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2016/08/22

セイジ・オザワ松本フェスティバル2016スクリーンコンサート@金沢市文化ホール。小澤征爾指揮のベートーヴェンは巨匠的な重みのある演奏。ルイージ指揮の「典礼風」も感動的

ここ数年,この時期,金沢市でも恒例になっているセイジ・オザワ松本フェスティバルのスクリーンコンサートをを金沢市文化ホールで聞いてきました。「恒例」といっても,名称が変更になった昨年度は行われませんでしたので,2年ぶりということになります。

本日のコンサートの指揮は,前半がファビオ・ルイージさん,後半が小澤征爾さんでした。体力的に小澤さんが1つのコンサートを振り切るのは難しいため,この形を取ったと思うのですが,演奏曲目の方も,小澤さんの体力を気遣って,ブラームスの交響曲第4番からベートーヴェンの交響曲第7番に変更になりました。

やはり,小澤さんは,以前に比べると,かなりやつれて見えました。スクリーンコンサートだと,その辺がはっきり見えてしまい,楽章間ごとにたっぷりと休憩を取り,水分補給をしながらの指揮というのも,痛々しく感じました。ただし,その休憩の動作自体,どこか飄々としてユーモラスな感じさえあり,指揮をする仙人のような境地に入っているように見えました。

というわけで,どうしてもルイージさんの方は前座のようになってしまい,演奏会全体としてみると,小澤さん中心という形になっていました。

その小澤さんの指揮するベートーヴェンですが,まさに巨匠的なベートーヴェンだったと思います。小澤さんについては,ステージに登場するときに,「仲間といっしょに入ってくる」スタイルからして,「巨匠」という呼称は相応しくないと思っているのですが,オーケストラのメンバーが許さないのではないかと思います。

テンポ自体はそれほど遅くはなかったのですが,どの部分をとってもズシリとした質感がありました。第3楽章から第4楽章に掛けては,通常は「舞踏の権化」というニックネームどおり,音が飛び回る感じになるのですが,この日の演奏は,一音一音をしっかりと弾き切るような重みを感じました。その点で,「ベト7」らしくない,気もしましたが,小澤さんを盛り立てようとする,サイトウ・キネン・オーケストラのエネルギーが最大限に引き出された,大シンフォニーになっていました。

編成的には,やはり弦楽器の充実感がすごいと思いました。コンサートマスターは豊嶋泰嗣さんでしたが,その他にも東京のオーケストラのコンサートマスターが勢揃いしている感じでした。特に第1楽章のコーダでの,低弦の動きなど,映像で見ても迫力十分だったので,実演だとものすごい迫力だったのではないかと思います。日頃は聞こえないような,音の刻みがくっきり聞こえくる部分があったのも面白いと思いました。

管楽器の方は,外国人のメンバーが主体でした。この曲の場合,まず第1楽章のフルートに注目なのですが,この日は,おなじみのジャック・ズーンさんが首席奏者でした。見た感じ,もう少し跳ね回りたそうな感じがありました。それがまた,良いアクセントになっていました。

というわけで,演奏後は,いわゆる「一般参賀」のような状態になっていたのですが,朝比奈さんの時と違うのは,オーケストラのメンバー全員(+ファビオ・ルイージさんも)で「出たり,入ったり」していたことです。この辺が小澤さんらしいところだと思います。

前半のルイージさんが指揮した曲は,オネゲルの交響曲第3番「典礼風」でした。ベートーヴェンよりは大編成の曲でしたが,かなり渋い曲だったこともあり,スピーカーを通しての音量はベートーヴェンの方があったように感じました。ルイージさんの指揮ぶりには,誠実さがあり,音楽も知的に引き締まっている感じでした。

その中でいちばん印象に残ったのは,第3楽章の最後の部分です。3つの楽章を通じて,戦争の愚かさへの反発と平和への祈りが感じられる作品ですが,第3楽章では,行進曲風の部分に続いて,最後の最後に「平和」な気分になります。チェロの木越洋さん,フルートのズーンさん,ヴァイオリンの小森谷巧さん...と平和を象徴するような静かな感動を秘めた室内楽的な気分で終わったのが素晴らしいと思いました。ダイナミックな音響は,スクリーンコンサートで味わうことは特に難しいので,この曲については,是非,実演で聞いてみたいと思いました。

毎回,スクリーンコンサートに参加するたびに,拍手しても届かないもどかしさを感じるのですが,終演後は金沢でも大きな拍手が起こっていました。小澤さんの渾身の指揮ぶりは,オーケストラのメンバーを含め,多くの人に大きなエネルギーを与えてくれたのではないかと思います。

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