今シーズンのOEKマイスター定期はショパン中心のプログラム。協奏曲第1番は萩原麻未さんのファンタジーと華に溢れた演奏。プルチネルラはアレクサンダー・リープライヒさんもOEKメンバーになったような重層的で室内楽的な演奏 #oekjp
2015/2016シーズン第1回目のOEK定期公演マイスターシリーズを聞いてきました。今シーズンは,「ショパンと友人たち」というテーマがあり,毎回プログラムには,ショパンのピアノとオーケストラのための作品が組み込まれる予定です。数年前のラ・フォル・ジュルネ金沢と似たテーマですが,それを年間通じて楽しませてくれることになります。
その第1弾ですが,ショパンのピアノ協奏曲第1番が演奏されました。やはり,シリーズ第1回はこの曲で始まるのが良いですね。ピアノ独奏は,数年前のジュネーヴ国際コンクールで優勝した萩原麻未さんです。萩原さんは,過去数回,金沢市で演奏会を行ったことはありますが,OEKとの共演は今回が初めてだと思います。
萩原さんの演奏ですが,よく音が通るのが素晴らしいと思いました。軽やかで明るい音色がスッとホールに広がりました。堂々とした第1楽章,ファンタジー溢れる第2楽章に続き,パッと気分が変わり,軽やかに走り抜けるような第3楽章へ。どの部分をとっても,今の萩原さんの魅力がしっかり伝わってきました。
第2楽章では特にそのしっとりとした音の美しさが際立っており,たっぷりと楽しませてくれました。この楽章では,ピアノにしっかり寄り添うファゴットやホルンのオブリガートも聞きものでした。
第3楽章を聞いていると,時節柄「ショパン・コンクール」のファイナルといった気分になります。もともと,次々と聞きどころのメロディが出てくる魅力的な楽章ですが,ノリの良い萩原さんの演奏を聞いて,その魅力がさらに増していました。最後の方に大きく跳躍するような印象的なパッセージがありますが,萩原さんの弾き振りは本当に華やかで,ファンタジーが広がる感じでした。最後の方はピアノの方が走り過ぎみたいな感じもしましたが,それもまた,実演ならではの興奮をかきたててくれました。
この曲を実演で聞くのは,久しぶりなのですがしっかりと萩原さんのショパンを楽しませてくれました。アンコールで演奏されたコントルダンスという曲も,とろけるような絶品という感じの演奏でした。
演奏会の最初では,メンデルスゾーンの序曲「美しいメルジーネの物語」が演奏されました。プログラムには1834年版と書かれており,バルブのないホルンを使って演奏していたのがまず印象的でした。曲の冒頭からこのクラリネットなどを中心とする暖かい響きが大変心地よく,ファンタジーの世界に引き込んでくれるようでした。その後に出てくる弦楽器を中心としたキビキビした演奏との対比もドラマティックでした。
後半は,ストラビンスキーの「プルチネルラ」組曲が演奏されました。ペルゴレージの曲をベースにストラヴィンスキーが再構成した曲ということで,イタリアのバロック音楽らしい明快な明るさの中にストラヴィンスキーらしい「ひねり」とがしっかり効いていました。
楽器編成は,通常のOEKの編成よりも少し少なかったのですが,弦五部のトップ奏者がソリストとして活躍する部分もあり,合奏協奏曲のような重層的な面白さがありました。こういう部分は,実演で聞く方がずっと楽しめます。
リーフライヒさんは,室内楽のように緻密に音楽をまとめていくと同時に,熱さを感じさせる指揮ぶりで,クールな現代性とシンプルな明るさとのブレンドを見事に聞かせてくれました。
演奏後は,リープライヒさんがお客さんに向かって頭を下げるのと同時に,OEKのメンバー全員が一緒に頭を下げていました。こういうシーンは,これまであまり見たことはない気がしますが,ソリスト集団としてのOEKの力量と指揮者自身がオーケストラメンバーと一体となって演奏したことをしっかりとアピールしてくれました。
終演後の雰囲気では,リープライヒさんはOEKのメンバーからの信頼の厚い指揮者だとお見受けしました。今後の共演にも大いに期待したいと思います。
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