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2015年3月

2015/03/20

井上道義指揮OEK定期公演 いかにもOEKらしいグレートなグレート。やはり井上さんには大曲が似合います。仲道郁代さんとのベートーヴェンの4番は大人の味わい #oekjp

早くも3月中旬ですが,今回のOEK定期公演は井上道義さん指揮,独奏ピアノは仲道郁代さんでした。メインに演奏されたのはシューベルトの「ザ・グレイト」,前半はペルトのフラトレスとベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番。個人的に大好きな曲が並んだ,聞き逃せない演奏会でした。そして何よりも,井上道義さんが病気から復帰後,金沢で大曲を指揮するのは今回が始めてです。金沢にいる,多くのミッキーファン待望の演奏会だったと思います

最初に演奏されたペルトのフラトレスは,コンサートミストレスのアビゲイル・ヤングさんが独奏ヴァイオリンを担当しました。宗教的な静謐な気分を湛えた,透明感のある作品ですが,ヤングさんのヴァイオリンには,静かさの中にも芯の強さがあり,集中力満点でした。打楽器は舞台裏で演奏するなど(袖の扉を開けたまま演奏していました),ちょっとミステリアスな遠近感もあり,飽きることなくペルトの世界にはまることができました。

次のベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番は,さすが仲道郁代さんという演奏でした。慌てる部分や大げさな身振りはなく,常に内容の深さを感じさせるような充実感がありました。井上道義さん指揮OEKの演奏も,センス抜群でした。冒頭,仲道さんのピアノが自然体の雰囲気で始まった後,弦楽器がスッと入ってくるのですが,この部分を聞くだけで,どこか胸が締め付けられるような美しさがありました。この曲には,やはりこの切なさが欲しいですね,

第2楽章では,シリアスさと祈りの気分が鮮やかに交錯した後,そのまま,スット軽やかな気分に変わり第3楽章へとつながりました。この気分の変化た大変鮮やかでした。曲の最後ではティンパニの強打が加わり,大変ダイナミックに終わっていました。酸いも甘いも知り尽くした(?)二人の大人の演奏といった味のあるエンディングでした。

後半のシューベルトの「ザ・グレイト」は,編成的にOEKが演奏する機会は多くないのですが,その編成を逆手に取り,透明感と同時にスケールの大きさを感じさせてくれるような,OEKらしい,OEKならではのグレートを聞かせてくれました。

第1楽章の序奏部は冒頭のホルンのくぐもったような感じの音をはじめとして,どこかまどろんだようなところがありました。それが主部に入ると,目が覚めたように小気味の良い演奏になります。こういった気分の変化やニュアンスの変化が,曲中の至るところに出てきました。

この曲での井上さんの指揮は,いつもにも増して丁寧で,OEKをしっかりとコントロールしつつ,伸びやかさを感じさせてくれるものでした。木管楽器の「タタタタタタ」といった音型をはじめ,単純な音型の繰り返しが非常に多い曲なのですが,その繰り返しが全く退屈ではありませんでした。繰り返しによって大きな建造物の壁面が見えてくるようでした。

その堅固さの中にシューベルトらしい美しいメロディがふっと浮かんで来ます。第2楽章の途中には,「怒りの日」という感じで金管楽器を中心に大きく盛り上がった後,とても長い間が入るなど,要所要所でのドラマも見事でした。

第3楽章の中間部の天国的な気分も印象的でした。第4楽章は終盤に向かって大きく盛り上がっていましたが,どの部分を取っても荒々しくなることはなく,音がしっかりと磨かれているのが,「金沢の工芸品」という感じで,聞いていて嬉しくなりました。最後の部分では,ティンパニの気合いの籠った一撃で,ダイナミックさを増した後,スッーっと力が抜けて伸びやかに終わっていました。

井上さんの指揮でこの曲を聞くのは初めてでしたが,「さすが音楽監督!」という見事な音楽作りだったと思います。井上さんの復帰後初めて交響曲を聞いたのですが,やっぱり交響曲はいいですね。終演後の井上さんも大変嬉しそうでした。快心のグレイト。グレイトなグレイトだったと思います。

2015/03/07

マックス・ポンマー指揮のOEK定期公演。ポンマーさんは「ザ・指揮者」という感じの威厳。見事な管弦楽組曲でした。間に挟まれた現代曲とハイドン「熊」も充実 #oekjp

北陸新幹線の開通を1週間後に控え,このところの金沢駅周辺は,どこか熱気に満ちています。その中,マックス・ポンマーさん指揮のOEK定期公演を聞いてきました。通奏低音のチェンバロには曽根麻矢子さんも参加していました。

ポンマーさんの指揮を聞くのは初めてだったのですが,舞台袖から指揮台に進むまでの姿を見るだけで,何ともいえない威厳と温かみがあり,感激しした。どの演奏にも”これぞ指揮者”という自信が満ちており,そのことが演奏全体にも反映していました。コンサートミストレスのアビゲイル・ヤングさんを中心に,OEKメンバーのポンマーさんに対するリスペクトもしっかりと伝わってきました。

この日のプログラムは,バッハの管弦楽組曲第1番と第3番の間にフランケという現代の作曲者のイエロー・クラウズという作品とハイドンの交響曲第82番「熊」が挟まれるというものでした。

管弦楽組曲では,弦楽器はノンヴィブラートで演奏し,バロック・ティンパニを使うなど,古楽奏法を取り入れた演奏だったと思いますが,よそよそしい感じはなく,安心感と安定感を感じさせてくれました。両曲ともどっしりとしたフランス風の序曲に続いて,各種舞曲が続きます。どの曲も生き生きとした演奏になっているのが素晴らしいと思いました,

第1組曲はオーボエが活躍,第3組曲の方はトランペットが活躍しますが,それぞれに鮮やかな演奏を聞かせてくれました。第3組曲はトランペット3本が活躍し,晴れ晴れとした雰囲気の中,演奏会を締めてくれました。

第3組曲では,「G線上のアリア」として知られるエアが2曲目に出てきます。その演奏も大変印象的でした。さらりと始まった後,段々と情感が濃くなってきて,最後の部分では,思いが天上の世界に通じていくような崇高な繊細さを感じました。

2曲目に演奏されたフランケの作品は現代音楽にしては大変分かりやすい作品で,バルトークの作品を思わせる構成感がありました(バルトーク・ピチカートも何回も出てきました)。バッハとハイドンの間に演奏しても,全く違和感を感じませんでした。

後半最初に演奏されたハイドンの交響曲第82番「熊」も見事な演奏でした。古典的な均整感。要所要所で聞かせる,積極的な表現。第2楽章などでの余裕のある気分。ベテラン指揮者ならではの見事な演奏でした。

ポンマーさんは4月からは札幌交響楽団の首席指揮者に就任しますが,是非,OEKとの再共演にも期待したいと思います。今年の「ラ・フォル・ジュルネ金沢」のテーマはバッハを中心としたバロック音楽ですが,その前祝にぴったりの演奏会でした。

OEK2015-2016定期公演ラインナップ速報版が発表されました。 #oekjp

OEKの定期会員向けに,2015-2016シーズンの定期公演ラインナップの速報版が郵送されてきました。ざっとお知らせしましょう。

■フィルハーモニー・シリーズ(全8公演)
2015/9/15 指揮:井上道義 ピアノ:辻井伸行
9月に辻井さんが登場するのは定着してきたようです。今回はモーツァルト:ピアノ協奏曲第27番を演奏。それ以外は,シュニトケのモーツ・アルト・ア・ラ・ハイドン,モーツァルト40番

2015/11/21 指揮:シャオチャ・リュウ メゾソプラノ:谷口睦美
メンデルスゾーン:フィンガルの洞窟,ファリャ:恋は魔術師,ストラヴィンスキー:弦楽のための協奏曲,ベートヴェン8番

2015/12/10+12/11 指揮:マルク・ミンコフスキ
マルクミンコフスキさんのプリンシパル・ゲストコンダクター就任披露公演が2日連続で行われます。シューマンの全交響曲が2晩に分けて取り上げられるようです。

2016/01/09 ニューイヤーコンサートは人気歌手を迎えての演奏会になるようです。指揮は三ツ橋敬子さん。LFJKでの共演はありますが,定期公演は初登場ですね。

2016/02/07 指揮・チェンバロ:北谷直樹
バロック音楽集。北谷さんは「室内楽シリーズ」で共演し,熱演を聞かせてくれましたが,定期公演は初登場です。

2016/03/16 指揮:井上道義
ベートーヴェン英雄 昨年,井上さんはベートーヴェン・チクルスをキャンセルしましたので,「リベンジ」公演ですね。

2016/06/02 指揮:川瀬賢太郎 ヴァイオリン:山根一仁
若い指揮者と若いヴァイオリニストとの共演。川瀬さんがOEKに登場するのは初めてでしょうか?

2016/07/23 指揮・クラリネット:イェルク・ヴィトマン
ウェーバー:クラリネット小協奏曲 メンデルスゾーン:交響曲第1番 他 クラリネットの弾き振りというのは珍しいですね。

■マイスター・シリーズ(全5公演)
このシリーズはすべて土曜日14:00~です。テーマは「ショパンと友人たち」。ラ・フォル・ジュルネのようなテーマを水平に広げたようなイメージですね。毎回,違ったピアニストが登場します。

2015/10/24 指揮:アレクサンダー・リープライヒ ピアノ:萩原麻未
ショパン:ピアノ協奏曲第1番 シューマン(ラヴェル編曲)/謝肉祭 ストラヴィンスキー/プルチネルラ 荻原さんとOEKは初共演でしょうか。

2016/01/30 指揮:マティアス・バーメルト ピアノ:アレクサンダー・クリュッヒェル
メンデルスゾーン宗教改革 ショパン:クラコヴィアク 他 バーメルトさんもOEK初登場だと思います。

2016/04/16 指揮:尾高忠明 ピアノ:江口玲
リスト:前奏曲 リスト:死の舞踏 他 

2016/05/21 指揮:ジャン・レイサム=ケーニック ピアノ:菊池裕介
メンデルスゾーン:夏の夜の夢 シューマン:ピアノ協奏曲 他 レイサム=ケーニックさんが登場するのは大変久しぶりです。音楽堂初登場かもしれません。

2016/7/16 指揮:井上道義 ピアノ:北村朋幹
メンデルスゾーン/スコットランド ショパン:ピアノ協奏曲第2番 他

■ファンタスティック・オーケストラコンサート(全4公演)
シリーズ名が変更になりました。登場するアーティストの大半は未発表です。

2015/12/18 クリスマス・ミュージカル with オーケストラ

2016/02/11 スウィート・バレンタイン 指揮:金聖響 ヴァイオリン:宮本笑里

2016/4/3 ブギウギ!!! with オーケストラ 

2016/6/12 作曲家の部屋パートII 指揮:井上道義 

 

 

2015/03/03

今年の石川県学生オーケストラ&オーケストラ・アンサンブル金沢合同公演:カレッジコンサートはニールセン:交響曲第2番「四つの気質」がメイン。鍛え抜かれた素晴らしい音を聞かせてくれました #oekjp

石川県内の大学のオーケストラとOEKとが合同で演奏する「カレッジ・コンサート」が行われたので聞いてきました。このコンサートは,毎年,OEK単独では演奏できないような大き目の編成の作品が演奏されるのが楽しみです。今年はニールセンの交響曲第2番「四つの気質」という,演奏する機会の大変少ない,とびきりの作品が演奏されました。金沢だと,この機会を逃したら,二度と実演で聞くことはできないかもしれませんね(大げさ?)。

今回の指揮者は,近年,OEKを指揮する機会が増えてきている松井慶太さんでした。松井さんは大変長身の指揮者ですが,その音楽も大変スケールの大きなものでした。最初に演奏されたシベリウスの「カレリア」組曲は,じっくりとしたテンポで,ゆったりとした詩情を感じさせてくれるような演奏を聞かせてくれました。第1曲の最初の弦楽器のトレモロなどを聞いていると,「ブルックナーの交響曲か?」と思わせる感じでした。

2曲目はOEK単独の演奏で,ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番が演奏されました。ピアノは塚田尚吾さん,トランペットはOEKの藤井幹人さんでした。OEKは,この曲を頻繁に取り上げていますが,この日の演奏は,古典派のピアノ協奏曲のような,均整の取れた演奏だったと思います。特に塚田さんのピアノは,速いパッセージもスムーズに聞かせる軽快な演奏でした。その分,この曲の別の面である,ユーモアやアクの強さは少なかったので,ちょっと物足りない面もあったのですが,そのクールな味わいもなかなか良いと思いました。

後半はお楽しみの「四つの気質」でした。古代ギリシアの医者ヒポクラテス(「医学の父」と呼ばれている人ですね)は,人間の気質を「多血質」,「胆汁質」,「粘液質」,「憂鬱質」に分類したのですが,それを交響曲の各楽章の性格に当てはめたという大変面白いアイデアの作品です。

まず素晴らしいと思ったのは,第1楽章の最初の音でした。「短気で怒りっぽい胆汁質」の楽章ですが,オーケストラの音がビシっと締まり,鍛え抜かれた強靭な音を聞かせてくれました。この部分をはじめ,全曲を通じて,弦楽器が特に素晴らしいと思いました。合同公演を通じて,学生オーケストラもどんどん成長しているのではないかと思います。

第1曲目のシベリウスではOEKがトップ奏者,3曲目のニールセンでは学生側がトップ奏者になっていましたが(このパターンも毎回恒例ですね),コンサートマスターの学生の演奏フォームが,お隣に座っていたアビゲイル・ヤングさんを思わせるような力強い動作で,見事に全体を引っ張っていたのではないかと思います。

第2楽章は軽めの楽章でのんびりとしたムード,第3楽章はメランコリックな雰囲気。そして,第4楽章が「多血質」となります。交響曲の楽章に当てはめるならば,これしかないという配列ですね。

第4楽章は学生オーケストラが演奏するのに相応しいエネルギーがありました。途中,ティンパニがほとんどソロのような感じでロールを繰り返す部分がありましたが,見事に聞かせてくれました。ティンパニ奏者冥利に尽きるような曲だと思います。曲はクライマックスに向かって大きく盛り上がっていくのですが,最後の部分は,どこかのどかな感じで平和な気分で終わるのも面白いな,と思いました。

この日は平日の夜ということもあり,お客さんの入りはあまりよくありませんでしたが,滅多に聞けない「隠れた名曲」を楽しむことができました。この路線で,是非,来年もマニアックな路線で行って欲しいと思います。

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