OEKのCD

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2016年12月

2016/12/31

今年もオーケストラ・アンサンブル金沢を中心に沢山の音楽を生で楽しむことができたことを感謝します。よいお年をお迎えください。

石川県立音楽堂がオープンして15年になります。その間,OEKを中心として,その3つのホールを中心に沢山の音楽を楽しんでいます。コンサートに行くことを生活の中心に置いた生活をずっと続けています。色々な幸運が重なって「好きなことをずっとできている」こと,何よりも,平和に暮らせていることに感謝したいと思います。

そんな中でOEKの定期公演を中心にザッと1年間を振り返ってみたいと思います。とはいえ,時間が経つと記憶にはあまり残っていないものですねぇ(それに対抗するために,演奏会後に一生懸命レビューを書いているところもあります)。残念ですが,その場その場,その時その時に充実した時間を過ごすことができれば良いのだと思います。

OEKの定期公演では,フィルハーモニー(PH)とマイスター(M)の各シリーズを全部聞くことができました。Mの方は,1年通しのテーマを決め,特に毎回毎回,ソリストを聞くのも楽しみでした。今から思えば,この「企画力」が「ラ・フォル・ジュルネから新生音楽祭へ」という動きにつながっていたのかもしれません。

・2月7日 北谷直樹さんによるPH定期はバロック音楽の楽しさに溢れた公演
・3月1日 佐藤しのぶさん主演による「夕鶴」。民話をファッショナブルにした美しさがありました
・井上道義音楽監督の登場した3月16日PHでの「英雄」,7月16日Mでの「スコットランド」。音楽監督ならではの充実の演奏でした。
・Mは,ショパンと仲間たちがテーマだったので,江口玲,北村朋幹,若林顕,アレクサンダー・クリッヒェルなど実力のあるピアニストが続々登場
・6月2日PHは,指揮:川瀬賢太郎,ヴァイオリン:山根一仁のライジングスターの組み合わせ。プログラムも新鮮
・7月23日PHはイェルク・ヴィトマンが指揮+クラリネット。メンデルスゾーンの第1交響曲の熱い演奏が特に印象的
・メンデルスゾーンの交響曲と言えば,1月23日Mのマティアス・バーメルト指揮の「宗教改革」も聞きごたえ十分
・9月3日 野村萬斎と井上道義+OEKの共演による記念碑的「シン・ボレロ」。音楽堂15周年に相応しい華やかさもありました。
・9月10日 岩城メモリアルコンサートでは山田和樹指揮,東京混声合唱団によるフォーレのレクイエムに加え,今回岩城賞を受賞したバーバーのヴァイオリン協奏曲。大好きな曲を堪能できました。
・9月17日 アシュケナージ指揮PH。バウゼさんのピアノと併せ,いかにもOEKらしいプログラムを楽しませてくれました。
・10月8日Mではオーギュスタン・デュメイ,11月5日PHではイェルク・デームスと超有名アーティストが続々登場。年季の入った演奏を楽しませてくれました
・オリバー・ナッセン指揮による10月21日PH。ブラームスのセレナ―ド第1番と現代曲を中心とした冒険的なプログラム。時にはこういう路線も重要だと思います。
・11月23日 ピアノ協奏曲の午後。ニコライ・ホジャイノフさんによるモーツァルトのピアノ協奏曲第21番に圧倒されました。

その他,OEK以外の公演にも沢山行きました。年々感じるのは,金沢を中心に活躍しているアーティストの活動が地道に根付いてきていることです。今年は,海外からの有名オーケストラの公演という点では,やや物足りない面はありましたが,逆にブランドにこだわらずに「生で音楽を楽しむ」ことが「あたりまえ」という市民が増えてきている気もします。音楽堂ができる前の時代に比べると,地元のアーティストの公演でも拍手の量が増えていると感じます。こういう傾向がさらに進んで欲しいものです。

2017年については,何夜も今年で最後となったラ・フォル・ジュルネ金沢に続く「新生音楽祭」がどういうものになるか?がポイントになります。今から振り返れば,2016年のナチュールというテーマは大変幅が広く,「何でもあり」だったので,すでにその時点から覚悟はできていたのかもしれませんね。ラ・フォル・ジュルネを通じてお馴染みになった,ケフェレック,ペレス,エル=バシャというアーティストの演奏に触れる機会が減ることは大変残念ですが,さらに金沢市民に親しまれるようなクラシック音楽を中心とした音楽祭になるよう,OEKfanとしても応援したいと思っています。

それでは,皆様,良いお年をお迎えください。

2016/12/27

2016年の演奏会通いの締めは,大山平一郎指揮金沢大学フィルハーモニー管弦楽団による定期演奏会。非常に挑戦的な雰囲気の「悲愴」交響曲を聞かせてくれました。

2016年も沢山の演奏会に出かけてきましたが,その最後(予定)に,金沢大学フィルの定期演奏会を石川県立音楽堂で聞いてきました。指揮はベテラン指揮者の大山平一郎さんでした。プログラムは,ワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲,スメタナの交響詩「モルダウ」,チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」という,ロマン派のオーケストラの名曲3曲でした。

例年,この定期演奏会は,年が明けたセンター試験の頃に行うのが恒例でしたが,今年は年末に行われました。平日の18:30開演ということで,ちょっと慌ただしくなりましたが,今年の「締め」のオーケストラ公演を楽しんできました。

大山さんの指揮ぶりには,弛緩したところがなく,たっぷりとしたボリューム感よりは,ちょっと辛口の引き締まった演奏を聞かせてくれました。特に「悲愴」は,過度に甘くなったり,思い入れたっぷりになったりすることなく,悲しさに挑むような強さを感じました。第1楽章冒頭のファゴットや展開部の直前の弱音などでは,ピリピリするような弱音で演奏されることがありますが,今回の演奏では,積極性のようなものを感じました。

反対に第3楽章は,やや遅めのテンポで,非常に冷静でくっきりとした演奏を聞かせてくれ,ただのお祭り騒ぎとは一線を画していました。第4楽章は,また速目のテンポになり,運命に立ち向かっていくような強さを感じさせてくれました。

「悲愴」と言えば,悲しさとロマンティシズムに溢れた,たっぷりとした大曲という印象を持っていたのですが,それを裏切るような挑戦的な演奏だったと思います。

金大フィルの演奏では,透明感を感じさせてくれる弦楽器の演奏が特に印象的でした。管楽器の方は,やや粗が目立つところはありましたが,冒頭のファゴットであるとか,要所で活躍するフルートなどが特に立派な演奏を聞かせてくれたと思いました。第3楽章でのティンパニ,大太鼓,シンバルの演奏も安定感があり,楽章全体を大変聞きごたえのあるものにしていました。

前半のワーグナーとスメタナの方も,スケールの大きなロマンティックな演奏というよりは,引き締まったテンポでぐいぐい攻めてくるような雰囲気があり,大変若々しいと思いました。どの曲もそうだったのですが,大山さんのエネルギーが金大フィルの演奏に非常によく反映していると思いました。

というわけで,今年の演奏会通いもこの演奏会でおしまいにする予定です。

2016/12/23

石川県音文協年末,本日は荘厳ミサを聞いてきました。やはり素晴らしい作品です。1年を振り返りつつ,平和を祈ってきました

石川県音楽文化協会の年末公演。先日の第9公演に続き,本日行われた荘厳ミサ曲の公演も聞いてきました。今年は北陸聖歌合唱団のメサイアも聞いて来たので,冬のトリプル・クラウン(?)制覇といったところです。

荘厳ミサを実演で聞くのも久しぶりですが,聞いた後は素晴らしい曲だな,といつも感じます。指揮の山口泰志さんのテンポ設定はゆっくり目で(我が家にある荘厳ミサのCDは1枚に収まっているので,そう感じたのかもしれませんが,90分ぐらいかかっていたと思います),すべての存在を暖かく包み込むような包容力を感じました。50年以上この曲を歌っている石川県合唱協会県民合唱団の,熱さと渋さを兼ね備えた歌にぴったりの雰囲気がありました。

オーケストラは第9に続いて,石川フィルでした。第9の時は追加メンバーが居たようですが,こちら方は,石川フィルのみによる演奏でした。短期間で大曲2曲を演奏するのは,大変だと思いますが,こちらも渾身の演奏だったと思います。特に第4曲後半のベネディクトゥスに出てくる,コンサートマスターが声楽の独唱者たちと一緒に演奏する天上の音楽が印象的でした。

独唱は,お馴染みのソプラノの石川公美さんに加え,テノールの倉石真さん,バスの清水宏樹さんが大変バランスの良い歌を聞かせてくれました。今年は,日伊国交150周年記念ということで,イタリアのメゾ・ソプラノのフランチェスカ・ロマーナ・イオリオさんが,メゾ・ソプラノで参加していました。イオリオさんの声は,すっきりとしているけれども,細かくヴィブラートが掛かっているような独特の声で,しっかり存在感を示していました。

全曲の中では,戦争の雰囲気の後,平和の祈りへとつながる,最終楽章がやはり印象的でした。じっくりとテンポを落として,噛みしめるように締められました。

この日,指揮者の山口さんによるプレトークが行われました。「荘厳ミサは平和を祈る曲,第9はそれを受けて,平和に至るには人類が兄弟にならねばならないと方法を示した曲(意訳)」と語られていましたが,なるほどと思いました。

ミサに先立って演奏された,モーツァルトのアヴェ・ヴェルム・コルプスともども,クリスマス気分と同時に平和への祈りを強く感じた演奏会でした。

2016/12/18

石川フィル+県民合唱団による音文協年末公演第54回第九公演@金沢歌劇座。久しぶりに師走に第9を楽しんできました

年末のクラシック音楽といえば,全国的にはベートーヴェンの第9交響曲という人が多いのですが,金沢では,「メサイア」や「くるみ割り人形」の公演も多いこともあり,ここ数年,年末に第9は聞いて来ませんでした。これは,故岩城宏之さんの「第9は特別な時のために,なるべく指揮しないようにしていた」といった発言の影響もあるかもしれません(といいつつ,最晩年の岩城さんは毎年「全交響曲」を指揮していましたが...)。

今年は私の家族の知人が合唱団で出演するということで,石川県音楽文化協会による第9公演のチケットが私まで巡って来ました。そのこともあり,久しぶりに「師走の第9」に行くことにしました。12月に聞くのは,金聖響さんがOEKと作った交響曲全集用のライブ録音の時以来だと思います。

実は,本日はそれ以外にも,石川県立音楽堂では「ランドセルシリーズ」としてベートーヴェンの交響曲の抜粋を演奏していたので,OEKファンとしては,こちらに行くべきところでしたが...「小学生のための音楽会」ということなので,さすがに止めておきました。

さて今回の第9ですが,オーケストラの方が石川フィルハーモニー交響楽団をベースとした特別編成県民オーケストラ。合唱団の方も石川県合唱協会県民合唱団ということで,ソリスト以外は,すべてアマチュアによる公演でした。音文協では,このスタイルでベートーヴェンの荘厳ミサ曲も毎年演奏していますが,大変立派な取り組みだと思います。今年からはオーケストラのメンバーについても,公募でメンバーを追加しているとのことで,県民自身による第9路線がさらに強くなっていると思いました。

今回の指揮は,おなじみの花本康二さんでした。さすがに金沢歌劇座で聞くと,細かい部分で粗が目立つところがあったり,苦労しているなぁと感じさせる部分はありましたが,この大曲を堂々と聞かせてくれました。特に第4楽章の最後の部分での,しっかりと音を鳴らし切った充実感が見事でした。合唱の方は,50年以上に渡って歌っている団体ということで,こちらもまた堂々とした貫禄を感じさせてくれる,のびのびとした歌を聞かせてくれました。

ソリストの方もお馴染みのソプラノの石川公実さん,メゾ・ソプラノの小泉詠子さんなど,石川県出身の者が入っているのがうれしかったですね。男声2人も若々しい声を聞かせてくれました。

第9の前に石川県三曲協会,金沢邦楽アンサンブルとオーケストラ,合唱との共演で千鳥の曲が演奏されました。この取り合わせも定番となっています。大編成だけれども,実に古雅な雰囲気があり,和洋が溶け合った独特の気分を作っていました。

音文教の年末公演ですが,荘厳ミサの方は,12月23日に石川県立音楽堂で行われます。こちらの方もできれば聞きに行ってみたいと思います。

2016/12/11

恒例北陸聖歌合唱団とOEKのメサイア公演。天沼裕子さんの指揮のもと,新しい試みを盛り込んだ新鮮な演奏を聞かせてくれました #oekjp

12月恒例の北陸聖歌合唱団とOEKによる,クリスマス・メサイア公演が行われたので聞いてきました。半世紀以上メサイアを歌っているこの合唱団ですが,今年の公演は,いろいろと新しい試みが行われており,今後の新しい方向性を示すような充実した内容になっていたと思います。このことは,今回の指揮者の天沼裕子さんの力によるところも大きかったのではないかと思います。

通常この公演は,抜粋版で行われるので,「どの曲を演奏するか?」というのが一つのポイントになります。「クリスマス」ということで,イエスが誕生する場である,第1部が毎回中心になるのですが,今年は,第1部を全部演奏していました。そのかわり,イエスが受難を受ける第2部については,合唱曲をばっさりとカットし,ハレルヤ・コーラスのみに絞っていました。また,イエスが復活する第3部についても合唱は少なめで,最後のアーメン・コーラスに力を集中させているようでした。その代わり,独唱者の方は大活躍で,抜粋版ではあまり歌われてこなかった曲も歌われていました。

合唱曲と独唱曲のバランスを見直した結果この形になったのだと思いますが,全体のまとまりがとても良い印象を持ちました。これは,今回登場した4人の独唱者のすばらしさにもよると思います。

北陸聖歌合唱団の「メサイア」の「顔」のような存在だったソプラノの朝倉あづささんが2013年以来3年ぶりに復帰し,いつもどおりの可憐で凛とした声を聞かせてくれました。通常メゾ・ソプラノが歌うパートは,カウンター・テナーのデーキョン・キムさんが歌っていました。男声で聞くのは今回初めてでしたが,非常に優しい暖かみのある歌だったと思います。男声2名も充実していました。テノールのオリヴァー・クリンゲルさんもバリトンの高橋洋介さんもOEKの「メサイア」公演には初登場でしたが,どちらも宗教曲にぴったりの品格と清潔感のある歌でした。指揮者の天沼さんは,シャキッとした芯の強さのある「メサイア」を目指していたと感じたのですが,その意図にぴったりの独唱陣だったと思います。

北陸聖歌合唱団の歌も,熱のこもったものでした。天沼さんの指揮からは,各曲のテキストのイメージをくっきりと伝えようという意志が伝わってきました。そして,合唱団の歌からもその思いがしっかりと伝わってきました。OEKの演奏もいつもにも増して清々しさがあり,全曲を通じて,大変新鮮な気分を持ったメサイアになっていたと思います。

今回のもう一つの特徴は,OEKエンジェルコーラスが,いつもの「クリスマス・ソング・メドレー」ではなく,ヒルデガルト・フォン・ビンゲン(1000年前の作曲家です)の合唱曲を歌ったことです。これもまた,天沼さんのこだわりだったのですが,この曲を入れたことで,演奏会全体のトーンのまとまりが良くなったと思いました。エンジェルコーラスのメンバーは,練習するのは大変だったと思うのですが,素朴さと同時にミステリアスな気分がしっかりと伝わってきました。

伝統を維持しながら,新しい試みを取り入れた今回の「メサイア」公演は,半世紀以上の歴史の中でも,特に意味のある公演になったと思いました。

2016/12/03

快晴の12月の土曜の午後にぴったりのギュンター・ピヒラー指揮OEK定期公演。菊地洋子さんのピアノと共に新鮮・安心のモーツァルト&ロッシーニ #oekjp

12月のOEK定期公演マイスターシリーズには,お馴染みギュンター・ピヒラーさん登場し,今シーズンの「お約束」のモーツァルトにロッシーニの序曲を絡ませたプログラムが演奏されました。プログラムの最初に序曲が1曲入るのは「定番」ですが,後半の最初にも序曲が入るのは,意外に珍しいことです。

というわけで,前半がロッシーニ「どろぼうかささぎ」序曲とモーツァルトのピアノ協奏曲第26番「戴冠式」,後半がロッシーニ「ウィリアム・テル」序曲とモーツァルトの交響曲第36番「リンツ」という,前半と後半で線対称になった独特のプログラムとなりました。最後の「リンツ」は,演奏会のトリの曲としては,やや短かったので,序曲を加えることで,非常にバランスの良いものになったと思います。

演奏の方も,いかにもピヒラー&OEKらしいものでした。12月上旬の快晴の午後に聞くのにぴったりの,ちょっとピリッとしているけれども晴朗な演奏を楽しませてくれました。

ロッシーニの2曲は,ピヒラーさんが指揮すると,ぎゅっと圧縮されたコンパクトな感じになります。「ウィリアム・テル」序曲の最後の部分などは,しっかりと手綱を握って,馬を疾走させているような軽快さがありました。「どろぼうかさぎ」の方は,打楽器が6人も並んでいるのが壮観でした。冒頭の小太鼓のステレオ効果をはじめ,見ているだけでも楽しめました。

ピアノ協奏曲「戴冠式」では,菊地洋子さんのピアノが見事でした。シンプルな曲の美しさをストレートに伝えてくれました。菊地さんは,金沢ではすっかりおなじみのピアニストということで,ホームグランドで演奏しているような,自信と安心感がありました。菊地さんの持っている「すくすくと育ったお嬢様」という健康的で大らかな雰囲気は,素晴らしいキャラクターだと思います。これからもずっと応援していきたいピアニストの一人です。

なお第1楽章のカデンツァは,往年のチェンバロ奏者のワンダ・ランドフスカのものを使っていました(掲示が出ていました)。ひょっこり「フィガロ」が入ってきたような,曲想にぴったりの気分がありました。

演奏会の最後に演奏された「リンツ」は,「ピヒラーさんとOEKならばこういう演奏をするだろう」という予想どおりの演奏でした。そして「やはりピヒラーさんはすごい」と思いました。弦楽器のアーティキュレーションが明確かつニュアンスが豊かで,いつもどおりのピリッと締まったバランスの良い演奏を聞かせてくれました。両端楽章での勢いのある演奏も良かったのですが,第2楽章でのどこか夜の雰囲気を持った,翳りのある表現も見事でした。

アンコールでは(ピヒラーさんは必ずアンコールを演奏してくれますね),ハイドンの交響曲第92番「オックスフォード」の最終楽章が演奏されました。素晴らしい疾走感のある演奏で,ワクワクとした爽快な気分で公演を占めてくれました。

OEK定番のモーツァルト演奏を中心に,大変まとまりのよい演奏を楽しませてくれた演奏会でした。

ラ・フォル・ジュルネ金沢 2017は開催せず,別名称の音楽イベントへ。残念・心配・仕方ない・今後に期待...が入り混じった「思い」を整理してみました。

新聞等の報道によると,石川県立音楽堂を中心に5月の連休中に開催する大規模な音楽イベントとして定着ているラ・フォル・ジュルネ金沢が今年で終了し,来年からは別名称の音楽イベントを目指すとのことです。

9年間行われたラ・フォル・ジュルネ金沢に,ほぼ全日通い続けた身としては,まずは「残念」という思いですが,その一方,ここ数年の音楽祭の様子を眺めていると「仕方がない」という思いもありました。「ラ・フォル・ジュルネ」という看板を使っているからには,統一されたテーマに従うというのが当然なのですが,金沢独自プログラムのウェイトが年々大きくなっていました。

というわけで,色々な思いが交錯しています。その思いを整理した後,今後,どういう音楽祭になっていったら良いのだろうか?ということを勝手に考えてみました。

1.「残念→心配」というマイナスの思い

ラ・フォル・ジュルネ金沢は,金沢にとって,目に見える効果を持った劇的なものでした。連休中のJR金沢駅周辺を華やかなお祭り気分に変え,その余韻を伴って,コンサートホールに行き,クラシック音楽をハシゴで楽しむというスタイルを定着させました。地元の音楽関係者を大々的に巻き込み,「ラ・フォル・ジュルネのステージに立てる」という晴れの舞台になっている部分もありました。いずれにしても,「生のクラシック音楽鑑賞」を金沢市民を中心とした連休中の娯楽の一つに組み込ませた業績は大きかったと思います。

ただし,その成功の理由は,やはりルネ・マルタンさんの作ったラ・フォル・ジュルネのコンセプトによるものが多大だったと思います。毎年テーマを決めることによるイベント全体としてのお祭り感,登場するアーティスト(特にピアノ,ヴァイオリン等の器楽奏者)の演奏のレベルの高さ,テーマに沿ったプログラムの多様性,ハシゴするプログラムを自由に決められる楽しさ,そして何よりも”ラ・フォル・ジュルネ”という意味はよく分からないけれどもどこか引き付けられるネーミングとそれをビジュアル化したポスター...

こういった要素すべてが合わさってラ・フォル・ジュルネになっていたのですが,この完成度の高い音楽祭を止めて,どう新しく作っていくのか?となるとかなり心配です。

ラ・フォル・ジュルネの場合,個々のアーティストの知名度としては,それほど高くないのですが,ラ・フォル・ジュルネというネーム・バリューが年々「信頼のブランド」になっており,多くのお客さんが集まっていました。このブランドを外した場合,どうやって集客をするか(特に他県からのお客さん)にかなり苦労する気もあります。

2.その一方の「仕方がない→新たなスタートへ」という思い

その一方,上述のとおり,まずここ数年のラ・フォル・ジュルネ金沢については,「看板に偽りあり」という部分がかなりありました。昨年のテーマは,バロック音楽がテーマだったのに,いきなりベートーヴェンの交響曲第7番が出てきて,しかも超満員になる,という状況は「?」でした。

音楽祭の企画制作をしているKAJIMOTOとは「方向性が違ってきていますね」という点で意見は一致しているので,その看板を外すというのは,自然な流れということになります。ラ・フォル・ジュルネを続けていくことで,金沢独自のアイデアやノウハウが蓄積し,自立してやっていきたいという自信が出て来たことは,音楽祭を長く継続していく上には良いことだと思います。逆に言うと「自信」がないのに独自路線に転換ということならば...結構不安ではあるのですが...

「連休期間中のJR金沢駅前」というゴールデンな「時間」と「空間」をクラシック音楽の生演奏のために使いまくるという合意は,この9年間の成功により,金沢市民の中にはしっかりとコンセンサスが得られたと思います。結構揺るぎないものだと思います。そして,このコンセンサスを得たこと自体がラ・フォル・ジュルネ金沢のすごさだったと思います。

個人的には,ラ・フォル・ジュルネという名称は変わったとしても,金沢市民の中に育ったこのコンセンサスを維持して欲しいなと思います。

そういう意味で,転換点となる2017年が重要になるのですが,ルネ・マルタンさんのコンセプトに対抗するようなすごいものが短い準備期間で作れるとも思えません。2017年については,ラ・フォル・ジュルネの要素を残すなど継続性を意識しながらも,実験の音楽祭にして欲しいと思います。

思い返せば,ラ・フォル・ジュルネ金沢が始まった1年目も盛大な実験だったと思います。「すべてのコンサートに入れます」というパスを発行したため,どの公演も超満員になるというすごいことになってしまいましたが,そのインパクトは2年目以降の定着の原因の一つだったと思います。

というわけで,従来のラ・フォル・ジュルネ金沢の要素の中から残すものと,新しく加えるものを整理して,実験的な2017を行い,その成果を踏まえて,集客力のある継続可能なものへとバージョンアップしていくことが重要なのではないかと思います。

3,こういう音楽祭なら良いのでは?
すでに,関係者の間では構想は進んでいるのかもしれませんが,最後に「こういう音楽祭ならば良いのでは」という案を5W1Hに分けて整理してみました。

1 When いつ
・ラ・フォル・ジュルネ金沢と同じく4月末から5月連休にかけて実施
・前半はエリアイベント,後半は石川県立音楽堂中心に本公演とする
・前半の吹奏楽などは,すでに金沢独自路線で定着しているので,そのままでも良いのでは?
・「1コンサート45分単位」も原則維持するが,もう少し自由度を高めても良いかも

2 Who 出演アーティスト
・オーケストラ・アンサンブル金沢をベースとする。
・著名指揮者+オーケストラを招聘する
・金沢独自のルートで著名アーティストを集める(バボラク,フックスのような形で)
・金沢に愛着を持っているアーティストを集める
・金沢で活躍するアーティスト

3 Where どこ
・ラ・フォル・ジュルネ金沢と同様,JR金沢駅周辺を使いまくる

4 What 何を演奏するか?
・ここがいちばんのポイント。
・ターゲットは,これまで同様,マニアックな人を含む老若男女すべての人。クラシック音楽初心者向けのプログラムとマニアックなプログラムをどう組み合わせるかがポイント
・誰にどういう曲を演奏してもらうかの選定については,中心となるプロデューサが必要になるのでは?現在の役職的には,池辺晋一郎さん+井上道義さんでしょうか?
・統一テーマのもとにプログラムを決め,テーマから逸脱した曲は演奏しないという形が望ましいが...。個人的には,来年のラ・フォル・ジュルネのテーマの「ダンス」に興味があったので,そのまま金沢でやってもらいたい気もします。

5 How どう運営するか?
・石川県+金沢市+地元企業+チケット収入 というのは従来同様
・特定の新聞社・放送局等の主催のような形にはしない。が,北國新聞の多大な協力は不可欠だと思います
・ラ・フォル・ジュルネのイメージば,イジー・ヴォトルバさんのイラストのイメージで作られている面を大きい。これに変わるビジュアルを金沢独自で作れるかどうかが非常に大きな課題。
・そして,そのビジュアルイメージと合致した音楽イベント名をどうするか?がさらに大きな課題。語感が堅くなり過ぎず,ウィットがあり,なるべくシンプルで明るい感じのネーミング(できれば愛称も)があると良いのですが...
・金沢の良さは,会場が大きすぎず,密度が高いこと。その結果,アーティストと身近に触れ合えることだと思います。この良さは残して欲しいと思います。

最後にいろいろな思いを振り返りつつ,2008年のラ・フォル・ジュルネ金沢の第1回目の最終日に書いた文章を再掲載しておきたいと思います。

http://oekfan.air-nifty.com/news/2008/05/post_a07b.html


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