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2016年3月

2016/03/27

石川県ジュニアオーケストラ第22回定期演奏会は,蝶々夫人のハイライトなど春の雰囲気のコンサート

年度末恒例の石川県ジュニアオーケストラの定期演奏会を聞いてきました。回を重ねて,今回で22回目になります。

この演奏会では,毎回ラ・フォル・ジュルネ金沢のテーマの作曲家の曲を取り上げることが多く,今年のテーマ「ナチュール自然」にちなんで,ベートーヴェンの「田園」交響曲の第1楽章が取り上げられたのですが,それ以外については,「人間の人間の関係」ということで,「アナと雪の女王」の音楽(姉妹),シュトラウス父子の音楽,プッチーニの歌劇「蝶々夫人」の抜粋が演奏されました。

最初に演奏された「アナ雪」の音楽は,コンパクトに映画全体の雰囲気を伝えてくれるアレンジであり演奏でした。ベートーヴェンの「田園」は,実は,ラ・フォル・ジュルネ金沢ではOEKも演奏するということで,競演という形になります。全体にとても穏やかに演奏されており,「田園」のタイトルに相応しいのどかな雰囲気がありました。

シュトラウス・ファミリーの曲では,「金沢といえば雷」ということで,「雷鳴と稲妻」が演奏されました。どの曲もそうだったのですが,演奏のメリハリがしっかり効いており,しっかり練習しているなぁということが分かる演奏でした。打楽器や金管楽器の華やかな活躍もあって,聞きごたえ十分でした。

前半最後は,おなじみのラデツキー行進曲でした。鈴木織衛さんがしっかり仕切ってくれたので,リラックスして楽しむことができました。

後半は,ジュニア・オーケストラのプログラムとしては,異例だと思いますが,プッチーニの「蝶々夫人」の抜粋が石川公美さんの蝶々さん,表まり子さんのスズキで演奏されました。女声合唱団も加わっており,本格的な抜粋となっていました。オペラ全体の出だし同様,緊迫した雰囲気で始まった後,オペラの前半の音楽が続くのですが,この甘くロマンティックな響きが見事でした。どこか「春が来た」という気分がある,さすがプッチーニという音楽ですね。

その後,石川さんと表さんの歌を交えて「ある晴れた日に」「花の二重唱」などが歌われました。特に石川さんの声は,凛とした強さがあり,蝶々さんの一途な気持ちがしっかり伝わって来ました。最後に舞台裏からハミングコーラスが聞こえてきて終わったのですが...この終わり方は,ちょっと中途半端だったたかもしれません。オペラ全体の雰囲気を伝えるならば,蝶々さんの死まで必要だったかな,と思いました。

というわけで,ちょっと終わり方が淋しい感じだったのですが,オペラの世界をしっかりと味わうことができました。先日の「オーケストラの日」コンサート以降,ジュニア・オーケストラを聞くのは今月2回目ですが,ステージ経験を重ね,どんどん充実感を増しているようですね。ラ・フォル・ジュルネ金沢での演奏にも期待したいと思います。

2016/03/16

井上道義指揮OEK定期公演。ベートーヴェンの「英雄」はスケール感たっぷりの英雄らしい英雄。聞きごたえ十分。マリオ・ブルネロさんとの共演のシューマンの協奏曲もシューマンらしいシューマン。#oekjp

早くも3月半ばとなり,何かと慌ただしい年度末になりつつあります。その中,井上道義指揮OEKの定期公演を聞いてきました。ソリストは,OEKとの共演は久しぶりのチェリストのマリオ・ブルネロさんでした。

プログラムは,武満徹/ノスタルジア,シューマン/チェロ協奏曲,そして,ベートーヴェン/交響曲第3番「英雄」ということで,OEKにぴったりの内容でした。演奏も,「さすが井上音楽監督!」という感じの堂々としたスケール感とくっきりとした明快さとがブレンドした,見事な演奏でした。このところ,井上さんは他のオーケストラと,ブルックナーやショスタコーヴィチの大交響曲を次々と取り上げていますが,今回の「英雄」も,その原点になるような大交響曲としての演奏だったと思います。

第1楽章から,OEKの充実感たっぷりの響きが素晴らしく,音の響き方,テンポ感ともに,「英雄らしい英雄だなぁ」と思いながら聞いていました。OEKの作る気持ち良い音の流れを重視しながら,時々,楔を打ち込むように「英雄」交響曲ならではの強烈なアクセントを入れ,全曲を通じて心技体のバランスの取れた,理想的なバランスを持った演奏となっていました。

細かい部分ではちょっと粗はあったと思いますが,第1楽章コーダのトランペットを思う存分気持ちよく響かせたり,全曲を通じて「ここだ」という要所でティンパニを爽快に響かせるなど,大曲に相応しい豪快さもありました。井上さんとOEKの関係も長くなってきましたが,お互いを知り尽くしたような結びつきの強さを感じさせる演奏だったと思います。それでいて,第4楽章のコーダでは全身全霊を込めたような力強さを聞かせ,ルーティーンワークになっていないのも,このコンビならではだと思いました。

前半に登場したマリオ・ブルネロさんのチェロも素晴らしいものでした。個人的に,ブルネロさんといえば,「若手チェリスト」という印象をずっと持っていたのですが,そんなわけはありません。髪の色が「ミッシャ・マイスキー」を思わせるぐらいのグレーになっており,演奏の方も円熟味を増していました。

シューマンのこの協奏曲には,ロマンティックな表情と渋さとが同居しており,ちょっと親しみにくいかなと思っていたのですが,今回のブルネロさんの演奏を聞いて,「これは良い曲だ」「ブルネロさんの演奏も曲想にぴったり」と思いました。どうも私自も歳を取って,この曲に波長が合ってきたのではないかと思います。「死の影」というか「老いの影」のようなものを感じさせつつも,熱く歌おうとする感じに妙に共感してしまいました。

ブルネロさんの演奏に暗さはないのですが,じっくりと内面に入り込んでいくような奥深さを随所で感じました。それとがっぷり四つに組んだ,OEKの演奏も聞きごたえがありました。演奏後,ブルネロさんは,何と3曲もアンコールを演奏しました。その内容は...東京公演も控えているので,これはお楽しみということにしておきましょう。

最初に演奏された,アビゲイル・ヤングさんのヴァイオリン独奏をフィーチャーした武満徹/ノスタルジアを聞くのは,昨年9月の岩城メモリアル・コンサートに続いて2回目ですが,今回も熟練の演奏を聞かせてくれました。オーケストラと独奏が,絵画の遠景と近景のように感じられ,それが映画を観るようにゆっくり動いていくような,映像作品を見るような面白さがあると思いました。

OEKのバロック音楽シリーズも新鮮ですが,OEKのベートーヴェンというのは,やはりレパートリーの核なんだな,ということを再認識できた定期公演でした。

2016/03/12

2016/2017シーズンOEK定期公演 速報版が発表されました。 #oekjp

家に帰ってみると,2016/2017シーズンOEK定期公演のラインナップ速報版が届いていました。

フィルハーモニーシリーズの方は,ハインツ・ホリガー,イェルク・デームスのベテラン奏者2人をはじめ,いつもにも増して有名なアーティストが並んでいます。曲目では,OEKの基本編成で演奏できる曲が中心です。

マイスターの方のテーマは,モーツァルトです。

■フィルハーモニーシリーズ
9/17(土) 指揮:アシュケナージ,ジャン=エフラム・バウゼ(ピアノ)
10/21(金) 指揮:オリヴァー・ナッセン,クレア・ブース(ソプラノ)
11/5(土) 14:00 井上道義指揮,イェルク・デームス(ピアノ),大ベテラン・ピアニストと共演するのは,ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番
1/8(日) 指揮・ヴァイオリン:エンリコ・オノフリ,森麻季(ソプラノ)
2/19(日) 指揮:マルク・ミンコフスキ,ロッシーニ:歌劇「セヴィリアの理髪師」(コンサートホール形式) これは特に楽しみです。
4/7(金) 指揮・チェンバロ:鈴木優人,木嶋真優(ヴァイオリン) 鈴木優人さんは,最近活躍の場を広げている,鈴木雅明さんの息子さんですね。
6/2(金) 指揮・オーボエ:ハインツ・ホリガー 名オーボエ奏者のホリガーさんが登場!
7/18(火) 指揮:井上道義,ティエリー・エスケシュ(オルガン)

■マイスターシリーズ(テーマ:モーツァルト)
10/8(土) 指揮・ヴァイオリン:オーギュスタン・デュメイ
12/3(土) 指揮:ギュンター・ピヒラー,菊池洋子(ピアノ)
3/11(土) 指揮:井上道義,ダニイル・グリシン(ヴィオラ),森麻季(ソプラノ),福原寿美枝(アルト),笛田博昭(テノール),ジョン・ハオ(バス),OEK合唱団 モーツァルト:レクイエム 他
6/24(土) リーダー:アビゲイル・ヤング
7/8(土) 指揮:辻博之,モーツァルト:オペラ・セレクション

■ファンタスティック・オーケストラ・コンサート
10/1(土) ポップスwithオーケストラ
12/15(木) 池辺晋一郎が選ぶクラシック・ベスト100 第1回
2/5(日) ジャズ・ミーツ・オーケストラ 指揮・ピアノ:佐山雅弘
5/27(土)  池辺晋一郎が選ぶクラシック・ベスト100 第2回

若い方に注目の情報
「新シーズンから始まるOEK定期公演では,25歳以下のお客さんは当日券を半額で購入できます」とのことです。

ミルオトキクカタチ 板橋廣美「白磁の世界」コンサート 岡本誠司さんのヴァイオリン独奏でバッハの無伴奏作品を中心に「調性の旅」。完成度の高い,素晴らしい演奏の数々でした。

北陸新幹線が金沢まで開通して1年。JR金沢駅周辺では,1周年記念イベントをいろいろ行っていましたが,その混雑を抜けて,石川県立音楽堂交流ホールで行われた,ミルオトキクカタチvol.3 板橋廣美「白磁の世界」コンサートを聞いてきました。

ミルオトキクカタチというのは,美術作品が並べられた会場内でアーティストがそのイメージにインスパイアされてクラシック音楽を演奏するという,美術と音楽のコラボ企画です。聴衆も同じフロアで聞く点も他の演奏会にはないもので,交流ホールならではといえます。

この演奏会は2日連続で行われ,その1日目の方を聞いてきました。本日は,板橋廣美さんの作った「白磁」の作品が並ぶ中,若手ヴァイオリニストの岡本誠司さんがバッハの無伴奏作品を中心に,ヴァイオリン独奏曲ばかりを約90分間演奏しました。

その演奏は本当に素晴らしいものでした。まず,演奏された曲が,ハ調,ト調,二調,イ調...と5度ずつ基音が上がっていくように配列されているのが面白く,今回のプログラムで全体で1枚のコンピレーション・アルバムになると思いました。バッハの無伴奏ソナタとパルティータは全部で6曲ありますが,それぞれから1楽章ずつ抜き出し,さらにイザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタやパガニーニのカプリースなどを加えることで,無伴奏ヴァイオリンのための作品のベスト・アルバムのような感じになっていました。

そこにベリオのセクエンツァも加わることで,プログラムに変化ができ,今回のサブタイトルどおり「調性の旅」という感じになっていました。

岡本さんは,第19回ライプツィヒ・バッハ国際コンクールで1位になった方で,昨年のラ・フォル・ジュルネ金沢に出演しています。その音楽には常に落ち着きがあり,技巧的な部分でも音楽が乱れるところが全くなく,バッハの音楽の品格の高さのようなものを感じさせてくれました。有名な,シャコンヌのような規模の大きな曲も素晴らしかったのですが,ガボット(これも有名な曲ですね)などの短めの曲での繊細でキリッと締まった演奏でのセンスの良さも印象的でした。

イザイとパガニーニについては,さらに技巧の幅が広がり(特にパガニーニは,技のデパートという感じでした),華やかさもありましたが,外面的な華やかさよりは,心の中のドラマのように感じられました。

ベリオの作品は,同音反復や同じフレーズの繰り返しが続く部分と大きく変化しながら激しく盛り上がっていく部分とが交錯するような感じで,大変面白く聞くことができました。中間部のものすごい速さで細かい音型を演奏する部分など圧倒的な迫力がありましたが,それでもバッハの音楽を中心とした「調性の旅」の中にしっかりハマっているのが素晴らしいと思いました。

最初のハ長調の曲のシンプルな晴れやかさの後,色々な形で「旅」が進むのですが,それが,少年から大人へと変わっていく「人間の成長」のようにも感じられました。この日,岡本さんは譜面を見ながら演奏されていましたが,バッハの時は上手側,イザイの時は下手側,ベリオの時は中央,という形で演奏場所を移動していたのも,「旅」を連想させるものでした。

岡本さんは,まだ音楽大学の3年生なのですが,これだけの内容の濃いプログラムを,高いレベルで弾きこなし,プログラム全体として聞きごたえのある音楽を聞かせてくれたのは本当に素晴らしいと思いました。まわりの作品の雰囲気にぴったりの知的な雰囲気を持ちつつ,神経質になるところはなく,どの曲でも新鮮な音楽を楽しませてくれた点で,既に完成されたヴァイオリニストだと感じました。

是非今度は,金沢でバッハの無伴奏の全曲を聞かせて欲しいものです。岡本さんには,これからも注目していきたいと思います。

2016/03/06

本日は一足早く「オーケストラの日」公演@石川県立音楽堂。和田一樹指揮OEKと金大フィル,石川県ジュニアオーケストラの合同演奏を楽しみました。本物のひゃくまんさんも登場。「ひゃくまんさん小唄」に合わせて踊りを披露=揺れているだけ? #oekjp

「ミミにいちばん」ということで,毎年3月31日を「オーケストラの日」と定め,全国各地のプロ・オーケストラは,この日周辺に趣向を凝らした公演を行っています。ただし,今年のOEKについては,3月27日に韓国公演を行い,スケジュールが慌ただしいということで,例年よりも早く,本日,「オーケストラの日」公演が行われました。

ここ数年,この公演では石川県立音楽堂の特性を生かし,邦楽器の演奏や石川県内のアマチュアの音楽団体と交流するのが定番となっています。今年もその路線で,お客さんの中には子供さん連れの姿が目立ちました。

最初のステージは,いしかわ子ども邦楽アンサンブルによる,箏曲と長唄の演奏に続き,ユーミン作曲の「ひゃくまんさん小唄」が披露されました。この曲については,YouTubeで公開されたものを聞いたことはありますが,生で聞くのは今回が初めてでした。この動画版で歌を歌っていたのも,この邦楽アンサンブルメンバーということで,「本家」による歌ということになります。

しかも今回は,ひゃくまんさん本人もステージ上にお出ましになり,歌と演奏に合わせて,「あーさてさた」と体を揺らしたり回ったりしていました。これは貴重な機会でした。

その後は,和田一樹さん指揮によるオーケストラのステージとなりました。和田さんは,2009年に行われた第1回井上道義指揮講習会で優秀賞を受賞された方で,OEKを指揮するのはその時以来,コンサートとしては今回が初めて,ということになります。

昨年公開された,映画「マエストロ」で,マエストロ役の西田敏行さんの指揮の指導をされたことがあると自己紹介をされていましたが,実際,西田さんを彷彿とさせるような雰囲気があり,得難いキャラクターの指揮者だと思いました。

最初はOEK単独のステージで,おなじみのグリーグのホルベルク組曲の前奏曲が演奏された後,バス・トロンボーン奏者の森川元気さんをソリストに迎え,ブルーベックのバス・トロンボーン協奏曲が演奏されました。このブルーベックの作品は,数年前,森川さんが北陸新人登竜門コンサートに出演した時に演奏した曲で,その再演ということになります。

ブルーベックは,ジャズの世界では有名なデイヴ・ブルーベックの息子さんの作品ということで(てっきり,デイヴ・ブルーベックの曲なのだと思い込んでいました),ジャスのテイスト満載の曲で,ほとんどラプソディ・イン・ブルー辺りを聞くのと同じ感覚で楽しめる作品です。森川さんもバス・トロンボーンという楽器のイメージどおり,堂々たる体格ですが,その雰囲気どおりの屈託のない伸びやかな音を聞かせ,ステージを盛り上げてくれました。カデンツァ(というかアドリブ?)的な部分も多く,ビッグバンドジャズを好きな人や吹奏楽の好きな人も大喜びするような曲だったと思います。

演奏後,森川さんと和田さんが抱き合っていましたが...何というか,がっぷり四つという感じも良い感じでした。

後半はOEKと金沢大学フィル,石川県ジュニアオーケストラとの合同演奏でした。金大フィルとの合同では,シベリウスの「フィンランディア」,エルガーの「威風堂々」の2曲が演奏されました。和田さんの指揮ぶりは大変分かりやすいもので,音楽自体が随所で弾んでいました。「のだめカンタービレ」の中で,片平という憎めないキャラクターの指揮者が出てきましたが,和田さんにはちょっとそういう雰囲気があるような気がしました。

それと今回の威風堂々には,黒瀬惠さんによるパイプオルガンも加わっていました。最後の方に,「隠し味」程度に加わる感じだったのですが,これも音楽堂ならではだったと思います。

最後に石川県ジュニアオーケストラも加わり,シュトラウスのポルカ「雷鳴と稲妻」,ラデツキー行進曲が演奏されて,お開きとなりました。ラデツキー行進曲の時には,お隣の邦楽ホールのイベントのために来られていた桂米団治さんが,羽織姿で突然登場し,途中から指揮を乗っ取るなど,いろいろなコラボに溢れた演奏会となりました。

米団治さんは,この日の邦楽ホール公演での「大トリ」で落語の大作「地獄八景亡者戯」を語るのですが,その中にOEKのメンバーによる演奏も加わるのだそうです。こちらも時間があれば聞いていたかったのですが...行けませんでした(そろそろ,始まった頃?)。

いずれにしても,石川県立音楽堂ならではの「オーケストラの日」公演を楽しむことができました。

PS. 今回の公演は,休憩なしで約2時間行われましたが,舞台転換が多かったので,各コーナーの間のトークの間に一休みするような形になっていました。ただし,特に「休憩なし」というアナウンスがなかったので,個人的にはちょっと戸惑いました。

2016/03/03

急遽思い立って,西田幾多郎記念哲学館で行われた,OEKの大澤さんを中心とした弦楽四重奏によるシューベルトとベートーヴェンの晩年の大曲2曲を鑑賞。聞きごたえ十分でした #oekjp

本日は,たまたま某所で見かけたポスターに反応して,西田幾多郎記念哲学館で行われた,チェロの大澤さんを中心としたOEKメンバーによる弦楽四重奏の演奏会を聞いてきました。プログラムが非常に素晴らしいもので,ベートーヴェンとシューベルトの後期の弦楽四重奏曲の大曲2曲を組み合わせたものでした。

演奏されたのは,前半がベートーヴェンの弦楽四重奏曲第12番,後半がシューベルトの弦楽四重奏曲第15番でした。特にシューベルトの方は,大澤さんが,「37年間ずっと演奏したかった曲」とのことです。両方とも大変歯ごたえのある曲でしたが,やはり,このシューベルトの方が特に素晴らしい演奏だったと思います。

大澤さんのトークによると,この公演のために9カ月準備をしたとのことです。西田記念館のホールは響きがデッドで,残響がほとんどないのですが,その分,演奏全体がキリっと締まった感じに聞こえました。両曲ともサラサラと流れすぎることなく,両作曲家の最晩年の作品に相応しい,「意味深さ」をじっくりと感じさせてくれました。

シューベルトの方は,第1楽章から「晩年のシューベルト」らしく,この世のものではない世界に片足を踏み込んでいる雰囲気がありました。短いモチーフを何回も繰り返し,積み重ね,大交響曲のようになってくるような雰囲気があり,聞きごたえ十分でした。個人的に,この曲を実演で一度聞きたいと思っていたのですが(実演で聞くのは今回が初めてでした),やはり素晴らしい作品だと再認識しました。

前半,後半とも40分ぐらいかかる曲というのは,室内楽の演奏会としては異例でしたが,「是非この曲を演奏したかったという」気持ちがしっかりと伝わってくる見事な演奏だったと思います。大澤さんを中心としたOEKメンバーはこのホールの常連で,毎年,クリスマス頃に演奏会を行っているとのことです。是非また,今回のような歯ごたえのある弦楽四重奏曲に挑んで欲しいと思います。

2016/03/01

ドリーム・チームによる美しい舞台のオペラ「夕鶴」金沢公演。佐藤しのぶさんの華やかな雰囲気にもぴったり。しっかり浸らせてくれた素晴らしい舞台でした #oekjp

3月になったとはいえ,昨日積もった雪が残る中,團伊玖磨作曲の名作オペラ「夕鶴」を金沢歌劇座で観てきました。このオペラについては,「つるの恩返し」を題材としているだけあって,着物を着た人が方言で歌う,「泥臭いオペラ」という先入観があったのですが,今回の市川右近演出,佐藤しのぶのつう,現田茂夫指揮OEKによる公演を観て,そのイメージが一新されました。

最初から最後まで,具体的な民家や風景が出てくるような大道具はなく,場面ごとに照明を切り替えることで,イメージが鮮やかに切り変わっていました。その分,ステージがすっきりと大きく広がり,さらに回り舞台を使うことで,滑らかな動きが生まれていました。

特に照明の効果が素晴らしく,前半,つうや与ひょうが歌う場面では,背景全体が星空に包まれ,まさに「スペース・オペラ」といったスケール感たっぷりのロマンティックなムードに包まれました。佐藤しのぶさんの歌を聞くのは,久しぶりだったのですが,「ドレスを着たつう」は,まさにプリマドンナという感じのオーラを振りまいていました。声の方はちょっとヴィブラートが大きいかなと感じたのですが,常にドラマを秘めた歌は,聞きごたえ十分でした。

音楽全体のスケール感も素晴らしく,前半の途中からは,つうと与ひょうが出ずっぱりで,2人の心情の綾が切々と歌われました。背景が抽象的なので,音楽と歌詞(字幕も付いていましたが,しっかりと聞こえました)の世界にしっかりとはまることができました。本当に2人の場面が長く,聞きごたえがあったので,ちょっとワーグナーのオペラを思わせるムードがあったのでは,と思ったりました。佐藤さんの歌や立ち姿全体から出てくるスケール感ともぴったりでした。

後半では,例の「見るなのタブー」を破ることになるのですが,この機織りの場の音楽も効果的でした。ハープの鮮やかな音とパーカッションが組み合わさり,わくわくさせるようなファンタジーの世界を作っていました。

オペラの最初と最後では,おなじみOEKエンジェルコーラスのメンバーも登場しました。エンジェルコーラスは,過去何回かオペラに出演していますが,今回がいちばん出番が多く,重要な役割を演じていたと思います。

最初の場では,つうと与ひょうが平和に暮らしていた時の象徴として,エンジェルコーラスの歌う,わらべ歌が素朴に響いていました。逆に,最後の場面で,おなじ曲が歌われることにより,つうの不在感が際立っていました。そこに,与ひょう役の倉石真さんの「つぅ~,つぅ~」という痛切な(ゴロ合わせみたいですが)声が重なり,何ともいえぬ哀感が出ていました。

しかし,最後,「鶴が飛んでいく」という歌詞が出てきて,音楽が少し明るくなると,別れの場面だけれども,何か希望が出て来たような気分になりました。この複雑な情感は,言葉では表現できず,音楽でないと表現できないものだった気がします。

ドラマ全体としては,「大人の世界=お金への欲」と「子供+つうの世界=美しいものが最高」のすれ違いを,「子供+つう」の側から描いていたと思うのですが,そうは言われても,今の世の中,お金なしでは生きてはいけないのも事実です。このオペラを観るのにもお金を払っているのですが,この作品を観ている間だけは,現実を忘れさせてくれる。そういう作品だったのかもしれません。

それにしても,今回のステージの視覚的な美しさは素晴らしかったと思います。プロジェクションマッピングを観るように,色彩が自在に変わったり,ホリゾントの部分に子どもたちの影が切り絵のように映ったり,どこをとっても「絵になる」舞台でした。チラシには,「美術:千住 博,照明:成瀬一裕,衣装:森 英恵=ドリームチーム」と書かれていましたが,確かにそのとおりだと思いました。

というようなわけで,大変完成度の高い上演だったと思います。機会があれば,是非もう一度見てみたいものです。

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