OEKのクラリネット 木藤みきさんとチェロのカンタさん+鶴見彩さんのピアノによるブラームスとベートーヴェンの室内楽曲。明るいけどしみじみとした世界が広がっていました。
OEKのクラリネット奏者,木藤みきさんを中心としたグループ,ムシカ・レソナンテによる室内楽を3曲聞いてきました。演奏された曲は,ベートーヴェンとブラームスの作品ということで,大変オーソドックスな内容でしたが,どの曲も親しみやすく楽しめる曲想だったこともあり,サブタイトルにあるとおり,「室内楽のたのしみ」をしっかり味わうことができました。演奏全体に「明るいけどしみじみ」といった風情があるのが,ベテラン奏者ならではの味だと思いました。
今回の編成は木藤さんに,同じくOEKのチェロ奏者であるルドヴィート・カンタさんと金沢を中心に活躍しているピアニストの鶴見彩さんが加わった三重奏でした。クラリネット,チェロとピアノという組み合わせの曲となるとかなり限定されるのですが,その中で,最初に演奏されたベートーヴェンの三重奏曲「街の歌」は,いちばんよく知られた曲だと思います。
木藤さんの音色には,ピリッとした張りがあるので,急速な楽章は特にキビキビとした気持ちの良い音楽となっていました。特にニックネームの元になっている第3楽章の「街の歌」の変奏での多彩な表情を持った響きは聞きものでした。カンタさんの柔らかい音としっとりと音が溶け合っていた第2楽章も大変味わい深いものでした。
2曲目に演奏されたブラームスのクラリネットソナタ第2番は,ブラームスの「本当に最晩年の作品」です。安らかさと明るさの中にちょっとしみじみとした味わいが翳る,魅力的な作品でした。第2楽章には,どこか堂々とした風格のようなものがありました。力強く締められた第3楽章のエンディングもさすがブラームスという渋さがありました。
後半演奏されたベートーヴェンの三重奏の方は,おなじベートーヴェンの七重奏曲を編曲したものです。この曲自体,6楽章からなる40分ほどもかかる大曲です。それを3つの楽器用に圧縮していたのですが,演奏時間の方は,ほぼ原曲と同じぐらいでした。
原曲の方は,室内楽にしても大きな編成で,小型オーケストラを聞くような豊かで多彩な音色が魅力的な作品です。それを二回りぐらい小ぶりにした今回の演奏は,音のボリューム感や色彩感の面では,少し地味になっていたましたが,演奏のキレの良さが浮き彫りになっており,速い楽章でのノリの良さが特に印象的でした。
7人を3人に減らして演奏ということで,ピアノの鶴見さんも大活躍でした。特に最終楽章などでは,古典的な清潔さのある,珠をころがすような音が素晴らしくOEKのベテラン奏者2人のペースメーカーになっているようでした。
というわけで,特に出ずっぱり(吹きっぱなし)だった木藤さんには大変ハードだったと思うのですが,滅多に聞くことのできない,クラリネットを中心とした室内楽をじっくりと楽しむことができました。
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