OEKのCD

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2015年11月

2015/11/22

ジョン・ウォルトハウゼンさんをゲストに迎えての「パイプオルガンの日」2回とも聞いて,パイプオルガンの多彩な音を浴びてきました。

先週から,土日の度にコンサートを聞いていますが,今日もまた午後から石川県立音楽堂に出かけ,「パイプオルガンの日」の公演を2回聞いてきました。音楽堂では,1年前の10月に「ピアノの日」という企画がありますが,それの続編のような形になります。

昨年は45分~1時間程度のピアノ公演が3回でしたが,今年は1時間強の公演が2回でしたので,やや長めの演奏会の1回分ぐらいということになります。

プログラムは,札幌コンサートホールの専属オルガニスト,ジョン・ウォルトハウゼンさん,金沢で活躍している春日朋子さん,黒瀬惠さんのオルガンを中心に,ソプラノ,ヴァイオリン,児童合唱,混声合唱とオルガンとの共演を交えた内容でした。

パイプオルガンは,多彩な音色と広い音域を持つ楽器ですが,どうしても単独コンサートとなるとちょっと行きづらいところがあります。一つの楽器で何でも出来てしまうオールマイティな楽器なのですが,半面,どの曲も同じように聞こえるようなところがあります。

この日の公演は,そういった単調さを解決するために,いろいろな楽器との共演を交えていました。それぞれ楽しめたのですが,特に声楽アンサンブル ラ・ムジカと共演した宗ゼレンカのミゼレーレ(抜粋)が良かったと思いました。ほの暗い雰囲気が格好よく,こんな良い曲があったんだ,という発見する楽しみがありました。

坂口昌優さんとの共演による,ヴィターリのシャコンヌの厳粛さもパイプオルガンとの共演ならではでした。熊田祥子さんとはアヴェマリアやフォーレのレクイエムの中の曲を共演しました。甘い雰囲気が心地よく響きました。フォーレのレクイエムはオルガン伴奏版で全曲というのも「あり」かもしれません。

OEKエンジェルコーラスとは,すっかりご当地ソングとなった「希空」などを共演しました。この日は結構間近で聞いたのですが,子供たちの声の純粋さが際立つと思いました。

さて,オルガン曲独奏曲ですが,各回の最後に演奏した,ウォルトハウゼンさんの演奏のオリジナルティ溢れる音色とスケールの大きな演奏が特に素晴らしいと思いました。2回目の方で演奏されたような,現代曲でも音楽的に聞けてしまうのが,オルガンという楽器の面白さだと思います。それと,各回の最後に演奏された,おなじみバッハのトッカータとフーガ。この曲の最初の方の和音の重厚な響きは,年に数回は聞いてみたいと思いました。

オルガンについては,このところ音楽堂での公演回数が少ないのですが,今回のような親しみやすい雰囲気の企画(各回とも春日さんと黒瀬さんのトークが入ったのもとても良かったと思いました)は定期的に行って欲しいなと思いました。

2015/11/21

シャオチャ・リュウ指揮OEK オーケストラから自然な流れを引き出す美しい演奏の連続。谷口睦美さんのファリャはスペインオーラたっぷりの歌唱 #oekjp

11月のOEK定期フィルハーモニーシリーズの指揮者は,OEK初登場となる台湾出身の指揮者シャオチャ・リュウ(呂紹嘉)でした。リュウさんは,1988年のブザンソン国際指揮者コンクール優勝者で,現在,ヨーロッパの歌劇場などを中心に活躍されている方です。この日は,OEKが繰り返し演奏してきたベートーヴェンの交響曲第8番をメインに,メンデルスゾーン,ファリャ,ストラヴィンスキーと多彩な曲目が取り上げられました。

リュウさんについては,どういう音楽を作る方か全く予備知識がなかったのですが,室内オーケストラとしてのOEKとの相性は抜群で,どの曲についても,無理なく自然に流れる美しい音楽を聞かせてくれました。自然な流れといっても,OEKをしっかりとコントロールしており,「フィンガルの洞窟」の途中に出てくる美しい主題(後半,クラリネットがたっぷり聞かせるあの主題です)などは,ぐっとテンポを落とし,沈潜していくような凄いムードを出していました。そういった音楽の流れに作為的なところがないのが素晴らしいと思いました。

後半最初のストラヴィンスキー 弦楽のための協奏曲 ニ調などでも精緻かつ瑞々しい音楽をOEKから引き出していました。この曲は第2次世界大戦後,スイスのバーゼルの室内オーケストラのために書かれた作品ですが,どこか清々しさが伝わってきました。

前半の2曲目では,ファリャのバレエ組曲「恋は魔術師」が谷口睦美さんの独唱を交えて演奏されました。ファリャといえば,原色的な音色と強烈なリズム感を期待していたのですが,リュウさんの作る音楽には,他の曲同様,力んだところがなく,カッチリとまとまったクリアな音楽を聞かせてくれました。荒々しさや野性味はあまり感じなかったのですが,ファリャの音楽そのものの持つ,鮮やかなオーケストレーションを明快に再現してくれ,物足りなさは全くありませんでした。

対照的に谷口さんの方は,ステージに登場しただけでスペイン・オーラたっぷりでした。歌唱にもたくましさや豊かさがあり,リュウさんとOEKの作る音楽の上にスペイン風味をたっぷりと加えていました。

後半最後に演奏されたベートーヴェンの交響曲第8番は,過去,OEKが何度も演奏してきた曲ですが,無理のないテンポから力みのない,柔らかさを持った音楽を引き出していました。OEKメンバーも演奏していて気持ち良かったのではないかと思います。第2楽章の軽快さ,第3楽章のトリオでの自在さなど,どの部分も気持ちよく楽しむことができました。

アンコールでは,シューベルトのロザムンデの間奏曲第3番が演奏されました。これもOEKが何回も演奏してきたお得意の曲ですが,天国的な美しさのある素晴らしい演奏でした。

リュウさんは,どちらかというと地味な雰囲気の方でしたが,オーケストラをコントロールしつつ,無理なく美しい響きを引き出すような音楽作りをする点で,職人的な実力のある方だと思いました。ヨーロッパではオペラの指揮もされているということですので,機会があれば,もっと大規模な作品なども聞いてみたいものです。

2015/11/15

金沢マラソンで市内が盛り上がる中,石川県立音楽堂ではオペラ「滝の白糸」の再演。初演時同様の金沢オリジナルの悲恋物語を堪能しました。 #oekjp

本日は,第1回金沢マラソンが金沢市内で行われました。約1万2千人が参加し,沿道は応援する人でいっぱい,ということで大変盛り上がっていたようです。

その騒ぎが一段落した後,石川県立音楽堂で行われたオペラ「滝の白糸」を聞いてきました。この作品は2014年1月に金沢歌劇座で初演された作品ですが,これだけ短期間で新作が再演されるというのは大変珍しいことです。それだけ初演時の評判が良く,「金沢らしさのある作品」として「金沢の財産」として定着させたい,という思いが制作者側に強かったと言えます。

今回再演を鑑賞して,その思いをさらに強く持ちました。今回出演したメンバーは主役の中嶋彰子さん,相手役の高柳圭さんをはじめ,主要メンバーは初演時と同じで,前回同様,万全の出来だったと思います。文字通り,「滝の白糸一座」というチームワークの良さを感じました。

特に中島さんの言葉の意味がしっかり染み渡るような歌唱はさすがでした。この役は中島さんの「当たり役」ですね。高柳さんの純粋でストレートな歌も見事でした。この純粋さが,白糸を惑わせたと思うと,罪作りだったのかもしれません。

欣也の母役の鳥木弥生さん,南京出刃打ち役の森雅史さんのお2人も,前回同様,リアルなドラマを伝えてくれました。このお2人の歌ったアリアなどを聞いていると,プッチーニのオペラの世界に通じるものがあると思いました。

OEK合唱団の歌唱+演技も印象的でした。馬車のお客さんになったり,見世物小屋のお客さんになったり,裁判の傍聴人になったり,大道具が少ない分(音楽堂での上映ということで,初演時よりもシンプルな舞台たったと思いました),雰囲気の盛り上げを一手に担っていました。

第1幕や第3幕の最後の部分は合唱で終わるのですが,黛まどかさんによる,古典の和歌を思わせる柔らかさのある歌詞がとても良いと,今回改めて思いました。千住明さんのしっとりとしたメロディともしっかりとマッチしていました。合唱団がテーマ曲のような感じで歌う最後の合唱曲などを聞いていると,「浅野川のイメージだな」と感じました。

浅野川に掛かる天神橋で2人は出会うのですが,その2人の悲恋のドラマを浅野川が見守っている,そういう感じのエンディングだと思いました。

今回の再演に際して,ちょっとコンパクトにした部分があるかな,という印象を持ちました。たとえば,第2幕最後の「白糸の狂乱の場」がもっと長かった気がします。今回はよりまとまりがよくなっていた気がします。そのことにより,オペラの3つの幕が,「A-B-A’」というソナタ形式に似た作りになっているような印象を持ちました。ドラマ的には悲劇だけれども,音楽的にはしっかりとしたまとまりを感じました。

# ただし,このドラマの終わり方は,欣也のお母さんには気の毒な気がします。

この日は金沢マラソンの日と重なったのですが,スポーツ面でも音楽面でも,「新しい金沢らしさ」を堪能できた一日になったと思います。

2015/11/14

夜は金沢マラソン便乗企画,サティ「スポーツと気晴らし」他を金沢ふるさと偉人館で,金澤攝さんの演奏と挿絵の映像付きで楽しんできました。

明日は金沢マラソン。それを記念して,金沢市の博物館では,「ナイトミュージアム」として開館時間を延長しています。金沢ふるさと偉人館では,スポーツ関連の音楽としてサティの「スポーツと気晴らし」を中心とした演奏会が行われたので聞いてきました。演奏は金澤攝さんでした。

金澤さんは,音楽史に埋もれてきた作曲家を集中的に取り上げる演奏会で,金沢ではおなじみですが,サティというメジャーな作曲家を取り上げるのは,珍しいことです。司会の方のお話によると,やはりサティを演奏するのは初めてとのことです。

今回の会場は,ふるさと偉人館でした。これまで,この建物に入る機会はほとんどなかったのですが(実は,昼間出かけていた金沢歌劇座のすぐ後ろにあります),丁度よい具合にピアノを置ける場所があり,なかなか面白い雰囲気の中,至近距離で金澤さんのピアノを楽しむことができました。

サティのこの曲集ですが,20曲から成っているのですが,各曲は大変短く,20分程度で終わったのではないかと思います。曲の方も,ゴルフとか競馬とか,いろいろなスポーツや娯楽を描いているのですが,いかにも「お手軽」という感じで,サクサクと進んでいきました。

今回の演奏会の目玉は,楽譜に付けられているシャルル・マルタンによる挿絵をスライドで投影しながら演奏された点です。挿絵の方は,写実的なものではなく,ちょっとレトロでおしゃれなマンガっぽい雰囲気でした。サティの音楽自体は,ちょっと訳が分からない感じだったので,この挿絵があったので飽きずに楽しめたようなところがあります(ただし,挿絵のスライドが途中でずれてしまっていたのですが...)。

金澤さんのピアノの方は,本当に間近で聞いたこともあり,ピアノの弦の音がダイレクトに聞こえてくるような迫真感がありました。

演奏会の後半は,フランス6人組の陰に隠れていて,ほとんど聞かれることのない,アンリ・クリケ=プレイエルの組曲が演奏されました。サティと同時代の作曲家をカップリングするあたり,「さすが金澤さん」という選曲でした。

曲の雰囲気は,金澤さんの解説通り,「妖気漂う雰囲気がありました。個人的には,こちらの作品の方が音楽としては楽しめると思いました。金澤さんのピアノの音にも強烈な音の輝きがあり,ちょっと狂気が混ざったような世界に浸らせてくれました。

最後にアンコールのような感じで,金澤さんが1990年に作り,今回,改作してた「秋のモーメント」という小品が演奏されました。繊細さと華麗さが,心地よい暖かい響きの中に包み込まれているような作品で,今の季節にぴったりと思いました。

金澤さんの演奏を聞くのは久しぶりだったのですが(現在は本の出版に向け,演奏活動はあまり行っていないとのことです),今回のような組み合わせのプログラムも面白いなと思いました。1時間ほどの長さだったこともあり,疲労感も少なく,リラックスして楽しめたのも良かったと思いました。

2015ビエンナーレいしかわ秋の芸術祭 池辺晋一郎作曲,高塚かず子作詞,合唱組曲「水の旅」初演コンサート。聞きごたえと親しみやすさと普遍性を持った作品が誕生しました。

本日は2015ビエンナーレいしかわ秋の芸術祭の一環で行われた,合唱組曲「水の旅」初演コンサートを金沢歌劇座で聞いてきました。

この曲は,石川県合唱連盟が10年前に詩人の高塚かず子さんに石川県の自然をモチーフとした詞を委嘱し,それに,池辺晋一郎さんが曲を付けたものです。作曲については,紆余曲折があったようですが,大変忙しい中,今年の春以降,池辺さんが高塚さんの詩にインスパイアされて,一気に曲を作ったものです。

合唱組曲には「水」をモチーフにした定番曲がいくつかありますが,今回初演された「水の旅」もそういう曲の一つになるような,聞きごたえと親しみやすさのある作品だと思いました。最初と最後の曲は堂々とした風格があり,その間の4曲には,赤ちゃんが出てきたり,若い男女が出てきたり,老人が出てきたり,大変変化に富んでいました。「水」=「命」を連想されることがあり,全曲を聞き終えたときには,石川県内の地名を盛り込みつつ,「命の永遠性」のような深さを感じさせてくれました。是非,これからも県内で歌い継いで行って欲しい曲だと思います。

前半は県内の合唱団体が,多彩な曲を聞かせてくれました。金沢の中学生の合同合唱団は,文字通り,「みずみずしい」声で,「水の旅」の前半に聞くのにぴったりでした。金沢メンネルコールの歌を聞くのは久しぶりだったのですが,お得意のバーバーショップ・スタイルの曲を楽しく,時にしっとりと聞かせてくれました。赤いベストならぬチャンチャンコが実にお洒落に見えました。前半最後の能登地方の合同合唱団は,「希空」など,新しいご当地ソングを3曲聞かせてくれました。しっかりとした”思い”が伝わってくるような歌でした。

最後に前半に登場した中学生も加わって,全員で池辺さんの作った「風の子守歌」がアンコールで歌われて(池辺さんの指揮でした)お開きとなりました。池辺さんは,能登演劇等の仕事と石川県立音楽堂の仕事をされていますが,その長年の「つながり」が今回の「水の旅」の成功につながったのだと思います。

明日はオペラ「滝の白糸」の再演に行く予定ですが,どんどん石川県の音楽文化が充実してきていることを喜びたいと思います。

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