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2017年7月

2017/07/29

井上道義さん,来年3月にOEK音楽監督を退任。寂しさ+新時代への期待。そして感謝の気持ちでいっぱいです。その思い出などをまとめてみました #oekjp

井上道義さんが今年度限りでOEKの音楽監督を退任するというニュースを聞いて,寂しくなるな,という思いと同時に,やはりそうだったのか,と思いました。

来シーズンの定期公演プログラムを見た時,すぐに来年3月の公演が,ハイドンの交響曲「朝」「昼」「晩」になっているのに気づきました。
http://www.orchestra-ensemble-kanazawa.jp/concert/2018/03/401_1.html#more

過去の記録を調べてみると,井上さんがOEKの定期公演を初めて指揮したのは,渡辺暁雄さんの代理で登場した1990年4月の公演。その後,1992年5月の定期公演で,恐らく,井上さん自身によるプログラムで登場しています。その時,最初に演奏したのが,ハイドン/交響曲第6番「朝」でした。その後,「朝」「昼」「晩」を全部取り上げた定期公演も行っていますので,個人的には,井上さんとOEKのつながりの原点にあるプログラムという印象を持っています。

そのプログラムが再登場したということで,「もしかしたら」という思いがありました。

井上さんの指揮に初めて接したのは,上述の,渡辺暁雄さんの代理で登場した時でした(今から思えば,この公演,実現して欲しかったのですね。その後,すぐ渡辺さんは亡くなられてしまいました)。

井上さんが,石川厚生年金会館の下手側から登場した時の印象は,強く印象に残っています。両手を広げ,半分客席の方に体をひねって,とても明るい笑顔で登場されました。その指揮を見た時,なんとしなやかで美しいのだろう,と感激しました。色々な意味(?)で光り輝いている指揮者だと思いました。

最初に演奏したのは,モーツァルトのアイネ・クライネ・ナハトムジークでした。古典派の音楽といえば,「大人しい」「まとまりがよい」という印象を持っていましたが,その指揮の動作同様のしなやかな流動感があり,素晴らしいと思いました。岩城さんの音楽は,質実剛健な感じがあったので,特に華やかに感じました。そして,その印象は現在も同様です。

その後,井上さんが岩城さんの後を継いで,OEKの音楽監督になると決まった時,とても嬉しく思ったことを思い出します。

井上さんの実績といえば,やはりラ・フォル・ジュルネ金沢を誘致したことが大きかったと思います。OEKの存在感を高め,ファン層を大きく広めました。さまざまな,パフォーマンスを含む冒険的な演奏会も印象に残っていますが,色々な言動の中で,常に「若いアーティスト」や「若い聴衆」のことを意識していたのも素晴らしいと思っていました。

というわけで,思い出を振り返るにはまだまだ,早いのですが,非常に寂しい思いがしています。
ただし,10年で一区切りを付け,また違った色合いのOEKの時代を楽しんでみたいという思いがあります。私の場合,特定のアーティストだけを強く応援する,というよりは,色々なアーティストによる色々なスタイルの演奏を楽しみ,比較することの方が好きなので,そういう点でも,OEK新時代に期待しています。

それにしても,来年の3月は首席チェロ奏者のルドヴィート・カンタさんも定年になられるし,一つの時代に区切りになりますね。

井上さんの場合,数年間の大病から復帰後,以前同様に活動されていますので,音楽監督という立場を離れて,今まで以上に自由な演奏をOEKと聞かせてくれるのではないかと思います。

というわけで,井上さんが,世界からいなくなるわけでないので少々変なのですが,今の気持ちとしては,感謝の気持ちでいっぱいです。

2017/07/18

OEKの今シーズン最後は井上道義指揮,ティエリー・エスケシュのオルガンによる,OEKらしいプログラム。エスケシュの自作自演の新作はオルガンのイメージを変えるような,不思議な音世界。おなじみカンタさんのチェロ独奏によるサン=サーンスも安心して楽しめました #oekjp

OEKの2016/2017定期公演フィルハーモニーシリーズのトリは,井上道義音楽監督の指揮による,石川県立音楽堂のパイプオルガンを大々的に使ったプログラムでした。プログラムの中心は,OEKの今シーズンのコンポーザー・オブ・ザ・イヤーで,オルガン奏者でもあるティエリー・エスケシュ作曲によるオルガン協奏曲第3番という新作でした。

これまで,新曲は前半に演奏されることが多かったのですが,30分以上かかる未知の曲を最後に持ってくるというのは,余程,エスケシュさんに対する信頼がないとできないことです。実際,最後の曲に相応しいスケール感とストーリーを持った作品でした。

まず,「オルガン=重厚」というイメージを壊してくれました。冒頭から,どこか可愛らしさのある高音が印象的でした。曲の方は,打楽器を大々的に使っている点も特徴で,特に金属系の打楽器とオルガンの音が重なりあうことで,「この音は一体何の音だろう?」という,電子音を思わせるような不思議な響きが続出していました。

曲は4つの部分から成っており,古い時代から現代へと,音楽の歴史を辿るといったコンセプトを持っていました。聴けば何時代の音楽か分かる...というほどの明快さはありませんでしたが,各部分ごとに違った雰囲気で作られており,全曲を通して,壮大なスケール感を感じました。

エスケシュさんの使うオルガンの音には,どこか透明感があると思いました。オルガンの音だけが盛大に目立つことはなく,オーケストラの各楽器の音と一体となって,「これまでにない音」をブレンドしているように感じました。OEKの編成自体も,いつもよりもやや大きめでしたが(トロンボーンが加わっていました),オルガンが加わることで,室内オーケストラというよりは,フル編成オーケストラのような音になっているように感じました。

エスケシュさんは,演奏会の最初に,井上道義さんが提示した主題(交響曲「未完成」をもとにした主題)による即興演奏も行いましたが,本当に多彩な音のパレットを持ったオルガン奏者だと思いました。それと音の使い方のセンスがとても良いと思いました。

今回,エスケシュさんとOEKは,中部地方を中心に,パイプオルガンを持つホールをめぐるツァーを行います。各会場のオルガンの性能や音色に応じた形で,どういう即興演奏を行うのか,楽しみですね。追っかけるわけではないので,聞き比べはできませんが,画期的な企画と言えそうです。

その他,前半ではシューベルトの「未完成」交響曲とサン=サーンスのチェロ協奏曲第1番が演奏されました。

「未完成」交響曲については,名曲中の名曲ということで,今回,井上道義さんは,ステージ下手側に弦楽器,上手側に管楽器を集めるという,非常に変則的な配置を取っていました。ただし,この配置については,数年前の北陸新人門登竜門コンサートの時に「未完成」を演奏した時も同様でした。「「未完成」については,この配置の方が良い」という確信に基づく配置だったと思います。

実際,冒頭から正面奥の高い場所に配置したチェロやコントラバスの音がとてもよく響いていました。また,弦の刻みもしっかりと聞こえてきました。管楽器の方は,上手側に集めることで,管楽器パート全体としての存在感が明確になっていたように聞こえました。「未完成」の場合,オーボエ,クラリネット,フルート,ホルンなどが第2楽章を中心に活躍しますが,その響きがとても美しく厚いと感じました。

そして何よりも,井上さんのじっくりとしたテンポ設定が印象的でした。シューベルトの晩年の作品ならではの,天国に一歩,近づいたような美しさがありました。あらためて「未完成」は良い曲だなぁと再認識しました。
前半最後は,OEKの首席チェロ奏者のルドヴィート・カンタさんの独奏で,サン=サーンスのチェロ協奏曲第1番が演奏されました。全曲を通じて,生き生きとした音楽と流れと,ノーブルなチェロの音色を楽しむことができました。第1楽章では,一瞬,カンタさんのチェロが乱れる部分がありました。例えば私だったら(ものすごく変な例えですが...何事につけ),動揺して,その後,ムタムタ(金沢弁)になってしまう気がするのですが,カンタさんは,その後,平然と気持ち良い音楽を聞かせてくれえました。その辺のリカバリー力に,ベテラン奏者のすごさを感じました。

これでOEKの2016/2017シーズンも終了です。最後に実にOEKらしいプログラムを楽しむことができました。

2017/07/15

#大阪フェスティバルホール で #井上道義 指揮大阪フィル他による #バーンスタイン の「ミサ」全曲を聞いてきました。ジャンルを超えた多彩な音楽に浸りながら,平和と権威のはかなさを実感。深く刺激的な作品でした

本日は大阪フェスティバルホールまで遠征し,大阪フィル70周年記念及びフェスティバルシティ・オープン記念として行われた,レナード・バーンスタン作曲の「ミサ」の全曲公演を聞いてきました。

この公演を聞きに行こうと思ったのは,何といってもSNSでの広報の力です。春頃から繰り返し,充実した公演情報や出演者のインタビュー動画などの情報が流れてきて,「四半世紀に1回ぐらいのビッグイベントかも」という気分が自然に盛り上がってしまいました。もちろんOEK音楽監督でもある,井上道義さんが本気で取り組んでいる難曲であること,そして金沢でもお馴染みの若手の歌手たちが大勢出演していること,そして...3連休初日であることもその理由です。さらには新しくなった大阪フェスティバルホールに行ってみたいという気持ちもありました。

このバーンスタインの「ミサ」は,大まかに言うと,ミサを取り仕切る司祭の苦悩とミサの自体の崩壊。そして回復。これらを歌あり,踊りありの約2時間のシアターピースのスタイルで描いています。いちばんの特徴は,クラシック音楽の枠に留まらない多彩な音楽を使っている点です。バーンスタインの生まれたアメリカは,民族的に多様なルーツを持つ国です。民族面と同様の音楽面での多彩さを表現した作品と言えます。

録音された無調音楽,親しみやすいミュージカル風の曲,ロック,ブルース,行進曲,荘重なクラシック音楽,慰めるような音楽,扇情的な音楽....。演奏の編成についても,独唱,合唱,少年合唱と多彩です。オーケストラのうち弦楽器と打楽器はピットに入り,木管楽器,金管楽器がそれぞれ下手袖,上手袖にバンダのような感じで配置。ステージ上中央に祭壇。その両脇にロックバンドとブルースバンド。そしてステージ奥に合唱団が配置していました。

歌手については,役が決まっているのは司祭役ぐらいで,その他の歌手は,アンサンブルで歌を歌ったり,ダンスや演技をしたりするストリートコーラスということになっていました。

というわけで,「こんな作品他にない」という構成・編成の作品でした。この曲が滅多に演奏されないのは,まず,このことが理由でしょう。それに加え,「ミサ」というタイトルでありながら,キリスト教を冒涜するような場面が出てくることも演奏回数が少ない理由となっているようです。

曲全体として,明確なストーリーはありません。伝統的な権威の象徴である司祭が,民衆たちからの激しい突き上げに合って,ミサ自体が崩壊してしまいます。最後はボーイソプラノの声が象徴する大きな存在の力(この辺はよくわかりませんが)で,平和は回復されるのですが,宗教的な儀式を司祭が放棄してしまう,という展開は前代未聞だったようです。

司祭がミサを放棄した理由については,初演当時のアメリカの抱えていた社会問題を象徴的に表現しているようですが,今回の井上道義さん演出(今回は指揮だけではなく,全体も取り仕切っていました)による公演を観て,もっと普遍的な理由を感じました。現代人の多くが共通して抱えている心の中に秘めた葛藤のようなものが,多彩な音楽の積み重ねを通じて,段々と高まって行くような印象を持ちました。そして,作曲者レナード・バーンスタイン自身の心の葛藤を描いていたと感じました。

実際,今回の司祭役の大山大輔さんは,レナード・バーンスタインがよく首に巻いていたマフラーをつけていました。大山さんの声には,司祭にふさわしい立派さだけではなく,弱さを持った等身大の人間らしい優しさと柔らかさを持った歌を聞かせてくれました。特にアニュスデイでの「狂乱の場」は,音楽自体の異様な迫力(照明も結構すごいことになっていました)も相俟って,客席にいながら,「これは大変な場に遭遇してしまったな」と思いました。

最後の「平和の回復」の部分でも,シアターピースならではの,「見せる演出」がありました。ステージ奥の高いところにフルート奏者が登場。いつの間にかそこに滑り台(!)ができていました。ボーイソプラノの少年が1人滑り降り,取り壊された祭壇の下から出てきた白いピアノの上へ。そこで文字通り「天使のような歌」を聞かせてくれました。今回の公演の成功は,この最後の歌と演出に負うところが大きかったと思います。ブラーヴォ。

もちろん,前半の多彩な音楽が次々と登場するのも魅力的でした。特にストリート・コーラスのメンバーが,ビートを聞かせたエレキ・ギターや電子オルガン(この音を聞くと,どこか1960~70年代のアメリカといった気分になりますね)などと一緒に歌う曲は,通常のクラシック音楽にはない魅力を感じました。

それにしても,今回のメンバーは豪華メンバーでした。私がこれまで金沢で実演を聞いたことのある人を列挙すると,小川里美、小林沙羅、鷲尾麻衣(先週聞いたばかり!)、藤木大地、久保和範、与那城 敬、ジョン・ハオ...記念公演ならではの,華やかさでした。

背後で歌っていた大阪フィルハーモニー合唱団の皆さんは,「民衆の声」という感じで,ドラマの要所要所で音楽を盛り上げてくれました。特にグローリアの中のトロープス(この公演のプロモーション動画で使っていた曲)の力強さが印象的でした。余談ですが...この曲を聞くと,どうも「ひょっこりひょうたん島」のテーマ曲を思い浮かべてしまいます。私だけでしょうか?
http://blog.osakafes.jp/archives/2453

全曲を振り返ってみると,司祭が最初に歌っていた「シンプルソング」の美しさが,懐かしく思いだされます。べートーヴェンの第9の4楽章ではありませんが,こういったシンプルな曲が音楽の原点なのかもしれません。そして,最後,ボーイソプラノの声で救済されたことも意味深だと思います。ボーイソプラノという声自体,非常に儚いものだからです。世界の平和は儚さの上に成り立っている,,,ということになります。司祭が語っていた「何事もすぐに崩れやすい」とやすい,という言葉はやはり解決されないのだな,と思いました。深い作品だなと思いました。

音楽の性格としては,本当のミサではなく,「ミサ」というタイトルの「ほとんどミュージカル」といった作品だと思います(キリスト教を題材にし,ロックを使ったミュージカルという点では,「ジーザス・クライスト・スーパースター」と共通する部分もあるかもしれません)。音楽自体に魅力があるので,レパートリーとして定着していってもよい作品だと思いました。
PS 久しぶりに出かけた大阪フェスティバルホールは,大変豪華な雰囲気がありました。赤じゅうたんと大階段がそのまま残っていたのも嬉しかったですね。今回は,”安い”席を最近買ったので,最後列(いちばん”高い”席)になりました。この席からだと,まさに”神”のような視点で,全体を見渡すことができました。音もよく聞こえたし,今回の公演には,最適のホールだった気がしました。

2017/07/13

OEK第2ヴァイオリン奏者の若松みなみさんのヴァイオリン・リサイタル。フランクのソナタを中心にどの曲も爽快に聞かせてくれました。

先週の土曜日から,5日間で4日目となるのですが,本日は,OEKの第2ヴァイオリン奏者,若松みなみさんのリサイタルが行われたので聴いてきました。若松さんはOEKの中でも,最も若い世代の奏者で,今回が初めてのリサイタルとのことでした。というわけで,OEKファンとしては応援しないわけにはいきません。

今回のプログラムは,フランクのヴァイオリン・ソナタ,ドビュッシーのヴァイオリン・ソナタ,モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ第25番を中心に,若松さんの演奏したい曲がしっかりと並んでいました。若松さんのヴァイオリンは,どの曲も,本当に音がしっかりと鳴っており,聴いていて惚れ惚れとしました。音が大変豊かで,音を聞くだけで幸福感を感じました。神経質な部分はなく,どの曲にも演奏する喜びが素直に表れていると感じました。

特に最後に演奏されたフランクのソナタの爽快な演奏には,若手奏者ならではの魅力が溢れていました。このところ,湿気が高く,疲労がたまり気味でしたが,週末金曜日まで働くエネルギーが湧いてきまいした。

後半の最初に,同じOEKのチェロ奏者,ソンジュン・キムさんのチェロとの二重奏で,マルティヌーのヴァイオリンとチェロのための二重奏曲第2番が演奏されました。この曲だけは,やや苦み走ったような気分があり,プログラム全体の中で,絶妙のアクセントになっていました。

前半最後に演奏された,サラサーテの「序奏とタランテラ」は,そのタイトルどおりの曲です。最初の音を聞いた瞬間,スペインの陽光が溢れてくるような気分になり,とても良い曲だと思いました。後半のタランテラの部分での技巧的な部分も気持ちよく楽しまてくれました。

ピアノのジュヌゥ・パクさんの演奏には,マイルドな包容力が感じられ,若松さんをしっかりとサポートしていました。

終演後の拍手も大変暖かいものでした。若松さんは,OEK入団後,「金沢が大好きになりました」と語っていましたが,金沢のOEKファンにもしっかりと愛されているなぁと実感しました。今後もソロや室内楽での活躍にも期待したいと思います。

2017/07/12

石川県立音楽音楽堂 室内楽シリーズ。2017年度第1回は,OEKメンバーによる七重奏曲×2曲。ベートーヴェンと「ほぼジャズ」のマルサリスの曲の組み合わせは最高。ジャズも演奏できてしまうOEKメンバーに感服 #oekjp

石川県立音楽音楽堂で行われる室内楽公演シリーズ。2017年度の第1回は,OEKメンバー等による,七重奏曲2曲が演奏されました。もともとこのシリーズでは,「大きめの室内楽」が取り上げられることが多いのですが,管・弦・打が全部揃った室内楽となると,司会の柳浦さんが語っていたとおり,「オーケストラの最少のエッセンス」のように感じられ,大変聞きごたえがありました。

前半に演奏された,ベートーヴェンの七重奏曲は,各パート1人ずつの「超室内オーケストラ」的な響きのする曲です。若い時期のベートーヴェンの作品らしく,どの楽章にも生き生きとした推進力と,前向きの明るさがありました。

この演奏で良かったのは,各メンバーの存在感がしっかりと発揮されていたことです。第1ヴァイオリンの活躍が目立つ曲なので,坂本さんが全体を引っ張っていましたが,大澤さんのチェロ,今野さんのコントバスなど,要所要所で熱い響きを聴かせてくれました。

そして,金星さんが演奏していた,バルブの付いていないホルンも威力満点でした。スケルツォをはじめとして,要所で野趣たっぷりの音を聞かせたり,ゲシュトップフト奏法による,不思議な響きを聞かせたり,これまでに聞いたことのない雰囲気を味わわせてくれました。この響きと対照的だったのが,遠藤さんのクラリネットで,大変気持ちよく,流れるような歌を聞かせてくれました。

後半に演奏された,ウィントン・マルサリス作曲の「フィードラーズ・テール」の演奏は,「OEKが本格的なジャズを演奏してしまった!」という点で画期的な演奏だったと思います。もともとは,ストラビンスキーの「兵士の物語」の組曲版と組み合わせるためにマルサリスが作曲した作品ということで,「兵士の物語」と全く同じ楽器編成(7人編成)です。ストーリー展開も,兵士の物語のパロディのような感じになっています。

「兵士の物語」でもヴァイオリンが活躍していたので,オリジナルの風味も残っていたのですが,曲が進むにつれて,マルサリス色,というかジャズ色が強くなっていくように感じました。ベートーヴェンの七重奏曲の時同様に,各奏者のソリスティックな活躍が印象的でしたが,特に藤井さんのトランペットの,マルサリスに成り切ったような,濃い演奏が最高でした。多彩なリズムを刻んでいた渡邉さんのドラムスも見事でした。

全員で演奏すると,ちょっとしたビッグバンド風に聞こえるのも面白いところでした。皆さん,当然のことながら,楽譜を見て演奏されていましたが,譜面通り演奏すると「ジャズ」になってしまうマルサリスの曲もすごいと思いました。そして,何よりも,しっかりジャズも演奏できてしまう,OEKのメンバーの適応力の高さにも感服しました。よくぞこの曲を選んでくれた,と感謝したくなりました。

アドリブがなかったのが,やはりクラシック音楽だったのかもしれませんが,今回の演奏は,是非,ジャズ音楽のファンにも聴いてもらいたかったと思います。お客さんと演奏者との距離の近さもジャズに通じる部分があると思いました。

というわけで,今後,ジャズ・ファンとクラシック音楽ファンの相互乗り入れ可能な演奏会というのを企画しても面白いかもと感じました。

2017/07/11

本日は,第1回ベストオブアンサンブル in Kanazawaでグランプリを受賞したTrio RFR(トリオアルファ)の演奏会へ。ピアノ三重奏の世界は良いです。3曲を正攻法で楽しませてくれました

本日は,昨年行われた「第1回ベストオブアンサンブル in Kanazawa(BOE)」でグランプリを受賞した,桐朋学園大学院大学での同期生3人によるピアノ三重奏団「Trio RFR(トリオアルファ)」の演奏会が行われたので聴いてきました。先週末から頻繁に演奏会に出かけているので,「どうしようかな」と迷っていたのですが,金沢でピアノ三重奏の演奏会が行われることは多くないこと,そして,昔から好きな曲だった,シューベルトのピアノ三重奏曲第1番が演奏されることを目当てに聞きに行くことにしました。

プログラムは,ハイドン,ベートーヴェン,シューベルトというウィーン古典派から初期ロマン派の作曲家によるピアノ三重奏曲を集めた大変聞きごたえのあるものでした。Trio RFRの演奏は,BOEのグランプリらしく,正攻法の誠実な演奏で,各曲を楽しませてくれました。

ヴァイオリンの青木さんの力感のある響き,ピアノの浅井さんのクリアで煌めきのある音にチェロの富田さんの柔らかみのある音が加わり,室内楽的な密度の高さと同時に,外に広がって行くような開放感も感じさせてくれました。

最初に演奏されたハイドンの曲は,曲の最初,朝礼とかでお辞儀をする時の「チャン・チャン・チャン」というような和音で始まり,思わず嬉しくなりました。その後も明るく,どこか可愛らしい雰囲気があり,気持ちよく楽しむことができました。第2楽章は大変美しいメロディでした。ベートーヴェン,シューベルトと引き継がれるウィーン風の伝統のようなものを感じました。

続くベートーヴェンのop.70-2の三重奏曲を聞くのは初めてのことでした。ベートーヴェンの三重奏曲といえば「大公」が有名で,この曲については,「傑作の森」の真ん中にあるけれども「イマイチの作品」などと(失礼なことを)書かれている解説を読んだことがあるのですが,今回,初めて実演で効いてみて,「そんなことはない」良い作品だなとと思いました。

全曲を通して深刻な感じはなく,とても健康的な雰囲気がありました。特に(アンコールでももう一度演奏されたのですが)第3楽章の親しみやすいメロディが印象的でした。この楽章の途中に出てくる,「ヴァイオリン+チェロ」と「ピアノ」とが対話をするように進んでいく辺りでの絶妙の「間」の取り方も良いなと思いました。

後半は,シューベルトのピアノ三重奏曲第1番が演奏されました。冒頭からキビキビとした感じで進んだあと,これぞシューベルトという感じのメロディが出てきます。第2楽章は昔から特に好きな楽章です。テンポはやや速目でしたが,しっかり熱く歌われていました。好みとしては,もう少し耽美的な感じが好みですが,十分に堪能させてくれました。

第3楽章スケルツォの後の第4楽章は,シューベルトらしく(?)同じフレーズが何回も繰り返される最終楽章です。このしつこい繰り返しが,シューベルトの器楽作品の魅力の一つかもしれませんね。

年季を積んだ室内楽グループに比べると,どこか「真面目すぎるかな」という部分はありましたが,これまで金沢では実演で聴く機会の少なかった,ピアノ三重奏曲の世界をじっくりと楽しませてくれました。ピアノ三重奏というのは,同じ室内楽でも弦楽四重奏などに比べると,ソリスティックな部分が多く,外向的な感じがします。それと「何でも表現できる最小限の編成」といったオールマイティな性格もあると思います。

Trio RFRのメンバーは,実は金沢出身者が含まれていないのですが,そういうメンバーが金沢で演奏活動を始めたというのは,とても嬉しいですね。是非,これからの活動に期待したいと思います。昨年はTBSドラマ「カルテット」が話題になりましたが...次は「ピアノ・トリオ」の時代かもしれないですね。

PS. 演奏会の後,外に出てみると...ホール内の調和の取れた世界とは全く別のものすごい豪雨。傘を持ってこなかったので,ひどい目に会って帰宅することになってしまいました。やはり梅雨ですね。

2017/07/09

ルドヴィート・カンタ バースディ・リサイタル。バッハの無伴奏チェロ組曲全6曲を聴いてきました。熟成されたスロバキアワインの味わい。全曲通すことで,各曲の個性も際立っていました。

OEK首席チェロ奏者ルドヴィート・カンタさんによる,バッハの無伴奏チェロ組曲の全曲演奏会が石川県立音楽堂コンサートホールで行われたので聞いてきました。実は,7月9日,まさに本日がカンタさんの60歳の誕生日でした。チェロ奏者としての活動の総決算となるような,素晴らしい内容の「バースデイ・リサイタル」となりました。

バッハの無伴奏チェロ組曲は,プロのチェロ奏者ならば必ず演奏する,バイブルのような曲集です。カンタさん自身も,過去何回か演奏しており,全曲のCD録音も行っています。今回は2回の休憩をはさみ,約3時間の演奏会となりましたが,まさに熟成されたスロバキアワインといった趣きのある,味わい深い演奏を聞かせてくれました。そして,改めてこの曲集は面白いと実感できました。

この6曲は,アルマンド-クーラントーサラバンドージーグというバロック時代の組曲の「定番の配列」の最初に,いろいろな形にプレリュードが加わり,サラバンドとジーグの間に,少し新しいタイプのメヌエット,ブーレ,ガヴォットという舞曲が加わるという構成になっています。

一見したところ,どれも同じように思えるのですが,今回のような形で,じっくり最初から聞いて行くと,各曲の個性が際立って聞こえました。それが全曲演奏会の面白さです。個人的な印象としては,ト長調の第1番が「春」のイメージ,ニ短調の第2番が「秋」のイメージ,ハ長調の第3番が「夏」のイメージだなと思いました。

第4番は,プログラムの解説にあったとおり,弦楽器には珍しい♭系の変ホ長調で書かれていることもあり,異次元の曲といった感じがありました。一面雪の別世界とすれば,これが「冬」でしょうか。

最後の第5番と第6番については,4番までとは別格の曲だと思いました。今回は2曲ごとに休憩が入ったのですが,最後に第5番と第6番を連続してきくと,ハ短調からニ長調への暗と明の対比が鮮やかでした。

カンタさんの演奏は,ベテラン奏者らしく,バリバリと演奏するような部分はなく,どの曲についても,スッと自然に音楽に入り込み,余裕をもってバッハの音楽を粋に表現していました。その要所要所で,ぐっと沈み込むような深さがあったり,不思議な浮遊感があったり,変化に富んだ音楽を聞かせてくれました。

特に今回印象に残ったのは,やはり最後の第5番と第6番でした。第5番からは,これぞバッハという感じの深さ,渋さを。第6番からは,突き抜けた感じの明るさを感じました。第6番は,特に難技巧の作品で,ずっと前にカンタさんの演奏で聞いた時は,相当苦闘しているような印象を持ったのですが,今回は常に高みを目指す高揚感が伝わってくる,感動的な演奏でした。

個々の楽章では,やはり各曲のサラバンドの味わいが素晴らしいと感じました。第2番のサラバンドの深く自分の意識の奥の中に入り込んでいくようでした。第6番のサラバンドは,無伴奏ヴァイオリン・パルティ―タの中の有名な「シャコンヌ」とちょっと似ていると感じました。対照的に,シンプルな「線の音楽」の第5番のサラバンドのしみじみとした味も印象的でした。

途中,30分の休憩があり,スロバキアワイン飲み放題(?)だったのですが,あれだけ大勢の人がワインを飲んでいる光景を見るのも珍しいことです。OEKメンバーも大勢参加しており,とても暖かな雰囲気がありました。

全6曲を演奏した後,最後は「ハッピバースディ」の合唱が自然と沸き起こりました。こちらも「無伴奏」の合唱でした。その光景を見ながら,こういう風に年齢を重ねることができたら,いいなぁとしみじみ思いました。今月は18日にカンタさんとOEKが共演し,サン=サーンスのチェロ協奏曲を演奏しますが,そちらの方も大変楽しみですね。

2017/07/08

OEK定期Mは,「しゃべって振れる」 #辻博之 さん指揮による,モーツァルト作品集。#鳥木弥生 さん,#鷲尾麻衣 さんの華やいだ声と雰囲気とともに,名曲から珍しい曲までを堪能しました #oekjp

OEKの2016/2017定期公演マイスターシリーズでは,モーツァルトの作品を取り上げてきました。その「トリ」は,辻博之さん指揮による,モーツァルトのオペラのアリアを中心としたプログラムでした。今回の特徴は,有名アリアではなく,ソプラノとメゾ・ソプラノによる二重唱を中心とした,比較的知られていないアリアを集めていた点にあります。特にモーツァルトが14歳の時に書いた,歌劇「ポントの王ミトリダーテ」の中の二重唱で締めるというのは,考えてみると,とても大胆でした。

辻さんによる明るく,分かりやすい解説に加え,鷲尾麻衣さん,鳥木弥生さんという「華のある」2人の歌手が加わり,辻さんが語っていた「初めてモーツァルトを聞く人でも,何十年も聞いて来た人とでも楽しめるプログラム」という意図はしっかり実現されていたと思います。

演奏会の前半では,モーツァルトの交響曲第25番が演奏されました。6月末には,アビゲイル・ヤングさんの弾き振りで29番を聞いたばかりでしたが,その時同様に,室内オーケストラらしからぬ,力強さを感じさせてくれる演奏でした。辻さんは,トークの時などは大変にこやかで饒舌でしたが,この曲については,指揮棒を大きく振り下ろした瞬間に,シリアスでビシっと締まった音楽が始まり,「すごい!」と思いました。

2楽章の不安な静けさに溢れた音楽。第3楽章も悪夢に取り憑かれたような不安な気分がありましたが,トリオの部分では,完全に木管メンバーに任せ,現実にふっと戻ったような気分にさせてくれました。そして,すごく速いテンポの第4楽章,

この振幅の大きさは,実に「アマデウス的」だなぁと思いました。辻さんは,ネットで調べてみるとまだ30代前半ということです。「しゃべって振れる」指揮者ということで,今後活躍の場を広げていくのではないかと思います。

後半は「ドン・ジョヴァンニ」序曲で始まりました。辻さんとOEKは,今年の秋,映画『アマデウス』を生演奏付きで上映するという,注目の企画に参加しますが,この曲と交響曲第25番については,まさに「予告編」といったところでした。

続いて,鳥木さんと鷲尾さんが登場し,モーツァルトのオペラの中の二重唱を2曲歌いました。最初の「フィガロ」の中の「けんかの二重唱」については,どうしても,数年前に井上道義さん指揮,野田秀樹演出で観た例の和風「フィガ郎」を思い出してしまいます。その時の過激な和訳を思い出すと,今回の2人の重唱は,「女の戦い」を大変優雅に表現していたと思いました。きっと今回の方が本来の歌なのだと思います。

ちなみに今回の字幕についても,辻博之さんが担当されていました。イタリア語は分からないのですが,「超訳」といった感じの,大変分かりやすい訳だったと思います。

「コジ・ファン・トゥッテ」の中の二重唱「私あの栗色のほうがいいわ」の方は,「女子会トーク」(予告の解説の文言です)といった趣きがありました。コンサートホールで聞くお2人の声には,たっぷりとした余裕とみずみずしさがあり,2人の声がしっかり絡み合うにつれで,どこか艶っぽい気分にさせてくれました。機会があれば,是非,この2人で「コジ」の全曲を期待したいと思います。

後半の後半では,スネアドラムなどが活躍する,コントルダンス「雷雨」が間奏曲的に演奏された後,鷲尾さんによる「コジ」の中のデスピーナのアリア,鳥木さんによる,「皇帝ティートの慈悲」の中のアリアが歌われました。特に特に鳥木さんの歌ったアリアの方は,OEKのクラリネット奏者の遠藤さんによるオブリガートが,鳥木さんのドラマを秘めた声としっかり絡んでいました。これだけクラリネットが大々的に活躍するアリアも珍しいと思います。演奏会用アリアという感じの聞きごたえのある歌を楽しませくれました。

最後,上述のとおり,「ポントの王、ミトリダーテ」の中の二重唱「私が生きることがかなわなくても」が演奏されました。辻さんが「いちばん好きな二重唱」と語っていた通り,14歳の作品とは思えない立派な曲でした。段々と,2人の歌手によるコロラトゥーラの応酬のような感じになり,充実した気分で全曲を締めてくれました。

個人的には,やはり「交響曲で終わる」定期演奏会というのが好みですが,こういう「知られざる曲」を再発見させてくれる企画も面白いと思います。例えば,5月の「新音楽祭」のワクの中にあると,ぴったり来るのでは?と思わせるような演奏会でした。
というわけで,辻さんについては,企画力も含め,今後のOEKとの共演に期待したいと思います。とりあえずは11月の「アマデウスLive」が大変楽しみです。

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