OEKのCD

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2017/04/07

鈴木優人指揮OEK定期公演。風と緑のベートーヴェンといった感じの爽快な演奏。15年ぶりに聞くヴァイオリンの木嶋真優さんも堂々たるアーティストに成長していました #oekjp

OEKの4月の定期公演には,OEKと初共演となる鈴木優人さんが登場し,バッハ,モーツァルト,ベートーヴェンの音楽を指揮しました。メインに演奏されたのが,ベートーヴェンの交響曲第2番ということで,新入社員,新入生が溢れているこの時期にぴったりの,新鮮な響きに満ち溢れた演奏会となりました。

鈴木さんは,お名前のとおり,「優しい人」という雰囲気を持った方で,音楽全体から幸福感が漂ってくるようでした。どの曲にも,ひねくれたところのない率直さや明晰さがありました。音楽が停滞することなく,曲想に応じて,非常に切れ味の鋭い,強い響きも出していましたが,それが荒々しくなるところはありません。スピード感たっぷりの部分でも,常に余裕を持った微笑みのようなものを感じさせてくれました。

最後に演奏された,ベートーヴェンの交響曲第2番では,聞いているうちに,春の陽光と緑に包まれているような気分にさせてくれる演奏が好きなのですが,この日の演奏は,まさにそういう感じの演奏でした。まさに「風と緑のベートーヴェン」といったところでしょうか。

最初に演奏された,バッハの管弦楽組曲第3番は,トランペット3本が華やかに活躍する祝祭的な作品ですが,ヒステリックな響きになることなく,余裕を感じさせてくれました。ベートーヴェンの時以上に,古楽奏法を取り入れた演奏になっていましたが,それがしっくり馴染んでいるのが,OEKのすばらしさだと思いました。

G線上のアリアとして知られる,有名な「エア」は,遅めのテンポを取って,じっくりと聞かせてくれました。透明な響きと同時に,充実感が広がる,素晴らしい演奏でした。

そして,この日のもう一つの楽しみが,ヴァイオリンの木嶋真優さんとの共演でした。木嶋さんは,いしかわミュージック・アカデミーで夏休みの時期に金沢にはよく来られていたのですが,それから約15年が経ちました。この日の演奏を聞いて,本当に立派なアーティストになったなぁと実感しました。

モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番ということで,決して派手な曲ではないのですが,大変聞きごたえのある演奏を楽しませてくれました。第1楽章のヴァイオリンが登場する部分などでは,ものすごくじっくりと演奏していました。OEKを従えて,王女様がゆっくりと入場して来るような,オーラがありました。

第3楽章のトルコ風の部分は,OEKの演奏ともども,大変スピード感のある演奏で,スリリングな味わいもありました。演奏全体に委縮したところがなく,伸び伸びと演奏しているのも素晴らしいと思いました。

アンコールでは,鈴木さんのピアノとの共演で,グラズノフの瞑想曲が演奏されました。SPレコード時代に聞かれていたような懐かしさのあるヴァイオリン小品で,木嶋さんの音からは,濃厚な気分がしっかりと伝わって来ました(ただし,演奏会全体からすると,ややバランスとしては悪かったかもしれません)。

演奏会は,ベートーヴェンの第2番の後,これもまた,春の空気のような柔らかさを持った,モーツァルトの「フィガロの結婚」序曲がアンコールで演奏されて終了しました。改めて,鈴木優人さんは,OEKの雰囲気にぴったりとマッチした指揮者だな,と思いました。鈴木さんは,チェンバロ以外にも,パイプ・オルガンも演奏されるはずですので,きっとこれから,石川県立音楽堂やOEKとの付き合いが長くなるアーティストに違いないと思いました。そのことを期待しています。

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コメント

アンコールですが、おそらく木嶋さんは、グラズノフのあの作品がいま気に入っておられ、ご自分が弾きたかったのだと、私はそう解釈しました。
木嶋さんですが、私は前日リハも観させていただき、、昨晩もサイン会で少しだけお話しさせていただきましたが、ご自分のお考え、芸には相当のこだわりをもつ、意思の強い方と拝察しました。(世界で活躍する演奏家としては当然な事でしょうけれど)

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