OEK定期Mは,「しゃべって振れる」 #辻博之 さん指揮による,モーツァルト作品集。#鳥木弥生 さん,#鷲尾麻衣 さんの華やいだ声と雰囲気とともに,名曲から珍しい曲までを堪能しました #oekjp
辻さんによる明るく,分かりやすい解説に加え,鷲尾麻衣さん,鳥木弥生さんという「華のある」2人の歌手が加わり,辻さんが語っていた「初めてモーツァルトを聞く人でも,何十年も聞いて来た人とでも楽しめるプログラム」という意図はしっかり実現されていたと思います。
演奏会の前半では,モーツァルトの交響曲第25番が演奏されました。6月末には,アビゲイル・ヤングさんの弾き振りで29番を聞いたばかりでしたが,その時同様に,室内オーケストラらしからぬ,力強さを感じさせてくれる演奏でした。辻さんは,トークの時などは大変にこやかで饒舌でしたが,この曲については,指揮棒を大きく振り下ろした瞬間に,シリアスでビシっと締まった音楽が始まり,「すごい!」と思いました。
2楽章の不安な静けさに溢れた音楽。第3楽章も悪夢に取り憑かれたような不安な気分がありましたが,トリオの部分では,完全に木管メンバーに任せ,現実にふっと戻ったような気分にさせてくれました。そして,すごく速いテンポの第4楽章,
この振幅の大きさは,実に「アマデウス的」だなぁと思いました。辻さんは,ネットで調べてみるとまだ30代前半ということです。「しゃべって振れる」指揮者ということで,今後活躍の場を広げていくのではないかと思います。
後半は「ドン・ジョヴァンニ」序曲で始まりました。辻さんとOEKは,今年の秋,映画『アマデウス』を生演奏付きで上映するという,注目の企画に参加しますが,この曲と交響曲第25番については,まさに「予告編」といったところでした。
続いて,鳥木さんと鷲尾さんが登場し,モーツァルトのオペラの中の二重唱を2曲歌いました。最初の「フィガロ」の中の「けんかの二重唱」については,どうしても,数年前に井上道義さん指揮,野田秀樹演出で観た例の和風「フィガ郎」を思い出してしまいます。その時の過激な和訳を思い出すと,今回の2人の重唱は,「女の戦い」を大変優雅に表現していたと思いました。きっと今回の方が本来の歌なのだと思います。
ちなみに今回の字幕についても,辻博之さんが担当されていました。イタリア語は分からないのですが,「超訳」といった感じの,大変分かりやすい訳だったと思います。
「コジ・ファン・トゥッテ」の中の二重唱「私あの栗色のほうがいいわ」の方は,「女子会トーク」(予告の解説の文言です)といった趣きがありました。コンサートホールで聞くお2人の声には,たっぷりとした余裕とみずみずしさがあり,2人の声がしっかり絡み合うにつれで,どこか艶っぽい気分にさせてくれました。機会があれば,是非,この2人で「コジ」の全曲を期待したいと思います。
後半の後半では,スネアドラムなどが活躍する,コントルダンス「雷雨」が間奏曲的に演奏された後,鷲尾さんによる「コジ」の中のデスピーナのアリア,鳥木さんによる,「皇帝ティートの慈悲」の中のアリアが歌われました。特に特に鳥木さんの歌ったアリアの方は,OEKのクラリネット奏者の遠藤さんによるオブリガートが,鳥木さんのドラマを秘めた声としっかり絡んでいました。これだけクラリネットが大々的に活躍するアリアも珍しいと思います。演奏会用アリアという感じの聞きごたえのある歌を楽しませくれました。
最後,上述のとおり,「ポントの王、ミトリダーテ」の中の二重唱「私が生きることがかなわなくても」が演奏されました。辻さんが「いちばん好きな二重唱」と語っていた通り,14歳の作品とは思えない立派な曲でした。段々と,2人の歌手によるコロラトゥーラの応酬のような感じになり,充実した気分で全曲を締めてくれました。
個人的には,やはり「交響曲で終わる」定期演奏会というのが好みですが,こういう「知られざる曲」を再発見させてくれる企画も面白いと思います。例えば,5月の「新音楽祭」のワクの中にあると,ぴったり来るのでは?と思わせるような演奏会でした。
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