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2016年2月14日 - 2016年2月20日

2016/02/14

日比谷公会堂リニューアル前ファイナルイベント  ショスタコーヴィチ第9番・第15番演奏会 井上道義指揮新日本フィル。時代を伝える響きに最後の最後で触れることができました。

昭和4年に開設され86年の歴史を持つ日比谷公会堂が耐震化等に伴う大規模改修の工事のため,一時休館することになりました。その最後のイベントとして,井上道義指揮新日本フィルによる「ショスタコーヴィチ交響曲第9番・第15番演奏会」が日比谷公会堂で開催されました。実は,この演奏会は,「500組1,000名を招待」ということで,当選覚悟(?)で応募したところ,やはり当選したので,北陸新幹線に乗って,日帰りで聞いてきました。
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演奏会自体は「無料」でしたが,往復で2万5千円かかったことになります。しかし,その価値は,それ以上だったと思っています。日本でクラシック音楽(特にオーケストラ音楽)の演奏会が行わなわるようになった草創期の雰囲気を残す「音楽遺産」のような場所と実感しました。

14:00開場でしたが,その前に着いたので(13:30頃)行ってみると,すでに長い列が出来ていました。

14:00少し前に開場になり,いよいよ中に入りました。まず,入口に入るまでの階段が大変急勾配でした。建物に入ると,天井がかなり低く,頭上注意という案内が沢山出ていました。ホールに入ると(私は2階席でした),やはりかなりの急勾配で,しかも隣の座席との間隔が狭かったですね。ひじ掛けがない,というのも現在のホールでは考えられないと思います。しかし,ステージまでの距離は意外に近く,2階席からは大変見やすいと思いました。
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今回は,日比谷公会堂の「大トリ」のような公演でしたが,それに選ばれたのが,ショスタコーヴィチというのも納得でした。その音を聞いてぴったりだと思いました。

第9番の最初の音が聞こえてくると,その音が生々しく(デッドな響きと言って良いと思います),各楽器の音がくっきりと聞こえてきました。演奏者側からすると,粗が全部聞こえてしまうという怖さがあるのではないかと思います。

現在の音楽専門ホールの場合は,残響時間が長く,各楽器の音が溶け合って聞こえ,心地よく音に浸らせてくれます。日比谷公会堂の場合,音が「ピリッ」と飛んでくる感じで,曲想によっては合わないと思うのですが,旧ソヴィエト連邦時代を生き抜いた,一筋縄ではいかない,ちょっとシニカルな雰囲気を持ったショスタコーヴィチの音楽には,ぴったりだと感じました。

第9番の第1楽章の冒頭から弦楽器の音,ピッコロの音が臨場感たっぷりに聞こえる中,トロンボーンが「ちょっと場違い?」という感じで入ってくるのですが,その雰囲気に味がありました。この曲はもともと好きな曲なのですが,特に井上道義さんのキャラクターに合っている曲だと思いました。全体的な雰囲気は,ピリッと引き締まっていましたが,テンポ自体は中庸で,オーケストラの各楽器が,自在にそれぞれのキャラクターを演じているような雰囲気がありました。

第5楽章の最後の部分で,テンポが速くなって,軽やかに終わるのですが,曲が終わった瞬間にクルッとお客さんの方に向いて,「してやったり」という感じでアピールするあたり,井上さんらしさが炸裂していました。

後半に演奏された第15番も,第9番と似た感じの部分があり,あまり力で圧倒するという曲ではないのですが,さらに「意味深」な雰囲気があります。第1楽章でのロッシーニに「ウィリアムテル」序曲をはじめ,色々な曲のフレーズを,そのままの形で引用するなど,「ショスタコーヴィチは一体何を考えているのだろう」という部分もある曲です。

第2楽章の弔いの音楽の深さが特に印象的でした。そして,最終楽章の最後の部分での,弦楽器の上で打楽器がひっそりとカチカチという感じでリズムを刻みながらひっそりと終了する謎めいた終わり方。その意味を解釈するのは,なかなか難しいのですが,その「隠しつつ表現する」雰囲気がショスタコーヴィチの交響曲作曲家としての最後の境地だというのは,面白いと思いました。

日比谷公会堂もショスタコーヴィチも,戦争のあった時代をくぐり抜けながら,音楽を継続していた点で共通性があると思います。このホールには,そういう「過去の空気」が残っているような気がします(そう思いたい,というだけかもしれませんが)。ショスタコーヴィチの最後の交響曲で,ホールの最後の時を刻んで歴史が一旦閉じられるというのは,素晴らしいアイデアだと思いました。

リニューアル後は,その「過去の空気」はなくなっていると思うのですが,また新たな時を刻み始めることでしょう。

この日のお客さんの中に黒柳徹子さんが来ていらっしゃったのも素晴らしかったですね。井上さんは,幕間のトークで,2階席真ん中に座っていた黒柳さんに向かって,「徹子さんのご両親が出会ったのがこの日比谷公会堂だったんですね」と言われていましたが,この日来ていたお客さんの中にも,色々な思い出が詰まっていたことでしょう。

最後の最後にこのホールでショスタコーヴィチを聞くことができて,本当に良かったと思いました。

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