OEKのCD

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2016年8月28日 - 2016年9月3日

2016/09/03

石川県立音楽堂開館15周年記念 井上道義指揮OEK+野村萬斎によるシン・ボレロ(?)。創意に満ちたパフォーマンス。鈴木行一「勧進帳」も音楽堂にぴったりの作品。そしてOEK十八番のハフナー! #oekjp

石川県立音楽堂が開館したのは,アメリカで起こった同時多発テロと同じ日です。2001年9月11日ということで,この9月で開館15周年となります。それを祝うための特別公演が行われたので聞いてきました。

石川県立音楽堂の建物のいちばんの特徴は,何といってもOEK用のコンサートホールと邦楽公演等に使える邦楽ホールが一つの建物の中に入っているということです。今回の公演も,この「和洋どっちも」という点を意識した内容となっていました。

メインは,井上道義指揮OEKによるラヴェルの「ボレロ」を野村萬斎さんと共演する最後のステージで,会場は満席でした。完売御礼という案内まで出ていました。「ボレロ」は,OEKのサイズには合っていない曲ですので,滅多に演奏されたことはありませんが(OEKが演奏するのは...本多の森ホールや金沢歌劇座での公演は記憶にあるのですが...音楽堂では初めて?),あらゆる点で「滅多にない」な気分満載の演奏になっていました。

まずステージですが,通常のステージの上に,能舞台ぐらいの大きさの正方形の台が置かれていました。その上に薄い赤色の布が敷かれ,萬斎さんはこの上で踊りました。オーケストラの配置も変わっており,この舞台を囲むように,ソロを取る管楽器が出てくる順番に前の方に並んでいました。そのソロが登場するたびに,スポットライトが当たる形になっていました。数年前のラ・フォル・ジュルネ金沢の時の井上道義さん指揮のフランスのオーケストラによる演奏でも似たような配置を取っていましたが,その時は最後列だったかもしれません。それをさらに徹底させた感じでした。

今回の大きな特徴は照明の変化を多用していたことです。ボレロは,基本的にはクレッシェンドの曲なので,照明の方も暗→明という変化でしたが,踊りの意図を補強するかのように,寒色系になったり,暖色系になったりしていました。最後,クライマックスでパッと転調する印象的な部分では,照明の方が「昼間のような明るさ」に一瞬変化し,ドラマを盛り上げてくれました。

萬斎さんですが,若々しい雰囲気と同時にスターの貫禄のようなものをしっかりと感じさせてくれました。まず,登場の仕方が格好よかったですね。今回はステージ正面のいつもは開けていない扉を開放し,そこから萬斎さんが登場しました。最初は会場全体が真っ暗で,扉側から客席に向けて強烈なライトで照らし,萬斎さんのシルエットだけが浮き上がる,というものでした。音楽がしばらく進んでから,動きだしメインの舞台に登場。白い着物(これは何という着物でしょうか?陰陽師という雰囲気の着物です)で頭には何も被っておらず,素顔のままでした。

その雰囲気が若々しく,ヴァイオリンが加わる部分辺りから,ドンという足踏みを入れ始めて,元気さを増していきます。曲の最後の部分では,ステージからジャンプし,照明が暗転して鮮やかに終わっていました。一体どこに行ったのだろう,と思って照明が明るくなると客席の最前列に。未来への広がりを感じさせるような「シン・ボレロ」だったと思います。

この日の公演のもう一つの注目は,鈴木行一作曲の「勧進帳」です。演奏時間的には40分以上ある大曲で,歌舞伎十八番の「勧進帳」をカンタータのような感じで聞かせる重量感のある作品です。

これも石川県立音楽堂のコンセプトにぴったりの作品で,OEKと邦楽器のアンサンブルである素囃子とが,ドラマの進行に添って,交替しながら演奏し,さらにはOEK合唱団による合唱も加わっていました。

10年以上前に演奏されたことがあり,私も聞いたことはあるのですが,この曲についても照明での演出を加え,より分かりやすい内容になっていたと思いました。曲の雰囲気としては,暗い現代オペラといったムードがあるのですが,途中,弁慶が例の「勧進帳」を読む場面(そーれつらつら...と架空の文章を読み上げる見せ場)では,黛敏郎の涅槃交響曲のような雰囲気になり,素晴らしい緊迫感を出していました。

素囃子の方は,最後,無事安宅の関を通り抜ける部分で,見事な合奏を聞かせてくれました。曲全体からすると,カデンツァのような感じの盛り上がりを作っていました。邦楽器とオーケストラの共演といえば,武満徹のノヴェンバー・ステップスが代表曲ですが,邦楽器の合奏とオーケストラの共演というのは...ほとんどないと思います。

素囃子は,金沢が誇る伝統芸能の一つということで,新旧アンサンブルの共演ということになりました。この金沢らしい作品で,15周年を祝うというのは,今回の公演のコンセプトにぴったりだと思いました。

この日は,この2曲の橋渡しとして,モーツアルトの「ハフナー」交響曲が演奏されました。「歌舞伎十八番」ならぬ「OEK十八番」の曲で,特に井上道義さんは,この曲を愛しているのではないかと思います。力んだところのない,ゆったりとした演奏で,安心して聞くことのできる演奏でした。OEKファン的には,「ふだん使いの食器に愛着がわく」といった感じの演奏だったと思います。

さて,石川県立音楽堂も創立15周年ですが,このOEKfanの方も15周年ということになります。日常的には何かと生きにくいことの多い世の中ですが,アートの世界に浸らせてくれる音楽堂の中に居る時は,世間とは別次元のルールで動いている世界に入ることができます。そういう時間を提供し続けていただけていることに,改めて感謝をしたいと思います。

PS. 萬斎さんといえば「シン・ゴジラ」に出演されているようですが(まだ観ていません),これを機会に,伊福部昭の曲に合わせて踊るというのをやってくれないでしょうかねぇ?井上さんも伊福部さんの音楽が大好きなので,是非期待したいと思います。

2016/09/01

モーツァルト室内楽の旅27 ヴァイオリンソナタ5(金沢蓄音器館)。パリ・ソナタのうち3曲を大村俊介さんの味わい深い演奏とトークで楽しみました。鶴見彩さんのクリアなピアノもお見事

本日は久しぶりに金沢蓄音器館に出かけ,大村俊介さんのヴァイオリンと鶴見彩さんのピアノで,モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ3曲などを聞いてきました。元OEKのヴァイオリン奏者の大村さんによる,「モーツァルト室内楽の旅」シリーズも回を重ね,2006年から始まった弦楽四重奏シリーズの13回と合わせると,今回で40回目になります。まさに汲めどもつきないモーツァルトの室内楽の世界です。

最近はヴァイオリン・ソナタを取り上げていらっしゃるようですが,今回は鶴見彩さんのピアニストに迎え,「パリ・ソナタ」とか「プファルツ選帝侯ソナタ」とか「マンハイム・セット」と呼ばれる6曲の中の3曲が演奏されました。

このシリーズは,毎回,大村さんが演奏する曲について,曲の背景となる知識を含め,丁寧に説明をしていただけるのが素晴らしいところです。今回の説明では,「モーツァルトはヴァイオリン・ソナタを生涯を通じて書き(全部で43曲にもなります),その要所要所でヴァイオリン・ソナタで勝負を掛けてきた」と仰られていたのが印象的でした。

モーツァルトの他のジャンルの曲に比べると,少々印象が薄い面もあったのですが,このことを頭に置いて,1曲ずつじっくり聞くと,どの曲も大変味わい深いと思いました。これは,大村さんのヴァイオリンの暖かみのある演奏にもよると思います。それと今回は何といっても,鶴見彩さんのピアノが素晴らしいと思いました。

至近距離での演奏ということもあり,音が大変くっきり聞こえました。さらに音の粒が気持ちよく揃っており,速いパッセージで,タタタタタ...と見事に音が連なっているのが素晴らしいと思いました。演奏全体をくっきりとしたものにしていました。

今回は,第18番(第25番)ト長調,第19番(第26番)変ホ長調,第20番(第28番)ハ短調の3曲が演奏されましたが,静かな感じでスッと終わる数曲あり,「こういうのも良いなぁ」と思いました(番号については,偽作を入れるかどうかで2通りの番号付けがあるようです)。

その他,モーツァルトがこのシリーズを作曲するにあたって影響を受けた,シュスターの作品(「このシリーズでないと聞けない作品(大村さん談)」)や同時期に書かれたモーツァルトのピアノ・ソナタ第9番も演奏されました。

大村さんの深い音楽的教養に裏打ちされたこのシリーズですが,鶴見さんが加わり,さらにパワーアップしたのではないかと思います。演奏前にワインも一口楽しめるし,夜になって虫の声が盛大に聞こえる季節にはぴったりの,味わい深い演奏会でした。

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