OEKの「メリー・ウィドウ」@金沢歌劇座は東京を舞台とした多国籍版。小川里美さんと小林沙羅さんの魅力を中心とした斬新で楽しいステージでした #oekjp
昨年の「こうもり」に続いて上演された,OEKのオペレッタ・シリーズ(勝手にシリーズ化していますが)の第2弾はレハールの「メリー・ウィドウ」でした。
制作のコンセプトは昨年の「こうもり」同様,現代の東京を舞台に変更し,ストーリーはそのままで,インターナショナルな雰囲気で進めるというものでした。登場した歌手もほぼ同様でした。ステージ全体に,架空の国「ポンテヴェドロ」のロゴをあしらい,具体的な場所をイメージさせない,スタイリッシュなものでした。
面白かったのは使っていた言語です。セリフ部分は,ほとんどが英語でしたが,カミーユの出てくるところではフランス語が入りました。日本人だけの時は,日本語のセリフ,歌詞の部分はオリジナルどおりドイツ語という感じのマルチリンガル・オペレッタとなっていました。これだけ多言語が飛び交う作品も珍しいですね。マッサンもマッサオという感じです(失礼しました)。
ストーリーは,文章で書くと結構複雑なのですが,実際の演技を見ていると分かりにくい部分はなく,字幕をあまり読まなくても自然に楽しむことができました。
歌手の中では,主役ハンナ(日系ポンテヴェドロ人の資産家の未亡人)の小川里美さんの気品あふれる歌と演技が素晴らしく,前回の「こうもり」の時同様,小川さんを当てて作られた「メリー・ウイドウ」という感じでした。ヴァランシェンヌ(ポンテヴェドロ国の東京駐在大使の妻)役の小林沙羅さんも,ちょっとコケットリーな可愛らしさがあり,ドラマを大きく盛り上げてくれました。
それぞれの相手役の男声歌手も昨年に続いての登場で,息もぴったりでした。特にペーター・ボーディングさんのダニロは声には瑞々しさがあり,小川さんとのバランスがとても良いと思いました。
男声歌手ではカミーユ役のジョン・健・ヌッツォさんのリリカルな高音声が相変わらず見事でした。この手の役(浮気相手?)には本当にぴったりだと思います。第2幕で,カミーユの歌の後,ヴァランシェンヌとカミーユが二人で四阿(あずまや)に入る,という展開も納得でした。その後,中に入っているはずのヴァランシェンヌとハンナが入れ替わり,主要人物によるアンサンブルになっていくあたり,「フィガロの結婚」の雰囲気と似ているなぁと思いました。
合唱団の方は,声楽アンサンブルという感じで,いろいろな場面で盛り上げ役になっていました。小川さんを取り巻いて,男声合唱団が誘うような場面が何回かありましたが,「ちょっと参加してみたいな」と思いながら聞いていました。男声歌手だけによる,「女,女,女」のアンサンブルも楽しませてくれました。この曲は,「メリー・ウィドウ」全体のテーマ音楽みたいな感じですね。
ダンスシーンについては,キャバレー,マキシムの場で華やかな踊りを見せてくれましたが,定番になっている「天国と地獄」のカンカンの部分は,テンポがややゆっくりで,ややおとななし目だったかもしれません。
その他に,狂言回し的な役柄のニェグーシをはじめ,各種ギャグ満載で,楽しませてもらいました。その分,ややセリフが多すぎるかなという気もしました。「メリー・ウィドウ」は音楽だけだとCD1枚程度に収まる程度ですが,この日は休憩2回を含め3時間ぐらいかかっていました。
そして,「お待ちかね」という感じで今年もメラニー・ホリディさんが登場しました。第3幕のパーティのお客様という設定で,お得意のオペレッタ中のアリアを1曲歌ってくれました。そして,最後のカーテンコールの時に,「花は咲く」が歌われました。いつも思うのですが,ホリディさんの日本語は非常に心に染みます。オペレッタの最後に「アンコール」があるのは,少々変な気もしましたが,暖かい気持ちにさせてくれる歌でした
というようなわけで,今年もまたオペレッタを楽しませてくれました。小川さん,小林さんは毎年のように,金沢のオペラ公演に登場していますので,オペラの固定ファンもきっと増えてきているのではないかと思います。
OEKのオペラは,次回は5月に同じ歌劇座で行われる井上道義指揮,野田秀樹演出の「フィガロの結婚」です。「庭師は見た!」というサブタイトルが気になりますが,これを含め,大変楽しみです。
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