奏が2曲と大変変化に富んでいました。最後,アンコールでバッハの2台のヴァイオリンのための協奏曲の第2楽章が演奏されるなど,プログラミング自体,シンメトリカルになっていました。

演奏された曲では,ショスタコーヴィチの5つの小品が面白い作品だと思いました。親しみやすいポルカ,ワルツ,ギャロップなどを気楽に聞かせつつ,実は皮肉を交えているような,「いかにもショスタコーヴィチ」という作品でした。

最後に演奏された,サラサーテの「ナヴァラ」という2台のヴァイオリンとピアノのための作品は,CDではあまり聞いたことはないのですが,実演だと意外によく演奏されます。IMAの時にホァン・モンラさんと神尾真由子さんが演奏したことがありますが,今回のご夫妻による演奏も熱のこもった聞きごたえがありました。

今回,若松さんはとても上品なピンク(何色と表現するか分からないのですが)のドレスで登場していましたが,「そういう目」で見ると,まさに新郎新婦という感じでしたね。会場にはOEKメンバーの姿も見かけましたが,お客さんと演奏者が一体になったような暖かい気分のある,とても良いムードの演奏会でした。

今後もこのシリーズにOEKメンバーが登場するということで,大いに期待したいと思います。

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