モーツァルト室内楽の旅27 ヴァイオリンソナタ5(金沢蓄音器館)。パリ・ソナタのうち3曲を大村俊介さんの味わい深い演奏とトークで楽しみました。鶴見彩さんのクリアなピアノもお見事
本日は久しぶりに金沢蓄音器館に出かけ,大村俊介さんのヴァイオリンと鶴見彩さんのピアノで,モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ3曲などを聞いてきました。元OEKのヴァイオリン奏者の大村さんによる,「モーツァルト室内楽の旅」シリーズも回を重ね,2006年から始まった弦楽四重奏シリーズの13回と合わせると,今回で40回目になります。まさに汲めどもつきないモーツァルトの室内楽の世界です。
最近はヴァイオリン・ソナタを取り上げていらっしゃるようですが,今回は鶴見彩さんのピアニストに迎え,「パリ・ソナタ」とか「プファルツ選帝侯ソナタ」とか「マンハイム・セット」と呼ばれる6曲の中の3曲が演奏されました。
このシリーズは,毎回,大村さんが演奏する曲について,曲の背景となる知識を含め,丁寧に説明をしていただけるのが素晴らしいところです。今回の説明では,「モーツァルトはヴァイオリン・ソナタを生涯を通じて書き(全部で43曲にもなります),その要所要所でヴァイオリン・ソナタで勝負を掛けてきた」と仰られていたのが印象的でした。
モーツァルトの他のジャンルの曲に比べると,少々印象が薄い面もあったのですが,このことを頭に置いて,1曲ずつじっくり聞くと,どの曲も大変味わい深いと思いました。これは,大村さんのヴァイオリンの暖かみのある演奏にもよると思います。それと今回は何といっても,鶴見彩さんのピアノが素晴らしいと思いました。
至近距離での演奏ということもあり,音が大変くっきり聞こえました。さらに音の粒が気持ちよく揃っており,速いパッセージで,タタタタタ...と見事に音が連なっているのが素晴らしいと思いました。演奏全体をくっきりとしたものにしていました。
今回は,第18番(第25番)ト長調,第19番(第26番)変ホ長調,第20番(第28番)ハ短調の3曲が演奏されましたが,静かな感じでスッと終わる数曲あり,「こういうのも良いなぁ」と思いました(番号については,偽作を入れるかどうかで2通りの番号付けがあるようです)。
その他,モーツァルトがこのシリーズを作曲するにあたって影響を受けた,シュスターの作品(「このシリーズでないと聞けない作品(大村さん談)」)や同時期に書かれたモーツァルトのピアノ・ソナタ第9番も演奏されました。
大村さんの深い音楽的教養に裏打ちされたこのシリーズですが,鶴見さんが加わり,さらにパワーアップしたのではないかと思います。演奏前にワインも一口楽しめるし,夜になって虫の声が盛大に聞こえる季節にはぴったりの,味わい深い演奏会でした。
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