ルドヴィート・カンタ チェロ・リサイタル ボーリングのチェロとジャズ・ピアノ・トリオのための組曲を中心にリラックスして楽しめました
オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の首席チェロ奏者,ルドヴィート・カンタさんのリサイタルが石川県立音楽堂コンサートホールで行われたので聞いてきました。カンタさんのリサイタルも今回で19回目となりますが,プログラムに趣向が凝らされており,同じ曲というのがほとんど出てきていないのがすごいところです。
今回もまた,「新曲」が入っていました。後半に演奏された,ボーリングという現代の作曲家による,チェロとジャズ・ピアノ・トリオのための組曲という1984年の作品です。曲は,タイトル通りの作品で,チェロとピアノが擬似バロック音楽的な親しみやすい音楽を演奏しているうちに,コントラバスとドラムスが加わり,心地よいジャズの雰囲気になっていくといったとても面白い作品でした。
かつて人気のあった,ジャック・ルーシェトリオによる,「プレイ・バッハ」のような気分があり,とても新鮮でした。バロック音楽の組曲のように6曲からなっていたのですが,1曲ずつが結構長かったので,50分ぐらい演奏時間があったと思います。各曲の雰囲気に変化があり,大変リラックスして楽しむことができました。
カンタさんといえば,OEKに入る直前頃,NAXOSレーベルにジャズ風のカデンツァの入るハイドンとボッケリーニのチェロ協奏曲のCD録音を行っています。その面目躍如たる演奏でした。ちなみにジャズ・ピアノ・トリオのメンバーは,Julian,Rita,Umechuとクレジットされていましたが...ユリアン・リイムさんのピアノ,OEKのコントラバス奏者のマルガリータ・カルチェヴァさん,端谷博人さんのドラムスでした。リイムさんの軽快なピアノを始め,爽快なジャズを聞かせてくれました。
前半に演奏された2曲も,楽しむことができました。ドビュッシーのチェロ・ソナタはちょっと捉えどころがないけれども,ユーモアが漂うような,演奏でした。
フランクのチェロ・ソナタは,オリジナルはヴァイオリン・ソナタです。名曲中の名曲で,チェロでも時々演奏される曲ですが,やはり音域が少し下がることで,ヴァイオリンの時とは一味違った,落ち着きが感じられました。ヴァイオリン版がスウィートだとすれば,チェロ版はビター・スウィートといったところでしょうか。いつもどおり,さりげないけれども滑らかに流れるカンタさんのチェロの歌を楽しむことができました。第2楽章や第4楽章での勢いのある自信に満ちた音楽も見事でした。リイムさんのピアノは重苦しい感じはなく,フランス風味が感じられました。
それにしても,カンタさんのリサイタルの選曲は素晴らしいですね。次回は60歳記念の演奏会になるということで,どういう内容になるのか今から大変楽しみです。
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