本日のOEK定期公演は,クリスチャン・ヤルヴィ指揮による「ペール・ギュント」全曲。2部構成の大交響曲を聞くような充実感。ソルヴェイグの輝く声に救われました。 #oekjp
いろいろと新しい公演スタイルに取り組んでいるOEKですが,2月の定期公演フィルハーモニーシリーズは,グリーグの「ペール・ギュント」全曲を演奏会形式で演奏するものでした。「ペール・ギュント」といえば,小中学校あたりの音楽鑑賞の教材になっていることもあって組曲版が大変有名ですが,全曲演奏というのはかなり珍しいと思います。CDでも抜粋版はかなりありますが,全曲を演奏したCDというのは,この日の指揮者のクリスチャン・ヤルヴィさんの父上のネーメ・ヤルヴィさんの演奏ぐらいかもしれません。というわけで,ヤルヴィ家に伝わる「ペール・ギュンント」全曲公演とも言えそうです。
演奏の方は,音楽と音楽の間を主にナレーションでつないでいくもので,歌手がセリフを語って演技をするような部分はありませんでした。ナレーションの台本は恐らく,クリスチャン・ヤルヴィさんが持ち込んだもので,原作とは一部違う部分もありましたが(アメリカに行って大金持ちになる...みたいな部分は入っていませんでした),音楽とナレーションのつながりがとてもよく,大変スムーズに聞くことができました。やや台本が硬い感じで(翻訳するのがやはり難しいのだと思います),やや難解に感じる部分もありましたが,全曲をうまく2部構成にまとまっており,間延びすることなく,大交響曲を聞いたような充実感を感じました。
前半後半とも「ペールを思う女性」の力で救われるという形になっていたのも特徴でした。その意味で,「ファウスト」と同じような雰囲気があると感じました。この「ファウスト」的な雰囲気も今回の公演の特徴だったと思います。
ヤルヴィさんとOEKの演奏は,クリアかつスムーズで,要所で打楽器を中心とした大きな盛り上がりを聞かせてくれました。ヤルヴィ家の「お家芸」という感じで,全体の構成をしっかりと見極めた演奏だと思いました。
歌手の中で特に印象的だったのは,やはりソルヴェイグ役の立川清子さんでした。しっとりとした声でありながら,光り輝くような美しさがあり,最後の子守歌などは,「救われた!」という気分になりました。OEK合唱団も大道具の一部になったような感じで,色々な場面で活躍していましたが,やはり最後の部分での讃美歌が感動的でした。
その他の歌手も若手を揃えており,瑞々しい声の競演となっていました。ただし,遠くからだと「見た目」であまり区別がつかず(その点で,ソルヴェイグだけ白いドレスというのは分かりやすかったですね),せめて主役のペール・ギュントだけは違う服装でもよかったかなと感じました。
そして今回の公演の成功の大きな立役者がナレーションを担当した風李一成さんです。指揮者の隣に座って,怪しげな雰囲気だけではなく,迫力と自信を漂わせた見事な語りを聞かせてくれました。風李さんは,過去,室内楽編成のOEKと「兵士の物語」を共演していますが,そのメフィスト的な雰囲気が,今回の「ペール・ギュント」にはぴったりだと思いました。
子供向け名曲と思われている「ペールギュント」ですが,今回の公演は,現代風にアレンジしながらも,グリーグの意図した形により近い内容だったのではないかと感じました。聞きごたえがありました。
PS.今回は通常の日本語字幕に加え,絵本の挿絵のような感じの白黒のイラストもスクリーンに投影していました。この雰囲気も良かったのですが,最後のシーンの沈む夕日の絵を見ながら「「あまちゃん」の時のように鉄拳さんに描いてもらっても面白いかも」などと思ってしまいました。
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