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2016年11月27日 - 2016年12月3日

2016/12/03

快晴の12月の土曜の午後にぴったりのギュンター・ピヒラー指揮OEK定期公演。菊地洋子さんのピアノと共に新鮮・安心のモーツァルト&ロッシーニ #oekjp

12月のOEK定期公演マイスターシリーズには,お馴染みギュンター・ピヒラーさん登場し,今シーズンの「お約束」のモーツァルトにロッシーニの序曲を絡ませたプログラムが演奏されました。プログラムの最初に序曲が1曲入るのは「定番」ですが,後半の最初にも序曲が入るのは,意外に珍しいことです。

というわけで,前半がロッシーニ「どろぼうかささぎ」序曲とモーツァルトのピアノ協奏曲第26番「戴冠式」,後半がロッシーニ「ウィリアム・テル」序曲とモーツァルトの交響曲第36番「リンツ」という,前半と後半で線対称になった独特のプログラムとなりました。最後の「リンツ」は,演奏会のトリの曲としては,やや短かったので,序曲を加えることで,非常にバランスの良いものになったと思います。

演奏の方も,いかにもピヒラー&OEKらしいものでした。12月上旬の快晴の午後に聞くのにぴったりの,ちょっとピリッとしているけれども晴朗な演奏を楽しませてくれました。

ロッシーニの2曲は,ピヒラーさんが指揮すると,ぎゅっと圧縮されたコンパクトな感じになります。「ウィリアム・テル」序曲の最後の部分などは,しっかりと手綱を握って,馬を疾走させているような軽快さがありました。「どろぼうかさぎ」の方は,打楽器が6人も並んでいるのが壮観でした。冒頭の小太鼓のステレオ効果をはじめ,見ているだけでも楽しめました。

ピアノ協奏曲「戴冠式」では,菊地洋子さんのピアノが見事でした。シンプルな曲の美しさをストレートに伝えてくれました。菊地さんは,金沢ではすっかりおなじみのピアニストということで,ホームグランドで演奏しているような,自信と安心感がありました。菊地さんの持っている「すくすくと育ったお嬢様」という健康的で大らかな雰囲気は,素晴らしいキャラクターだと思います。これからもずっと応援していきたいピアニストの一人です。

なお第1楽章のカデンツァは,往年のチェンバロ奏者のワンダ・ランドフスカのものを使っていました(掲示が出ていました)。ひょっこり「フィガロ」が入ってきたような,曲想にぴったりの気分がありました。

演奏会の最後に演奏された「リンツ」は,「ピヒラーさんとOEKならばこういう演奏をするだろう」という予想どおりの演奏でした。そして「やはりピヒラーさんはすごい」と思いました。弦楽器のアーティキュレーションが明確かつニュアンスが豊かで,いつもどおりのピリッと締まったバランスの良い演奏を聞かせてくれました。両端楽章での勢いのある演奏も良かったのですが,第2楽章でのどこか夜の雰囲気を持った,翳りのある表現も見事でした。

アンコールでは(ピヒラーさんは必ずアンコールを演奏してくれますね),ハイドンの交響曲第92番「オックスフォード」の最終楽章が演奏されました。素晴らしい疾走感のある演奏で,ワクワクとした爽快な気分で公演を占めてくれました。

OEK定番のモーツァルト演奏を中心に,大変まとまりのよい演奏を楽しませてくれた演奏会でした。

ラ・フォル・ジュルネ金沢 2017は開催せず,別名称の音楽イベントへ。残念・心配・仕方ない・今後に期待...が入り混じった「思い」を整理してみました。

新聞等の報道によると,石川県立音楽堂を中心に5月の連休中に開催する大規模な音楽イベントとして定着ているラ・フォル・ジュルネ金沢が今年で終了し,来年からは別名称の音楽イベントを目指すとのことです。

9年間行われたラ・フォル・ジュルネ金沢に,ほぼ全日通い続けた身としては,まずは「残念」という思いですが,その一方,ここ数年の音楽祭の様子を眺めていると「仕方がない」という思いもありました。「ラ・フォル・ジュルネ」という看板を使っているからには,統一されたテーマに従うというのが当然なのですが,金沢独自プログラムのウェイトが年々大きくなっていました。

というわけで,色々な思いが交錯しています。その思いを整理した後,今後,どういう音楽祭になっていったら良いのだろうか?ということを勝手に考えてみました。

1.「残念→心配」というマイナスの思い

ラ・フォル・ジュルネ金沢は,金沢にとって,目に見える効果を持った劇的なものでした。連休中のJR金沢駅周辺を華やかなお祭り気分に変え,その余韻を伴って,コンサートホールに行き,クラシック音楽をハシゴで楽しむというスタイルを定着させました。地元の音楽関係者を大々的に巻き込み,「ラ・フォル・ジュルネのステージに立てる」という晴れの舞台になっている部分もありました。いずれにしても,「生のクラシック音楽鑑賞」を金沢市民を中心とした連休中の娯楽の一つに組み込ませた業績は大きかったと思います。

ただし,その成功の理由は,やはりルネ・マルタンさんの作ったラ・フォル・ジュルネのコンセプトによるものが多大だったと思います。毎年テーマを決めることによるイベント全体としてのお祭り感,登場するアーティスト(特にピアノ,ヴァイオリン等の器楽奏者)の演奏のレベルの高さ,テーマに沿ったプログラムの多様性,ハシゴするプログラムを自由に決められる楽しさ,そして何よりも”ラ・フォル・ジュルネ”という意味はよく分からないけれどもどこか引き付けられるネーミングとそれをビジュアル化したポスター...

こういった要素すべてが合わさってラ・フォル・ジュルネになっていたのですが,この完成度の高い音楽祭を止めて,どう新しく作っていくのか?となるとかなり心配です。

ラ・フォル・ジュルネの場合,個々のアーティストの知名度としては,それほど高くないのですが,ラ・フォル・ジュルネというネーム・バリューが年々「信頼のブランド」になっており,多くのお客さんが集まっていました。このブランドを外した場合,どうやって集客をするか(特に他県からのお客さん)にかなり苦労する気もあります。

2.その一方の「仕方がない→新たなスタートへ」という思い

その一方,上述のとおり,まずここ数年のラ・フォル・ジュルネ金沢については,「看板に偽りあり」という部分がかなりありました。昨年のテーマは,バロック音楽がテーマだったのに,いきなりベートーヴェンの交響曲第7番が出てきて,しかも超満員になる,という状況は「?」でした。

音楽祭の企画制作をしているKAJIMOTOとは「方向性が違ってきていますね」という点で意見は一致しているので,その看板を外すというのは,自然な流れということになります。ラ・フォル・ジュルネを続けていくことで,金沢独自のアイデアやノウハウが蓄積し,自立してやっていきたいという自信が出て来たことは,音楽祭を長く継続していく上には良いことだと思います。逆に言うと「自信」がないのに独自路線に転換ということならば...結構不安ではあるのですが...

「連休期間中のJR金沢駅前」というゴールデンな「時間」と「空間」をクラシック音楽の生演奏のために使いまくるという合意は,この9年間の成功により,金沢市民の中にはしっかりとコンセンサスが得られたと思います。結構揺るぎないものだと思います。そして,このコンセンサスを得たこと自体がラ・フォル・ジュルネ金沢のすごさだったと思います。

個人的には,ラ・フォル・ジュルネという名称は変わったとしても,金沢市民の中に育ったこのコンセンサスを維持して欲しいなと思います。

そういう意味で,転換点となる2017年が重要になるのですが,ルネ・マルタンさんのコンセプトに対抗するようなすごいものが短い準備期間で作れるとも思えません。2017年については,ラ・フォル・ジュルネの要素を残すなど継続性を意識しながらも,実験の音楽祭にして欲しいと思います。

思い返せば,ラ・フォル・ジュルネ金沢が始まった1年目も盛大な実験だったと思います。「すべてのコンサートに入れます」というパスを発行したため,どの公演も超満員になるというすごいことになってしまいましたが,そのインパクトは2年目以降の定着の原因の一つだったと思います。

というわけで,従来のラ・フォル・ジュルネ金沢の要素の中から残すものと,新しく加えるものを整理して,実験的な2017を行い,その成果を踏まえて,集客力のある継続可能なものへとバージョンアップしていくことが重要なのではないかと思います。

3,こういう音楽祭なら良いのでは?
すでに,関係者の間では構想は進んでいるのかもしれませんが,最後に「こういう音楽祭ならば良いのでは」という案を5W1Hに分けて整理してみました。

1 When いつ
・ラ・フォル・ジュルネ金沢と同じく4月末から5月連休にかけて実施
・前半はエリアイベント,後半は石川県立音楽堂中心に本公演とする
・前半の吹奏楽などは,すでに金沢独自路線で定着しているので,そのままでも良いのでは?
・「1コンサート45分単位」も原則維持するが,もう少し自由度を高めても良いかも

2 Who 出演アーティスト
・オーケストラ・アンサンブル金沢をベースとする。
・著名指揮者+オーケストラを招聘する
・金沢独自のルートで著名アーティストを集める(バボラク,フックスのような形で)
・金沢に愛着を持っているアーティストを集める
・金沢で活躍するアーティスト

3 Where どこ
・ラ・フォル・ジュルネ金沢と同様,JR金沢駅周辺を使いまくる

4 What 何を演奏するか?
・ここがいちばんのポイント。
・ターゲットは,これまで同様,マニアックな人を含む老若男女すべての人。クラシック音楽初心者向けのプログラムとマニアックなプログラムをどう組み合わせるかがポイント
・誰にどういう曲を演奏してもらうかの選定については,中心となるプロデューサが必要になるのでは?現在の役職的には,池辺晋一郎さん+井上道義さんでしょうか?
・統一テーマのもとにプログラムを決め,テーマから逸脱した曲は演奏しないという形が望ましいが...。個人的には,来年のラ・フォル・ジュルネのテーマの「ダンス」に興味があったので,そのまま金沢でやってもらいたい気もします。

5 How どう運営するか?
・石川県+金沢市+地元企業+チケット収入 というのは従来同様
・特定の新聞社・放送局等の主催のような形にはしない。が,北國新聞の多大な協力は不可欠だと思います
・ラ・フォル・ジュルネのイメージば,イジー・ヴォトルバさんのイラストのイメージで作られている面を大きい。これに変わるビジュアルを金沢独自で作れるかどうかが非常に大きな課題。
・そして,そのビジュアルイメージと合致した音楽イベント名をどうするか?がさらに大きな課題。語感が堅くなり過ぎず,ウィットがあり,なるべくシンプルで明るい感じのネーミング(できれば愛称も)があると良いのですが...
・金沢の良さは,会場が大きすぎず,密度が高いこと。その結果,アーティストと身近に触れ合えることだと思います。この良さは残して欲しいと思います。

最後にいろいろな思いを振り返りつつ,2008年のラ・フォル・ジュルネ金沢の第1回目の最終日に書いた文章を再掲載しておきたいと思います。

http://oekfan.air-nifty.com/news/2008/05/post_a07b.html


2016/11/27

今月2回目のマーラーの交響曲5番の実演。西本智実指揮エルサレム交響楽団で聞いてきました

西本智実指揮エルサレム交響楽団による演奏会が,石川県立音楽堂コンサートホールで行われたので聞いてきました。西本さんの指揮については,数年前のラ・フォル・ジュルネ金沢で聞いて以来のことですが,今回もマーラーの5番を中心に大曲をたっぷりと聞かせてくれました。

エルサルム交響楽団については,実演を聞くのも初めてでしがが,名前を聞くのも初めてでした。聞いた印象としては,超一流のヴィルトーゾ・オーケストラという感じではなく,フル編成にしてはやや響きが薄めな気がしました(今回,3階席で聞いたこともあるかもしれません)。どこか鄙びた感じもしましたが,マーラーの5番の”肝”である,トランペットもホルンも好調で,最終楽章の最後の輝かしいフィナーレでは,充実した音を聞かせてくれました。

第1,2楽章では,テンポ感が重苦しく,停滞した感じがしましたが,第3楽章辺りから変化に富んだ軽やかさが出てきました。この変化に富んだ気分はマーラーらしいな,と思いました。第4楽章アダージェットもじっくりと演奏されましたが,終盤に行くと音楽が高揚し,どこか華麗な雰囲気が出てくるのも西本さんらしいと思いました。

前半に演奏された,ドヴォルザークのチェロ協奏曲は,ドミトリ・ヤブロンスキーさんとの共演でした。この方は,20年以上前にOEKと共演したことがある方です。その時の印象はすっかり残っていないのですが,今回の演奏については,全体的にテンションが低い印象で,やや物足りなさが残りました。それと,やはりマーラーと組み合わせるプログラムとしては,やや長すぎるかなと思いました。

マーラーの5番については,今月前半に石川フィルの演奏でも聞いたばかりでした。一月の間に2回実演で聞いたのは初めてのことでしたが,それぞれに面白い演奏だったと思います。何よりも,曲自体が素晴らしいなぁと実感できました。

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