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2014年1月19日 - 2014年1月25日

2014/01/22

今回の音楽堂室内楽シリーズは,池辺晋一郎「自己ベスト」室内楽曲集。前衛的な作品からヴァイオリン初心者用作品,さらにはビートルズまで。ご本人の解説付きでたっぷり楽しめました。#oekjp

真冬の天候の中(まだ雪はそれほどではありませんが),石川県立音楽堂交流ホールで行われた音楽堂室内楽シリーズ第6回「生誕70周年池辺晋一郎with OEKファミリー」を聞いてきました。今回は池辺さん自身が自分の室内楽作品について解説をしながら,演奏を楽しむという趣向で,演奏会全体で「ベストアルバム」になるような充実した内容でした。

前半は,前衛的な作曲家としての池辺さんに焦点を当てた内容で,カタカナで「ゲンダイオンガク」と書いてみたくなるほどの,ギシギシと軋むような不協和音に溢れた音楽の連続でした。ただし,池辺さん自身の解説を聞いた後だと,「なるほど」という感じで,とても面白く聞くことができました。

個人的に特に凄いと思ったのが,2曲目に演奏された「ストラータⅤ:弦楽四重奏のために」でした。最初から息継ぎの間がないぐらいに,せわしなく,同じような音型や同音反復が続くような作品で,バルトークの弦楽四重奏曲辺りをさらに,強く強く締めあげたような緊迫感がありました。

この日は,OEKの弦楽奏者を中心としたメンバーでしたが,特にヴァイオリンの松井さんは出ずっぱりで,しかも,激しい音の動きを持った作品ばかりということで,見ているだけで「お疲れ様でした」という感じが伝わってきました。

前半最後に演奏された「TANADA」という6つの楽器(ヴァイオリン,チェロ,フルート,クラリネット,ピアノ,打楽器という変則的な編成)のための曲も楽しめました。池辺さんがN響アワーの司会をされたいた頃,夏に新潟県の妻有に出かけたことがあるそうです。その時に見た棚田の印象からひらめいた曲とのことです。

池辺さんは,「音はほっておくと下がる」理論をお持ちですが(この話は以前聞いたことがあります),そのことと「棚田の景観」には通じるものがある,ということで曲の前半はやたらとキンキンとした高音中心,最後はひたすら下降。そんな感じの曲でした。最後の部分で「下がった後,休符,下がった後,休符」という動きを取っていたのは,やはり「棚田」を意識していたのだと思います。楽譜を見ても「棚田」のようになっているのかもしれないですね。

曲全体の響きも,メシアンの曲のような感じで(そういえば,「時の終わりのための四重奏」とちょっと似た編成でした),今回演奏された曲の中ではいちばん色彩的でした。聞きながら,メシアンが「剣の舞」をアレンジしたらこんな感じになるかも,と勝手に想像しながら聞いていました。

後半は趣きを変え,聞きやすい響きの作品ばかりでした。

最初に演奏されたのは,池辺さんがヴァイオリンを習っていた娘さんのために書いた作品集でした。作曲家の父が子供のために作品を書くというのは,何となくバッハとかモーツァルトの時代のようで,カッコ良いですね。

ヴァイオリンの発表会でヴァイオリン・アンサンブルで演奏できるカノンは,OEKのヴァイオリン奏者4人で演奏されました。比較的簡単に演奏できる曲だとは思いますが,とても華やかに響いていたのはさすがだと思いました。カノンの場合,最初に引き終えた奏者が「手持無沙汰」になるのですが,それについての「対策」が取られているなど,さすが池辺さんというアイデアも盛り込まれていました(詳細はレビューで書きたいと思います)。

ちなみにOEKのヴァイオリン奏者の上島淳子さんは,この「カノン」を子供の頃,ヴァイオリンの発表会で弾いたことがあるそうです(池辺さんの娘さんと同じ先生についていたとのことです)。子どもの頃に弾いた曲をプロになって,しかも作曲者自身の前で演奏するとは,誰も予想していなかったでしょうね。

同じく娘さんのために書かれたコンチェルティーノ第2番については,フランスの作曲家が作ったような流麗で洒落た味わいがありました。娘さん自身は,「カタカナの作曲家の曲を弾きたかった」と思っていたそうですが,こんな素敵な曲を贈られた娘さんは大変幸せだと思います。

最後はビートルズの曲をバロック風にアレンジしたものが2曲演奏されました。これは,1970年代に池辺さんがレコード会社から頼まれて編曲したもので,「バロックの名曲とビートルズの名曲を合体させてみよう!」という趣向です。イエスタディとレット・イット・ビーが演奏されましたが,それぞれバロック音楽の超名曲と見事に合体していました。これについても詳細はレビューで紹介したいと思います。アンコールでは,もう1曲ビートルズの曲が演奏してお開きとなりました。

今回,池辺さんの作品をずらりとまとめて聞いてみて,池辺さんの多彩さ多才さを実感しました。どの曲にも,色々なアイデアが詰まっています。注文に応じて作る場合も,そこに池辺さんらしいヒネリが入っているし,バリバリの前衛的な作品の中にも独自のスパイスが効いています。さすがに初期の前衛的な作品については,池辺さん自身に説明をして頂かないと分からない工夫もありましたが,どの曲にもしっかりとしたコンセプトと知的な面白さが埋め込まれているというのが素晴らしい点だと思いました。

今回の企画は,音楽堂ならでは,OEKならではの楽しめる企画だったと思います。今年度の音楽堂室内楽シリーズはこれで最終回ですが(今年は6回全部聞いてしまいました),次年度はどういうプログラムになるのか,楽しみにしたいと思います。

2014/01/19

新作オペラ「滝の白糸」金沢公演。千住明さんの音楽はミュージカルを思わせる分かりやすさ。中嶋彰子さん,鳥木弥生さんなど歌も万全。合唱団も大活躍。金沢発の定番オペラに育って欲しいと思います。 #oekjp

泉鏡花原作の「義血侠血」をオペラ化した「滝の白糸」が,一昨日の高岡公演に続いて,金沢歌劇座で上演されたので観てきました。この作品は石川県音楽文化振興事業団などが中心になって,千住明さんに作曲,黛まどかさんに脚本を依頼して作られた新作です。

主役の白糸役は中嶋彰子さん,相手の村越欣弥役が高柳圭さん。それに加え,重要な役柄に石川県出身の鳥木弥生さん,高岡出身の森雅史さんを配するなど,配役の面でもドラマの舞台となっている「北陸」を組み込んでいる点も注目です。

今回の上演ですが大成功だったと思います。「もっと良くなるかな?」という部分もあった気はしますが,何よりもこれだけ分かりやすく,しかも堂々としたオペラが金沢発で作られたことを喜びたいと思います。

作品の全体の印象としては,何よりも千住さんの音楽がミュージカルに近いぐらいに聞きやすいのが特徴で,全くストレスなく,オペラの世界に入ることができました。字幕も出ていましたが,私の居た2階席でも,ほとんど字幕を見なくても言葉が分かりました(オペラグラスを持参するのを忘れたのは残念でしたが...)。

千住さんはテレビドラマの音楽なども沢山担当されていますが,その力量が存分に発揮されていたと思います。ストーリー自体の持つ感情の動きを,しっかりと盛り上げてくれました。

歌手の中では,やはり主役の中嶋彰子さんの表現力の豊かさ,細やかさが素晴らしいと思いました。中嶋さんの声には,しっとりとした落ち着きがありました。強烈さはそれほど感じませんでしたが,芯は強く,それが「北陸」の気分にぴったりでした。各幕(今回は3幕構成でした)に見せ場があり,各幕ごとに違った盛り上がりを聞かせてくれたのはさすがだと思いました。第2幕最後での「狂気」も見ものでした。

この辺はヴェリズモ・オペラという感じでしたが,各幕ごとにキャラクターが違うようなヒロインというのは,中嶋さんとしても大変やりがいがあったのではないかと思います。

相手役の高柳さんの声は大変若々しく軽やかで,「学問を志す青年」の雰囲気が出ていました。最後の最後の部分は原作にない牢屋の場でしたが,特にこの部分での「愛の歌」は大変聞きごたえがありました。

欣哉の母役の鳥木弥生さんの歌は,作品全体の中でいちばん泣かせてくれました。これも原作にない設定でしたが,法廷で白糸への感謝の気持ちをせつせつと歌ってくれました(法廷の中で歌うアリアというのは...他にはあまりないかもしれません)。説明的にしつこくなりそうな部分なのですが,息子が立派に成長した喜びと,そのために白糸に犯罪までさせてしまった辛さとが入り混じった何とも言えない情感を,暖かみのある声で堂々と歌われました。名場面という感じでした。

鳥木さんが第2幕で歌ったアリアは,七五調(多分)になっており,日本語オペラの良さを感じさせてくれました。

敵役の森さんは,南京出刃打ち(といっても実はどういう芸なのか分からないのですが)ということで,「トゥーランドット」当たりに出てきそうなキャラクターでした。堂々たる体格と重みのある声で,白糸の世界をしっかりと踏みにじっていました。

この森さんの歌と鳥木さんの歌がドラマに深みを加えていたと思います。

それ以外の役柄を含め,合唱団の皆さんも大活躍でした。今回のプログラムでは,合唱団ではなく「ゾリステン」と書かれていましたが,確かにそのとおりで,その他の役柄をみんな演じてしまうソリスト集団という感じでした。天神橋での2人の出会いの前後で,オペラ全体のテーマ曲になるような合唱曲を歌っていましたが(歌詞に月とか浅野川とかが出てくる曲),この曲などは独立した曲として,金沢市で歌われていくかもしれませんね。

合唱団は,見世物小屋のお客さんになったり,高岡の場での乗客になったり,法廷の場の傍聴人になったり(バッハの「受難曲」などに出てきそうな感じで合いの手を入れていました)。これだけ多彩に合唱団が活躍する作品も珍しいのではないかと思います。

オペラの最後の部分では,白糸と欣哉の愛の歌に続いて,合唱団が大きく情感を盛り上げて締めてくれました。ほとんどセットと一体になったような大活躍でオペラ全体のフレームをしっかり作っていました。

セットは比較的シンプルで,見世物小屋,橋の上,法廷などに切り替わる「ステージ中のステージ」のような部分と可動式小ステージから成っていました。可動式部分が素早く動くので,場面転換が大変スムーズでした。

衣装の方は,リアルな水芸の衣装を着たりしていた白糸をはじめとして,どのキャラクターも次々と衣装を変えており,大変華やかでした。

個人的には,金沢のお客さんへのサービスとして,天神橋とか兼六園などをもう少し「具体的」に表現してくれても良かったかなと思いました。が,その分,「普遍的で永遠の愛の世界」という感じになっていたのかもしれません。

オペラの長さは,15分の休憩2回を入れてほぼ3時間でした。この長さについては,もう少しスッキリさせられる気はしました。特に第3幕の最後の部分は,感動的な鳥木さんの歌や,主役2人の牢獄の格子をはさんでの愛の歌など,聞かせどころの連続でしたが,もう少し流れがよくできるかな,という気がしました。

終演後は,最後の部分で主役が2人が歌っていた曲(この曲はオペラ中,何回か出てきていたと思います)のメロディがしっかり残り(ただし今は忘れてしまっていますが...),プッチーニなどのオペラを見たのと同じような「どこかロマンティックな香り」が後に残りました。

全体の雰囲気としては,上述のとおりミュージカルに近い部分もあったので,「劇団四季あたりがミュージカルとして上演しても面白いかも...」などと思ったのですが,いずれにしても,そのうち再演を期待したいと思います。メロディを覚えて聞くと,もっと楽しめそうです。

上演しているうちにさらに洗練されていって,ロングランとまでは言いませんが,ウィーンで愛されている「こうもり」のように,定期的に上演される作品に成長していって欲しいものです。

というわけで,上演に携われた多くの皆さんに皆さんに「良い作品をありがとうございます」と感謝をしたいと思います。

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