OEKのCD

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2015/04/07

トンヨン・フェスティバル・オーケストラ金沢公演。クリストフ・ポッペン指揮のマーラー4番は,すっきりした中にドラマを感じさせる素晴らしい演奏。ギドン・クレーメルのシベリウスは円熟の味わい

新年度になって最初に出かけた演奏会は,日本,中国,韓国の3国のオーケストラのメンバーからなるトンヨン・フェスティバル・オーケストラの金沢公演でした。OEKメンバーはそれほど多く参加していませんでしたが(チェロのカンタさんぐらい?),アジアの3つの国が交流して一つの芸術作品を作るという活動は,色々な点で有意義なことだと思います。

今回の公演はソリストとしてヴァイオリニストのギドン・クレーメルが参加しているのが目玉でしたが,個人的には後半に演奏されたクリストフ・ポッペンさん指揮のマーラーの交響曲第4番が特に素晴らしいと思いました。

マーラーの交響曲第4番は,マーラーの作品の中では編成的にも長さ的にも比較的コンパクトな作品です(それでも1時間近くはかかりますが)。今回の演奏は,その曲想によく合った速目のテンポで始まり,停滞することのない,とても気持ちの良い演奏を聞かせてくれました。その一方で曲想の変化,テンポの変化も鮮やかに表現されていました。聞いていて全く退屈しませんでした。

木管楽器を中心に,オーケストラのくっきりとした響きも印象的でした。大らかさのあるホルン,フルート4本(こういう曲は珍しいかも)による輝きのある明るさ...そして,元OEKメンバーだったトム・オケーリーさんの力に溢れたティンパニと,聞き所満載でした。特にオケーリーさんのティンパニを聞いて懐かしくなりました。

第3楽章は天国的な気持ち良さのある楽章で,「実は,まだ週の前半だけど,ずっとこの幸福感に浸っていたいものだ」と思わせる演奏が続きましたが,楽章の後半にはティンパニを中心とした打楽器の見せ場が出てきます。オケーリーさんの音は,ビシっと強く引き締まっており,「お見事!」と声を掛けたくなるような見事な演奏を聞かせてくれました。

終演後,ポッペンさんは各パートの奏者を立たせていましたが,オーケーリーさんの時の拍手がいちばん大きかったかもしれません。この日のお客さんの多くはOEK定期会員だったと思いますが,オケーリーさんのティンパニの素晴らしさを聞いて,大変うれしかったのではないかと思います。

最終楽章にはカロリーナ・ウルリヒさんのソプラノが加わりました。ウルリヒさんは,まさに逸材という感じの素晴らしい声の持ち主でした。声が瑞々しく,余裕があり,安心して「天国」に浸ることができました。

金沢でマーラーの交響曲第4番を実演で聞く機会は非常に少ないのですが,大満足の演奏でした。

前半はギドン・クレーメルさんとの共演でシベリウスのヴァイオリン協奏曲が演奏されました。クレーメルさんのシベリウスについては,以前,井上道義/OEKとの共演も聞いたこともありますが,その時に比べると,クレーメルさんも円熟したなぁと感じました。クレーメルさんについては,演奏の切れ味が鋭く,ややエキセントリックな雰囲気があるのが「らしさ」だと思っていたので,その点ではちょっと物足りなさを感じたのですが,これもクレーメルさんの進化なのかもしれません。

その分,アンコールでは,「本領発揮」という感じでした。ワインベルクという作曲家の人を喰ったようなユーモアを感じさせるヴァイオリン独奏曲で,恐らく,クレーメルさんの十八番の曲ではないかと思います。クレーメルさんについては,「いわゆる名曲」よりは,何が出てくるか分からないような現代の作品の方が面白いのかな,と感じました。

演奏会の最初には,韓国の作曲家ユン・イサンの「礼楽(レアク)」という作品が演奏されました。1960年代の作品ということで,かなり前衛的な感じの響きのある作品でしたが,冒頭いきなり出てくる木製の打楽器の鋭い音をはじめ,どこか「アジアの祝祭」のムードを感じさせてくれました。

トンヨン・フェスティバルについては,スイスのルツェルン音楽祭のような形を目指しているようです。日本海に飛び出している形の石川県は,見ようによっては,日中韓の結節点にも見えるかもしれません。今回のような,大編成のオーケストラ作品を聞けるということで,是非,来年以降の音楽祭の継続開催に期待したいと思います。

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