OEKのCD

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2014年10月26日 - 2014年11月1日

2014/10/31

石川県立音楽堂室内楽シリーズで平均律+展覧会の絵を上杉春雄さんのピアノを聞いてきました。自信に満ちた明晰な演奏に加え,トークも大変充実

本日は音楽堂室内楽シリーズとして行われた上杉春雄さんのリサイタルを聞いてきました。上杉さんは,医師でありながら,ピアニストとしての活動も続けている異色のピアニストですが,その演奏は正攻法で,長年に渡り,作品に真摯に向き合っていることがしっかりと伝わってくるような演奏を聞かせてくれました。

今回のプログラムは前半がバッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻の1~8番,後半がムソルグスキーの「展覧会の絵」全曲でした。今回の公演は,石川県立音楽堂交流ホールで行われたのですが,そのステージと客席との距離の近さを生かし,上杉さんのトーク(というよりはレクチャーでしょうか)を聞いた後,曲を楽しむという構成でした。それが大変良かったと思います。

今回の上杉さんによる曲目解説が素晴らしく,バッハのこの曲集が4曲単位で一つのまとまりになっていることや,「展覧会の絵」が「殻をつけたひな鳥の踊り」を中心にシンメトリカルに曲が配列されていることなど,なるほどという情報が満載の内容でした。

それに加え,上杉さんのトークの内容も充実していました。しっかりとした形のある美術と何かとらえどころのない時間芸術である音楽との関係であるとか,知的な好奇心を刺激してくれるような内容を大変分かりやすく,穏やかな口調で語って頂きました。

その後に聞く音楽も聞きごたえがありました。

前半のバッハでは,4曲目,8曲目の短調作品が特に聞きごたえがありました。4曲目は,コンパクトにまとまった受難曲であるとか,8曲目は深い諦観の伝わってくるようなサラバンドであるとか,この取っつきにくそうな曲集の各曲ごとの個性を感じ取ることができました。上杉さんは,平均律の全曲演奏をライフワークとされているとのことですので,是非,9曲目以降も上杉さんの解説付きで聞いてみたいものです。

後半の展覧会の絵は,上杉さんが14歳(!トークではそう語っていました)の頃からずっと弾き続けている曲で,完全に手の内に入った見事な演奏を聞かせてくれました。上杉さんのピアノには,大げさな身振りはなく,衒いなく曲の核心に迫ろうとする率直さがあります。間近で聞くピアノの音には引き締まった力感があり,「絵画」というよりは,彫りの深い,大理石のギリシャ彫刻を間近で見るような,惚れ惚れとするような鮮やかさがありました。

きっと,医師を続けているからこそ実現できるような表現もあるのだと思います。その幅広い教養に支えられたような演奏は,独自の境地と言って良いものかもしれません。この続編企画として,平均律パート2にも期待したいと思います。アンコールでゴルトベルク変奏曲のアリアが演奏されましたが,この変奏曲の全曲,というのも聞いてみたいものです。

2014/10/30

待望のネヴィル・マリナー指揮OEK。若々しくニュアンス豊かな,珠玉のモーツァルト。工藤重典さんの高級感溢れる演奏もお見事でした。 #oekjp

10月末~11月上旬にかけて,イギリスの指揮者,ネヴィル・マリナーさんがOEKを指揮します。マリナーさんといえば,1960年代以降,アカデミー室内管弦楽団と大量のレコーディングを行い,LPレコード全盛期を象徴する指揮者の一人として大変有名な方です。室内オーケストラ界(こういう業界があるか分かりませんが)の大スターの登場ということで,OEKの歴史の中でもマイル・ストーンになる演奏会と言えます。そして,その期待どおりの素晴らしい演奏を聞かせてくれました。

マリナーさんは,フィルハーモニーとマイスターの両方に連続して登場します(マリナー・ウィークですね)が,本日のフィルハーモニーは,オール・モーツァルトでした。今年90歳のマリナーさんが,OEKと聞かせてくれたモーツァルトは,まさに珠玉の演奏でした。

プログラムは,交響曲第35番「ハフナー」-フルート協奏曲第1番ー交響曲第39番というシンメトリカルな構成でした。モーツァルトはOEKにとっても基本的なレパートリーで,過去何回も演奏していますが,今日の演奏は特に魅力的な演奏だったと思います。マリナーさんとOEKとの素晴らしいコラボレーションにより,そんなに大げさなことはしていないのに,しっかりと味わい深さが伝わってくる,熟練の演奏を聞かせてくれました。

マリナーさんは,ステージへの出入りの際の足取りはかなりゆっくりとしていましたが,非常に力強いもので,全曲を立ったまま指揮されていました。その姿を見るだけで勇気づけられました。テンポ設定は,両交響曲とも第1楽章の主部にどっしりとした感じがあり,ベテラン指揮者らしい貫禄を感じましたが,全曲を通じ,瑞々しさや若々しさを感じさせてくれるような演奏でした。

この日のコンサートミストレスのアビゲイル・ヤングさんが,マリナーさんをサポートするように,アンサンブルを引き締めているようなところがあり,老巨匠を支えてやろう,というリスペクトの気分が美しく若々しい音となって表れていました。

特に最後に演奏された第39番は,バロック・ティンパニの古楽風のスパイスを加えた清新な気分としっとりとした落ち着いた気分とが共存した,素晴らしい演奏だったと思います。第4楽章の快速・軽快な演奏は,90歳の指揮者とは思えない若々しさのある演奏で,この曲の精神にピタリと一致していました。

第35番「ハフナー」の方は,OEKが特によく演奏している曲ですが,今回はクラリネットとフルートを抜いた初稿による演奏でした(OEKが演奏するのは初めて?)。そのせいか,祝祭的な気分は少し薄れ,質実で率直な気分のある演奏になっていたと思います。

どちらも,大げさなことはしていないのに,ニュアンスが豊かで,薄味だけれどもしっかり味が染みているような,熟練の演奏でした。マリナーさんのモーツアルトに対する愛情が伝わるような珠玉の演奏だったと思います。

2曲目に演奏された,OEKの特任首席奏者を務める工藤重典さんの独奏によるフルート協奏曲第1番では,豊かで高級感のある工藤さんのフルートを中心に聞きごたえのある音楽を聞かせてくれました。マリナー/OEKの若々しい演奏とのコラボレーションも素晴らしく,聞き終わった後,幸福感の残るような後味の良さがありました。

アンコールは,工藤さんの独奏のアンコールを含め,2曲演奏されました。両方とも定番曲でしたが,後でレビューの時にご紹介しましょう。

実は,マリナーさんについては,大量のCDを残している印象から,「ソツのない演奏をする指揮者」という先入観を持っていたのですが,今回の味わい深い演奏を聴いて印象が変わりました。是非,またOEKとの共演を期待したいと思います。

マリナーさんは,高齢なので,今日はサイン会があるのか,半信半疑なところがあったのですが,うれしいことに終演後にサイン会が行われました。大変長い列になっており,マリナーさんの人気がよく分かりました。サインをいただくとき「マリナーさんのモーツァルトを聴くのが夢でした」のようなことを言ってみたら,大変嬉しそうな顔をされました。その表情を見て「ちょっと岩城さんのクチャクチャとした笑顔」に似ているかなと思いました。というわけで,一気にマリナーさんへの親近感の増した演奏会でした。

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