田島睦子ピアノ・リサイタル。ファッショナブルでタフでオールマイティの金沢のヴィルトゥオーサ。堪能しました。
このところ暑い日が続いています。本日は,その中を田島睦子ピアノ・リサイタルを聞いてきました。午後からかなり体力を使う仕事をしていたので,行こうかどうか迷っていたのですが,週末の開放感に加え,「このプログラムは金沢ではなかなか聞けない」という斬新さに惹かれ,聞きに行くことにしました。
田島さんは,金沢で行われている色々な演奏会に多数出演されています。実は,私がもっとも数多く演奏を聞いているピアニストかもしれません(例えば,7月31日に石川県立美術館で聞いたばかりです)。ただし,そのリサイタルを聞くのは...2回目のことです(前回私が聞いたのは,15年ぐらい前だったと思います。
今回のプログラムは,バッハ=ブゾーニのシャコンヌ,グルダのプレイ・ピアノ・プレイ,クライスラー=ラフマニノフの愛の悲しみ,そして,ラフマニノフの音の絵op.39ということで,金沢で行うには,結構冒険的なプログラムだったのですが,会場はほぼ満席でした。これは嬉しかったですね。金沢での田島さんの活躍が高く評価されていることの証だと思いました。
演奏を聴いて,その評価はさらにアップしたと思います。何といっても,「練習曲」というには,ハード過ぎるラフマニノフの「これでもか,これでもか」と迫ってくる演奏(ただし,全く暑苦しくない)に圧倒されました。最後が「行進曲」というのは,いかにもラフマニノフ的でしたが,いつもの甘さを抑えた重苦しさのある曲想をのびのびと聞かせてくれました。最後の最後にパワー全開の演奏を聞かせる,タフさもすごいと思いました。
前半のバッハ=ブゾーニのシャコンヌでは,さらりと始まった後,どんどん音楽が大きくなっていくのが見事でしたが,続く,グルダのプレイ・プレイ・プレイでの,ちょっとレトロな感じのジャズ風の作品もお見事でした。ピアノ・ソロの曲なのですが,複数のパートがセッションを行っているような楽しさがありました。
前半最後のクライスラー作曲,ラフマニノフ編曲の「愛の悲しみ」は,ヴィルトーゾの時代のアンコールピースといった感じの曲で,しっかりと前半と後半をつないでいました。
さらに凄かったのが...後半での田島さんのドレスです。前半は黒のシンプルな飾りのないドレスでしたが,後半のドレスは黒地に鮮やかな模様が浮き上がり,さらに...背中の部分がほとんどない...という大胆なものでした。
田島さんの唯一のウィークポイント(?)は,結構ハラハラするトークなのですが,これもまた逆に,愛嬌となって伝わって来ます。さらには,天性の演奏のすごさのようなものを強調しているようです。
久しぶりに聞いた田島さんのソロ・リサイタルは,本当に聞きごたえがありました。何よりも素晴らしいと思ったのは,レパートリーの広さとそれぞれの演奏の完成度の高さです。どんどん新しいレパートリーを広げていく,オールマイティの金沢のヴィルトゥオーサとして,今後の活躍に期待したいと思います。
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